頭頸部外科
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32 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
シンポジウム1
鼻科手術の最適化〜適応とアプローチ~
  • 前田 陽平
    2023 年 32 巻 3 号 p. 203-206
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
    好酸球性副鼻腔炎の診断はJESREC Studyによってかなり確立したが,治療については未だ確立されたとはいえない。手術は好酸球性副鼻腔炎の治療の中でも最も重要な部分のひとつであると考えている。理由のひとつとして好酸球性副鼻腔炎はその病態もヘテロでばらつきのあるものだが,手術は病態によらず効果が期待できるからである。保存加療抵抗性であれば,隔壁を徹底的に切除する手術の施行後,内服ステロイドの長期投与は行わず,再発時も短期投与のみでコントロールする。短期投与が繰り返し必要,あるいは継続投与が必要となる場合にはDupilumab投与を考慮している。
シンポジウム2
音声・嚥下・気道手術の最適化~客観的指標に基づいて~
  • 細川 清人, 北山 一樹, 猪原 秀典
    2023 年 32 巻 3 号 p. 207-216
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
    片側声帯麻痺を呈する症例では,嗄声による会話・歌唱の困難により生活の質が低下する。声帯麻痺は,発症後半年を経過しても回復が得られない場合は治癒する可能性は低く,何らかの手術治療が必要となることがある。現在の医療では声帯可動性を回復させる治療は未だ実用化されていないため,嗄声の改善を目指すのであれば発声時の声帯位置を正中方向へ移動させる手術を行うことにより音声改善を目指すこととなる。片側声帯麻痺に対する手術治療は大きく分けて,披裂軟骨内転術あるいは声帯内方移動術があげられるが,本稿では治療の最適化に関連して,術後成績の評価方法,手術方法の選択基準,各手術方法の具体的な方法について説明する。
教育パネルディスカッション
耳鼻咽喉科頭頸部外科の手術手技の伝承~師匠の目線,弟子の目線~
教育セミナー2
  • 黒瀬 誠, 垣内 晃人, 大國 毅, 小幡 和史, 山本 圭佑, 村山 公介, 高野 賢一
    2023 年 32 巻 3 号 p. 221-226
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
    本邦における甲状腺癌の罹患率は上昇傾向にある。甲状腺手術は頭頸部外科入門手術として選択されることも多い。ただ,反回神経麻痺や副甲状腺機能低下など合併症が生じると患者QOLの低下は著しい。
    反回神経に関しては,形態を温存するだけでは不十分であり,機能の温存が求められる。術中神経モニタリングの信頼性はガイドラインの確立などにより大幅に向上した。特に迷走神経刺激による術中持続神経モニタリングにより,反回神経麻痺の発生低下が期待される。
    副甲状腺の温存も重要である。近年,副甲状腺の自家蛍光特性を利用した赤外線観察カメラシステムによる副甲状腺検出法の有用性が報告されている。
教育セミナー9
  • 森 照茂
    2023 年 32 巻 3 号 p. 227-231
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
    頭頸部領域における低侵襲手術は,1990年頃に開発された顕微鏡下レーザー手術があり,その欠点を克服するため2006年に経口的ロボット支援手術TORSが開発された。海外ではTORSが急速に普及したが,本邦では独自の経口的手術TOSが開発され,2010年以降普及していった。胸腹部内視鏡外科手術は1980年代以降からの膨大な症例があるが,TOSは2010年頃からの浅い歴史しかなく,その知見には大きな隔たりがある。これから低侵襲手術時代に求められている内視鏡外科手術を実践していくには,耳鼻咽喉科頭頸部外科といった狭い括りではなく,内視鏡外科手術に関する研究・教育および普及・発展に努めることが肝要である。
ランチョンセミナー1
原著
  • 大西 俊範, 豊田 拓司, 木村 有佐, 吉村 佳奈子, 水田 康博, 森岡 繁文, 豊田 健一郎
    2023 年 32 巻 3 号 p. 239-243
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
    2012年7月から2021年9月に当科で甲状腺病変に手術を施行した365例,440側を検討した。良性疾患112例,悪性腫瘍253例であった。穿刺吸引細胞診の正診率は91.7%であった。穿刺吸引細胞診でClassⅢ症例のうち76.4%が悪性腫瘍であった。術後反回神経麻痺を認めたのは20側であり,一過性が16側,永続性が4側であった。術後反回神経麻痺の有無を年齢,性別,手術側,病理組織診断,頸部リンパ節郭清の有無,腫瘍径の各因子について検討した。55歳以上,両側,悪性腫瘍や頸部リンパ節郭清を要する症例で術後反回神経麻痺が多い傾向にあった。
