Wistar系ラットを用い,人為的に胎子数を調整したものについて産子数と分娩日および分娩時刻との関係を観察した。飼育は約25°C,照明14時間(点灯6:00~20:00)の動物室で行ない,固型飼料と水は自由に摂取させた。3~4月令で交配し,腟垢中に精子の存在を確認した日を妊娠第1日とし,個別ケージに移した。妊娠8日目に開腹し,子宮壁上からピソセットを用いて着床胎子を押しつぶし,いろいろの数の胎子数に調整した。一部のラットは開腹し,着床胎子数を検したまま縫合した。妊娠20日からケージを飼育室と同条件の観察室に移し,徹夜の観察に備え,できるだけ頻繁にかつ注意深く分娩を観察した。消灯期には必要最少限の照明(懐中電灯)を用いた。第1子の娩出をもって分娩開始時刻とした。一部のラットは直ちに供試し,子宮内の残存胎子数との合計を産子数とした。他のラットは全胎子の娩出を待ち,分娩時間を記録した。総べて供試後子宮を点検した。
総数85例について,分娩は妊娠22日から24日までに分布したが,産子数の少ないものが遅い傾向を示し,産子数1から10までの71例について,産子数(X)と妊娠期間(Y)との間には有意な相関が認められ(-0.602,P<0.01),Y=23.46-0.17Xの直線回帰が得られた。
分娩時刻は第1子の娩出を確認できたもの66例中62例(92.4%)が照明期で,僅か5例(7.6%)が消灯期であった。第1子の娩出を確認できなかった推定例を加えた場合も,85例中79例(91.8%)が照明期の分娩であった。さらに分娩日に拘わらず,照明期の中でも特に11:00~15:00の間に分娩のピークが見られた。このことは分娩発来に光依存性の日周リズムが存在する可能性を示唆するかもしれない。
第1子娩出から全子娩出終了までの所要時間(Y,分)と産子数(X)については,44例中1例において261分という長時間のものがあったが,YとXとの間に有意の相関が認められ(0.348,P<0.05),その回帰直線はY=53.02+4.55Xとなった。
従来の報告との関連でこれらの結果について論議した。
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