日本看護研究学会雑誌
Online ISSN : 2189-6100
Print ISSN : 2188-3599
ISSN-L : 2188-3599
26 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • -信頼性と妥当性の検討-
    松浦 和代, 阿部 典子, 良村 貞子, 神成 陽子, 升田 由美子, 阿部 修子, 浜 めぐみ
    2003 年 26 巻 1 号 p. 1_45-1_53
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     Guglielmino (1977) が開発した Self-Directed Learning Readiness Scale ( SDLRS ) が,看護学生の自己決定型学習のレディネスを査定する上で有効と考え,翻訳許可を得た。 研究の目的は,1) 日本語版 SDLRS の作成,2) 平均得点の算出,3) 信頼性と妥当性の検討である。 対象は18~25歳の学生とした。 調査票は日本語版 SDLRS と一般性セルフ・エフィカシー尺度 (GSES) をから構成した。 北海道内の大学6校と看護専修学校6校の学生2056名に配布し,1801名の回答を得た (回収率87.6%)。 欠損値のあるデータなどを除き,1519名のデータを分析した。 平均得点は187.30 (SD 23.66) 点であった。 Cronbach のα係数は 0.914であった。 基準関連妥当性は GSES との相関から検討した (r=0.460,p<0.01)。 因子分析により7因子が抽出された。 結論として,日本語版 SDLRS の信頼性と妥当性が確認され,使用可能な尺度であることが示された。
  • 淘江 七海子
    2003 年 26 巻 1 号 p. 1_55-1_66
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究では,看護職の患者に対する言語的対応測定尺度を岩村・小柳らのファシリテータ発言分類15項目 (1984) に対応する発言例を用いて作成し,その信頼性・妥当性の検討を行なった。
     33項目からなる文章例を用いた質問紙により,K 病院看護師243名に調査した。
     因子分析 (プロマックス法) の結果,固有値1.5以上の4つの因子が抽出された。 抽出された4因子は第I因子 「相手および自己の開示」,第II因子 「相手の言動に対する評価」,第III因子 「傾聴しているという表現 (反応・質問)」,第IV因子 「相手の言動や気持ちの確認」 と命名された。
     言語的対応測定尺度における4つの下位尺度 「相手および自己の開示」,「相手の言動に対する評価」,「傾聴しているという表現 (反応・質問)」,「相手の言動や気持ちの確認」 について,いずれも高い信頼性 (α=.703~.843) と内的整合性が示された。
     言語的対応測定尺度における4つの下位尺度と日本語版 SSI 尺度6領域の内,「社会的表現性」 「社会的感受性」 に有意な相関が認められ,概念的妥当性があることが確認された。
  • :構成要素の探索
    三村 洋美
    2003 年 26 巻 1 号 p. 1_67-1_78
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     高齢 CAPD 患者 (70歳以上) が自分で CAPD を行う体験の中でセルフケアをどのように観るかという見かた (意味) を明らかにすることを目的とし,15名を対象として帰納法的・質的因子探索型研究を行った。
     その結果,高齢 CAPD 患者のセルフケアの意味の構成要素として8つのカテゴリーを含む3つのテーマ 『獲得した取り組み』・『状況の理解』・『力の源となる支え』 が創出された。 3つのテーマには高齢者の持つ能力が関係しており,セルフケアを行うためには,これらが効果的に働いていると考えられた。
     高齢 CAPD 患者の体験の中でのセルフケアの意味を明らかにしたことは,セルフケアを支持し促進させる援助へ貢献できると考える。 また,高齢者も CAPD の積極的適応の可能性があることを提案し,彼らの体験を知り精神的な援助を含むセルフケアに向けての援助をすることに示唆を与えることができる。
  • 金正 貴美
    2003 年 26 巻 1 号 p. 1_79-1_90
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究は筋萎縮性側索硬化症患者 (以下 ALS 患者と略す) の病気体験における不確かさとその構造を探求した。 10人の ALS 患者を対象に,病気体験や予後についての思いに関する半構成的質問紙による面接及び参加観察を行い,得たデータを質的帰納的に分析した。 分析の結果 ALS 患者の不確かさは,身体の変化の領域で【症状になじめない】【コントロール感覚を取り戻せない】,時間経過の変化の領域で【今の生活状態でいることの揺らぎ】【未整理な事に対する思いの留まり】【病気の先行きの見込めなさ】,他者や家族との関係の変化の領域で【他者に表出する気持ちの減退】【家族を巻き込む事への不本意さ】【家族とのつながり感の薄れ】,存在意味の領域で【生を問う手応えのなさ】の4領域9カテゴリーが抽出された。 また ALS 患者が抱く不確かさは,病による変化を統合するように志向性が作用し,統合し得ない場合,生じる認知的状態であることが明らかとなった。
  • 風岡 たま代, 岩城 馨子
    2003 年 26 巻 1 号 p. 1_91-1_100
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     この研究の目的は,実習方法を変更したことによるリハビリテーション看護についての看護学生の認識を,使われた推論によって検討することである。 対象は,3年制看護短期大学の97年度の3年生108人と99年度の3年生96人であった。 方法は,学生のレポートから,16項目ある 「リハビリテーション看護の役割」 についての認識を年度間で比較した。 99年度の学生の認識を知識のみ,演繹的推論,帰納的推論に分類し,項目別,カテゴリー別に比較した。 その結果,99年度は 「患者への援助」 と 「家族への援助」 の社会的側面への認識が広がった。 推論の比較の結果,「患者への援助」 の帰納的推論の割合は,「家族への援助」 「他職種との連絡調整」 よりも多かった。 認識に使われた推論は,帰納的推論が81.1%,演繹的推論が10.7%であった。 帰納的推論は 「意欲向上への援助」 の項目で多く使われ,演繹的推論は 「障害受容」 や 「情報提供」 の項目に多く使われていた。
