家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
19 巻, 4 号
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  • 武石 昌敬
    1974 年 19 巻 4 号 p. 127-135
    発行日: 1974/03/29
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    胎児は母体の子宮内で母体一胎盤一子宮という栄養と内分泌の複雑な支配環境のもとで発育する。胎児の発育と内分泌の支配に関して, JOSTら1) およびDICZFALUSYら2~4) は, 動物の種によって, 内分泌活動の開始時期に差があり, さらにJOSTら1) はウサギについて, 胎児性腺の精巣は胎生の初期から内分泌活動を開始すると報告している。
    ウシ胎児の発育とその内分泌支配については, 雌雄双胎牛における雌牛のフリーマーチンの成因解明のため多くの研究がなされており, WITSCH5) は, corticomedu-l1aryantagonismの性分化説を唱えたのに対して,LILLIE6,7) およびKELLER & TANDLER8) は内分泌学的に胎生初期における精巣からの雄性ホルモンの分泌開始が卵巣の雌性ホルモンの分泌開始より早いため雄胎児の雄性ホルモンが循環血液によって雌胎児の副性器に作用し, その発育を抑制阻害するためであろうと推定した。その後, STRUCK9) によってウシの雄胎児の精巣は, 雌胎児の卵巣より早期に内分泌活動を開始し, 男性ホルモンの分泌が開始されることが明らかにされた。このようにウシ胎児の発育と内分泌との関係は, フリーマーチンの現象を主な対象として研究が進められてきた。
    著者は10), ウシ胎児の発育成長の経過と胎児性腺の発育およびその内分泌と副性器の発達経過などの関係について, 妊娠早期から分娩に至るまでの多数の屠場材料によって, 月令毎に胎児を形態学的ならびに内分泌学的に調査研究し, 胎児の発育と内分泌支配に関して多くの知見を得ることができた。
  • VII. 卵胞刺激ホルモン免疫血清の血清学的性状ならびに生物学的作用
    森 純一, 檜垣 繁光, 細田 達雄
    1974 年 19 巻 4 号 p. 136-142
    発行日: 1974/03/29
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    家畜におけるFSHのimmunoassayの基礎的検討を行なう目的で,羊FSHをうさぎに連続注射して免疫血清を作製し,その血清学的性状を検討するとともに,免疫血清によるFSHの生物学的作用の中和試験を行なった。
    1. 羊FSHは抗原性を有し,うさぎに連続注射することによって抗体を産生することが出来た。
    2. 未吸収FSH免疫血清は寒天ゲル内沈降反応において羊血清および各種臓器抽出液と反応を示したが,羊血清および肝臓抽出液で吸収後は下垂体のみと特異的に反応を示すようになった。
    3. 未吸収FSH免疫血清は寒天ゲル内沈降反応において,下垂体前葉ホルモソのうちFSH, LH, TSHと反応を示したが,羊血清および肝臓抽出液で吸収後にはFISHのみと特異的に反応を示すようになった。
    4. 未吸収FSH免疫血清は受動血球凝集反応において下垂体ホルモンのうちFSH, LH, TSHと反応を示したが,羊血清,肝臓およびLHで吸収後にはFSHのみと特異的に反応を示すようになった。
    5. 羊血清•肝臓•LH吸収FSH免疫血清は免疫電気泳動および寒天ゲル内沈降反応においてFSHとの間にただ1本の沈降線を形成した。
    6. FSH免疫血清は羊FSHの卵巣重量増加反応を抑制した。
  • 菅原 七郎, 竹内 三郎
    1974 年 19 巻 4 号 p. 143-146
    発行日: 1974/03/29
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    哺乳動物卵子の表面構造を解析するためにラット卵子を用い,SEMのための固定法やmount法について検討すると同時に受精界面における精子の侵入過程を追求した。
    その結果,ラット卵子では2.5%glutaraldehydeの固定だけで比較的良好な結果を得ることができた。Scanningの結果,ラット卵子のmicrovilliはTEMの結果と比較して短かくみえた。
    精子の卵子内(deutoplasma)への侵入はこれまで言われたように精子頭部の先端から貫入するのではなく,卵子表面に附着する状態ではいって行くものと考えられる結果を得た。
