頭頸部外科
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28 巻, 3 号
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パネルディスカッション3
合併症を発生させない寸止め術
  • 〜鼻副鼻腔領域〜
    柳 清
    2019 年 28 巻 3 号 p. 249-254
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    内視鏡下鼻内手術において合併症が起きる要因として,患者側の問題,術者側の問題,そして器具の問題がある。患者側の問題としては形態異常(再手術,外傷,人種差など),高度病変,出血過多などがある。術者側の問題としては術者の技量,性格,体調などがある。器具の問題としては内視鏡画面の鮮明度,マイクロデブリッダーの回転数などが挙げられる。内視鏡下鼻内手術は副鼻腔周囲に頭蓋,眼窩,神経,血管が隣接しているため,合併症を起こさぬように,無理をせず慎重に手術を行うべきである。
手術手技セミナー4
  • 室野 重之
    2019 年 28 巻 3 号 p. 255-258
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    喉頭乳頭腫は治療に難渋する疾患である。標準的な治療は手術とされているが確立されたものはなく,CO2レーザーやKTPレーザー,マイクロデブリッダー,cold instrumentsなどが術者の好みにより選択されているのが現状である。もちろん,若年型か成人型か,あるいは病変の程度に応じての使い分けはあるが,いずれにしても,喉頭乳頭腫は粘膜上皮内の病変であることを認識し,音声の維持と気道の確保をコンセプトに過度の処置は避け,正確に無理なく腫瘍を取り除くことが肝要である。そのためには工夫も必要となり,術中の狭帯域光(narrow band imaging)内視鏡を用いた観察や,前連合病変がある場合に横隔膜形成を予防するための段階手術を考慮するなどが挙げられる。
原著
  • 岩佐 陽一郎, 鬼頭 良輔, 宇佐美 真一
    2019 年 28 巻 3 号 p. 259-263
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    喉頭全摘出術により永久気管孔となった患者は,生理的な加湿・加温機能を失うことで咳や痰の増加を来たす。これに対し,永久気管孔専用の人工鼻(Provox® HMEシステム)の使用により症状緩和が得られるとされている。今回われわれは,永久気管孔への人工鼻の効果を検討するため喉頭摘出者に対するアンケート調査を行った。「咳の頻度」「痰の量」「強い咳き込み」「気管孔の掃除の頻度」「気管孔からの出血」につき検討を行い,50.0〜64.3%の患者で症状改善が得られた。「咳の頻度」については有意に人工鼻使用者の苦痛が軽いことが示された(P<0.05)。アンケートの自由記載などからも,人工鼻によるQOL改善が示唆された。
  • 間多 祐輔, 福本 一郎, 植木 雄司, 今野 昭義
    2019 年 28 巻 3 号 p. 265-270
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    副咽頭間隙腫瘍は比較的まれな腫瘍であり,診断や治療,術後の合併症に難渋することもある。当科で2004年から2018年に経験した26例を臨床的に検討した。年齢は27〜82歳(平均54.1歳)で,男性14例,女性12例であった。病理組織診断の内訳は神経原性腫瘍が12例,唾液腺腫瘍が10例(悪性腫瘍は4例)と多くを占めた。術前の画像診断では,神経原性腫瘍12例中11例が茎突後区由来であり,唾液腺腫瘍10例全例が茎突前区由来であった。術式は経頸部法が11例,経頸部耳下腺法が10例,下顎骨正中離断を要したのが3例,生検のみが2例であった。術後の合併症を60%に認め,このうち下位脳神経麻痺が9例,first bite syndromeは5例,咽喉頭浮腫は6例であったが,多くは一過性であった。
  • 〜UICC/AJCC Cancer Staging 8thを勘案した後方視的解析〜
    若崎 高裕, 安松 隆治, 古後 龍之介, 橋本 和樹, 中川 尚志
    2019 年 28 巻 3 号 p. 271-276
