頭頸部外科
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6 巻, 2 号
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  • 大塚 博邦, 久野 陽子, 小山 守
    1996 年6 巻2 号 p. 71-75
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     鼻アレルギー症状の一つである鼻閉を改善する目的で下鼻甲介粘膜広範切除術を26年前より施行してきた。合併する鼻中隔弯曲をも矯正した。この手術を開始した当初6年間,術後1~3年間外来で経過観察できた68例の鼻閉改善率は90%以上を示したが,6カ月以内に再発のため再手術を余儀なくされたものは3例あった。これらの症例について術後5~7年経過したところで48症例についてアンケート調査した。鼻閉に対し75%の有効率に低下していた。反省点として11歳以上を対象とし,下鼻甲介骨に対する処置を16年前より併用したが,これによって鼻閉に対する改善度は100%であり,くしゃみ,鼻汁に対しても70%以上の良い成績を修めることができた。
  • 石田 春彦
    1996 年6 巻2 号 p. 77-85
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     通年性鼻アレルギー症例12例に対し下鼻甲介骨切除・粘膜固有層電気凝固術を行ったのでその結果を報告した。 手術は局所麻酔下に粘膜下下鼻甲介骨切除術を行い,引き続いてその創腔より下鼻甲介の鼻中隔側の粘膜固有層を電気凝固した。 術後の痂皮形成は軽微であり,自覚症状,他覚所見ともに著明に改善した。また術後の下鼻甲介粘膜では肥満細胞,好酸球が減少しており,鼻汁中のヒスタミン濃度も有意に低下していた。さらに粘膜上皮には術後扁平上皮化成が見られたが,サッカリンタイムは術前後で有意差はなく,粘膜線毛機能に対する影響も少なかったものと思われる。
  • 福武 知重, 山下 敏夫, 久保 伸夫, 川村 繁樹
    1996 年6 巻2 号 p. 87-92
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     著者らは保存的治療に抵抗する難治性のアレルギー患者に対する簡便な外科的療法として,炭酸ガスレーザーメスを用いたレーザー手術を考案し,1981年以来現在までに1,200名以上の鼻アレルギー患者を治療してきた。鼻アレルギーに対するレーザー手術とは下鼻甲介にレーザー光を照射し,その熱エネルギーより下鼻甲介粘膜の表層を気化蒸散,変性させる手術である。このレーザー手術は危険性が極めて低く,通院による治療が可能で,小児に対しても容易に施行できる等の利点を持ち,治療2年後の時点で約80%の患者が自覚症状の改善を認めている様にその治療成績も良好である。
  • 伊藤 博隆, 馬場 駿吉, 高木 一平, 鈴木 元彦, 間宮 紳一郎, 北尾 俊二, 杉山 和子
    1996 年6 巻2 号 p. 93-97
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     アレルギー性鼻炎にたいしてND:YAGレーザー治療を通年性,季節性のものに行い,よい効果を得たので報告する。通年性では術後2週目より以後には有効率86.4%となり,季節性では飛散季節前治療で,併用薬使用群で飛散最盛期では44.4%に症状抑制効果があった。また,併用薬を使用しなかった症例は最盛期で85.7%に抑制し,総数では10症例(62.5%)に有効であった。この結果により通年性ばかりでなく花粉症にたいしても効果のあることが判明した。この治療法で特に副作用を認めなかった。
  • ―治療による活性化好酸球数の検討―
    八尾 和雄, 設楽 哲也, 高橋 廣臣, 西山 耕一郎, 井口 芳明, 山本 一博, 鈴木 立俊
    1996 年6 巻2 号 p. 99-104
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     患者の希望と同意の下,80w/v%トリクロール酢酸(TCA)で非弯曲側のみ治療した症例で,症状の改善しなかった24症例を対象とした。治療側と非治療側の下甲介粘膜組織で活性化好酸球を数量化し,分散分析の統計処理でTCAがI型アレルギーを抑制できるか検討した。結果は,主要因であるTCA治療要因,好酸球の活性化要因および交互作用要因が有意(p<.01)であって,治療効果に従って活性化好酸球数は減少した。本治療方法は,活性化好酸球の数が治療側で低下していたことはサイトカインの作用が局所で抑制されていることが推測でき,I型アレルギーを抑制できると考えられた。