  • 栗山 将一, 齊藤 祐毅, 坂井 利彦, 小村 豪, 福岡 修, 明石 健, 吉田 昌史, 安藤 瑞生, 朝蔭 孝宏, 山岨 達也
    2023 年 32 巻 3 号 p. 245-250
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
    p16陽性中咽頭癌は治療に奏効することが多く,予後良好な疾患として知られている。今回われわれは,当科におけるp16陽性中咽頭癌Stage Ⅲ症例の初回治療の選定について検討した。
    初回治療は化学放射線療法(Chemoradiotherapy=CRT)13例,導入化学療法(Induction chemotherapy=ICT)3例,手術2例,その他5例であった。全体の5年粗生存率(OS)は78%,5年無再発生存率(RFS)は69%で,初回治療別(CRT/ICT/手術/その他)5年OS:77%/67%/50%/100%,5年RFS:69%/67%/0%/100%であった。
    本検討症例のp16陽性中咽頭癌Stage Ⅲに対するCRTおよびICTでの治療成績はともに70%程度と比較的良好であった。検討の結果,20 pack-years以上の喫煙と60歳以上の症例は予後不良であることが伺えた。
  • 石田 航太郎, 向川 卓志, 岡田 晋一, 入舩 悠樹, 後藤 聖也, 松井 秀仁, 續木 彩加
    2023 年 32 巻 3 号 p. 251-255
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
    今回われわれは2002年9月から2021年9月に当院で術前臨床的に甲状腺未分化癌と診断し,術後病理組織学的検査で確定診断が得られた14症例について臨床的検討を行った。cStage ⅣAはなく,ⅣBが10例,ⅣCが4例あった。病変の範囲に応じて治療を行い,下咽頭喉頭全摘が2例,甲状腺全摘が8例,葉峡切除が4例で施行されていた。転帰は無病生存が3例,担癌生存が1例,原病死が10例で,原病死のうち局所制御が得られたものが3例あった。1年全生存率は57.1%,局所制御率は57.1%であった。未分化癌においても手術加療により局所制御が得られ,生命予後に寄与する可能性があると考えた。
  • ―若手医師と熟達医との違い―
    三谷 壮平, 西尾 直樹, 松木 崇, 木谷 卓史, 佐藤 恵里子, 坂本 佳代, 細川 裕貴, 鵜久森 徹, 脇坂 浩之, 羽藤 直人
    2023 年 32 巻 3 号 p. 257-263
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
    頭頸部外科手術の基盤となる技術スキルに対する認識について多施設アンケート調査を行った。先行研究の7つのカテゴリーに分類されている60個の技術スキルを用いて,若手医師69名と熟達医15名の回答を比較した。若手医師は,熟達医よりも技術スキル全体を重要と評価しており(P=0.027),熟達医が重要視しているスキルだけでなく,全ての技術スキルに対して気を配っていることが示唆された。熟達医は,「カウンタートラクション」が全カテゴリー中最も難易度が高いと評価していたが,若手医師は自身のスキルに7カテゴリー中3番目に高い自信を持っていた。このような認識の乖離が,技術伝承のひとつの障壁になっている可能性がある。
症例
  • 小池 毬子, 木田 渉, 野内 舞, 伊東 明子, 稲吉 康比呂, 岩村 均, 中屋 宗雄
    2023 年 32 巻 3 号 p. 265-270
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
    後天性血友病Aとは,血液凝固第Ⅷ因子に対する自己抗体が様々な要因により出現し,出血症状を呈する自己免疫性疾患である。われわれは甲状腺腫瘍手術を契機に判明した後天性血友病Aの1例を経験した。症例は65歳,女性。甲状腺腫瘍手術後に腹直筋内血腫を認め,精査の結果,後天性血友病Aと診断された。本疾患は,出血により致命的な経過をたどる可能性もあり,早期診断・早期治療介入が望ましい。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医にとってはまだ馴染みが薄い疾患であるが,出血性素因のない患者で,血小板数およびPTが正常で,APTTのみが延長している場合には,本疾患を疑うことが重要である。
  • 加藤 光彦, 井上 準, 川崎 朋範, 松村 聡子, 久場 潔実, 蝦原 康宏, 中平 光彦, 菅澤 正
    2023 年 32 巻 3 号 p. 271-275
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
    中咽頭は小唾液腺癌の発生部位のひとつであるが,その診断には難渋することがある。Polymorphous adenocarcinoma(以下,PAC)は小唾液腺に好発する唾液腺癌である。今回,口蓋扁桃腫瘍を呈したPACを経験した。症例は57歳女性。咽頭違和感を主訴に近医を受診した際に左口蓋扁桃腫瘍を指摘され,当科を紹介受診した。CTで左口蓋扁桃に潰瘍を伴う腫瘍を認めた。全身麻酔下の生検でPACと診断され,再建手術が施行された。術後病理で正常な口蓋扁桃組織は残存しており,扁桃窩の小唾液腺由来の腫瘍が口蓋扁桃腫瘍を呈したと考えられた。口蓋扁桃腫瘍の鑑別として唾液腺癌も考慮する必要がある。