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    UICC/AJCC TNM分類第8版による中咽頭癌TNM分類では,①HPV関連の有無 ②N節外浸潤の有無が,重要な要素となった。本邦の症例でも検証が必要であり,今回の改定に含まれない喫煙の予後への影響も含めて後方視的検討を行った。2010年1月から2015年12月に当科で根治治療を行ったHPV検索済の中咽頭扁平上皮癌110例を対象とした。HPV関連癌は52例だった。旧分類ではStageⅣが全体の60%を占めていたが,新分類ではStageⅠおよびⅡが倍増しStageⅣが減ったことで各病期症例数のバランスが改善した。粗生存率解析では新分類のほうが病期毎予後をより反映しており,喫煙の予後に対する影響も示唆された。
  • 大久保 淳一, 長谷川 翔一, 髙橋 梓, 竹内 頌子, 若杉 哲郎, 鈴木 秀明
    2019 年 28 巻 3 号 p. 277-282
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    当科における過去15年間の咽頭・頸部食道義歯異物症例について検討した。症例は26例で年齢中央値は79.5歳,クラスプ介在部位最深部は食道入口部〜頸部食道11例,下咽頭10例,中咽頭4例,上咽頭1例であった。全身麻酔を要した例は14例,気管切開術を要した例が4例,頸部外切開を要した例が1例,死亡例が1例あった。全身麻酔症例は,食道入口部〜頸部食道介在義歯11例中9例(82%),U型義歯14例中9例(64%)であった。気管切開症例の義歯は全てU型で,この中には死亡した1例が含まれていた。頸部外切開例ではU型義歯が食道入口部に介在していた。以上より,介在部位が食道入口部〜頸部食道の場合やU型義歯では重症化しやすいと考えられた。
  • 河田 了, 寺田 哲也, 東野 正明, 西川 周治, 西角 章
    2019 年 28 巻 3 号 p. 283-288
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    耳下腺癌は症例数が少なく,また悪性度の低い症例もあるため長期間の観察が必要であり治療成績を検討することが容易でない。1999年9月から2019年2月までの約19年間に当科で加療を施行した耳下腺癌新鮮症例は184例であった。ステージ別ではステージⅠが22例,Ⅱが71例,Ⅲが23例,Ⅳが68例であった。悪性度別では低・中悪性が105例,高悪性が79例であった。主な組織型は粘表皮癌が47例,多形腺腫由来癌が27例,腺様囊胞癌が21例,唾液導管癌が15例,分泌癌が12例,腺房細胞癌が11例であった。症例全体の疾患特異的5年生存率は76.6%であった。ステージ別の疾患特異的5年生存率はステージⅠが100%,Ⅱが97.7%,Ⅲが71.6%,Ⅳが51.6%であった。悪性度別の疾患特異的5年生存率は,低/中悪性が95.9%,高悪性が46.1%であった。高悪性癌は最も大きな予後不良因子であるが,術前の悪性度診断は必ずしも良好ではなかった。
  • 大野 十央, 岸川 正大, 末松 由愛, 浜島 智秀
    2019 年 28 巻 3 号 p. 289-292
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    【はじめに】甲状腺結節の診断において塗抹法および液状化検体細胞診(LBC)で同一検体より標本を作成した。その診断結果を比較しLBCの有用性について検討を行ったので報告する。【方法】2015年12月から2017年11月に甲状腺結節289症例325病変において塗抹法およびLBCで標本を作製し,結果を比較した。また手術を施行した64症例については術後病理組織と対比した。【結果】不適正検体はLBCを用いることで有意に減少した。LBCにおける正診率,感度,特異度は過去の報告と同程度であった。【まとめ】LBCは不適正検体を有意に減少させることができ,塗抹法と比較し有用な検査と考えられた。
  • ―前腕皮弁,前外側大腿皮弁との比較―
    宮本 俊輔, 清野 由輩, 松木 崇, 岡本 旅人, 加納 孝一, 堤 翔平, 鈴木 綾子, 籾山 香保, 山下 拓
    2019 年 28 巻 3 号 p. 293-300
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    舌骨下筋皮弁は,挙上が容易で一期的縫縮が可能な頸部有茎皮弁である。その有用性を明示する目的で遡及的検討を行った。
    当科で2016年4月から2018年3月までに本皮弁を用いて再建を行った口腔癌症例は10例であった。それらの手術内容や皮弁合併症,術後機能について,前腕皮弁もしくは前外側大腿皮弁を用いた6例と比較検討した。
