頭頸部外科
Online ISSN : 1884-474X
Print ISSN : 1349-581X
ISSN-L : 1349-581X
14 巻, 3 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
  • 小見山 彩子, 木田 亮紀, 遠藤 壮平
    2004 年14 巻3 号 p. 203-208
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     副咽頭間隙腫瘍の摘出後の合併症として最近ではfirst bite syndrome (FBS)が生じるとの報告がある。FBSは文献によると,上頸部交感神経節や外頸動脈交感神経叢周囲が手術操作により切断されると耳下腺内の副交感神経の過敏性が増し,耳下腺内の筋上皮細胞が過収縮して鋭い痛みとなるために発生すると推測されている。この論文では副咽頭間隙に生じた交感神経鞘腫にしぼって自験例を報告し,FBSの発症要因,その背景についての考察を行う。
  • 力丸 文秀, 藤 賢史, 檜垣 雄一郎, 冨田 吉信
    2004 年14 巻3 号 p. 209-213
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     当科で一次治療を行った舌扁平上皮癌NOMO症例中一次根治しえた145例の頸部の治療方針について検討した。一次治療は原発巣(舌)に対し手術,組織内照射,浅側頭動脈経由の動注化学療法併用外照射後に組織内照射または手術を行なった。頸部郭清術は再建手術を行なった症例以外は行なっていない。N再発症例は37例で35例に頸部郭清術を行い,31例は制御可能,4例が制御不能で頸部郭清術による頸部制御率は89%であった。制御不能4例はすべてrN2b以上であり早期にN再発を発見することがN再発の制御に重要であると考えられた。
  • 舘田 勝, 吉田 文明, 西條 茂, 志賀 清人, 松浦 一登, 西川 仁, 浅田 行紀
    2004 年14 巻3 号 p. 215-220
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     口腔・中咽頭癌でpull-through法やcommando手術にて切除した症例に対し,遊離組織移植が困難な場合も少なくない。その様な症例に対し,我々は挙上した皮弁の広頸筋と顎二腹筋との縫合による口腔底再建を行なったので報告する。対象は2001年8月から2003年9月までに本方法を用いて手術を行なった口腔・中咽頭癌15例である。内訳は舌癌8例,下歯肉癌4例,口腔底癌2例,中咽頭癌側壁型1例で,平均年齢は63歳(28-81歳)であった。下顎の辺縁切除を1例に,区域切除を4例に行い,気管切開は6例に行なった。手術時間は平均290分,出血量平均227ml,経口開始までの期間は平均15日であった。術後合併症は6例に認めた。術後の広瀬の言語機能評価ではExcellent 14例, moderate 1例であった。本方法は時に合併症も認められるが,術後の機能も概ね良好であり,遊離組織移植が行われる症例の一部にも適応となると思われる。
  • 春田 厚, 須田 佳人, 中島 崇博, 外山 勝浩
    2004 年14 巻3 号 p. 221-225
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     一側根治的頸部郭清術後に対側頸部リンパ節に転移再発した2症例で,内頸静脈切除後に外頸静脈を利用して血行再建を行った。1例は内頸静脈切除後上方を外頸静脈に端側吻合した。もう1例は内頸静脈側壁を切除後,外頸静脈に側々吻合を行った。いずれも術後顔面浮腫や頭蓋内圧亢進症状などの合併症なく良好に経過した。術後合併症の予防には,できる限り内頸静脈を温存することが望ましいが,両側内頸静脈を結紮切除する場合に,これまでいくつかの内頸静脈を用いて再建する方法が報告されているが,外頸静脈内頸静脈吻合術は簡便かつ有効な手段と考える。
