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向川 卓志, 白馬 伸洋, 暁 清文
2011 年21 巻2 号 p.
131-134
発行日: 2011年
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
フリー
鼓室内に限局する側頭骨線維性骨異形成症のまれな1例を経験したので報告する。症例は13歳女児。小学校入学時より進行する左難聴にて近医受診し,CTで左先天性真珠腫が疑われため当科紹介された。CTで左中耳内に上鼓室から耳小骨に進展する陰影を認め,MRIではT1WI,T2WIともに低信号で造影効果が認められた。診断目的に8月13日左耳手術を施行した。顔面神経管上にキヌタ骨周囲に沿って膨隆する腫瘍を認め,組織診断にて線維性骨異形成症と診断された。術後,顔面神経麻痺は認められなかった。今後,難聴の進行や顔面神経障害に注意しながら外来にて経過観察を行う予定である。
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前田 明輝, 梅野 博仁, 千年 俊一, 三橋 拓之, 中島 格
2011 年21 巻2 号 p.
135-138
発行日: 2011年
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
フリー
1984年から2009年までに当科で治療を行った篩骨洞癌20例中,前頭蓋底手術を行った男性9例に対して検討した。検討項目は 1)予後,2)術後合併症,3)硬膜浸潤の有無とした。
転帰は生存5例,原病死3例,他因死1例であった。術後合併症は,9例中2例,22%に認め,局所創部感染と術後嚥下性肺炎を1例ずつに認めた。硬膜浸潤は9例中4例,44%に認めた。篩骨洞癌において,前頭蓋底手術により,予後は改善した。また,チーム医療により,前頭蓋底手術は安全に行われている。
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菊池 恒, 川田 和己, 今吉 正一郎, 石川 和宏, 西野 宏, 市村 恵一
2011 年21 巻2 号 p.
139-144
発行日: 2011年
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
フリー
今回われわれは2000年から10年間に当科で入院,手術を行った鼻副鼻腔乳頭腫62 例について検討を行った。年齢は平均56歳,男性47人,女性15人,主訴は一側性の鼻閉,発症部位は上顎洞内側壁,病理組織診断はinverted papillomaが最も多かった。Krouseの分類ではT1 4例,T2 27例,T3 28例,T4 3例であった。治療は全例手術(Denker 29例,ESS 34例(うちEMM 6例))を施行した。再発は11例にみられた。鼻副鼻腔乳頭腫は完全摘出が必要な腫瘍だが,その手術方法は,近年内視鏡手術を中心とした低侵襲な手術法が選択されるようになってきている。しかし再発する例もみられ,適切な手術法の選択と術後の厳重な経過観察が必要と考えられた。
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力丸 文秀, 松尾 美央子, 檜垣 雄一郎, 冨田 吉信
2011 年21 巻2 号 p.
145-149
発行日: 2011年
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
フリー
当科では上顎洞扁平上皮癌に上顎試験開洞減量術と浅側頭動脈経由の動注化学放射線治療および根治手術をあわせた集学的治療を施行している。今回この治療の有効性を検証するために1997年1月から2007年12月までの上顎洞扁平上皮癌37症例につき,死因特異的3年生存率,再発率を検討した。生存率はT3症例で89%,T4a症例で66%,T4b症例で29%であった。動注化学放射線治療を施行し一次根治を得られた28例の原発巣再発率はT3症例は0%で,T4a症例は44%,T4b症例は67%であった。原発巣再発後の制御率はT4a症例で43%,T4bは0%であり,T4症例における原発巣再発をさらに減じうる集学的治療の確立が重要であると考えた。
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平川 仁, 花井 信広, 小澤 泰次郎, 兵藤 伊久夫, 神山 圭史, 鈴木 淳志, 宮崎 拓也, 原田 生功磨, 水上 高秀, 岡本 啓希 ...
2011 年21 巻2 号 p.
151-155
発行日: 2011年
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
フリー
[目的]鼻副鼻腔悪性腫瘍の頭蓋底進展例に対する頭蓋底手術の成績および安全性,予後因子を検討する。[対象]当院にて2000年から2009年の間に頭蓋底手術を施行した鼻副鼻腔悪性腫瘍症例47例が対象である。[結果]原発部位は上顎洞35例,篩骨洞7例,鼻腔5例であった。5年全粗生存率は59.8%であり,扁平上皮癌症例では74.7%であった。多変量解析の結果,予後不良因子は切除断端陽性であった。術後合併症は35.4%に認められた。[結論]術後成績および合併症は諸家の報告と同様であった。切除断端陽性例は予後不良であり術前評価,手術計画における安全域確保の重要性が改めて示された。
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上條 朋之, 鬼塚 哲郎, 中村 哲, 浅野 理恵, 飯田 善幸
2011 年21 巻2 号 p.
