頭頸部外科
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33 巻, 1 号
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原著
  • —特に気道確保を要した症例について
    森 将史, 谷田 将志, 名古 周平, 伊藤 理恵, 山本 佳史, 藤見 聡, 石原 修, 宇野 敦彦
    2023 年 33 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル フリー
    当院での深頸部膿瘍256例について,45%を耳鼻咽喉科頭頸部外科が,36%を歯科口腔外科が診療を担当した。気道確保を要した36例(14%)は,救急診療科と耳鼻咽喉科頭頸部外科が担当した。気道確保群は年齢層が高く,複数の頸部筋膜間隙に及ぶ例が多く,Streptococcus anginosus類の検出が多かった。気道確保には気管挿管(23例)と気管切開(13例)があったが,両者の抜管までの日数に有意差はなかった。気道確保群での排膿法は経皮的ドレーン留置と切開排膿があったが,入院日数に有意差はなかった。気道確保と排膿の方法は,いずれの方法にも利点があり,時期を逸することなく行うことが重要である。
  • 小野 剛治, 千年 俊一, 末吉 慎太郎, 栗田 卓, 深堀 光緒子, 佐藤 文彦, 佐藤 公宣, 梅野 博仁
    2023 年 33 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル フリー
    (化学)放射線治療後に局所再発をきたし,救済手術を行った下咽頭扁平上皮癌の検討を行った。下咽頭扁平上皮癌222例に根治的(化学)放射線治療を行い,局所再発を49例に認め,18例に救済手術を行った。初回治療後,49例の再発発見時期の中央値は6.3か月であり78%が1年内に発見された。救済手術症例の5年局所制御率,粗生存率,および無再発生存率はそれぞれ59.6%,44.4%,38.9%であった。領域再発,断端近接を含む切除断端陽性,およびpathological T4aは予後不良因子であった。T stageの低い段階で再発を発見し,救済手術で断端陰性を達成することが重要な課題であると考えられた。
  • —術後顔面神経麻痺を中心に—
    出井 克昌, 御子柴 卓弥, 関水 真理子, 中村 伸太郎, 永井 遼斗, 小澤 宏之
    2023 年 33 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル フリー
    耳下腺手術の合併症には,顔面神経麻痺・Frey症候群・唾液瘻等があり,特に顔面神経麻痺はQOLに直結する注意すべき合併症である。当科で2012年4月から2020年6月に手術を施行した耳下腺腫瘍350例のうち,良性腫瘍の新鮮例273例を対象として術後合併症につき検討した。術後合併症は顔面神経麻痺が18例,唾液瘻が13例,Frey症候群が3例であった。前期群と後期群に分けて比較したところ,後期群で合併症の頻度が低かった。顔面神経麻痺を認めた症例の腫瘍の局在は,浅葉が8例,下極が4例・深葉が6例であった。単変量解析では,深葉の場合に麻痺が有意に多い結果であった(p=0.009)。深葉の症例の手術の際は特に顔面神経麻痺に注意する必要がある。
  • 山田 誠二郎, 北野 睦三, 吉田 憲司, 牧 亮平, 赤澤 和之, 梶川 泰
    2023 年 33 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル フリー
    口蓋扁桃摘出術は耳鼻咽喉科で頻度の高い手術であり,最も注意が必要な合併症は術後出血である。今回,同一術者によって施行した口蓋扁桃摘出術246例の術後出血について検討を行った。術後出血は17.8%に認め,術後出血群は年齢が高く,また適応疾患は慢性扁桃炎に多かった。時期は退院後が多く,術後8日目が最多であった。さらに専攻医よりも専門医で出血が多かった。退院後の出血,特に退院後3日目が多いため,患者への食事や生活指導を十分行うことが大切と考えた。また出血が専門医で多い原因として,単独で手術するようになり丁寧な手技や止血確認ができていなかった可能性があり,手術時のセルフチェックの必要性を考えた。