  • 古川 まどか, 久保田 彰, 小松 正規, 古川 政樹
    2004 年14 巻3 号 p. 227-233
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     【目的】下咽頭癌放射線治療後の救済手術例について検討した。【対象】1986年4月から2002年12月までに放射線根治照射を施行した下咽頭癌症例85例中,救済手術として喉頭下咽頭摘出術を施行した8例(Stage I:3, II:1, IV:4)を対象とした。【結果】救済手術で制御可能であったのは4例(Stage I:2, II:1, IV:1)であった。制御不能の4例中2例はT1であったが,2例とも摘出標本では断端に腫瘍浸潤が認められた。再建材料は,有茎皮弁または筋皮弁が6例,遊離空腸が2例であった。遊離空腸の1例を除く7例で術後に瘻孔が認められた。【結論】下咽頭癌では,救済手術による癌の制御や術後の創治癒が困難な症例が多かった。
  • 花澤 豊行, 牛来 茂樹, 大川 徹, 岡本 美孝, 峯 清一郎, 沼田 勉, 今野 昭義
    2004 年14 巻3 号 p. 235-240
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     1992年より2003年までの11年間に当科において頭蓋底手術を施行した27症例の治療成績について検討した。進展形式から分類すると,前頭蓋底進展例22例,中頭蓋底進展例が5例であり,そのうち硬膜非浸潤例は19例,硬膜浸潤例が8例であった。5年を経過した18症例の累積5年生存率は67%であり,硬膜非浸潤例11症例では91%,浸潤例7例では43%であった。また,上皮性悪性腫瘍9例および非上皮性悪性腫瘍9例では累積5年生存率はいずれも67%であった。術式で比較すると前頭蓋底切除例14例で79%の良好な累積5年生存率が得られたのに対し,中頭蓋底および前中頭蓋底切除例4例では25%と予後不良であることを確認した。
  • 中谷 宏章, 池永 弘之, 福島 慶, 山河 和博, 澤田 正一, 中平 光彦, 楯 敬蔵, 竹田 泰三
    2004 年14 巻3 号 p. 241-246
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     5例の上顎癌例に皮下埋め込み式リザーバーを用いた超選択的動注治療を施行した。カテーテルの挿入には顔面動脈あるいは浅側頭動脈を用いた。抗癌剤にはCDDPを用い,1回量100mg/m2を50Gyの外照射と平行して,1~2週に1回の間隔で投与した。CDDPの副作用軽減のために用いたSTSもIVHリザーバーから投与した。原発部位の治療効果はCR2例,PR2例,NC1例であった。中頭蓋窩内進展をみたNC1例を除き,上顎部分切除術を行ったが,手術例に再発は認めていない。二経路からの皮下埋め込み式リザーバー動注治療は脳梗塞の危険性がなく,簡便かつ根治性の高い治療法である。リンパ節転移や遠隔転移の少ない上顎癌に対しては非常に有用な治療法であると考える。
  • 藤原 圭志, 古田 康, 中丸 裕爾, 相澤 寛志, 澤村 豊, 福田 諭
    2004 年14 巻3 号 p. 247-251
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     今回我々は鼻内法による前頭洞嚢胞開放術後,急性前頭洞炎及び鼻性頭蓋内合併症として硬膜炎を来たした症例に対し,頭蓋底再建手術を行って治癒させることができたので報告する。症例は63歳男性。左内眼角部の腫脹を自覚し,前頭洞嚢胞の診断にて内視鏡下鼻内前頭洞開放術を施行した。退院後頭痛・膿性鼻漏が出現し,鼻漏よりMRSAが検出された。保存的治療にて改善がみられず,前頭開頭による前頭洞内肉芽除去および頭蓋底再建手術を施行した。開頭により良好な視野にて感染巣を郭清し, gaeo-perlcranla flapにより鼻腔と頭蓋内を遮断することによって感染を制御した。
  • 相原 隆一