    手術時間,出血量はいずれも舌骨下筋皮弁で有意に少なかった(中央値 470.5分 vs 603.5分,p<.001; 259.5mL vs 543mL,p=.004)。皮弁合併症,術後食事開始日,食事形態,会話能には明らかな差異を認めなかった。
    舌骨下筋皮弁は簡便,低侵襲で安定した再建法と考えられた。したがって,口腔の中等度欠損の再建時に本皮弁は有力な選択肢となりうる。
  • 清野 由輩, 鹿野 真人, 細野 浩史, 大原 卓哉, 古木 省吾, 山下 拓
    2019 年 28 巻 3 号 p. 301-306
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    症例は33歳男性。25歳時に服毒自殺を図り,四肢麻痺を呈し,気管切開を施行された。著明な気管孔肉芽と,気管カニューレの先端の刺激による気管狭窄を来し,誤嚥による肺炎が頻回に見られた。始めに鹿野式の声門閉鎖術と輪状軟骨鉗除による気管孔形成術を施行した。手術後気管カニューレが不要で,吸引回数も減少し,気管狭窄の悪化を防ぐことができた。8年ぶりに経口摂取を再開した。現在気管内ステントの留置を検討している。本術式は誤嚥防止に加え,確実にカニューレフリーを実現する術式で気管カニューレに伴う様々なトラブルを予防することができ,有用であると思われた。
  • 鈴木 貴博, 野口 直哉, 東海林 史, 角田 梨紗子, 太田 伸男, 小倉 正樹
    2019 年 28 巻 3 号 p. 307-312
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    われわれの施設で唾液腺管内視鏡手術を行った顎下腺移行部唾石症例23例についてその摘出方法に主眼をおいて後ろ向きに検討したところ,内視鏡的摘出例が3例(13%),バスケット鉗子をガイドに口内法で摘出した例が4例(17.4%),触診により口内法で摘出した例が15例(65.2%),顎下腺摘出例が1例(4.4%)であった。従来の触診による口内法での摘出が半数以上を占めていたことから,触診での唾石探索を容易化するための対策が必要と考えられた。その対策法として,内視鏡観察下に唾石にマイクロバーを接触させてワルトン管内にマイクロバーのみを留置することで唾石の位置を指標化した例が1例あり,ワルトン管の走行確認や唾石の触知検出に有用と思われた。
  • CM-141試験との比較
    松山 洋, 本田 耕平, 山崎 恵介, 岡部 隆一, 植木 雄志, 富樫 孝文, 正道 隆介, 堀井 新
    2019 年 28 巻 3 号 p. 313-318
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    Nivolumab(Nivo)が再発・転移頭頸部癌の全生存期間を有意に延長することが報告され,本邦では2017年3月から保険収載となった。
    本研究では2017年6〜10月に当院でNivoを投与した再発・転移頭頸部癌10例の臨床像に関して検討した。年齢は44〜75歳で中央値62.5歳,PSは0が7例,2が3例,Cetuximab(Cetu)暴露例は8例であった。
    観察期間の中央値6か月における効果判定はPR 3例,SD 2例,PD 5例であり,PS不良例や急速進行例では治療効果不良,Cetu暴露の有無やPD-L1染色の陽性・陰性と治療効果の間には相関がなかった。有害事象は許容範囲内であった。CheckMate-141試験と比較すると本研究の方がPS 0の患者の割合が多く,Nivo投与期間が長い傾向にあった。今後,Nivoの適応決定や投与のタイミングに関して検討する必要があると思われた。
  • 白倉 聡, 杉本 太郎, 江口 紘太郎, 服部 藍
    2019 年 28 巻 3 号 p. 319-323
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    近年ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus;HIV)感染症の予後は飛躍的に改善しており,HIV関連悪性腫瘍以外の悪性腫瘍との合併が問題となっているが,そのひとつである頭頸部癌は非HIV感染者より罹患率が高い。今回われわれは当科で治療を行ったHIV感染頭頸部癌患者8例の治療経過について検討を行ったのでここに報告する。StageⅡ以下の3例はHIV治療も既に開始されており予後が良好であったが,StageⅣの5例はHIV未制御例もあり予後不良であった。感染症担当科とHIV治療についての連携を行うことと,患者背景への対応などが重要であると考えられた。
症例
  • 髙田 菜月, 大西 将美, 髙橋 洋城, 髙木 千晶, 奥田 弘
    2019 年 28 巻 3 号 p. 325-328