  • 石永 一, 小林 正佳, 坂井田 寛, 北野 雅子, 竹内 万彦
    2023 年 33 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル フリー
    下咽頭梨状陥凹ろうは化膿性甲状腺炎を引き起こす希少な先天性奇形である。甲状腺組織とともに瘻管の完全摘出する方法がこれまでに用いられてきた。近年,内視鏡下電気焼灼術が下咽頭梨状陥凹ろうに対する低侵襲の治療として報告されている。本報告は,当科で治療した下咽頭梨状陥凹ろうの14症例を後方視野的に検討したものである。術後経過は全例で反回神経麻痺などなく良好であった。初回治療での成功率は14例中13例・93%であった。内視鏡下電気焼灼術は下咽頭梨状陥凹ろうに対する低侵襲で,安全で効果的な治療法と思われた。
  • 岡野 渉, 松浦 一登, 林 隆一, 若林 将史, 西谷 友樹雄, 富岡 利文, 篠﨑 剛
    2023 年 33 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル フリー
    高齢者では手術後に様々な原因で合併症や非自宅退院を経験する。その患者像を高齢者機能評価(GA)で評価し必要な支援は何か検討した。2019年8月から2022年2月までGAを行った高齢頭頸部癌再建手術予定の117例を対象とし後ろ向きに検討した。GAと合併症の関連はなかったが,非自宅退院は,IADLとMOSが関連(p=0.04/0.03)し,すべて非独居で発生していた。非自宅退院となる患者像として主体性の低下,意思決定能力の低下が示唆され,限られた能力で可能な限り自身で意思決定をするための支援が必要と考えられた。
症例
  • 篠村 夏織, 森山 宗仁, 藤田 佳吾, 平野 隆, 鈴木 正志
    2023 年 33 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル フリー
    今回われわれは鼻副鼻腔に発生したYolk sac tumor(YST)の1症例を経験した。症例は82歳男性,左鼻閉・鼻出血を主訴に近医を受診し,当科紹介となった。左鼻腔から篩骨洞を占拠する腫瘍性病変を認め,外来生検を2回施行するも確定診断に至らず,全身麻酔下に生検を行いYSTの診断となった。治療として定位放射線40Gy/8Frを照射し,腫瘍の著明な縮小を認めたが,治療後数か月で再増大を認め,16か月後に原病死となった。諸家の報告では鼻副鼻腔原発YSTに対し,手術と化学療法を併用した症例に無病生存例が多く,放射線治療単独よりも集学的治療の方が良好な転帰につながる可能性があると考えられた。
  • 辻村 隆司, 三浦 誠, 西村 一成, 森田 勲, 石田 宏規
    2023 年 33 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル フリー
    上縦隔から鎖骨下へ進展する頭頸部腫瘍の場合,術野確保のために鎖骨や胸骨の切除を要することがあるが,この操作により術後の肩関節運動障害が生じることとなる。この点を解決する方法として胸骨・鎖骨を温存するTransmanubrial osteomuscular sparing approach(TMOSA)がある。症例は甲状腺乳頭癌であり,左上縦隔から鎖骨下方向へ進展するリンパ節転移を認めたため,TMOSAを用いる方針とした。胸骨を第1肋間でL字切開し,第1肋骨を胸骨付着部で切断した。鎖骨を外側に翻転することで良好な視野を確保した。術後機能障害はなかった。TMOSAは安全性が高く,機能温存も良好なアプローチ方法である。
  • 山内 麻由, 櫛橋 幸民, 羽生 健治, 伏見 千宙, 増淵 達夫, 多田 雄一郎, 三浦 弘規
    2023 年 33 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル フリー
