頭頸部外科
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15 巻, 1 号
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  • 將積 日出夫
    2005 年 15 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     中耳加圧療法は,保存的治療に抵抗する難治性メニエール病(メ病)に対する新しい治療法である。携帯型中耳加圧治療装置であるMeniett®による治療は,鼓室換気チューブ術を施行後にもめまい改善のない症例に対して開始される。換気チューブを介してパルス状の陽性波が内耳に作用する。難治性メ病6例に対して治療を行った結果,めまい有効率は83%であった。聴力改善例はみられなかった。Meniett®による中耳加圧療法は,高齢者,両側化例,全身麻酔に対する合併症を持つ難治性メ病に良い滴応がある。
  • 関 聡, 山本 裕, 高橋 姿
    2005 年 15 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     内リンパ嚢開放術では乳突洞削開術などのsham operationでも効果が同等である,また効果が永続的でなく,肉芽や瘢痕による再狭窄・閉鎖のため再発が高率で起こる,など内リンパ嚢開放術を疑問視する声も存在する。これらの問題点を改善し,信頼性を高めることが,より多くのメニエール病患者の手術的治療法として内リンパ嚢開放術が支持されることに繋がると考えられる。内リンパ嚢開放術では乳突洞を大きく削開し,解剖学的指標として外側ならびに後半規管隆起を同定した後,S状静脈洞,後頭蓋窩硬膜を露出し,後半規管内側から扇状に拡がり後頭蓋窩硬膜上に存在する内リンパ嚢を確認する。乳突洞後下方を充分に削開すると同定が容易なため皮膚切開を従来の乳突洞削開術より1cm後方においている。内リンパ嚢の再狭窄・再閉鎖を防ぐには大きく開放し,確実に固定することが重要と考えられ,内リンパ嚢外壁はL字に大きく切開する。翻転した内リンパ嚢外壁を固定するのに,従来は骨壁にフィブリン糊で固定していたが,最近では側頭筋膜を用いて内リンパ嚢外壁を吊り上げるように縫合固定する方法を試みている。
  • ―内リンパ嚢高濃度ステロイド挿入術を中心に―
    北原 糺, 三代 康雄, 久保 武
    2005 年 15 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     メニエール病患者の最終的な苦痛が難聴・耳鳴の増悪であることは以前より指摘されているが,この点に留意して当施設では内リンパ嚢開放と同時に嚢内に高濃度ステロイドを留置する術式を考案した(内リンパ嚢高濃度ステロイド挿入術)。2年以上経過を観察できた50例についての検討では,めまい発作完全抑制率は80%と,従来の内リンパ嚢手術と比較してほぼ同等であった。一方で注目すべきは本手術の聴力成績であるが,術後10dB以上の聴力改善率は50%であり,過去の報告に比較して極めて良好であった。この良好な聴力改善成績が本術式の嚢内ステロイド挿入操作に関連するものか否かは議論があるが,実際に本術式の良い対照である内リンパ嚢拡大術と比較してみても有意傾向が認められた。この点に関しては,さらに症例数を集めて長期に検討していく必要がある。
  • 加藤 孝邦, 波多 野篤, 斉藤 孝夫, 清野 洋一
    2005 年 15 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     上顎全摘術は上顎悪性腫瘍の基本術式である。扁平上皮癌に対しては多くの場合集学的治療が行われているが,扁平上皮癌以外の悪性腫瘍では上顎全摘術が行われる。上顎全摘術では内視鏡を用いることにより視野を確保して明視下に手術操作を行うことができる。殊に眼窩骨膜の剥離や鼻腔底粘膜の切断,上咽頭の切断などに有用である。出血を最小限にするには下顎骨筋突起を切断して顎動脈を結紮してから手術を進めるのがコツである。術後形態を維持するには門歯2本を残すことと頬骨隆起を作成し,眼球の下垂を防御することが大切である。眼窩底に頭蓋骨外板を用いて眼位と頬部の膨らみを確保して腹直筋皮弁で覆い再建するのが優れている。