    2004 年14 巻3 号 p. 253-260
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     眼窩吹き抜け骨折で稀に緊急手術を要する病態がある。若年者で眼窩周辺の外観と画像所見に重症感がなく,眼球運動障害が高度である特徴を持つものがその代表であり,最近ではwhite-eyed blowout fractureと呼ばれている。 今回,受傷当日に受診,14日目に経上顎洞法で手術を行ったが,術中所見から緊急手術の適応があったと考えられた16歳の眼窩下壁吹き抜け骨折症例を経験した。予後不良が懸念されたが術後5ヶ月でほぼ治癒した。本報告例のような外眼筋の嵌頓絞扼所見は,一度経験するだけで緊急手術の必要性を痛感するものであり,経験のない臨床医も見逃さないよう十分な注意が必要であることを啓蒙すべきである。
  • 本田 耕平, 三原 国昭, 花田 巨志, 齊藤 隆志, 福井 奈緒子, 石川 和夫
    2004 年14 巻3 号 p. 261-265
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は,45歳女性で主訴は鼻閉。右鼻腔に充満する弾性軟,易出血性,暗赤色の鼻茸様の腫瘍を認めた。術前,血管造影検査で蝶口蓋動脈からの腫瘍への栄養血管を確認し,蝶口蓋動脈を選択的に塞栓した。腫瘍は,鼻腔から節骨洞天蓋まで広く進展しており,外側鼻切開術により腫瘍を一塊に切除した。節骨洞粘膜より発生した2.5×3.5cmの充実性腫瘍で病理学的にグロームス腫瘍と診断された。出血量は307mlと比較的少量であり塞栓術は有効と考えられた。術後12ケ月再発なく経過観察中である。
  • 島野 卓史, 岩井 大, 南野 雅之, 湯川 尚哉, 宮本 真, 馬場 奨, 和歌 信彦, 辻 裕之, 山下 敏夫
    2004 年14 巻3 号 p. 267-272
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     甲状腺扁平上皮癌はまれな疾患であり,その発生率は甲状腺悪性腫瘍の1%以下とされている。我々は平成6年から平成15年までの10年間に4例の甲状腺扁平上皮癌を経験した。4症例とも初診時にはすでに周囲組織への浸潤が見られ,全例に拡大根治手術が施行された。病理組織所見では1例が全て扁平上皮癌,2例が乳頭癌との混在,もう1例が主に未分化癌の中に扁平上皮癌を認める結果であった。術後4例中3例が早期に遠隔転移や局所への再発を認め死に至り,甲状腺扁平上皮癌の存在は予後を悪化させる因子と考えられた。こうした点で扁平上皮癌を示す甲状腺癌症例では早期診断と拡大手術を中心とした早期治療が重要と考えられた。
  • 横山 純吉
    2004 年14 巻3 号 p. 273-278
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     2003年5月より7月までにパスに従い手術した甲状腺癌17例とパス以前に手術した甲状腺癌26例について,在院日数(術前日数,術後日数,全体の在院日数)と問題点を比較検討した。有意差検定にはt検定を使用した。パス施行17例の平均年齢は58歳,病期はII期2例,3期15例,一方パス以前26例は平均年齢53歳,病期はI期2例,II期7例,3期17例病期に両群間に有意差はなかった。 結果:術前在院日数はパス以前が3.29日,パス後1.81日であり,有意に短縮した。全在院日数は14.0日,10.6日で有意差があった。バリアンスは2例あり,反回神経麻痺1例と社会的入院の1例であった。再入院例はなかった。結論:甲状腺癌のパスは在院日数の短縮化と安全性に関して有用と考えられた。
  • 石光 亮太郎, 村田 明道, 森倉 一朗, 太神 尚志, 高村 薫, 片岡 真吾, 川内 秀之
    2004 年14 巻3 号 p. 279-285
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