    57歳男性,上顎洞癌cT4aN0M0の患者に対し,導入化学療法としてドセタキセル60mg/m2,シスプラチン60mg/m2,TS-1 20mg/bodyを投与した。第7病日に発熱性好中球減少症となり抗菌薬加療を開始した。第25病日に下血を認め,大腸内視鏡検査にて大腸に多発する潰瘍性病変を認めた。同部位の生検からアメーバ性大腸炎の診断となった。さらにアメーバ性肝膿瘍も併発したため,メトロニダゾールの投与や肝膿瘍穿刺ドレナージ術などの集学的治療を行ったが敗血症性ショックおよび下血による出血性ショックにより死亡した。アメーバ赤痢は,致死的な劇症型に移行した例も散見される。化学療法中に下血を伴う腹部症状を認めた際には,アメーバ赤痢を鑑別のひとつにおく必要がある。
  • 次郎丸 梨那, 松尾 美央子, 山元 英崇, 久我 亮介, 本郷 貴大, 真子 知美, 橋本 和樹, 若崎 高裕, 安松 隆治, 中川 尚志
    2023 年 33 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル フリー
    炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(Inflammatory myofibroblastic tumor:IMT)は,炎症細胞浸潤と紡錘形細胞の増生を特徴とする稀な中間悪性腫瘍である。3例の喉頭IMTを報告する。1例目は60歳男性で,声帯腫瘍に対し直達喉頭鏡下腫瘍摘出術を施行。2例目は53歳男性で,同様に摘出術を施行した。3例目は40歳男性で,声門下腫瘤の生検のみ施行した。全例FISH法にてALK融合遺伝子を確認しIMTと診断した。治療は外科的切除が第一選択だが,緩徐な増大であることが多く,経過観察に留めることもある。しかし喉頭IMTは,急速増大し窒息に至ることもあり,適切な治療時期の選択が重要である。
  • 豊田 拓司, 森岡 繁文, 水田 康博, 大西 俊範, 豊田 健一郎
    2023 年 33 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル フリー
    結節性筋膜炎は,皮下組織や深在性筋膜に生じる良性結節であるが,短期間で増大し周囲組織に浸潤することから悪性腫瘍との鑑別が問題となる。病態は線維芽細胞の増殖であるが,発症要因は解明されておらず,反応性増殖性疾患と腫瘍性疾患の双方の側面をもつ。多くは特発性であるが,術後に発生する報告が散見される。今回,耳下腺腫瘍術後に生じた結節性筋膜炎の1例を経験した。症例は21歳,女性。耳前部に生じた耳下腺多形腺腫を摘出した7か月後に創部近傍の耳後部に腫瘤が生じた。術前診断は困難であったが,増大傾向であったため摘出術を施行した。病理組織検査で結節性筋膜炎と診断し,術後およそ1年半,再発なく経過している。
  • 春日井 滋, 深澤 雅彦, 神川 文彰, 久保 祐介, 藤井 正文, 赤羽 邦彬, 岩武 桜子, 小森 学
    2023 年 33 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル フリー
    永久気管孔に近接した咽頭皮膚瘻に対してボイスプロステーシス(プロヴォックス:PV)を留置することで経口摂取が可能となった症例を経験したので報告する。
    症例は73歳男性。喉頭声門癌T2N0M0に対して放射線単独治療67.5Gyを施行した。再発のため単純喉頭全摘術を施行したが気管孔近傍に瘻孔を認めた。初回手術から85日目に大胸筋皮弁で瘻孔の閉鎖を施行したが,気管孔側より再度瘻孔を認めた。その後は瘻孔にTチューブやレティナカニューレを用いながら,最後はPVを留置することで気管孔の妨げにならず十分な経口摂取が可能になった。
    気管孔に近接する咽頭皮膚瘻に対してPVは選択肢のひとつになりうると考える。
  • —細胞検体を用いた確定診断への展望
    金本 開, 川崎 朋範, 加藤 光彦, 井上 準, 松村 聡子, 菅澤 正, 中平 光彦, 蝦原 康宏
    2023 年 33 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル フリー
    【はじめに】結節性筋膜炎は悪性腫瘍との鑑別を要する良性腫瘍性病変である。組織検体でUSP6遺伝子再構成がみられることが報告されているが,今回細胞診検体においてUSP6遺伝子再構成をはじめて検出し得た,頰部結節性筋膜炎を報告する。
    【症例】37歳女性。頰部腫瘤の精査目的に受診した。悪性腫瘍の可能性も考慮され,確定診断かつ治療目的に手術を行った。病理学的には,紡錘形細胞が束状に増殖し,リンパ球浸潤が随伴していた。FISHでは切除組織に加え細胞診検体でもUSP6遺伝子の再構成が検証され,結節性筋膜炎の診断となった。
