下咽頭癌初期治療例60例について検討した。化学放射線治療のみを行なったT1,T2NO群,化学放射線治療を先行し原発巣のCRを確認後に頸部郭清術を行ったT1,T2N1-3(以下,N+)群,咽喉頭頸部食道全摘出術(以下,咽喉食摘),頸部郭清術を先行し術後に化学放射線治療(以下,CRT)を行ったT3,T4NO群及びT3,T4N+群の計4群に分けて検討した。T1,T2NO群とT1,T2N+群を比較すると喉頭温存率はそれぞれ69%,86%で差はなかったが死因特異的5年生存率はそれぞれ83%,38%で有意差を認め,遠隔転移がそれぞれ8%,43%と差があったことがその原因と考えられた。
T3,T4NO群とT3,T4N+群の5年生存率は72%と55%で有意差がなく,遠隔転移はそれぞれ14%,15%と低いレベルであった。T1,T2N+群とT3,T4N+群は同様の化学療法,放射線照射範囲,頸部郭清術式を行なっていることから,成績不良であったT1,T2N+群の治療成績向上には頸部郭清術を先行したCRTの必要性が考えられた。
抄録全体を表示