家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
21 巻, 1 号
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  • II.黄体退行因子の産生時期
    中原 達夫, 百目鬼 郁男, 山内 亮
    1975 年 21 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1975/05/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    牛において子宮粘膜から炎症に起因して産生されると考えられる黄体退行因子の産生時期を検討して,次の成績を得た。
    1.ルゴール氏液(ヨード:ヨードカリ:蒸留水=1:2:300)の子宮内注入によって誘起された子宮粘膜の炎症性損傷は,処置後3~4日に組織学的にほぼ完全に修復することを認めた。
    2.排卵後3日,5日および7日目から9日目まで,ルゴール氏液を1日2回,連日,子宮内に注入して,この間子宮粘膜の炎症性損傷の修復を阻止すると性周期はいずれも平均17.0~18.0日に短縮した。この性周期の長さは排卵後9日目に1回処置した場合のものとほぼ等しかった。
    3.排卵後3日目から9日目までの連続子宮処置において,3日目の処置後3日間この処置を中断して,この間子宮粘膜の炎症性損傷の修復を許した場合の性周期は,排卵後3日目に1回処置した場合のそれとほぼ等しく,平均10.0日であった。しかし中断の期間が1日あるいは2日の場合の性周期は平均16.5日で,連続的に処置した場合のそれとほぼ等しかった。
    4.排卵後13日目に1回処置してさらに4~8日後に再処置した場合の性周期は,両処置の間隔が4日の場合には延長し,6日の場合には延長するかあるいは正常であり,8日の場合には正常であった。
    5.これらの成績は,子宮粘膜の炎症に起因して産生される黄体退行因子は,炎症性損傷の修復過程,あるいは完全に修復した後の子宮粘膜で産生され,かつその時期は黄体初期では炎症誘起後3~4日であるが,これに比べて黄体後期においては若干遅れることを示している。さらにこの黄体退行因子は産生後約1日の短期間に黄体を退行させうる強力な作用を有することが示唆された。
  • 塚田 努, 池本 安夫, 川口 擁, 今道 友則
    1975 年 21 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 1975/05/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    FSHの排卵作用を利用して軽種馬の卵巣疾患の治療を試み,高純度FSH剤Antrinの筋注を行なって次のような成績を得た。
    1.卵胞嚢腫の馬16頭に20~40 A. U.を筋注した結果,嚢腫は処置後平均8.5日に大部分が排卵し,一部が退行消失して全例が治癒した。妊娠したものは不交配妊否不明の4頭を除いた12頭中8頭(66.7%)であった。
    2.排卵障害の馬30頭に10~40 A.U.を筋注した結果,処置後平均2.6日に28頭(93.3%)に排卵を誘起した。このうち妊否不明の2頭を除く26頭中19頭(73.1%)が受胎した。注射用量別の排卵誘起率は,10A.U.で71.4% (5/7頭), 20 A.U.で100% (22/22頭), 40 A. U. で100呉(1/1頭)であった。
    3.以上の成績から,馬の排卵障害に対してFSHを筋注する場合,10 A.U.でも排卵を誘起できるが,効果を確実にするには20 A. U. が適量であること,卵胞嚢腫に。は,嚢腫形成後の経過日数が短い症例には20 A. U.で十分の治療効果が期待できること,かつ馬においてもFSH には排卵誘起作用があることが明らかになった。
  • 塚田 努, 池本 安夫, 川口 擁
    1975 年 21 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 1975/05/30
    公開日: 2009/08/14
    ジャーナル フリー
    軽種馬の卵胞発育障害(主に無発情,一部微弱発情)54頭に対して, PMS・HCGの併用とPMS, HCGモれぞれれ単用による筋肉注射療法を行なった。卵巣が正常の大きさにあって卵胞が発育しないかあるいは小卵胞の発育~消退がみられて無発情または微弱発情を呈する症例に, GTHのみによる療法を試みた。いっぽう,卵巣が萎縮硬結しているものおよび卵巣に黄体様のものが存続して無発情を呈する症例に, GTHと子宮処置療法を併用した。