    また精子尾部も卵子表面に附着した後一定の部位で原形質膜ゆ合を起こし,卵子内にはいるものと考えられた。これらの結果を位相差顕微鏡やTEMの結果と比較論議した。
  • 西田 司一, 仲間 一雅, 稲場 範昭
    1974 年 19 巻 4 号 p. 147-149
    発行日: 1974/03/29
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    前報と同系統のラットの1970, 12~1672, 2に生れた子6,155頭の性比を調べ次のことを知った。
    総性比は49.8%(雄百分率)でかたよりは示さない。性比を月別にみると,第一,二次性比ともに,かたよりを示す月があるが,季節別にまとめると,第二次性比ではかたよりはみられず,第一次性比の冬でのみ雌へかたよる。今回の第二次性比を年度別にみると,第1年度では冬に雌へかたよるが,第2年度ではかたよりはみられない。前報と合わせると,冬に雌へかたよっている。
  • 佐藤 邦忠, 三宅 勝
    1974 年 19 巻 4 号 p. 150-152
    発行日: 1974/03/29
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    子宮内膜炎のため3~4年間不妊のサラブレット種雌馬2頭と中間種雌馬1頭の合計3頭に子宮内膜掻爬を実施し,臨床的,内視鏡的ならびに組織学的検討を加えたところ,つぎの知見を得た。
    1.子宮内膜掻爬後一般症状はもちろん子宮腔あるいは子宮頸管の癒着ならびに化膿などの異常は認められなかった。掻爬後20日以内に,全例卵巣に卵胞の成熟,排卵が認められた。
    2. 掻爬後4日目の子宮内膜所見は急性炎症像に類似したが, 10日目には子宮内膜上皮ならびに子宮腺の再生像が見られ,炎症像は軽減した。
    3. 子宮内膜上皮細胞ならびに子宮腺上皮細胞には掻爬後4日目にアルヵリ性フォスファターゼ活性,10日目にPAS陽性物質が顕著に認められた。
  • 伊藤 雅夫, 樋口 勝啓, 佐久間 勇次, 猪 貴義
    1974 年 19 巻 4 号 p. 153-159
    発行日: 1974/03/29
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    PMSとHCGを用いて成熟マウスに過排卵を誘起した場合の妊娠におよぼす過排卵処置の影響を明らかにする目的で,PMSおよびHCGの投与量と排卵数,着床数,胚の死亡率との関係を検討し,さらに,産子数を増加させることを目的とした場合のPMSおよびHCGの有効投与量を検討した。
    1. 過排卵処置後(HCG投与後雄と交配)の排卵陽性率は60~100%で,PMSおよびHCGの投与量との間には特定の傾向はみられなかった。
    平均排卵数はPMS 1IUでほぼ自然排卵数の11.7~14.3,PMS 5IUで19.0~25.4, PMS 101Uで29.6~41.0とPMS lIUから10IUの間でその平均排卵数は直線的に増加することが認められた。また,排卵数の増加はHCG併用量が高い場合において,より著しいことが認められた。
    2. 過排卵処置後の妊娠率は57.6~92.4%であり,対照区の正常動物に比べて有意に低下することが認められ,とくにPMS 10IUにECGを併用した場合に著しく低下することが認められた。
    平均着床数,生存胎児数は,HCGの併用量が0,1,5,10IUいずれの場合もPMS 51Uでもっとも高く13.7~21.6,12.6~17.3,と対照区の12.0,10.9を越える値を示したが,PMS 1,10IUではかえって対照区に劣ることが認められた。
    生存率は38.2~92.4%で総体的に過排卵処置により低下すること,さらにPMS単用区においてはPMSの投与量が増加するにしたがって高くなり,HCG併用区では逆に低下する傾向が示された。
    3. 過排卵処置後の平均排卵数と平均着床数から卵子の着床前の損失を推定すると,PMSの投与量が10IUで著しく高くなることが認められ,排卵数の約50%前後の卵子が失われることが示唆された。しかしPMSの投与量が5IUまでにおいては,排卵数と着床数の差は0.3~5.3で5IUまでのPMS投与が妊娠に及ぼす影響はさほど大きなものではないと思われた。
    4. 以上の結果から,産子数を増加させることを目的とした過排卵処置において,PMSおよびHCGの有効投与量は排卵数は自然排卵数の1.6~2.1倍に達し,その後の妊娠率や着床数あるいは胎児の生存率なども比較的高く,過排卵処置の妊娠に及ぼす悪影響がさほど大きくないと思われるPMS 5IUにHCGを適当量(この場合1~10IU)併用するのがもっとも良いと推察された。
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