頭頸部外科
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19 巻, 2 号
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シンポジウム1
頭頸部癌治療における化学放射線療法の役割
  • 鬼塚 哲郎, 飯田 善幸, 上條 朋之, 浅野 理恵, 中村 哲, 林 隆一
    2009 年19 巻2 号 p. 79-83
    発行日: 2009/10/30
    公開日: 2010/03/05
    ジャーナル フリー
    当院では中咽頭癌における初回治療としての化学放射線療法(chemoradiotherapy:CRT)の適応を,切除不能症例,術後機能障害が大きいと予測される症例,N3や多発頸部転移などで術後CRTが必要となるような症例としてきた。2002年~2006年に根治治療した中咽頭癌70例中,病期III,IVのCRT例は32例であった。うち切除可能14例と切除不能18例では,それぞれ疾患特異的3生率90%,21%,ルビエール転移率0%,72%であった。ゆえに切除可能症例の中で術後機能障害,再発ハイリスクの頸部転移があるなどにより手術に不向きと考えられる症例ではCRTは根治を目指すよい手段となりうると考えられた。また切除可否の判断やルビエールリンパ節転移が予後の予測に重要であることが再認識された。
シンポジウム2
頭頸部癌の手術―適応・適応外の判断―
  • ―高齢者の手術適応―
    菅澤 正
    2009 年19 巻2 号 p. 85-91
    発行日: 2009/10/30
    公開日: 2010/03/05
    ジャーナル フリー
    高齢者頭頸部癌手術治療の問題点を検討するため,2005年7月より2008年11月までに一次治療の終了した75歳以上の頭頸部癌患者94名についてretrospectiveに検討した。男性61,女性33名で,年齢は75~97歳まで平均81.5歳であった。
    原発巣は口腔,喉頭,甲状腺,下咽頭が多く,進行癌が66%を占めている。
    74.4%の症例に手術を中心とする,根治治療が施行されている。再建手術は11例に施行され重篤な合併症を認めなかった。治療上の制約で最も多いのは,手術拒否であり,術前合併症で根治手術が施行困難な症例は2例のみであった。
    高齢を理由に,手術を回避する要因を認めなかった。
シンポジウム3
副鼻腔周辺疾患に対する経鼻内視鏡的アプローチ
原著
  • 力丸 文秀, 松尾 美央子, 檜垣 雄一郎, 冨田 吉信
    2009 年19 巻2 号 p. 99-104
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/03/05
    ジャーナル フリー
    進行舌扁平上皮癌の治療成績向上を目的とし,1997年以降当科では術前動注化学放射線治療および根治手術をあわせた集学的治療を施行している。今回その治療法の有効性を検証するために1997年1月から2005年12月までの進行舌扁平上皮癌症例につき,治療法の違いによる死因特異的生存率,再発率を検討した。生存率は集学的治療例の病期IIIは86%,病期IVでは68%であり,それ以外の治療が行われた症例はそれぞれ80%,50%であり,有意差は認めなかったが,集学的治療症例のほうが良い傾向であった。また一次根治症例の原発巣,頸部再発では集学的治療例は22%であったが,それ以外の治療が行われた症例では55%であり,両者に有意差はないものの集学的治療例のほうが少ない傾向にあった。また集学的治療で一次根治できた病期III症例は術後治療の有無に関係なく原発巣,頸部再発は認めなかったが,集学的治療で一次根治できた病期IV症例は術後治療を行っていても原発巣,頸部再発を30%に認め,術後治療内容の変更を考慮すべきであると考えた。
  • 山崎 宗治, 松浦 一登, 加藤 健吾, 浅田 行紀, 西條 茂
    2009 年19 巻2 号 p. 105-110
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/03/05
    ジャーナル フリー
    当科では2005年3月より,一般歯科診療所と病診連携を開始し,積極的に口腔ケアを導入してきた。今回頭頸部癌再建手術症例を対象とし,口腔ケアと術後合併症について検討を行った。対象は2004年6月~2008年9月に当院で同一術者により遊離再建手術を行った95例である。症例の内訳は男性76例,女性19例であり,原発部位は口腔33例,中咽頭25例,下咽頭・頸部食道23例,その他14例であった。再建材料は腹直筋皮弁39例,前外側大腿皮弁19例,空腸29例,その他8例であった。術後合併症発生率は,非口腔ケア群が65.0%であるのに対し,口腔ケア群では40.4%と有意に(p=0.018)低下が認められた。これより口腔ケアの導入は術後合併症の防止に有用であると考えられた。
  • 松浦 一登, 浅田 行紀, 加藤 健吾, 山崎 宗治, 西條 茂
    2009 年19 巻2 号 p. 111-118
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/03/05
    ジャーナル フリー
    喉頭温存・下咽頭喉頭部分切除術で,適切な再建術選択の指針は確立されていない。そこで2004年4月より当科で本術式を行った23例を対象として,切除範囲と再建法について検討を行った。一側の披裂喉頭蓋襞と梨状陥凹に留まる切除なら一期縫縮が可能であった。一側の梨状陥凹を越えて後壁や輪状後部に達する切除や,一側の披裂喉頭蓋襞を越えて披裂上半分を含む切除では空腸パッチ再建が必要であった。T3・T4進行癌でも,喉頭温存手術の可能な症例が認められた。一期縫縮例では平均2週間,再建症例では平均3週間で術後経口再開が可能であった。完全喉頭機能温存が約8割の症例で成され,疾患特異的生存率が約9割であった。