    1. PMS 5,000I.U.・HCG 5,000 I. U.併用群では91.4% (32/35頭), PMS 5,000 I. U.・HCG油剤2,500 I. U.併用群では64.3% (9/14頭), PMS 5,000I. U.単用群では50% (1/2頭), HCG油剤2,500 I. U.単用群では33.3% (1/3頭)の発情誘起率であった。
    2.水溶性PMS・HCG 併用群ならびにPMS・HCG油剤併用群について, GTHのみによる療法とGTH・子宮処置併用による発情誘起率を比較したところ, GTH療法が80.0% (20/25頭),GTH・子宮処置療法が87.5% (21/24頭)であった。
    3. 軽種馬の卵胞発育障害に対するGTH療法としては, PMS 5,000 I.U.・HCG 5,000 I. U.を同時に筋肉注射し,もし卵巣に。反応が認められない場合に。は10~14日後に。さらに同量(あるいは2倍量)を追加注射する高単位GTH療法が優れている。
  • 金田 義宏, 中原 達夫, 百目 鬼郁男
    1975 年 21 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 1975/05/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    肉用牛40頭(日本短角種24頭,黒毛和種16頭)において,黄体期に生理食塩液2.5mlあるいは5.0mlに溶解したprostaglandinF(PGF)6mgを黄体の存在する卵巣と同側の子宮内に注入(A群15頭)あるいはこれと同時にPMS500IUを筋肉注射(B群25頭)して,処置後の発情発現状況および初回発情時の受胎性を検討して,つぎの成績を得た。
    1.発情発現は,A群では処置後61~72時間に8/15頭(53.3%),B群では49~60時間に11/25頭(44.0%)に集中して起こり,PMSの併用によって発情発現までの時間が短縮することを認めた。しかし,処置後37~96時間に発情が同期化したものは,A群で12/15頭(80.0%),B群では20/25頭(80.0%)で,両群の問に差違はみられなかった。なお,PGFの溶解液量5.0mZ使用群では2.5ml使用群と比べて発情発現が若干遅れる傾向を認めた。
    2.発情が同期化した牛における発育卵胞(直径8mm以上)数は,A群で平均1.2個(1~2個),B群では平均1.5個(1~3個)で,このうち排卵したものはB群の1頭が2個であったほかはいずれも1個であった。
    3.処置前の授精回数が0あるいは1~2回の牛において,同期化した発情期の授精による受胎率はA群では75.0%(9/12頭),B群では62.5%(5/8頭)であった。しかし,3回以上の授精を受けていた牛における受胎率は33.3%(4/12頭)でかなり低かった。
    4.以上の成績から,PGF子宮内注入と同時に低単位のPMSを投与した場合,処置後発情発現は早期に起こるが,性周期の同調効果および同期化された発情時における受胎成績は,PGF単一投与の場合のそれと大差ないことを認めた。稿を終わるに当って,本試験に使用したPGFを御提供下さった冨土薬品工業株式会社,ヒ。一メックスを御提供下さった三共ゾーキ株式会社,ならびに試験実施にあたって御協力戴いた農林省奥羽種畜牧場池田森男場長はじめ関係職員各位に衷心より感謝の意を表します。
  • 中原 達夫, 百目 鬼郁男, 金田 義宏
    1975 年 21 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 1975/05/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    牛においてPGF を筋肉注射した場合に,黄体を退行させうる本剤の最小有効用量ならびにこの投与法によるPGFの発情同期化効果について検討して,次の成績を得た。
    1.体重が平均421kgの実験牛において,排卵後7~14日の黄体開花期に,蒸留水5mlに溶解したPGF6~30mgあるいはプロピレン•グリコール5mlに懸濁したPGF8~10mgを筋肉注射した結果,黄体は処置後急速に退行して,これに伴って新たな卵胞の発育が起こり,処置後4~6日,大多数は4日に排卵した。しかし蒸留水に溶解したPGF 5mg あるいはプロピレソ•グリコールに懸濁したPGF 4~6mgを注射した場合には,大多数の黄体は退行しないか,あるいは処置後1~4日の間に軽度に萎縮した後再び発育を開始して,結局,性周期に著しい変化がみられなかった。これらの成績から,PGF を筋肉注射した場合に黄体を確実に退行させうる本物質の最小有効用量は,蒸留水に溶解したPGFでは6mg,プロピレン•グリコールに懸濁したPGFでは8mgで,両者の間に著しい差違のないことを認めた。
