頭頸部外科
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18 巻, 3 号
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  • ―hotinstrumentsによる手術―
    岩田 昇, 鈴木 賢二
    2008 年 18 巻 3 号 p. 199-203
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2010/09/27
    ジャーナル フリー
     口蓋扁桃摘出術(扁摘術)は耳鼻咽喉科領域において最も多く行われる手術の一つである。これまで種々のhot instrumentsを使用した扁摘術が報告されているが,いずれも長所と短所があり,これらの特徴を上手く活用することで効果的な手術が可能であると考えられる。当教室では種々のhotinstrumentsを使用し扁摘術を施行してきたが,今回我々が開発に携わった超音波凝固切開装置(Sono-Surg®ヘラ型)を用いて,扁摘術に有用であるかを検討した。その結果,超音波凝固切開装置は,摘出に時間がかかるが,出血量が少なく,全手術時間は短く,術後疼痛はcold methodと差がないことが判明した。周辺組織損傷が少なく頭頸部領域の良性・悪性疾患の手術に有用であると考えられた。
  • 一瀬 和美, 西嶋 文美, 吉原 俊雄
    2008 年 18 巻 3 号 p. 205-208
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     口唇癌切除後にAbbe-Estlander法を用い再建を行い,整容面・機能面とも良好な経過をたどった2例を報告した。 症例1は72歳男性。左下口唇に腫瘍を認め,生検にて左下口唇扁平上皮癌(TINOMO stage I)の診断となった。下口唇癌の切除Abbe-Estlander法を用いて上口唇弁による再建,1ヶ月後に残存口角との連続再建の追加手術を行った。症例2は26歳男性。左上口唇に腫瘍を認め,生検にて左上口唇扁平上皮癌(TINOMO stage I)の診断となった。上口唇癌切除後,Abbe-Estlander法に準じ下口唇弁により再建を行った。現在,症例1は1年半,症例2は10年経過しているが再発・転移を認めない。
  • 寺田 友紀, 佐伯 暢生, 藤 久仁親, 宇和 伸浩, 佐川 公介, 阪上 雅史
    2008 年 18 巻 3 号 p. 209-214
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     極めてまれな舌に発生した粘液腺癌例を経験したので報告した。症例は84歳男性で,主訴は口腔内出血であった。左舌縁部に2.5cmの隆起性腫瘍を認め,肉眼的所見では舌扁平上皮癌と思われた。易出血性腫瘍であり,血液凝固阻止剤を内服中であったため,生検は行わず擦過細胞診を行った。その結果classVであったため,舌部分切除術を施行した。病理組織診断は粘液腺癌であった。ほぼ同時期に大腸癌手術の既往があるため,上行結腸切除標本を検討したが,組織学的に類似点は乏しく,舌に存在する小唾液腺の導管由来の粘液腺癌と診断した。術後8ヶ月で肝転移,術後1年10ヶ月で多発性肺転移が出現し,術後3年3ヶ月で死亡した。経過観察中,舌および頸部リンパ節に再発は認められなかった。
  • 島田 剛敏, 越知 康子, 為野 仁輔, 吉本 公一郎, 池淵 嘉一郎, 松井 雅裕, 中野 宏, 四ノ宮 隆, 中井 茂, 久 育男
    2008 年 18 巻 3 号 p. 215-220
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
    下咽頭癌初期治療例60例について検討した。化学放射線治療のみを行なったT1,T2NO群,化学放射線治療を先行し原発巣のCRを確認後に頸部郭清術を行ったT1,T2N1-3(以下,N+)群,咽喉頭頸部食道全摘出術(以下,咽喉食摘),頸部郭清術を先行し術後に化学放射線治療(以下,CRT)を行ったT3,T4NO群及びT3,T4N+群の計4群に分けて検討した。T1,T2NO群とT1,T2N+群を比較すると喉頭温存率はそれぞれ69%,86%で差はなかったが死因特異的5年生存率はそれぞれ83%,38%で有意差を認め,遠隔転移がそれぞれ8%,43%と差があったことがその原因と考えられた。