  • 黄川田 徹
    1996 年6 巻2 号 p. 105-110
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     鼻アレルギーの治療は薬剤による保存的治療が主体であるが,保存的治療に抵抗する難治例も少なくない。このような例に対してvidian neurectomyが有効なことは広く知られているが,手術侵襲,神経破壊の問題点,手術手技のむずかしさなどから,一般的な治療として普及していないのが現状である。本論文では,vidian nerveに到達するための,より簡便で安全な術式について報告する。
  • 吉田 知之, 加藤 治文, 佐伯 哲郎, 奥平 唯雄, 李 雅次, 吉田 ひかり, 丸岡 秀裕, 伊藤 博之, 舩坂 宗太郎
    1996 年6 巻2 号 p. 111-117
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     Photodynamic Therapy(以下PDT)は癌の選択的治療法として注目されている。今回我'々はHpDとエキシマ・ダイ・レーザーを用いたPDTを頭頸部癌に対し臨床応用し,その有用性と安全性ならびに遠隔成績に対し検討を行った。対象は1988年2月~1995年4月の間にPDT療法を行った24例(喉頭癌15例,舌・口腔癌5例,咽頭癌4例)であった。喉頭症例の一次効果の内訳はCR12例,PR3例,舌・口腔症例ではCR3例,PR2例であった。咽頭症例では4例中3例がPRであった。PDTの効果持続期間をみるとPDT単独治療によるCR持続期間は最長89カ月であった。PDTの副作用として全例に光過敏症はみられたものの,この治療による問題となるような副作用はみられず,重篤な合併症のあるものや,高齢者などにも安全に塗療ができた。
  • 東野 哲也, 牧野 浩二, 森満 保
    1996 年6 巻2 号 p. 119-124
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     真珠腫性中耳炎に対する外耳道保存型鼓室形成術の手技上の難易度は,中頭蓋窩底の高さが大きく関与する。低位中頭蓋窩症例の多くは,骨部外耳道後上壁の外側部と骨削開の上限となる中頭蓋窩底の間が最狭小空間となるため,骨部外耳道後壁を全長に渡って保存することが解剖学的に不可能な例も存在する。このような例では骨部外耳道後上壁を外側から必要最小限の削除を行うことになるが,後壁内側部,即ち上鼓室側壁の骨が保存できない例は稀である。外耳道後壁外側の最狭小部位を超えるとその内側前方は再び中頭蓋窩底との間隔が広がるからである。低位中頭蓋窩症例に対する外耳道保存型手術の術前プラニングとしてのCTの活用法と手術の概略について論じた。
  • 高崎 かおり, 小田 明子, 吉原 俊雄, 夜久 有滋
    1996 年6 巻2 号 p. 125-132
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     先天性側頸瘻の発生は,胎生期の鰓性器官の遺残によるが,完全瘻は比較的稀である。今回我々は,耳介奇形を伴う完全側頸瘻を経験した。症例は4歳男児で,右鎖骨上部皮膚に瘻孔が存在し,粘調な分泌物の排出を認めた。また,右耳介に袋耳を合併していた。右側頸瘻を疑い,瘻孔造影を施行し,外瘻孔が右鎖骨上部皮膚,内瘻孔が右後口蓋弓上方に開口する第二鰓裂由来の完全瘻と診断された。瘻孔の損傷を避けるため色素およびナイロン糸を挿入し,瘻孔を完全摘出した。耳介は第一および第二鰓弓より形成されることより,鰓性器官の局所的奇形として合併したと考えられた。術後,現在まで再発を認めていない。
  • 湯浅 涼, 小岩 哲夫
    1996 年6 巻2 号 p. 133-138
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     近年,フィブリン糊の利用により鼓膜形成術が"日帰り"もしくは"短期入院"で可能となり,広く普及してきた。これを更に発展させ過去1年間(H6.10~H7.9)に数月間の短期入院による鼓室形成術を真珠腫性中耳炎を含めた280耳に施行した。その結果,めまいなどの合併症のない大多数の慢性中耳炎に対して短期入院での鼓室形成術が可能であることが判明した。そのためには,1)なるべく外耳道内での操作,2)鑿を用いての経外耳道的上鼓室開放,3)鼓室(上,中,下)内病巣の郭清,4)必要に応じての耳小骨連鎖形成,5)キチン膜による開放乳突腔の被覆,切開外耳道皮膚のフィブリン糊による接着など,術の工夫が必要であった。
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