     縦隔内上皮小体腺腫症例を経験したので報告した。本症例は膵炎を反復し,血清Ca値およびintact-PTHが高値のため,原発性上皮小体機能亢進症と診断され,99mTc-99m methoxyibutylisonutrile scintigraphy(99mTc-99mMIBI scintigraphy)およびTl, scintigraphyにて上縦隔の異所1生上皮小体腫瘍が疑われたため,外科的切除を施行した。腫瘍は甲状腺左葉下端より30ミリ下方に存在し,胸腺内に埋没していた。摘出後,速やかに血清Ca値およびintact-PTHは正常化した。異所性上皮小体腺腫の術前における部位診断において99mTC-MIBI scintigraphyが有用であると考えられた。
  • 長谷川 恭子, 横島 一彦, 中溝 宗永, 島田 健一, 相田 瑞恵, 八木 聰明
    2004 年14 巻3 号 p. 287-291
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     両側咽頭後リンパ節転移を伴った甲状腺乳頭癌の1例の治療経過を報告した。症例は66歳,男性。左頸部腫脹を主訴に来院した。初診時,左頸部に広範に多発性リンパ節腫脹と両側咽頭後リンパ節腫脹を認め,頸部リンパ節からの穿刺吸引細胞診で甲状腺乳頭癌と診断した。手術は甲状腺左葉峡部切除,左頸部郭清,両側気管傍郭清,両側咽頭後リンパ節郭清を行った。咽頭後郭清は甲状腺癌の予後と下顎スウィング法の術後合併症を考え,頸部からのアプローチのみで行うことが最良と考え手術に望んだ。両側ともに咽頭後郭清を行う視野が得られ,下顎スウィング法を行わずに郭清することが可能であった。
  • 加藤 久幸, 櫻井 一生, 岡田 達佳, 小串 善生, 鈴木 洋平, 内藤 健晴
    2004 年14 巻3 号 p. 293-297
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     2000年から2002年までの3年間で下咽頭癌T1,2症例のうち喉頭を温存した下咽頭部分切除術を行った5症例について検討した。原発部位はすべて梨状陥凹で,T1:3例,T2:2例,NO:3例,N1:1例,N2b:1例であった。手術法は患側の側頸部郭清術後,舌骨,甲状軟骨の患側4分の1を切除し,舌骨レベルで咽頭腔へ入り,腫瘍を明視下におきながら約2cmの安全域をつけて下咽頭側壁を切除した。また,披裂軟骨は癌の浸潤がなければ温存し,欠損部は全例前腕皮弁にて再建した。結果として術後15ケ月~37ケ月経過したが全例局所制御は良好で常食摂取可能である。
  • 西窪 加緒里, 兵頭 正光
    2004 年14 巻3 号 p. 299-302
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     気管内挿管による声帯後部癒着症例を経験した。症例は80歳男性。虚血性心疾患に伴う心不全に対し,頻回の気管内挿管を受けた。その後,吸気性呼吸困難を生じたため,当科受診し,内視鏡検査により声帯突起部の癒着による声門開大障害と診断した。治療は,喉頭直達鏡下に癒着部を切離し,再癒着防止のためEjnell法による左声帯外側固定術を行った。3ケ月後に牽引糸を切断することで声帯運動は良好となった。現在術後10ケ月を経過しているが,再癒着は認めていない。
  • 崎浜 教之, 田中 藤信, 加瀬 敬一, 風間 恭輔, 高橋 晴雄
    2004 年14 巻3 号 p. 303-308
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     陳旧性喉頭外傷の治療は従来,喉頭裁開術による瘢痕組織の除去,粘膜移植,T-チューブ留置,軟骨移植などが行われてきたが手術手技が複雑であり頻回の手術を要するなどの欠点を有している。今回,成人の陳旧性喉頭外傷例に対し,前頸部S字切開による喉頭垂直部分切除を応用して2期的手術にすることにより音声機能の維持と気管孔の閉鎖が可能であった。この術式は非常に簡便で確実な粘膜被覆が可能であり,成人の陳旧性喉頭外傷例には有用な術式であると思われる。
