家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
20 巻, 2 号
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  • 石田 一夫
    1974 年 20 巻 2 号 p. 45-51
    発行日: 1974/08/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    哺乳動物の卵子について, 物質代謝の機構を生化学的に解明することは, なかなか容易なことではない。ことに, 卵巣内の小卵胞中の卵子は摘出が困難で至難の業といわざるを得ない。組織化学は卵子中の成分含量や酵素活性を数値で表わせない欠点はあるが, 物質や酵素の分布を適確に知ることが可能である。最近, 方法の開発が著しく進んだので, 検出し得る物質や酵素の種類もかなり広範囲になった。哺乳動物卵子の組織化学的研究は,従来, 多くの研究者によって行なわれてきたが, なお,解明さるべき問題が数多く残されている。演者は, 哺乳動物の卵子に蓄積されている物質の発現と消長を, いろいろの発生時期において, また, いろいろの条件下において, 綿密に, 系統的に観察し, さらに, 関連酵素を検出することによって, 卵子の代謝機構を明らかにしようと試みた。ここに, 得られた成績の概要を報告する。
  • 太田 実, 梅津 元昭, 竹内 三郎
    1974 年 20 巻 2 号 p. 52-56
    発行日: 1974/08/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    Prostaglandin F(PGF)の乳牛の性周期と受胎性に及ぼす影響について検討するために実験を行なった。PGFを性周期の9日に,7頭は子宮体に5mg,3頭は同じく子宮体に10mg,1頭は黄体側子宮角に5mg,1頭は膣に5mgをそれぞれ1.Omlの生理食塩液に溶かして注入し,次の結果を得た。
    1)PGFF処置後の発情までの日数は注入部位別に子宮体,黄体側子宮角,腟でそれぞれ2.7±1.0日,.2日,2日であった。
    2)子宮体に注入した10頭の黄体の大きさはPGF注入当日2.3±0.4であったものが,注入後1日で1.5±0.5cm,2日目で1.2±0.3cmと急激に退行し,黄体に代わって卵胞が発育してきた。
    3)第1回発情で排卵が認められた頭数は子宮体5mg注入,子宮体10mg注入,黄体側子宮角注入,腟注入でそれぞれ4/7頭,3/3頭,1/1頭,0/1頭であった。
    4)処置後第1回発情で交配したところ,排卵を認めた8頭のうち6頭が受胎した。
  • ゲル ?? 過法と殿粉ゲル電気泳動法による分画成績について
    伊林 富男, 丹羽 太左衛門, 安田 泰久
    1974 年 20 巻 2 号 p. 57-61
    発行日: 1974/08/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    豚精漿蛋白における個体差,季節的変化および各副生殖腺液による差,および凍結融解に伴う変化を追求するため,Sephadex G-200によるゲル ?? 過法および殿粉ゲル電気泳動を行なったところ,つぎの成績が得られた。
    1.電気泳動によって,豚精漿には16~18本のバンドが認められ,豚の個体差がバンド数および易動度の違いとしてみられた。しかし,季節および凍結による変化はとくに認められなかった。
    2.ゲル ?? 過法によって,豚精漿蛋白の個体差はピークの濃度差として認められた。季節的変化については,秋期が夏期よりもピークAの濃度が高くなる傾向が認められた。
    凍結融解によって,ピークAは2つに分かれる傾向が認められた。
    3.各副生殖腺液の電気泳動像およびゲル炉過像をしらべた結果,精漿と精のう腺液との間には類似した成績が認められた。
    一方,精巣上体尾部抽出液および前立腺液には,主にピークBとCの分画が含まれ,ピークAは精のう腺液を主体とすることが認められた。
  • 中原 達夫, 金田 義宏, 百目鬼 郁男, 山内 亮
    1974 年 20 巻 2 号 p. 62-66
    発行日: 1974/08/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    放牧牛において,PGFの子宮内注入による性周期同調効果ならびに同期化された発情期における受胎性について検討して,次の成績を得た。
    1.放牧牛52頭(ホルスタイン種49頭,黒毛和種3頭)において,黄体期(黄体初期7頭,黄体開花期41頭,黄体後期4頭)に,蒸留水0.75ml溶解したPGF4mgあるいは6mgを,黄体の存在する卵巣と同側の子宮角に注入した結果,処置後2,3および4日目に集中してそれぞれ12頭(23.1%),28頭(53.9%)および5頭(9.6%)が発情した。残りの7頭(13.4%)は処置後9日ないし16日の間に発情した。
    2.試験対象牛52頭のうち14頭は,供試前の期間において無発情の,鈍性発情牛であったが,このうち2頭は微弱発情,12頭は明瞭な発情徴候を示したことが注目された。
    3.処置後2日ないし4日の間に集中して発情した牛45頭のうち,授精を受けたものは37頭で,このうち27頭(73.0%)が受胎した。