    2.体重が平均337kg(275~413kg)の放牧牛17頭(ホルスタイン種未経産牛10頭,日本短角種未経産牛7頭)において,黄体期に蒸留水5mlに溶解したPGF 10mgを筋肉注射した結果,処置後2~5日の間に12頭(70.6%)に発情の発現がみられた。残りの5頭のうち3頭においては処置後2~4日の間に黄体は退行して新たな卵胞が発育したが,発情,排卵は処置後7~9日に遅れて起こった。他の2頭においては黄体の退行はみられなかった。これらの成績から,蒸留水に溶解したPGFの筋肉注射によって,牛の発情,排卵を同期化することが可能であることを認めた。
  • 橋爪 一善, 菅原 七郎, 竹内 三郎
    1975 年 21 巻 1 号 p. 28-36
    発行日: 1975/05/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ラットにおける後分娩排卵の支配機構を明らかにするため,排卵ホルモソ(ON)放出の時期と卵胞の発育•成熟過程について検討した。
    後分娩排卵は分娩終了時刻が10時から20時までの個体では分娩終了後12時間目に始まった。この排卵を予想される卵胞は,分娩終了時すでに排卵数とほぼ同数が存在していた。そしてこの卵胞は,分娩の前日から急激に発育するものと思われる。また,OH放出から排卵に至るまでの卵胞内卵子核の成熟分裂過程は,性周期における排卵の場合とほぼ同様であった。さらに,卵子の成熟分裂過程から,分娩が10時から20時までに終了した動物では,分娩終了後2~4時間の間にOH放出の始まることが推察された。
  • III. 性周期におけるvaginalsmear所見
    筒井 敏彦
    1975 年 21 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 1975/05/30
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    実験犬32頭における発情出血,外陰部の変化およびV.S.所見は以下のとおりであった。
    1.発情出血所見
    発情出血開始時の漏出液は暗赤色または赤褐色,粘稠で漸次増量するが,発情前期の後半から発情期の前半で漏出液は淡赤色となり,量が減少して,発情期の後半には見られなくなった。しかし,実験犬の1/3は発情終了後も4~10日間,暗赤色,粘稠の血様粘液を少量漏出した。
    2.外陰部の所見
    外部陰の腫大は,早いもので発情出血開始61~70日前から徐々に始まり,21~30日前までに実験犬の約70%にみられた。この外陰部の腫大は,とくに発情前期の3~4日頃から著明となり,その後半に最高に達し,この状態を発情期の中頃まで持続し,その後徐々に縮小した。
    3.Vagina18mear所見
    実験犬32頭について,発情出血開始3ヵ月前から発情終了後10日まで約130日間のV.S.を観察し,次のような成績が得られた。
    1)発情出血開始前:中性多核白血球,有核腟上皮細胞や角化細胞は常に少数出現しているが,後2者は発情出血の始まる約1~1.5ヵ月前から約2/3の犬において僅かに増加がみられた。赤血球は発情出血の始まる約1.5ヵ月前に数日間僅少出現し,発情出血の認められる平均7日前からV.S.中に少数出現し始めた。
    2)発情前期:角化細胞は徐々に増加し,有核腟上皮細胞および中性多核白血球は,この期の後半で大部分は消失した。赤血球も前半は多数出現するが,後半は徐徐に減少した。
    3)発情期:有核腟上皮細胞,中性多核白血球はこの期の後半から再び出現し始めた。中等度に出現していた角化細胞は後半から約半数の犬において減少した。不鮮明に染色された赤血球が少数出現するものや,まったく消失しているものが,それぞれほぼ同数認められた。
    4)発情終了後:有核腟上皮細胞,角化細胞は少数みられるが,中性多核白血球は約半数のものにおいて一過性に増加した。また,血様粘液の漏出がないにもかかわらずV.S.中に赤血球の存在することを認めた。
    以上のごとく,大部分の犬においては,V. S.中に出現する各種細胞が卵巣周期と関連して周期的に変動することを知った。しかし,若干の犬(5頭,13%)では判然とした細胞の出現消長はみられないので,V. S.のみによって発情の各期を正確に判定することは困難である。
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