牛,馬,山羊,豚,兎,ラット,マウス,モルモットの精子細胞,および牛,馬,豚の射出精子のacrosomicsystemを構成しているPAS陽成物質の細胞化学的性状にっいて実験を行ない,っぎのような結果をえた。
1.精子細胞のacrosomic systemのPAS陽性物質豚精子細胞のacrosomic systemのPAS陽性物質はグリコーゲンと酸性多糖類ではなく,固定にカルノア液を使用した場合に抽出除去され,脂肪溶媒に可溶性の物質であった。しかし,オルト液のような重クロム酸塩を含む固定液で固定を行なうと脂肪溶媒に不溶解性のPAS陽性物質に変化した。また,オスミウム酸で染まり,ペプシンおよびトリプシン消化によって変化しなかった。豚以外の動物については,脂肪溶媒に対する溶解性を検討したが,いずれも脂肪溶媒に溶解することが知られた。
したがって,精子細胞のacrosomic systemを構成するPAS陽性物質は従来いわれているような炭水化物•蛋白質複合体ではなく,脂質の一種,多分糖脂質であると考えられる。
2.射出精子のacrosomic systemのPAS陽性物質 牛射出精子のacrosomic systemを構成しているPAS陽性物質の細胞化学的性状は精子細胞の当該物質と同じであった。すなわち,グリコーゲンと酸性多糖類は検出されず,脂肪溶媒に溶解し,重クロム酸塩を含有する固定液によって脂肪溶媒に不溶解性の物質に変化した。ペプシン消化およびpH 2.2~11.3の緩衝液による前処理はPAS染色強度に影響をおよぼさなかった.また,馬と豚の射出精子を脂肪溶媒,すなわち,カルノア第2液で固定したところ,PAS陽性物質は完全に抽出除去された。これらのことから,射出精子のacrosomicsystem の PAS陽性物質はやはり精子細胞と同じ物質によって構成されていると考えられる。
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