1. 牛,馬,山羊および豚の精子のacrosomic system (acrosomeと頭帽)の形成過程をPAS染色を用いて追求した。供試した家畜の精子完成はきわめて類似し,acrosomic granule形成期,頭帽形成期(前期および後期), acrosome形成期(前期および後期),成熟期の4期に大別された。形成過程の大要はつぎのようであつた。
acrosomic granule形成期:ゴルジ体に発生したproacrosomic granuleを入れたproacrosomic vesicleは融合して1個のacrosomic granule を内封したacrosomic vesicleとなつた。
頭帽形成期:前期ではacrosomic vesicleが扁平となり,同時にacrosomic vesicleの内容液が濃縮してacrosomic granuleの発育とPAS陽性小板の形成が行なわれた。後期ではacrosomic vesicleの壁がacrosomic granuleとPAS陽性小板に密着し,頭帽が形成された。頭帽は核膜にそつてほぼ核の半ばをおおうまで伸長した。
acrosome形成期:前期では細胞質が核の尾側部へ移動するとともに, acrosomic systemが精細管壁に対するように位置を変え,続いて核が細長化した。後期では核が細長化と併行して扁平化する。同時にacrosomic granuleも扁平化して半月状のacrosomeとなり,その後,鈎状変化を経て縮小し,頭帽前縁の細い三日月状の濃染部分となつた。
成熟期:acrosomic systemには著変なく,細胞質が離脱して精子となる。
2. 牛および豚の射出精子をオルト液で固定し,緩衝ギムザ染色を行ない, acrosomic systemを調べた。
acrosomic systemの異常は膨化,欠損,染色異常,形成不全,その他に分けられ,その異常精子の出現率は牛が14.1%,豚が4.3%で,牛に比べ豚が著しく低く,両者のあいだに高度の有意差が認められた。
acrosomic systemの形成不全は反転,舌状,肥厚,突出,その他に分けられ,その種類は障害をうけた精子完成の時期と関連していた。
雄豚間のacrosomic systemの異常率に有意な差が認められたが,雄牛間には認められなかつた。
他の奇形を伴わないacrosomic system異常精子の出現率,すなわち,従来正常精子とみなされていたacrosomic system 異常精子の出現率は牛では5.9%,豚では2.3%であつた。
本報告の概要は昭和37年度秋季家畜繁殖研究会に発表した。なお,この報告の原著論文は畜産試験場研究報告に一部は掲載され,他は近く掲載されることをここにお断りしておきたい。
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