頭頸部外科
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12 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 武田 憲昭
    2002 年12 巻2 号 p. 53-56
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     医療事故を予防するリスクマネージメントは科学であり,道徳では成し遂げられない。リスクマネージメントは単にミスへの対策ではなく,医療の質の向上が目的である。まず,医療事故の背景には広くコミュニケーションの問題がある。インフォームドコンセントは形式的な情報開示や同意書だけではなく,患者とのコミュニケー・ションの一部として行う必要がある。外科手術のリスクマネージメントには知識や技術の向上が必要であることは当然であるが,特に困難な状況を解決する能力の向上が求められる。正確な診療記録の作成はリスクマネージメントに不可欠である。手術は全てビデオに記録したうえで,手術記録は手術後できるだけ早く記載する必要がある。医療事故の時に最も頼りになるのは,正確で詳しい手術記録である。本稿では,めまい手術のリスクマネージメントについて考察した。
  • 三輪 高喜
    2002 年12 巻2 号 p. 57-63
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     鼻内視鏡手術において医療事故回避のポイントを概説した。起こる可能性の高いミスは出血,頭蓋底損傷,視器損傷であるが,中でも視器損傷は後遺障害となる可能性が高く医事紛争は避けられない。術前に注意すべき点は,画像所見,特にCTスキャンにより鼻腔内の構造を把握することと,患者に対して十分な説明と同意を求めることである。術中は常に危険部位を意識して,盲目的な手術操作は避けなければならない。マイクロデブリッダー,ナビゲーションシステムなど手術支援機器も事故回避には有用である。また日頃から学会,実技講習会などに参加し,解剖学的知識と手術手技の向上に努めることが最も大切である。
  • 八木 美歌, 川名 正博, 佐藤 克郎, 高橋 姿
    2002 年12 巻2 号 p. 65-69
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     過去19年間に当科で加療した顎下腺腫瘍27例(新鮮例24例,再発例3例)につき検討した。良性腫瘍は20例で,すべて多形腺腫であった。悪性腫瘍は7例で,組織型別では腺様嚢胞癌,腺癌,多形腺腫由来の癌が各2例,粘表皮癌(高悪性)が1例であった。画像検査は,超音波エコー, CT, MRI,唾液腺造影を組み合わせて行ったが,MRIが最も有用と考えられた。20例に穿刺吸引細胞診(FNA)を行い,正診率は89.5%であった。術中迅速病理診断は23例に行い,良性腫瘍は18例中17例,悪性腫瘍は5例中1例永久病理と一致した。 治療は,良性腫瘍はすべて腫瘍を含めた顎下腺全摘出術を行い,悪性腫瘍には腫瘍を含めた顎下腺全摘出術,腺癌の2症例には根治的頸部郭清術変法と術後照射を追加した。高悪性粘表皮癌の1例は術後照射を追加した。良性腫瘍症例の再発はなく,悪性腫瘍症例の5年生存率は71%であった。
  • 川島 慶之, 小林 麻里, 飯田 秀夫, 大野 喜久郎, 石川 紀彦, 岸本 誠司
    2002 年12 巻2 号 p. 71-75
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     前頭蓋底,眼窩へ進展した小児の篩骨洞原発Cemento-Ossifying fibromaの一例を経験した。9歳男児で右眼球突出,複視にて発症した。CTにて鼻根部に卵殻状の明瞭な境界をもち,周囲の骨破壊を伴う膨張性の腫瘍像を認めた。眉毛下切開生検にてCemento-ossifying fibromaの診断を得た後,anterior craniofacial approachにて腫瘍摘出術を施行し,良好な経過を得ている。
  • 中井 茂, 上田 大, 大西 弘剛, 中野 宏, 丁 剛, 島田 剛敏, 四ノ宮 隆, 久 育男
    2002 年12 巻2 号 p. 77-83
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     早期舌癌の後発頸部リンパ節転移(後発転移)の危険性を癌の臨床病理学的特徴,特に浸潤の深さから予測できないかと考え検討を行った。舌部分切除術を行ったpTINO症例29例を対象とし,病理診断用のHE標本で癌の最大径・深達度・筋層内深達度・深部マージンを計測し,転移群,非転移群で比較した。10例(34.5%)に転移が生じ,転移群は深達度と筋層内深達度が有意に深かった。筋層内浸潤が1mm以上の症例は後発転移が19例中9例(47.4%)と有意に高くなることから(p=0.020),癌の単なる深達度よりも筋層内での浸潤の深さ,つまり筋層内浸潤の有無が後発転移の予測に関して重要な因子であると考えられた。
  • 大月 直樹, 雲井 一夫
    2002 年12 巻2 号 p. 85-88
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     甲状舌管嚢胞は日常診療においてしばしば経験する疾患であるが,甲状舌管遺残組織から発生する癌は稀な疾患である。今回我々は前頸部腫脹を主訴に来院した26歳の女性に甲状舌管嚢胞の診断により摘出術を行ったところ,術後の病理組織学的検査で甲状舌管遺残組織から発生した乳頭癌と診断された症例を経験した。同疾患についての本邦報告例56例に自験例を含め臨床的特徴,術前診断,手術法につき文献的考察を加え報告する。
  • 中山 明仁, 岡本 牧人
    2002 年12 巻2 号 p. 89-93
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     喉頭亜全摘Cricohyoidoepiglottopexy(CHEP)は甲状軟骨およびその内容組織(片側披裂部は切除可)を切除したのちに,舌骨と輪状軟骨を接合・固定して再建する機能温存手術である。T2と厳選されたT3,T4の喉頭癌に適応がある。患者は術後,自然気道での生活と社会復帰可能な音声,嚥下機能を獲得できる。欧米を中心に盛んに行われ,近年重要な喉頭機能温存術の一つとなっている。 CHEPを実際に施行する際の詳細な手順とコツを中心に喉頭の局所解剖と照らし合せて解説した。甲状軟骨下角の処理,披裂部周囲の切除限界の取り方,十分なPEXY再建の処理が本手術の成否を左右する3つの重要なポイントである。CHEPを施行する際には喉頭の局所解剖を十分に把握し,PiquetとLaccourreyeの手術の原法と本稿を熟読されたい。
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