本研究は分娩時に産婦が行なう呼吸法について,胸式呼吸法と腹式呼吸法を生理学的指標を用いて観察し,検討したものである。
36人の健康な非妊婦(平均年齢21.7±0.8歳)が研究の対象として選ばれた。
結果を要約すれば次の通りである。
(1) 胸式呼吸法と腹式呼吸法の間では,ゆっくりで深い呼吸様式において心拍数が有意な違いを認めた。しかし,その他の生理学的指標については,両者の呼吸法に差は見られなかった。
(2) 胸式呼吸法は,腹式呼吸法や安静時値に比べてtcPO
2値が高く,tcPCO
2値が低かった。従って,胸式呼吸法は腹式呼吸法よりも安易に過換気状態となりやすいように思われた。
(3) ゆっくりした深い呼吸を行なうと,安静時の値より心拍数の減少が認められた。また,速い呼吸では有意に拡張期血圧の低下が認められた。
今回の私達の成績からは,分娩時の呼吸法としてはどちらの呼吸法を用いても大差ないものと思われる。
抄録全体を表示