157-162
発行日: 2011年
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
フリー
当科で手術加療を行った口腔底癌における予後因子の検討を行った。対象は2002年9月から2007年12月までに当科で手術加療した口腔底癌35例(男性30例,女性5例),平均年齢は61.8歳(38~78歳)であった。Stage分類ではStage 0:1例,Stage I:10例,Stage II:8例,Stage III:2例,Stage IVa:14例であった。腫瘍の切除には,1.口腔底浅層切除,2.深層切除,3.Pull-through切除を選択し,それぞれ6例,11例,18例であった。3年粗生存率は74.2%,疾患特異的3年生存率で82.6%であった。予後との相関において,下顎骨浸潤の有無や手術様式など局所に関する因子では有意に予後と相関する因子は認めず,下顎骨切除の是非はCT,MRなどの評価に応じて切除を考慮すればよいと考えられた。予後に相関した因子として病理学的リンパ節転移の個数が5個以上で有意に予後が悪くなる傾向があったが,N Stageには明らかな予後との相関は認めなかった。また,粘膜下深部浸潤が10mm以上の症例で有意にリンパ節転移をきたす傾向があり口腔底癌の手術治療時には深部浸潤の正確な評価および頸部郭清範囲の決定が大事であると考えられた。
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遠藤 一平, 吉田 真也, 吉崎 智一
2011 年21 巻2 号 p.
163-166
発行日: 2011年
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
フリー
頭頸部腫瘍手術の再建において遊離皮弁術はその有用性にすぐれ多くの施設で標準治療として汎用されている。一方で,有茎皮弁術も血行の安定性,挙上法の信頼性の点で利用価値が高い。Infrahyoid myocutaneous flap(IHMCF)は上甲状腺動静脈を血管茎とする前頸筋群を主体とした有茎の筋皮弁である。症例は81歳男性で左口腔底の腺様嚢胞癌(T3N1M1)である。肺転移を認めていたが,口内痛が強く経口摂取も困難であったため局所制御目的に口腔底癌手術を施行した。頸部から口腔底癌切除後にIHMCFにて欠損部に逢着した。術後,皮弁上皮の一部に壊死を認めたが局所処置にて改善した。皮弁のdonor部位も一期的に閉創した。術後,口内痛も消失し経口摂取も良好となった。
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大上 研二, 戎本 浩史, 酒井 昭博, 杉本 良介, 槙 大輔, 齋藤 弘亮, 金田 将治, 飯田 政弘, 西山 耕一郎
2011 年21 巻2 号 p.
167-173
発行日: 2011年
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
フリー
近年経口的にラリンゴマイクロ下の切除やビデオ喉頭鏡を使用した手術術式が開発され報告されている。当科では中下咽頭癌に対する経口的中下咽頭部分切除術を喉頭癌にも適応している。本術式を適応した声門上型喉頭癌は7例であった。1例は放射線治療後の再発で,残りは初回治療であった。2例が喉頭蓋原発,5例は披裂部原発であった。喉頭直達鏡下にラリンゴマイクロあるいは硬性鏡補助下に経口的腫瘍切除術を行った。切除に使用した機器はコロラドニードル型電気メス,ハーモニックなどで,Weerda型拡張式または喉頭蓋用直達鏡を用いた。術後出血,気道狭窄などは認めず,全例翌日ないし翌々日に経口摂取を開始した。現在まで局所再発,後発リンパ節転移は認めない。良好な視野と術野のためには,適切な喉頭鏡と手術支援器具を選択することが重要である。外科的手技による確実な切除,術後管理ができる耳鼻咽喉科・頭頸部外科医が,この領域の手術を主導するべきと考える。
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松尾 美央子, 力丸 文秀, 檜垣 雄一郎, 冨田 吉信
2011 年21 巻2 号 p.