  • 西野 宏
    2005 年 15 巻 1 号 p. 23-25
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     上顎洞癌に対する集学治療の主たる治療は切除手術と考える。当科で施行されている分割切除による腫瘍全摘出術を呈示する。手術は顔面皮膚切開をおかずに上顎歯肉部を切開しおこなう。腫瘍組織を覆う被膜様線維組織を確認し,剥離操作を行うことが手術操作のポイントである。可能なかぎり腫瘍組織に切り込まずに腫瘍組織を周囲より剥離摘出する。広範囲に眼窩底骨や骨膜が切除された場合には残存骨膜を絹糸でできるだけよせ,眼球の下方への偏位を少なくする。頭蓋底の骨欠損を認め硬膜に腫瘍組織が接する場合には,手術用顕微鏡下に硬膜と腫瘍組織を剥離する。
  • 暁 清文
    2005 年 15 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     耳小骨形成の成否は中耳病変の程度や耳小骨の可動性,耳管機能の良否など様々な因子の影響を受ける。一般にキヌタ骨に欠損があり,アブミ骨の状態が良好な場合はIII型の適応となる。この際のコルメラ材料には可能な限り残存耳小骨や皮質骨,軟骨などの自家材料を用いる。術式はIII-i型が望ましいが,形成が難しい場合はIII-c型とする。IV型の適応は,1)アブミ骨の上部構造が消失している場合,2)上部構造が菲薄化し壊死傾向にある場合,3)アブミ骨脚が傾斜し骨頭にコルメラが乗せられない場合,などである。IV型には専らアパセラム耳小骨を使用している。これは形成が難しいコルメラ作成の手間がかからない,適度な硬度があり伝音特性が優れている,顔面神経稜や外耳道後壁との骨性癒着がおこらない,などの理由による。アパセラム耳小骨の排出は鼓膜との間に薄切した軟骨を挿入することで回避できる。
  • 須納 瀬弘
    2005 年 15 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     真珠腫性中耳炎ではしばしば病変そのもの,あるいは母膜の摘出手技において耳小骨連鎖が障害され,聴力が低下する。術後聴力はQOLに影響する大きな因子であり,術者は機能している耳小骨連鎖は可及的に保存し,障害された連鎖は修復して聴力低下を最小限にとどめる手技をマスターする必要がある。 著者は真珠腫に対する基本術式として,広い術野が得られるとともに,陥凹するスペースが減じて再発が起こり難いcanal wall down法を採用している。本法で問題とされる乳突腔障害は,十分な骨削除と適切な部分充填により避けることができる。術野が広がることで連鎖保存のチャンスが増し,再建距離が短縮されるため耳小骨形成手技が行いやすいというメリットがある。
  • ―とくに内視鏡的アプローチについて―
    鴻 信義
    2005 年 15 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     眼窩壁骨折に対する内視鏡下鼻内的あるいは経上顎洞的整復術について,特に鼻内法を中心に報告する。内側壁骨折に対しては鼻内法を,また下壁骨折に対しては病態に応じて鼻内法あるいは経上顎洞法を選択する。いずれも手術の要点は,1)骨折片と眼窩内組織との絞扼・癒着部を完全に解離させ,円滑な眼球運動を再獲得させることと,2)副鼻腔に逸脱した眼窩組織を眼窩内へと押し戻し適切に固定することである。硬性内視鏡を使用することで,術野が様々な方向から拡大明視下に観察され,また術野も広いという利点がある。一方,経眼窩的手術と比較して下壁骨の再建が難しく,将来的に眼球陥凹が生じないよう手術時には十分な注意が必要である。
  • 中溝 宗永