    【結語】結節性筋膜炎を考慮する症例では術前細胞診検体でのUSP6遺伝子再構成の検索も検討される。
  • 丸山 祐樹, 江川 峻哉, 北嶋 達也, 櫛橋 幸民, 溝上 雄大, 嶋根 俊和
    2023 年 33 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル フリー
    頸部に発生する交感神経神経鞘腫はホルネル症候群を認めた場合,手術を施行しても症状が改善しないことが多いと報告されている。今回われわれは頸部交感神経鞘腫に対し,ホルネル症候群発症後早期に被膜間摘出術を行ったところ術後2か月で改善した症例を経験したので報告する。症例は46歳男性。左頸部腫瘤を主訴に来院した。初診時神経脱落症状は見られず,MRI検査で交感神経由来の神経鞘腫が疑われた。手術約3週間前から左眼瞼下垂や縮瞳などホルネル症候群が出現し,その後被膜間摘出術で腫瘍を摘出した。術後2か月経過した時点で神経脱落症状は改善した。神経症状発症から早期であれば手術により症状が改善する可能性が示唆された。
  • 古梅 純規, 鈴木 健介, 八木 正夫, 藤澤 琢郎, 阪上 智史, 清水 皆貴, 野田 百合, 岩井 大
    2023 年 33 巻 1 号 p. 91-96
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル フリー
    脂肪肉腫は軟部組織に発生する悪性腫瘍の11.5%を占め,最も頻度の高いもののひとつであるが,頭頸部領域における発生は稀である。脱分化型脂肪肉腫は脂肪肉腫の組織亜型のひとつであり,脂肪細胞に富む高分化領域と紡錘形細胞に富む脱分化領域とが混在した腫瘍である。今回,頸部に発生した稀な脱分化型脂肪肉腫を経験したので報告する。症例は79歳男性。右頸部腫瘤を主訴に前医を受診し,生検で紡錘形細胞腫瘍が疑われたため当科へ紹介された。右頸部悪性腫瘍として切除術を施行し,脱分化型脂肪肉腫と診断された。術後放射線治療70Gy施行し,再発なく経過している。軟部腫瘍が疑われた場合は本疾患を鑑別に入れる必要があると考える。
  • 續木 彩加, 三谷 壮平, 村田 秀樹, 入舩 悠樹, 岡田 晋一, 後藤 聖也, 羽藤 直人, 向川 卓志
    2023 年 33 巻 1 号 p. 97-103
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル フリー
    硬化型横紋筋肉腫は横紋筋肉腫全体の1割程度と稀であり,頭頸部に好発する。今回,鼻翼に発生した硬化型横紋筋肉腫に対し,化学療法が奏効した症例を報告する。症例は26歳男性。左鼻翼の硬化型横紋筋肉腫に対し術前化学療法を3コース施行し,著明な縮小を認めた。その後,腫瘍切除術,遊離前腕皮弁による再建術を施行し,術後化学療法を4コース施行した。治療後13か月の時点で再発転移を認めていない。頭頸部原発の硬化型横紋筋肉腫は一般に予後不良とされているが,治療戦略を立てるうえで化学療法が有効な選択肢となる可能性がある。
  • 大西 俊範, 水田 康博, 池田 葵, 為野 仁輔, 豊田 健一郎
    2023 年 33 巻 1 号 p. 105-109
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル フリー
    鼻副鼻腔癌のなかでも,腺癌は少なく稀である。今回われわれは鼻腔非腸管型腺癌(non-intenstinal-type adenocarcinoma:non-ITAC)例を経験した。症例は62歳女性。左鼻閉を主訴に他院を受診し,鼻腔腺癌を疑われ精査加療目的に当科受診となった。左下鼻道から総鼻道にかけて腫瘍を認め,造影CT/MRIでは鼻腔内に限局した軽度の造影効果を伴う腫瘍性病変を認めたことから,左鼻腔腺癌cT1N0M0と診断した。内視鏡下に腫瘍摘出が可能であり,低異型度型のnon-ITACの診断であった。断端陰性であり,追加治療は行わなかった。術後12か月時点で,再発転移は認めていない。
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