頭頸部腫瘍の中で,鼻腔内に発生する多形腺腫は稀な疾患である。今回我々は内視鏡下鼻腔腫瘍摘出術を行い,経過良好な鼻中隔多形腺腫を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。症例は77歳男性。繰り返す鼻出血を主訴に近医耳鼻咽喉科クリニックより当院紹介受診した。鼻鏡及び鼻腔内視鏡検査で,右鼻腔に2cm×2cm程度の表面平滑で,触診上弾性硬のポリープを認めた。ポリープは鼻中隔から発生しており,粘膜血管が豊富で,接触により比較的容易に出血した。肉眼上,正常粘膜との境界は明瞭であった。造影CT検査では,右鼻腔内前方に内部が淡く造影される腫瘤が認められ,骨破壊の所見は認めなかった。以上の所見より,鼻中隔に発生した良性腫瘍を疑い,平成16年2月12日,局麻下に内視鏡下鼻腔内腫瘍切除術を施行した。術中所見上,鼻中隔軟骨への浸潤所見は認めなかったため,鼻中隔軟骨は温存した。確定診断は切除標本による病理組織検査にて得られた。易出血性弾性硬鼻腔内腫瘤の鑑別として多形腺腫も考慮する必要がある。手術は腫瘤断端の確認が可能であれば内視鏡下鼻腔手術が有用である。
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