  • 藤井 宝恵, 児玉 和紀, 岡田 浩佑, 宮腰 由紀子
    2003 年 26 巻 1 号 p. 1_101-1_110
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,無菌室に入室している21名の急性骨髄性白血病患者の QOL ならびにその低下と,関連した要因について調査したものである。 調査は在室週別・入室回数別に QOL の低下状況,症状の出現状況,身体機能,心理状態等について調査票を用いて調査した。 その結果有意差はなかったものの,入室2週目に発熱等の感染症状が出現しやすい傾向であった。 感情機能は5回目以上の入室では良好な傾向であった。 ただし,疲労は治療期間通じてみられた。
     よって,感染症状をコントロールすることにより,患者の QOL 低下をより防止できると考えられた。 また入室回数が増えても感情機能が良好なことより,患者は無菌室に適応していくことが示唆された。
  • 篠原 純子, 児玉 和紀, 迫田 勝明, 金久 重子, 百本 文子
    2003 年 26 巻 1 号 p. 1_111-1_122
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は脳梗塞患者の自尊感情と関連する要因は何かを明らかにすることであった。 脳梗塞発症後6ヶ月~3年半前後の外来通院患者38名 (男性26名,女性12名) に対して調査を実施し,自尊感情 (Rosenberg's Self-Esteem Scale) と職場復帰状況,経済的満足感,主観的健康感,社会的支援の程度,趣味や楽しみの有無,日常生活動作の障害の程度,生きがいなどの関連を検討した。 その結果,自尊感情は決定係数0.694で 「生きがいとなっているものが4つ以上あること (標準化係数β0.503)」 「まったく健康ではないと感じること (β-0.306)」 「楽しみがあること (β0.257)」 「在学年数が10~13年であること (β0.277)」 の4要因によって説明された。 本研究の結果から 「健康状態をよいと感じ,多くのことに生きがいをもち,楽しみをもって生活できるように介入することによって自尊感情は高まる」 という仮説を導いた。
  • 本江 朝美, 山田 牧, 平吹 登代子, 熊倉 美穂子
    2003 年 26 巻 1 号 p. 1_123-1_136
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,我が国における60歳以上の活動的高齢者の Sense of Coherence (SOC) の実態とその関連要因を明らかにすることを目的とした。 研究の目的に同意し協力が得られた60歳以上の何らかの社会活動に参加している188名を対象とし,首尾一貫感覚や健康推進ライフスタイルIIの尺度と生活状況を質問項目に加えた自記式質問紙調査を行った。
     その結果,我が国において活動的高齢者のSOCは,一般成人より高い得点を有し,健康度自己評価が高く,経済状態が良く,「精神的成長」・「対人関係」 に関するライフスタイルが身についているほど,また女より男に,強い傾向が認められた。 さらに,慢性の疾病・障害,及び退職のストレッサーによるSOCへの影響に対して,「身体的活動」・「精神的成長」 に関するライフスタイルは緩衝効果を有していたことが明らかとなった。
  • 細田 泰子, 水野 智子, 新村 洋未, 小野寺 杜紀, 宮地 文子
    2003 年 26 巻 1 号 p. 1_137-1_146
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     看護教員養成課程修了者の看護研究への取り組みとその関連要因を明らかにするため,看護教員養成課程修了者の特性,看護研究の実施に関連する要因,実施された看護研究および関連活動の傾向について検討した。 対象者は1989~1998年度に埼玉県看護教員養成講習会を修了し,医療機関あるいは看護学校に就業している者248名であり,郵送法で自己記入式質問紙調査を行った。
     その結果,看護教員養成課程修了者は経験年数7~12年の就業者より高い職業的アイデンティティをもち,看護教員あるいは臨床の指導者として就業していることが示された。 また,看護研究の実施には,1) 看護教員養成課程修了後の経過年数の長さ,2) 看護学校との比較で医療機関に就業していること,3) 学会に所属していること,4) 看護教員養成講習会の受講が看護研究に生かせていると評価していることが影響していた。 さらに,看護研究のテーマおよび研究に関連する活動の内容には就業機関の影響が認められた。
  • -生活満足度に焦点をあてて-
    片山 聡子, 叶谷 由佳, 日下 和代, 佐藤 千史
    2003 年 26 巻 1 号 p. 1_147-1_161
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     精神障害者小規模作業所通所者の生活満足度と個人的特性,客観的QOLとの関係を明確にすることを目的に首都圏の精神障害者小規模作業所7カ所に通所する精神障害者58名を対象とし,面接調査を行った。 その結果,以下のことが明らかになった。
     作業所通所者の項目別生活満足度で,最も得点が高かったのは作業所に対する満足度の項目であり,最も得点が低かったのは障害者として扱われることに対する満足度であった。 生活満足度総得点と総入院期間とは負の相関があり,生活満足度と情緒的サポート得点は正の相関があった。 情緒的サポート,手段的サポートのいずれも家族の占める割合が大きかった。
     調査結果から,地域で生活している精神障害者に対し,病院においては入院早期から地域に患者を帰す援助,入院施設と作業所との連携,精神障害者と家族との関係を改善させる援助,地域にノーマライゼーションを浸透させる働きかけが重要であることが示唆された。
feedback
Top