家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
最新号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 金子 茂, 橋本 〓, 星 冬四郎
    1977 年 22 巻 4 号 p. 119-124
    発行日: 1977/02/05
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    脱落膜腫の黄体刺激作用について,偽妊娠の持続日数並びに卵巣静脈血漿中のプロジェスチン濃度を指標として検討し,次の成績を得た。
    1)脱落膜腫を形成させると偽妊娠期間は23.0日となり,偽妊娠4日目に子宮を摘出したもののそれ(19.3日)と比較し有意に長く,2)また偽妊娠7日目に脱落膜腫保有子宮角を摘出すると偽妊娠期間は17.4日に短縮し,子宮摘出ラットのそれと有意差は認められなくなった。3)一側卵巣に正常ラット卵巣2個分に相当する数の黄体を有する片側去勢ラットを用いて偽妊娠9日目における卵巣静脈血漿中のprogesterone(P)と2Uα-hydzoxypregn-4-en-3-one(20α-OHP)の濃度(μg/ml血漿)を測定した結果も同様で,脱落膜腫を形成させたものでは,P;2.82,20α-OHP;2.19で子宮摘出のもの(P;1.74,20α-OHP;1.00)に比して有意に高かった。4)また同様処置のものを更に偽妊娠7日目に脱落膜腫保有子宮角摘出あるいは下垂体摘出を行うと偽妊娠9日目には,Pはそれぞれ1.70及び0.25に減少し,20α-OHPはそれぞれ1.41及び3.60となった。
    以上の成績は脱落膜腫には黄体刺激作用があり,この作用の発現には下垂体の存在が必要であることを示唆する。
  • 梅津 元昭, 橋爪 一善, 正木 淳二
    1977 年 22 巻 4 号 p. 125-129
    発行日: 1977/02/05
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    幼若および成熟雌ラットに種々の量のTRHを皮下注射し,その後の血中TSH, LH, FSH量をラジオイムノアッセイにより測定し,以下の結果を得た。
    1.TSH値は幼若ラットでは,TRH投与量と関係なく投与後5分で上昇し,回復に要する時間は投与量の増加に従って遅延した。成熟ラットでは,2μg以下の処理では投与後30分,20μg以上では5分で上昇し,一方回復に要する時間は0.2,2~20μg処理ではそれぞれ60および120分であった。
    2.LH,FSH値はTRH投与によりほとんど影響を受けなかった。
  • II.排卵時期についての細胞学的観察
    石橋功 , 青木ひかる
    1977 年 22 巻 4 号 p. 130-138
    発行日: 1977/02/05
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    人工昼夜の条件下に飼育したラットに,種々の量の性腺刺激ホルモンを投与して過排卵を誘起した。HCG注射(暗黒開始)後12(8),16(12)および20(16)時間に殺し,排卵数を算定すると共に,卵巣はBouin氏液によって固定した。排卵数を目安として半数(各処置10匹のうち5匹)を選び,パラフィン包埋後約20μの切片とし,Heidenhain iron hematoxylin染色を行った。直径300μ以上の卵胞内卵子について細胞学的観察を行い,排卵時期を検討した。
    1.無処置ラットの排卵は,暗黒開始後8時間で殆ど完了するが,過排卵処置のものにあっては排卵時間の相当の遅延ないし延長が認められる。すなわち,殆どの卵子が排卵に至る時間は,PMS10i.u.処置:HCG注射後16(12)時間,PMS20i.u.処置:HCG注射後16(12)時間よりわずかに遅れるが20(16)時間より以前であり,PMS30~50i.u.処置:HCG注射後約20(16)時間と見積られる。従って排卵数の算定は,HCG注射後20時間またはそれよりいくらか遅い時間に行うのが適当と考えられる。
    2.直径約300μ以上の卵胞内卵子の総数に対する成熟途上卵と排卵数の合計の割合は, 50, 30, 20, 10 i.u.のPMSに対しそれぞれ同量のHCGを投与した場合において48.2, 35.6, 28.1, 19.2%であり,無処置の場合は15.8%であった。PMSに対するHCG量の減少に伴いこの割合は急激に低下するが,1/2量以上の場合においてその低下度は少なかった(同量投与を100とした場合の指数で92.5~97.8)。このことから,成熟ラットの過排卵誘起には,PMSに対し1/2(少なくとも1/3)量以上のHCGの注射が必要であると考えられる。
    3.PMS50, 30および20i.u.を前処置し,1/2量以上のHCGを注射した場合の,卵胞(300 μ<)内卵子の総数に対する成熟途上卵と排卵数の合計の関係は,r=0.787, 0.555, 0.288であった。この結果から,1回に誘起できる排卵数の限界は,卵巣に内蔵する大卵胞の数に大きく支配されることが示唆されるが,この問題については今後さらに検討を加えたい。
