ターゲットにアルミナを, 基板に各種金属材料を使用し, レーザPVD法による硬質膜の作成に関する研究を行った結果, 次のことが明らかになった.
(1) HK1000以上の硬質膜作成のための雰囲気圧力は2.5×10
-3~6.5×10
-3Pa程度が適当で, 基板温度950K程度以上ではHK2500~HK4000の硬質膜が生成する.より高真空雰囲気では基板温度に関係なく, HK500以下の軟質膜が生成する.
(2) 膜の結晶状況は, 基板温度950K程度を境に, それ以下の温度ではアモルファス, それ以上の温度ではγ-Al
2O
3の結晶膜となる.
(3) 膜に作用する応力の種類は基板の種類によって異なり, 熱膨張率が小さいW基板では引っ張り応力が, 熱膨張率が大きいCuやNi基板では圧縮応力が作用し, クラック発生の原因となる.Mo, TaTi等, 膜の熱膨張率に近い膨張率の基板を使用すればクラックの発生は防止できる.
(4) 基板温度が稿い場合, CuやNi基板では膜に大きな圧縮応力が作用し, 見かけ上, 膜の硬度が高くなる.
(5) 基板に活性金属であるTiを使用すれば20N程度以上のスクラッチ荷重に耐える密着性の良い膜が得られる.
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