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    頸部に発生する動脈瘤の報告は少なく,特に頸横動脈に発生した動脈瘤は稀である。今回われわれは右鎖骨上窩腫脹を主訴に来院した頸横動脈瘤を経験した。頸部超音波検査や造影CTから動脈瘤と診断し,外科的切除術を施行した。頸部動脈瘤は破裂症例が多く報告されており,破裂した場合の致死率は約20%と非常に高い。動脈瘤の大きさに関係なく破裂すると考えられており,頸部動脈瘤と診断した場合には早急な治療が必要と考える。治療としては外科的切除術とコイル塞栓などによる血管内治療がある。未破裂動脈瘤の場合は,より確実にアプローチできる外科的切除術がよい適応と考える。
  • 木下 崇, 大熊 雄介, 佐々原 剛, 佐々木 慶太
    2019 年 28 巻 3 号 p. 329-333
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    切除不能甲状腺癌患者に対するレンバチニブ治療中に生じた急性胆道炎の3例を報告する。女性1例,男性2例,年齢は63,65および72歳。レンバチニブ投与開始後12,100および212日後に右季肋部痛もしくは心窩部痛にて発症。採血上,肝胆道系酵素の上昇と炎症所見を認め,画像所見と合わせて2例が急性胆管炎,1例が急性胆囊炎と診断された。レンバチニブ休止にていずれも軽快し,減量再開をしている。胆道結石は1例のみで,2例は無石性胆管炎であった。レンバチニブと急性胆道炎の因果関係をNaranjoスケールで検討したところ,いずれの症例も因果関係が否定できなかった。レンバチニブ治療を行うにあたっては急性胆道炎の合併を念頭に置く必要がある。
  • 西村 文吾, 田中 秀峰, 中山 雅博, 大原 浩達, 福田 航平, 和田 哲郎, 原 晃
    2019 年 28 巻 3 号 p. 335-341
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    副咽頭間隙腫瘍の手術はその解剖学的特徴から技術的に困難で合併症を来たす可能性も高い。従来頸部外切開による経頸部法や経耳下腺法が一般的に行われてきたが,今回われわれは副咽頭間隙多形腺腫に対し,内視鏡補助下に経口法による摘出を行った。症例は36歳男性で,左副咽頭間隙に約6×5×4cm大の腫瘍を認め,生検により多形腺腫と診断された。内視鏡を補助的に用いて経口的に摘出した。術後合併症を来たすことなく,翌日から経口摂取を開始し,術後4日目に退院した。内視鏡補助下の経口法による摘出はより低侵襲な治療法として有効であると考えられ,その適応や方法については今後も検討を重ねる必要がある。
  • 西嶋 利光, 松尾 美央子
    2019 年 28 巻 3 号 p. 343-347
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    造血幹細胞移植の治療成績向上に伴い長期生存症例が増加する一方で,移植後の晩期合併症が問題となっている。二次性悪性腫瘍は死因となり得る晩期合併症で,慢性移植片対宿主病を発症によりその発症リスクは増加する。特に口腔領域の発生は最多であり,耳鼻咽喉科頭頸部外科医も注意が必要である。症例は60歳の男性で,急性リンパ性白血病にて同種骨髄移植を施行し,その後に急性移植片対宿主病と慢性移植片対宿主病を発症した。移植5年後に舌右側に口腔扁平上皮癌と,それと離れて口腔底右側に口腔白板症を発症し,それぞれに外科的切除を施行した。口腔扁平上皮癌切除より4年,口腔白板症切除より2年再発なく経過中である。
  • 石田 知也, 島津 倫太郎, 山内 盛泰, 倉富 勇一郎
    2019 年 28 巻 3 号 p. 349-354
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    頸動脈小体は総頸動脈分岐部に位置する化学受容体であり,頸動脈小体腫瘍はこの部位から発生する比較的稀な傍神経節腫である。今回,術前栄養血管塞栓術により極めて少量の術中出血および短時間で摘出し得た頸動脈小体腫瘍の1例を経験した。症例は42歳女性で,5年前から自覚する左上頸部腫瘤を主訴に受診した。MRI所見と血管造影検査より頸動脈小体腫瘍と診断し,摘出術を施行した。
  • 安原 一夫, 北條 裕子, 堀切 教平, 一條 研太郎, 高野 智誠, 寺村 侑, 佐原 利人
    2019 年 28 巻 3 号 p. 355-359