  • 長谷川 喜久, 菅原 七郎, 竹内 三郎
    1977 年 22 巻 4 号 p. 139-144
    発行日: 1977/02/05
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    本報では,ラットのimmunoglobulinの分離同定およびその物理化学的性質をしらべると共に,子宮液中のimmunoglobulinの存在様式の特異性について検討した。
    IgGとIgAは血清および初乳乳清から,塩析,gel ?? 過およびイオン交換column chromatographyによって分離された。それらの物理化学的性質の検討をdiscおよびSDS gel電気泳動,免疫電気泳動および蔗糖密度勾配遠心分離により行ったところ,IgGとIgAの分子量,それらのsubclassと免疫化学的性質が明らかにされた。
    子宮液中のimmunoglobulinについて,免疫化学的方法により同定したところ,IgGが著しく少なく,IgAと免疫化学的に共通であり,IgAより分子量の小さいimmunoglobulinが認められた。
  • 長谷川 喜久, 菅原 七郎, 竹内 三郎
    1977 年 22 巻 4 号 p. 145-149
    発行日: 1977/02/05
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,子宮液,血清,乳清および腸管液中の蛋白質を物理化学的あるいは免疫化学に検討し,子宮液と他の外分泌液の蛋白質との間の異同を明らかにした。
    ゲル炉過およびSDS gel電気泳動と免疫電気泳動により,それぞれの分泌液の蛋白質成分を明らかにし,immunoglobulinの存在とそれらのおおよその比率についての比較あるいは外分泌液の蛋白質の特異性について示した。乳清,子宮液および腸管液の蛋白質組成には血清蛋白質と共通した部分が認められるが,共通部分は乳清に最も多く,子宮液,腸管液の順であった。
    免疫化学的分析によれば,血清に存在しない子宮液蛋白質の8成分のうち2成分は乳清および腸管液の蛋白質と共通であった。
    以上の結果から,子宮液の蛋白質は,血清に見られない蛋白質成分の一部は他の外分泌液と共通であり他の大部分は子宮液に特異的であると推定される。
  • 花田 章, 岩本 雅幸, 浅井 孝康
    1977 年 22 巻 4 号 p. 150-156
    発行日: 1977/02/05
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    約180日令の性成熟前の雌豚計27頭に,PMSG 750 iuとHCG 500iuまたは合成黄体形成ホルモン放出ホルモンの類縁物質(LHRH-A)0.1mgをそれぞれ72時間間隔で分離投与し(処置法AまたはC),あるいはPMSG 400iuとHCG 200iuを混合1回投与し(処置法B),発情と排卵の誘起を試みると共に,処置開始後98時間で人工授精した場合の受精成績を比較検討した。また,処置開始後88時間でエストリオール(ET)10mgを投与した場合の影響についてもあわせて調査した(処置法A',B',C')。
    処置豚は全て外陰部の色調と腫脹の状態に変化を示し,その反応のピークは処置開始後約92時間から100時間にかけて認められた。しかし,雄を許容する状態の発情の誘起例は少なく処置豚の30%にとどまった。ET注射後,外陰部徴候はやや増幅されその影響は長時間持続したが,雄を許容する状態の発情の誘起には顕著な効果は認められなかった。その結果,人工授精時に外陰部からの精液の漏出なく注入できたのは処置豚の22.2%であった。
    処置開始後141時間でと殺したところ,B'区の2頭を除いて全て排卵が誘起された。排卵数は比較的少なく平均8.6個であったが,変異が大きく処置法間での差は認められなかった。卵回収率は処置法A,B,C区で96~100%と極めて良好であったが,ETを投与したA',C'区では50~62.5%の低い成績であった。受精卵は排卵した雌の80%から回収された。受精卵の全く認められなかった個体での不受精原因は,用いた処置法によるものではなく,原因不明の排卵遅延に主として起因するものと推察された。回収卵の受精率は,A区で有意に高かった(82%)ほかは処置法による差を認めなかった(総平均64.5%)。しかし,受精卵の発育ステージは用いた処置法によって異なった:CとC'区で最も発育が進み(61.4%は分割卵),ついでAとA'区(35.4%が分割卵)で,B区では全て前核期卵であった。この卵の発育差からみて,用いる処置法により排卵時刻に微妙な差が生ずる可能性があり,人工授精のタイミングに注意する必要のあることが示唆された。
    以上のような誘起排卵後に正常な発情周期の反復が認められるか,また高い受胎率と正常範囲の産子数が得られるかどうかについては目下検討中である。
feedback
Top