    4.以上の成績から,牛の性周期同調技術として,PGFの子宮内注入は優れた方法であることを認めた。
  • 石田 一夫
    1974 年 20 巻 2 号 p. 67-70
    発行日: 1974/08/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    浮遊期(排卵後3日7時間),方位決定期(4日13時間),侵入期(4日16時間,4日19時間)および卵筒期(5日7時間)のハムスター卵子について,AcidおよびAlk Pase(GOMORI金属塩法, BURSTONEアゾ色素法),LDH(NACHLAS, WALKER & SELIGMAN法)およびSDH(NACHLASらの方法)を組織化学的に検出した。
    Acid Pase活性は浮遊blastocystにおいてはTrにきわめて弱く,ICMでは強かった。ICMのAcid Pase活性は方位決定期の伸長したblastocystから著しく活性が低下した。TrのAcid Pase活性はTGCにおいてやや強くなった。浮遊blastocystはICM, Trともに強いAcid Pase活性を現わした。 ICMの活性は方位決定期において低下し,侵入期にさらに弱くなった。Trの活性は経時変化を示さなかった。LDH活性はいずれの時期の卵子においてもTrがICMより強く, SDH活性はいずれの種類の細胞においてもきわめて弱かった。
  • 百目鬼 郁男, 中原 達夫, 山内 亮
    1974 年 20 巻 2 号 p. 71-75
    発行日: 1974/08/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    HEAPのprogesterone測定法にTLCを導入し,さらに発色条件に2,3の検討を加え,これにより性周期における牛末梢血液中のprogesteroneを測定した。
    progesteroneと20β-hydroxyprogesterone(20β-OHP)の分離精製はTLCを応用し,n-hexane:ethylacetate=5:2を2回,benzene:ethylacetate=2:1を1回で展開して良い結果が得られた。
    20β-hydroxy steroid dehydrogenase 6μgはprogesterone 5μgを100%,10μgを87%20β-OHPに転換することを認めた。
    螢光強度は濃硫酸-ethanol=3:2,10分,60°Cで最も強く,かつ安定性のある螢光が得られた。本螢光の最大波長をspectrofluorometer Hitachi MPF-2AおよびType 203で測定した結果,励起光468nm,螢光525nmであった。この条件において20β-OHP,の最少検出量は2.5ngであった。
    黒毛和種4頭の頸静脈血中progesteroneは実験期間を通じて各性周期においてほぼ同じ消長型を示した。progesteroneは発情期に最低値0.2~0.8ng/ml,黄体期(排卵後8~20日)に最高値2.6~6.2ng/mlを示し,次の排卵前3~5日から急激に低下することを認めた。
  • 百目鬼 郁男, 中原 達夫, 山内 亮
    1974 年 20 巻 2 号 p. 76-80
    発行日: 1974/08/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    性周期における牛の末梢血中遊離estrogen測定にITTRICH螢光法を応用して次の成績を得た。
    Ittrich colorの最大波長をspectrofluorometer Hitachi MPF-2AおよびType203で測定した結果,励起光538nm,螢光552.5nmであった。この螢光特性はE1, E2およびE3にそれぞれ共通であった。実際の測定では最大波長が接近しているので感度は若干低下するが510~520nmで励起し•螢光側552•5±22•5nmを読み,ALLENの補正を行なった。この条件においてE1,E2およびE3-methyletherの最少検出量は1ngであった。回収率補正の目的で加えた6,7-3H-E2-17βの全過程における回収率は平均60.3±11.7%であった。正常性周期を示す黒毛和種2頭の頸静脈血についてestrogenを分画測定した。その結果,両牛共E1,E2の各消長型は性周期の全期間を通じてほぼ同じ傾向を示したが,E2はE1にくらべ全般に高値であった。またE3は検出されなかった。これらの牛のtotalestrogenは発情前期に増加し,排卵前に鋭いピーク(35.3および99.8ng/l;E15.9および16.0ng/l,E229.4および83.8ng/l)を形成し,排卵後は急激に減少して最低値(3.8~5.3ng/l;E11.6および1.9ng/l,E22.2および3.4ng/l)を示した。黄体期の最高値(10.1および27.0ng/l;E12.4および3.4ng/l,E27.7および23.6ng/l)は排卵後6~8日に認めた。すなわちestrogenの血中濃度は性周期の間に2つのピークを形成することを認めた。
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