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    小細胞癌は肺に好発する悪性腫瘍であり,肺以外での発生はまれで,標準治療が確立されておらず,個々の症例で肺小細胞癌に準じて,手術,化学療法,放射線治療を組み合わせた集学的治療が行われている。今回われわれは当初顎下腺癌を疑ったが,精査により舌原発小細胞癌との診断に至った症例を経験した。肺小細胞癌に準じて集学的治療を検討したが,高齢かつ心疾患を有する症例であったため,化学療法は行わず,舌および頸部リンパ節転移に対する手術療法の後,術前に判明していた下咽頭表在癌に対する治療と合わせて放射線治療を追加した。
  • 松井 祐興, 岡崎 雅, 鈴木 豊, 新川 智佳子, 荒木 直人
    2019 年 28 巻 3 号 p. 361-368
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    頸部気管癌は稀な疾患である。今回われわれは,喉頭および甲状腺全摘,気管切除後に縦隔気管孔造設を行った頸部気管腺様囊胞癌を経験したので報告する。
    症例は69歳女性。画像より甲状腺腫瘍による気道狭窄が疑われ当科紹介となった。来院3日目に気道狭窄のため,気管ステントを留置した。気管ステント留置5日目に,気管閉塞が誘因と考えられる呼吸不全および心虚血による循環不全となった。気管ステントを抜去し,気管内挿管を行い,全身管理を行った。全身状態の回復後に,気管切開を施行した。細胞診では髄様癌疑いであっため,甲状腺髄様癌と診断した。喉頭全摘,甲状腺全摘,頸部郭清術,気管切除,縦隔気管孔造設,左大胸筋皮弁と植皮を用いた再建を行った。最終病理診断は,気管由来の腺様囊胞癌であった。切除断端は陰性であった。現在,術後12か月経過したが,再発なく外来経過観察中である。
  • 田口 大藏, 福島 慶, 中谷 宏章, 三河内 明
    2019 年 28 巻 3 号 p. 369-373
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    石灰化上皮腫は若年者の顔面や上肢などに好発する毛母細胞由来の腫瘍である。従来,皮膚科や形成外科領域の疾患として取り扱われることが多く,耳鼻咽喉科領域の報告は比較的少ないが,まれに再発を繰り返し,悪性化する症例の報告もあるため注意が必要である。症例1は15歳女性。主訴は左耳下部腫瘤であり,穿刺吸引細胞診とCT所見から石灰化上皮腫が疑われた。症例2は13歳男性。主訴は右顎下部腫瘤であり,CT・MRI所見から石灰化上皮腫が疑われた。いずれの症例も全身麻酔下に摘出術を行い,病理組織学的検査で石灰化上皮腫と診断された。
  • 水成 陽介, 波多野 篤, 結束 寿, 小森 学, 飯村 慈朗, 鴻 信義, 小島 博己
    2019 年 28 巻 3 号 p. 375-379
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    転移性鼻副鼻腔腫瘍の原発部位は腎細胞癌が多く,転移巣からの頻回の鼻出血のために患者QOLの低下をきたす。今回,鼻出血を契機に診断された腎細胞癌副鼻腔転移の2症例を経験した。
    症例1は77歳男性。鼻出血を契機に腎細胞癌の鼻副鼻腔転移,肺転移の診断に至った。鼻腔病変を内視鏡下に切除し,術後8か月で原病死となったが鼻出血は制御されていた。症例2は51歳男性。他院での腎癌術後の既往があり,鼻出血を契機に腎細胞癌の鼻副鼻腔単独転移の診断に至った。分子標的薬・陽子線治療を施行し,鼻出血は制御されていた。
    本2症例から,腎細胞癌の鼻副鼻腔転移病変に対して可及的治療を行うことでQOLの向上につながる可能性が示唆された。
手技工夫
  • 竹本 剛, 折田 浩志, 岡﨑 吉紘
    2019 年 28 巻 3 号 p. 381-384
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/13
    ジャーナル フリー
    術後咽頭瘻は,喉頭全摘術後や皮弁を用いた咽頭再建術後などに経験する。決して多くはないが,頭頸部手術を数多く経験すれば,避けては通れない合併症であり,その管理に難渋することが多いと思われる。また,良好な咽頭皮膚瘻を造設することは,その次の咽頭皮膚瘻閉鎖術の成否にも関わる需要な事項である。われわれは,術後咽頭瘻に対して,医療用スポンジ(メロセル®)と吸引チューブを用いて,間歇的持続吸引を試みている。瘻孔からの唾液漏出量を減らし,咽頭瘻周囲の皮膚を可及的乾燥状態に保つことで,良好な咽頭皮膚瘻の造設を目指している。われわれの工夫を,若干の文献的考察を加えて報告した。
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