    2005 年 15 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     頸部腫瘤の基本手術である頸部郭清術の手術術式について述べた。内頸静脈を保存する郭清術について概説し,より保存的な郭清を行う際の手技について詳述した。メスや剪刀で鋭的に剥離・切開する操作のコツを示し,郭清の限界設定の仕方,内・外頸静脈や浅頸動脈の保存,副神経の追跡あるいは頸動脈鞘の扱い,さらに胸鎖乳突筋を保存した郭清術におけるポイントを解説した。手術の基本手技習得に当たって注意すべき点を述べた。
  • ―甲状腺全摘,中心領域郭清を中心に―
    杉谷 巌
    2005 年 15 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     甲状腺乳頭癌の予後は一般に良好であり,その手術治療においては確実な癌病巣の切除とともに,できるだけ低侵襲の手技が求められる。とくに甲状腺全摘術の場合には,反回神経や上喉頭神経外枝の損傷に注意するばかりでなく,副甲状腺(上皮小体)機能を確実に温存するテクニックが重要となる。また,頸部の手術では整容的配慮も重要である。本項では,甲状腺切除術における反回神経の解剖と温存のためのコツ,副甲状腺の温存法(Capsular dissection,準全摘,自家移植の各術式)について述べるほか,上喉頭神経外枝や非反回下喉頭神経に関する注意などを解説する。
  • 横島 一彦, 中溝 宗永, 島田 健一, 小津 千佳, 相田 瑞恵, 稲井 俊太, 酒主 敦子, 粉川 隆行, 八木 聰明
    2005 年 15 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     術後の局所合併症や再発,重複癌に対する頭頸部二次手術において,遊離組織移植は良好な創傷治癒が期待できるものの,先行手術による術野の悪条件のために,困難な要因が多い。そこで,自験例16例を解析し,その有用性,注意点と解決法を検討した。 遊離組織移植を行なった症例の局所創傷治癒は良好であり,有茎皮弁より有用であると思われた。移植床血管として,頸横動脈と内頸静脈を多く使用した。これらは,先行手術の郭清野内でも,比較的容易に使用可能であった。また,術野の炎症も遊離組織移植の妨げになり,消炎が重要であることが空腸壊死例の経験から示唆された。炎症のある術野での再建には有茎皮弁が有利であると思われた。
  • 渡辺 直人, 吉川 琢磨, 桂 義久
    2005 年 15 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     乳頭状嚢腺癌(Papillary cystadenocarcinoma)は唾液腺腫瘍のうち発生頻度は低く,小唾液腺由来のものはさらに稀である。今回,我々は小唾液腺由来の頬粘膜乳頭状嚢腺癌の1例を経験したので報告する。症例は60歳男性,主訴は頬粘膜腫脹であった。頬粘膜直下の小腫瘤に対して周囲への浸潤を認めないため摘出術のみ施行した。術後約1年の現在,再発,転移を認めない。治療法,予後について文献的考察を加え報告した。
  • 平井 良治, 飯島 正道, 生井 明浩, 大塚 健司, 木田 亮紀
    2005 年 15 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     軟骨様汗管腫(いわゆる皮膚混合腫瘍)は,比較的稀な腫瘍とされている。今回,我々が経験した2例(頬部の1例,外耳道の1例)の軟骨様汗管腫(いわゆる皮膚混合腫瘍)の症例報告とともに,若干の文献考察を加え報告する。
  • 及川 慶子, 中森 暁子, 飛田 忠道, 田渕 経司, 大久保 英樹, 高橋 和彦, 和田 哲郎, 原 晃, 森下 由紀雄
    2005 年 15 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     筑波大学附属病院耳鼻咽喉科で1991年4月から2004年4月までの13年間に経験した嗅神経芽細胞腫4例につき報告した。診断には免疫組織学的検査が,進展範囲把握にはMRIが有用であった。全例に術前照射と前頭蓋底手術を施行した。本腫瘍は局所再発率が高いことで知られ,自験例でも2例に局所再発を認め,より長期的な経過観察が重要であると考えられた。本腫瘍には放射線照射,前頭蓋底手術をはじめとする集学的治療が行われるが,近年化学療法が有効であった報告例もあり,今後検討を要する課題と考えられた。