    T3,T4NO群とT3,T4N+群の5年生存率は72%と55%で有意差がなく,遠隔転移はそれぞれ14%,15%と低いレベルであった。T1,T2N+群とT3,T4N+群は同様の化学療法,放射線照射範囲,頸部郭清術式を行なっていることから,成績不良であったT1,T2N+群の治療成績向上には頸部郭清術を先行したCRTの必要性が考えられた。
  • 冨藤 雅之, 齋藤 康一郎, 塩谷 彰浩
    2008 年 18 巻 3 号 p. 221-227
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
     声門上癌・下咽頭癌T1,T2,一部のT3病変に対して拡張型喉頭鏡ビデオラリンゴシステム,細径腹腔鏡手術用の電気メス,鉗子を用いて経口的喉頭・下咽頭部分切除術を行った。拡張型喉頭鏡により両手操作が可能となるワーキングスペースを得ることができ,内視鏡を併用することにより広い視野を得ることが可能であった。22例に施行し,頸部リンパ節を伴うものに対しては頸部郭清術を併施した。まだ平均経過観察期間は25ヶ月であるが,喉頭温存率は94%と良好であり,原病死も1例のみであった。経口的喉頭・下咽頭部分切除術により合併症のリスクと手術侵襲を抑え,術後の嚥下機能を良好に保つことが可能と思われる。
  • 平木 信明, 鈴木 秀明, 宇高 毅, 森 貴稔, 大久保 淳一, 小泉 弘樹, 門川 洋平, 竹内 頌子, 村上 知恵, 鈴木 聖子, 高 ...
    2008 年 18 巻 3 号 p. 229-234
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     喉頭気管分離術によって形成される気管盲端部の貯留物の動態について検討した。対象は重篤な中枢疾患により反復性誤嚥性肺炎を併発した患者8例で,Lindeman変法による喉頭気管分離術後に嚥下造影を行った。その結果,8例中5例では24時間後に,残る3例でも72時間以内に造影剤が消失した。経口摂取がある程度できた症例では造影剤消失までの時間が短い傾向があった。このようにゆっくりではあるが確実な貯留物の入れ替わりにより盲端部における感染などのトラブルは起こらないものと推定された。喉頭気管分離術(Lindeman変法)は気管食道吻合術(Lindeman原法)と比較して遜色がない術式と考えられた。
  • 上田 大, 大島 怜子, 上田 雅代, 三牧 三郎
    2008 年 18 巻 3 号 p. 235-242
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
    当院における耳下腺腫瘍144症例に検討を行った。良性腫瘍は130症例,悪性腫瘍は14症例であった。ワルチン腫瘍は男性に,多形腺腫は女性に優位に多かった(p<0.001)。ワルチン腫瘍が多形腺腫に比べて有意に高齢であった(p<0.001)。悪性腫瘍が良性腫瘍に比べて可動性が不良で,硬度は硬である腫瘍が有意に多かった(p<0.05)。CT,MRI,頸部超音波,細胞診の正診率はいずれも80%を越えた。合併症は全症例の22%に生じ,顔面神経麻痺が最多であった。特に手術操作が深葉に達すると優位に顔面神経麻痺の出現率が上昇した(P<0.0l)。
  • 廣田 稔治, 松延 毅, 栗田 昭宏, 冨藤 雅之, 溝上 大輔, 塩谷 彰浩
    2008 年 18 巻 3 号 p. 243-250
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     1991年4月から2008年5月までの約17年間に当科で入院加療を行った耳下腺腫瘍212例について検討した。性別,年齢,組織型,病期分類,術式を提示し,治療法について考察した。また,穿刺吸引細胞診の有用性を検討し,術前診断に穿刺吸引細胞診は有効であるが,偽陰性例もあることから,臨床症状,画像所見,術中迅速病理組織診なども合わせて総合的に判断する必要があると思われた。耳下腺癌は17例を認め,その5年生存率は63.0%であった。予後不良例を検討すると,耳下腺癌患者における予後因子としては,病期,悪性度,術前遠隔転移,術前顔面神経麻痺が重要であると考えられた。