  • 鈴木 健介, 岩井 大, 小椋 学, 井上 俊哉, 友田 幸一
    2009 年19 巻2 号 p. 119-124
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/03/05
    ジャーナル フリー
    頸部に発生した小児神経節芽腫の1例を経験したので報告した。症例は1歳9ヶ月男児。左顔面発汗障害および左頸部腫瘤を主訴に当科を紹介受診した。初診時,左上頸部腫瘤と同側のHörner症候群を認め,MRIでは左頸部に最大径4cmの腫瘍を認めた。生検では神経節腫との結果であり,後日摘出術を施行した。術中に腫瘍が交感神経幹から発生していることを確認した。病理検査結果では神経節腫部分の内側に神経芽腫の成分を認め,神経節芽腫と診断した。神経節芽腫は交感神経系腫瘍であり,後縦隔に発生しやすい腫瘍とされる。頸部原発は比較的まれであるが,小児の頸部腫瘤を見たときには鑑別疾患の一つとして考慮する必要があると考える。
  • 竹村 博一, 永田 基樹, 井上 俊哉, 湯川 尚哉, 藤澤 琢郎, 阪上 智史, 友田 幸一
    2009 年19 巻2 号 p. 125-129
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/03/05
    ジャーナル フリー
    症例は33歳男性,ロケット花火が口腔内で爆発し受傷,頸部腫張を自覚し近医受診,頸部皮下気腫,縦隔気腫,咽頭熱傷の診断にて救急搬送された。当初呼吸状態も安定していたため保存的に治療を行っていたが,左側下咽頭側壁から後壁にかけての粘膜の浮腫が著明となり,また壊死が加わり,進行した。画像診断では,咽頭後間隙を中心とした深頸部膿瘍の形成が認められ,さらに縦隔内にまで進展していることが指摘されたため,頸部外切開によるドレナージを行ったところ,花火の爆発片を咽頭後間隙内に認めたため,これを除去した上,周囲の壊死組織の切除,咽頭裂傷部の縫合と共に,縦隔及び胸腔ドレナージを行った。術後,局所処置,抗生剤投与を継続して行い,改善した。
    本症例は救命し得たが,開胸による縦隔ドレナージを要する結果となり,受傷当日の頸部外切開等の早期対応が必要な症例であったと考えられた。
  • 長谷川 恵子, 川上 理郎, 伊藤 加奈子, 二村 吉継, 林 伊吹
    2009 年19 巻2 号 p. 131-134
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/03/05
    ジャーナル フリー
    当科における原発不明頸部転移癌24例につき検討した。治療開始後に原発が判明したものは14例(58%)で中咽頭が最も多かった。組織型では扁平上皮癌(17例)に次ぎ腺癌(5例)が多く,転移部位ではレベルII,IIIに多かった。穿刺吸引細胞診を施行した19例中,13例(68%)で陽性,組織型確定まで至ったものは10例(53%)であった。盲目的生検を施行した14例中4例(28%)で原発が判明し,PET施行14例中4例(28%)で原発巣検索に有用であった。治療は,頸部郭清を原則としている。術後照射は組織型などを考慮し行っている。
  • 富樫 孝文, 佐藤 克郎, 富田 雅彦, 松山 洋, 高橋 姿
    2009 年19 巻2 号 p. 135-140
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/03/05
    ジャーナル フリー
    頸部動静脈奇形の3症例を報告する。症例1は動脈塞栓術後に摘出術を行い,術後2年3か月間再増大を認めていない。症例2は動脈塞栓術後に摘出術を施行したが,6年後に再増大のため当科を再診,現在治療法を検討中である。症例3は16年前に当科で動脈塞栓後に摘出術を行ったが,再増大が生じ当科を再診した。再度の塞栓術は困難と考えられたため,サイバーナイフにより加療し,3年6か月間再増大を認めていない。
    動静脈奇形の治療においては,塞栓術後に摘出することが重要であるが,良性疾患であるものの再増大をきたしやすいため,治療後長期間の慎重な経過観察と再増大に対する治療の工夫も考慮すべきと思われた。
  • 清 一哲, 西村 邦宏, 片平 信行, 伴野 真哉, 立松 真理子, 土屋 吉正, 谷川 徹, 小川 徹也, 植田 広海, 稲福 繁
    2009 年19 巻2 号 p. 141-146
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2010/03/05
    ジャーナル フリー
    周術期予防的抗菌薬投与方法について耳鼻咽喉科領域では未だEBMに基づいた詳細な考察がなされていない。当院では2003年よりSSI(術後創部感染)防止サーベイランスを随時行っているが,今回は投与期間を短縮した新たな試みを報告する。対象は当院手術室で手術を受けた298名,例外症例を除き術当日で抗菌薬投与を終了しSSI発生の差を比較した。結果,全体のSSI発生率は1.7%,術当日のみの抗菌薬使用群では1.2%であった。研究当初より比較するとSSI発生率は徐々に改善を認めており,この為耳鼻咽喉科領域での予防的抗菌薬使用量は大多数の症例が手術日当日のみの使用で十分であることが考えられた。
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