  • 戎本 浩史, 原 浩貴, 村上 直子, 下郡 博明, 今手 祐二, 山下 裕司
    2005 年 15 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     シクロスポリンは臓器移植時の拒絶反応の抑制やネフローゼ症候群をはじめ,種々の難治性炎症性疾患に適応のある免疫抑制剤である。近年その適応が拡大しつつあるが,副作用としての易感染性には注意が必要である。今回我々は,痒疹に対するシクロスポリン内服中に急性喉頭蓋炎を発症し,保存的加療にも関わらず喉頭蓋膿瘍をきたした症例を経験したので,若干の文献的考察をふまえその概要を報告する。
  • 那須 隆, 小池 修治, 甲州 秀浩, 伊藤 吏, 阿部 靖弘, 青柳 優
    2005 年 15 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     耳下腺手術後にfirst bite syndromeを生じた3例を経験した。症状出現までの期間は一定していなかったが3例とも現在まで症状は消失せず疼痛の程度もほとんど変化していない。3例はいずれも耳下腺下極の深葉内もしくはその近傍に腫瘍が存在し手術時に副咽頭腔の処理を行っていなかった。腫瘍摘出の途中で外頸動脈,浅側頭動脈や下顎後静脈が露出されていたが,1例を除いてはそれら脈管は結紮されていなかった。このことから外頸動脈,浅側頭動脈や下顎後静脈の露出が予測される耳下腺深葉腫瘍手術においても術前の患者説明の項目にfirst bite syndromeを含める必要があると考えられた。
  • 岸本 曜, 庄司 和彦, 池上 聰, 鈴木 慎二, 高橋 淳人, 児嶋 剛
    2005 年 15 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     最近われわれは良性甲状腺結節に対し,侵襲を最小限に抑え,かつ,目立たない手術瘢痕とするため核出術を積極的に行っている。核出術は局所麻酔下に可能であり,前頸筋の切断,絹糸による結紮止血やドレーン留置を要さず,甲状腺半切に比べて明らかに侵襲が少ないだけでなく反回神経麻痺などの術後合併症のリスクも全くない。更に切開の長さを結節の長径程度に短くすることと下極の結節に対しては外側に皮切を置き,上極の結節には高位正中よりの皮切とすることで手術瘢痕は全くめだたなくなる。2002年12月から2003年11月の12ヶ月間に20例に核出術を行ったが,手術時間,術中出血量,皮切長の平均はそれぞれ30.6分,5.7g,35.4mmと満足のいく結果であった。今後術式を更に洗練することにより,より低侵襲に行うことが可能であり良性甲状腺結節の手術には核出術が第一選択となると考えられる。
  • 三輪 高喜, 室野 重之, 塚谷 才明, 吉崎 智一, 西村 俊郎, 古川 仭
    2005 年 15 巻 1 号 p. 93-101
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     CTスキャンにより嚢胞状すなわち内部が低濃度に描出される頸部病変の鑑別法について報告した。CTスキャンでは,嚢胞液,出血,壊死などの病変が嚢胞状に描出され,疾患としては,実際の嚢胞性疾患から腫瘍,転移性あるいは炎症性リンパ節までさまざまである。これらの鑑別の第一段階は,内部が低濃度に描出される疾患をすべて念頭に置くことである。次に疾患特異所見を見つけ出し,該当しない疾患を消去する作業を行う。これらの作業である程度の鑑別は可能であるが,疾患特異所見が複数の疾患に重複する場合,あるいは症例特異所見が存在する場合は,確定診断まではいたらず,他の臨床所見あるいはMRIなどの画像所見も含めての診断が必要となる。
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