種々の保存液を用いてラット精液の保存実験を行い,次の結果を得た。即ち家畜人工授精に通常用いられる保存液はラット精液の保存に不適当で殆んどが1日以上に亘つて精子の生存を保持し得なかつた。
これに対し臓器のhomogenate diluentは非常に良好で,就中肝臓或は脳を0.9%NaCl液或は5%glucose液(209/dZ臓器濃度)で調製した液が最も秀れ,これらの液で5°Cに保存した場合は,肝臓-NaCl液では平均8日最長11日,肝臓-glucose液では平均7日,最長9日,脳-NaCl液及び脳-glucose液では各々同じく平均5.5日,最長8日間に亘つて生存精子が認められた。
更にこれら両臓器の液に就いて0°C~-1°C保存すれば,肝臓-glucose液は20日内外,最長24日,脳一glucose液では10日内外,最長16日に亘つて運動精子が存在し共に長期の保存に有効で5°C保存に於けるよりも更に精子生存日数を延長させ得ることが認められた。
しかし0.9%NaCl液で調製した両臓器液はこの0°~-1°C保存には不適当で2日後迄生存せる精子はなかつた。
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