  • 西池 季隆, 柴田 大, 宇野 雅子, 猪原 秀典
    2008 年 18 巻 3 号 p. 251-257
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2010/09/27
    ジャーナル フリー
     耳下腺内には顔面神経が走行しており,耳下腺手術においては顔面神経の同定および保存が重要な手術操作の一つとなる。筆頭著者は,耳下腺良性腫瘍に対する手術で顔面神経の同定および追跡にルーチーンに手術顕微鏡を用いている。その術後の顔面神経麻痺の発症頻度について報告した。対象となった耳下腺良性腫瘍症例は13名14手術である。すべて初回手術であった。腫瘍が浅葉に存在した例は10件,深葉は4件であった。手術では,顕微鏡下に顔面神経本幹を同定し末梢枝まで追跡しながら,腫瘍の周囲に正常耳下腺組織をつけた部分切除を行った。手術時間は平均173分で,腫瘍が深葉に位置する例で手術時間が長い傾向があった。顔面神経麻痺は手術後2例(14%)で発症した。いずれも部分麻痺で3ヶ月以内に治癒した。永久麻痺は発生しなかった。耳下腺手術に手術顕微鏡を併用することで術後顔面神経麻痺の発症頻度を減らせる可能性があるが,顕微鏡を併用しない場合に比べて手術時間が長くなると考えられる。
  • 梶川 泰, 松代 直樹, 鎌倉 武史, 北村 貴裕, 奥村 新一
    2008 年 18 巻 3 号 p. 259-265
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     甲状舌管のう胞の1.6%~1.9%に発症する稀な甲状舌管癌を経験したので報告する。症例は32歳女性で,主訴は1年前から放置していた前頸部腫瘤,初診時には甲状舌管のう胞を疑ったが,一部弾性硬の箇所に石灰化を認めたので穿刺吸引細胞診を行ったところ甲状舌管癌の診断となった。術前検査で充実部がのう胞内に限局し転移などを認めなかったことから手術はSistrunk法に準じて行った。術後病理で嚢胞内に甲状腺組織とその一部に乳頭癌が認められ,甲状舌管遺残組織内の甲状腺組織から発生した乳頭癌考えられた。一般的に甲状舌管癌は予後が比較的良好な疾患で,本症例も術後2年で再発の徴候なく外来経過観察中である。
  • 大津 和弥, 湯田 厚司, 石永 一, 有馬 忍, 竹内 万彦, 間島 雄一
    2008 年 18 巻 3 号 p. 267-271
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     隆起性皮膚線維肉腫(Dermatofibrosarcoma protuberans; DFSP)は真皮から皮下にかけて増大する線維組織球由来の稀な悪性腫瘍で,頭頸部には少ない。今回我々は頭頸部発生のDFSP2症例を経験した。 症例1:61歳,女性。20年前から前頸腫瘤を自覚していたが,2年前より増大し,DFSPと診断された。腫瘍を拡大切除し,DP皮弁で再建した。 症例2:68歳男性。2年前から右頬部腫瘤を自覚し,DFSPと診断された。腫瘤を拡大切除し,Cervico-facial flapで再建した。 DFSPは切除後の局所再発が多く,初回手術で充分な安全域を含めて切除することが重要である。
  • 飯塚 さとし, 本間 明宏, 福田 諭
    2008 年 18 巻 3 号 p. 273-277
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
     レボフロキサシン(LVFX,クラビット®)は耳鼻科領域における術後感染起因菌であるグラム陽性菌に対して高い抗菌活性を有するニューキノロン系抗菌薬であり,用量依存的に殺菌力を示す。この特性に注目し2007年7月から2008年2月まで北海道大学病院耳鼻咽喉科で手術を行った71症例に対しLVFX500mgを術前1回投与し術後感染の有無を追跡した。術後感染は1例も認めず,有害事象も呈さなかった。1回投与のため服薬コンプライアンスも高く,経済的利得の面でも有用性が示された。短時間の手術であれば術後感染予防は抗生剤単回投与で十分とされているが,症例を選択すれば抗生剤内服でも十分であることが示された。
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