  • 伊藤 瑞貴, 中尾 一成, 藤山 和士, 森 安仁, 久田 真弓, 岸下 定弘
    2023 年 32 巻 3 号 p. 277-281
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
    今回われわれは甲状腺・顎下腺同時転移を認めた腎細胞癌の症例を経験したので報告する。症例は69歳男性,右顎下部腫脹を主訴に当院受診。超音波検査で右顎下腺腫大および甲状腺腫瘤を認め,甲状腺腫瘤細胞診では既往の腎細胞癌の転移と診断されたが顎下腺腫大は診断に至らなかった。他に転移巣認めず甲状腺全摘・右顎下部郭清術を施行。術後病理検査では顎下腺静脈内に腫瘍栓を認め,甲状腺腫瘤と同様腎細胞癌の転移と診断となった。追加治療は施行せず術後1年2か月現在無再発で経過している。腎細胞癌は血管内浸潤をきたしやすいが,本症例のように頭頸部領域同時遠隔転移を認めた症例や,血管内でのみ発育した転移性腫瘍の症例は極めて稀である。
  • 久保田 叡, 仲江川 雄太, 川瀬 友貴, 池田 雅一, 鈴木 政博, 室野 重之
    2023 年 32 巻 3 号 p. 283-288
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
    気管内腔の約90%を占める気管腺様囊胞癌の症例を経験した。緊急での気道確保は施行せず,生検で腺様囊胞癌と確定後に気管環状切除・一期的端々吻合術を行った。喉頭機能は温存され,術後2年再発なく経過している。腫瘍が局在しており,サイズから切除に必要な気管輪の数が少なく十分に一期的な吻合が行えることを条件に気管環状切除・一期的端々吻合術は,機能温存と根治の両立を期待できる術式で有用であると思われる。
  • 横田 知衣子, 山本 祐輝, 寺西 裕一, 大石 賢弥, 角南 貴司子
    2023 年 32 巻 3 号 p. 289-292
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
    日本は結核の中蔓延国であり,肺結核既往のある頭頸部癌患者も多い。今回,喉頭癌に対する化学療法中に肺結核再燃が疑われた症例を経験したので報告する。
    症例は61歳,男性。当科初診9か月前に肺結核治療歴があった。喉頭癌の診断にて導入化学療法施行を施行したが,化学放射線療法開始前の喀痰抗酸菌検査にて検鏡陽性となった。結核の活動性の判定は困難であったが,排菌があるため隔離での結核治療を先行した。その後の培養検査で活動性はないと考えられ,結核治療を終了した。喉頭癌治療については,喉頭全摘出術の方針に変更した。
    肺結核は稀な疾患ではなく,化学療法時には再燃リスクについても十分な検討が必要である。
  • 木下 一太, 乾 崇樹, 栗栖 義賢, 尾﨑 昭子, 寺田 哲也, 河田 了
    2023 年 32 巻 3 号 p. 293-298
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
    骨化性線維粘液腫瘍(OFMT)は鼻・副鼻腔領域においては稀な疾患である。今回われわれは鼻翼に生じたOFMTの症例を経験した。54歳男性が右鼻内の腫瘤を主訴に受診,外鼻孔から鼻腔内に腫瘤を認めた。身体所見・経過・画像所見などから上皮系皮下腫瘍を考え,治療および診断確定目的に手術を行った。鼻内皮膚粘膜移行部からの切開にて内視鏡を用いて腫瘍を摘出した。骨化を含む病理組織像と免疫染色からOFMTと診断した。OFMTは基本的には経過良好であるが,悪性例では再発や転移を生じる場合がある。稀少疾患であるが,実臨床で遭遇しうる疾患であり,術前画像検査で石灰化部分の混在が示唆される腫瘤を認めた際には鑑別を要する。
  • 武田 英明, 鈴木 正宣, 中丸 裕爾, 木村 将吾, 中薗 彬, 本間 あや, 本間 明宏
    2023 年 32 巻 3 号 p. 299-303
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
    遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)患者において,鼻出血はQOLに重大な影響を及ぼす症状である。中等症以上の鼻出血に対しては鼻粘膜皮膚置換術が適応されるが,術後鼻腔内に多量の痂皮が付着し鼻閉を生じることがある。今回,われわれは鼻洗浄によって鼻粘膜皮膚置換術後の痂皮が改善した2症例を経験した。鼻出血の程度,鼻閉感,鼻症状の総合満足度の3項目をVASスケールで評価した。術後,鼻出血は制御されたが鼻閉感は増悪し,治療満足度は十分に改善しなかった。鼻洗浄を開始すると鼻内痂皮が減り,鼻閉感,治療満足度ともに改善した。鼻洗浄は鼻粘膜皮膚置換術後の痂皮に有効と考えられた。
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