  • 藤田 信哉, 村井 孝行, 細井 裕司
    2004 年14 巻3 号 p. 309-313
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     先天性耳小骨奇形は,学校検診の普及や本疾患に対する認識の変化,手術成績の向上により身近な疾患として扱われるようになってきた。今回耳小骨奇形について,臨床経過,治療成績を検討した。2001年から2003年の3年間に,奈良医大ならびに関連病院耳鼻咽喉科において手術治療を行った先天性耳小骨奇形4例を対象とした。手術所見では,3例は船坂らの分類のIIの奇形で1例はIII群の奇形であった。症例1と2は,IV-i型の鼓室形成術を施行し,症例3と4は,III-i型の鼓室形成術を施行した。術後の聴力改善成績は,耳科学会の判定基準で4例中3例が成功症例であった。耳小骨奇形の確定診断には,鼓室内病変や耳小骨の状態が決め手となる。
  • 三代 康雄, 北原 糺, 山本 佳史, 久保 武
    2004 年14 巻3 号 p. 315-318
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     慢性穿孔性中耳炎を伴う内頸動脈鼓室内露出症例について報告する。症例は58歳女性で,右難聴と耳鳴を主訴に当科を紹介受診した。右鼓膜は大穿孔を認め,,鼓室前方に拍動する腫瘤を認めた。内頸動脈鼓室内露出が疑われ,平成13年3月局所麻酔下に耳後部切開の鼓室形成術1型を行った。術前に内頸動脈の露出が確認されていたため,この部位は軟骨板で被覆するのみとし,殆ど出血無く手術を終了した。内頸動脈鼓室内露出はきわめて珍しいが,手術操作などによる大出血で気付いたという症例が大半であり,鼓室内に拍動1生腫瘤を認めた場合は内頸動脈の露出も鑑別に入れるべきである。
  • 神崎 晶, 國弘 幸伸, 小川 郁
    2004 年14 巻3 号 p. 319-325
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     周術期深部静脈血栓症・肺塞栓症(DVT・PE)は比較的まれであるが,一度発症すると致死的合併症になる可能性の高い重要な疾患である。近年,日本国内でも増加傾向にある。最近我々も鼻科手術後並びに頭頸部外科術後に生じた肺塞栓症2例を経験した。そのうち,鼻科手術後に生じた肺塞栓症の1例に関する発症から診断・治療に至るまでの経過と,臨床上のポイントを述べる。さらに,国内外における耳鼻咽喉科・頭頸部外科術後肺塞栓症例を総括した上で,本邦で2004年初頭に作成された一般外科手術術後DVT予防ガイドラインをもとに耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域における周術期(特に術後)肺塞栓症の予防策について検討した。
  • ―内視鏡の使用で顔面の皮膚切開を行わなかった2例―
    亀井 壯太郎, 渡邉 暢浩, 鈴木 元彦, 小山 新一郎, 村上 信五
    2004 年14 巻3 号 p. 327-331
    発行日: 2005/02/05
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     前頭蓋底手術を行う鼻副鼻腔悪性腫瘍の治療では,開頭し顕微鏡下に頭蓋底の操作を行うほか,外鼻近傍を切開し,鼻副鼻腔の操作を行う。この際には整容面を考慮する方法はあるものの,いずれも瘢痕が残るうえに骨切りによっては顔面に変形や醜形をきたす。鼻副鼻腔の炎症性疾患などで汎用されている内視鏡による手術が,このような頭蓋底手術の際にも顔面皮膚切開を回避でき整容面に貢献可能かどうかを検討した。2症例の前頭蓋底手術を予定した鼻副鼻腔悪性腫瘍に内視鏡の支援で顔面の皮膚切開や鼻骨の骨切りが回避できた。鼻副鼻腔悪性腫瘍の前頭蓋底手術に内視鏡を使用する場合には適応が限定されるが従来の方法に比べて整容面で優れていた。
feedback
Top