175-180
発行日: 2011年
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
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化学放射線治療後に施行した計画的頸部郭清術症例58例について検討した。病理学的なリンパ節転移陽性率は36%で,原発部位別,Nステージ別で差はなかった。再発率は39%で多くはT再発であった。N再発出現率は全体の10%で,うちN単独再発は3%と頸部制御は良好であった。3年生存率は81%で,原発部位,Tステージ,Nステージ,pN別での差はなかった。以上の病理学的なリンパ節転移陽性率,高い頸部制御率と生存率から,計画的頸部郭清術は妥当と思われた。ただし今後の課題として,化学放射線治療のみで腫瘍を制御できる症例群を選別し,不必要なPNDを減じることは必要と思われた。
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細川 誠二, 杉山 健一, 岡村 純, 瀧澤 義徳, 高橋 吾郎, 三澤 清, 大和谷 崇, 峯田 周幸
2011 年21 巻2 号 p.
181-184
発行日: 2011年
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
フリー
1995年1月から2009年12月までの15年間に,浜松医科大学耳鼻咽喉科で治療した甲状腺未分化癌7症例について検討した。全例女性であり,年齢は60歳から81歳(平均70.0歳)であり,臨床症状,術前診断,治療方法,在宅期間,生存期間,転帰などについて検討した。治療方法は,4例に根治手術療法を行った。退院後在宅生活が可能であった3例は,手術施行例であった。放射線療法は5例に行ったが,化学療法を施行した例はなかった。生存期間は3日~1年6か月(平均8.2か月)で,全例が原病死であった。その内訳は原発巣死2例,転移巣死4例,およびその両者による死亡が1例であった。甲状腺未分化癌でも,手術可能な症例もあり,在宅生活の可能性が示唆された。
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鈴木 健介, 篠崎 剛, 林 隆一, 海老原 充, 宮崎 眞和, 大幸 宏幸, 斎川 雅久, 藤井 誠志
2011 年21 巻2 号 p.
185-190
発行日: 2011年
公開日: 2011/11/25
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副耳下腺は主耳下腺より独立して耳下腺前部および咬筋上部に位置する異所性の唾液腺である。副耳下腺の出現する割合は成人の約20~70%と報告されているが,そこから発生する腫瘍は比較的まれである。症例は66歳男性。5年前から左頬部腫瘤を自覚していたが,徐々に増大傾向にあるため近医を受診した。同院で切開生検が施行され,粘表皮癌の診断にて当科を紹介されて受診した。左頬部皮下に34×23mmの腫瘤を認め,画像所見などから副耳下腺由来の悪性腫瘍を疑い,手術を施行した。副耳下腺腫瘍における悪性腫瘍の割合は主耳下腺のそれより高く,頬部皮下に発生する腫瘍は,副耳下腺腫瘍の可能性を考慮する必要がある。
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前田 明輝, 梅野 博仁, 千年 俊一, 三橋 拓之, 中島 格
2011 年21 巻2 号 p.
191-194
発行日: 2011年
公開日: 2011/11/25
ジャーナル
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頭頸部扁平上皮癌N3症例における頸部郭清術の有用性を検討した。
対象は1999年~2010年に根治治療を行った頭頸部扁平上皮癌N3症例30例。検討項目は原発巣,T分類,治療方法,治療成績,転帰とした。
原発巣は下咽頭14例,中咽頭5例,舌5例,声門上3例,口腔底3例であった。治療の内訳は,21例に手術と術後照射が行われていた。残りの9例には,化学放射線治療が行われていた。転帰は生存が12例,原病死14例,他因死4例で,死因特異的5年生存率は,全体で43%,手術例56%,化学放射線治療例22%であった。頭頸部扁平上皮癌N3症例に対して,頸部郭清術は有用と考えられた。
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鈴木 崇祥, 加納 里志, 折舘 伸彦, 本間 明宏, 鈴木 清護, 畠山 博充, 水町 貴諭, 古沢 純, 坂下 智博, 福田 諭
2011 年21 巻2 号 p.
195-201
発行日: 2011年
公開日: 2011/11/25
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唾液導管癌は乳癌に類似する予後不良な悪性腫瘍である。近年乳癌と同様に唾液導管癌においてもHER2の発現が報告されているため,今回われわれは手術標本を用いて免疫染色を行いHER2の発現を解析し臨床背景と検討した。その結果,唾液導管癌5例中HER2陽性例は3例であった。病理組織別のHER2陽性率は唾液導管癌で60%,腺様嚢胞癌で0%,粘表皮癌で17%,腺癌で38%であった。また病理学的悪性度による比較ではHER2陽性例は全て高悪性度群に,HER2陰性例は全て低悪性度群に属しHER2の過剰発現と病理学的悪性度との関連が示唆された。HER2陽性唾液導管癌に対する抗HER2抗体を用いた治療法の開発が強く望まれる。
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