家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
12 巻, 3 号
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  • 杉江 佶
    1966 年 12 巻 3 号 p. 73-80
    発行日: 1966/12/22
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    1) 牛の過剰排卵誘起処置において, 黄体期の各期に,機能的な黄体を除去したのち, PMSとHCGのgonad-otrophin処置を実施した群, 性周期の末期の黄体が消退する時期に, 消退中の黄体を残したままgonadotrophin処置を行なった群, およびestrogenを前処置して卵巣機能を1時的に抑制したのちにgonadotrophin処置を施した群, などでは, 一定して多数の受精卵を採取することができなかった。性周期の16,7日にPMSを注射し, PMS注射後卵胞が発育を開始する時期にestradiolを注射し, 発情の出現をまって授精とHCGの静脉注射を行なう, あらたに開発した方法で, 発育程度の揃った多数の受精卵を, かなり一定して採取することができた。
    2) 採卵に関する実験において, 採卵成績は, 排卵数の多寡によって異なり, 排卵数が1卵巣あたり, 18コ未満, 1頭あたり40コ未満の場合に, 採卵率が高い。また, 受精卵は, 排卵後4日目に75%, 5日目には,ほとんど大部分が, 子宮に下降するが, 屠殺や開腹手術せずに, 子宮洗滌によって採卵する場合には, 排卵後4日目, 5日目に行なった子宮洗滌では卵子を採取することが困難で, 6日目に至って初めて採卵できた例が増した。しかし, 採取された卵子の数は, きわめて少なく,まだ満足できる方法は開発できていない。また同一個体について毎日継続して子宮洗滌を実施しても, 最初の洗滌で採卵できないかぎり, その後の洗滌で卵子を採取できた例はなかった。
    3) 受精卵の移植に関する実験においては, 開腹せずに牛の子宮内に卵子を移植することができる特殊な牛用の卵子移植器具を考案した。この器具は, 組になった3本のプラスチック管と, 2本の長い注射針からなり, 移植時に子宮頸管に刺激を与えることをさけるために, 膣壁を刺し貫いて子宮角に達し, 外側の針先から炭酸ガスを吹き出しながら子宮腔をさがしあて, 卵子を子宮腔に注入するように造られている。この器具を用い, 2頭の牛に受精卵を移植し, 2頭とも受胎させることに成功した。そのうち, 採卵も移植も, まったく牛を開腹することなく, 非手術的に実施した1組で, 初めて移植した受精卵から発育した子牛を生産することに成功した。この方法は, 家兎卵の牛子宮内移植や, 山羊の受精卵移植などの予備試験により, 容易に, かつかなり成功率が良く, そのうえ子宮の損傷も少なく, 牛の子宮腔に卵子を注入することができ, 移植した受精卵の受胎を妨げないことを知った。
  • 岸 昊司
    1966 年 12 巻 3 号 p. 81-83
    発行日: 1966/12/22
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    サイレージ多給飼養が乳牛の繁殖性に及ぼす影響を知る目的で,2頭のホルスタイン種経産牛についてサイレージ多給時の性周期における血液中の性ホルモンの消長と生殖器の変化を調べ,次の結果を得た。
    1.血中遊離estrogenは発情期および黄体開花期にピークを示し,正常牛の性周期におけるestrogenの消長と一致した。
    2.血中遊離progesteroneは発情期には低く,黄体開花期に増量を示し,正常牛の性周期におけるそれと同様の傾向を示した。
    3.卵巣所見および発情徴候は正常と考えられた。
  • 橋本 和典
    1966 年 12 巻 3 号 p. 84-88
    発行日: 1966/12/22
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    牛の原精液219例の細菌汚染の実態を調査して,つぎの結果をえた。
    1.原精液の細菌汚染度は高く,その混入菌数は2×103コ/mlから1.7×107コ/mlにわたってており,106コ/mlをこえるものが21.7%に認められた。しかし採精前に包皮腔洗浄を行なった精液では,無洗浄採取精液に比べて混入菌数は明らかに減少していた。
    2.原精液から検出された大部分の細菌はいわゆる非病原菌であり,主として包皮腔内付着菌の混入によるものであり,原精液の細菌汚染防止には採精前の包皮腔洗浄が有効であることが実験的にもうらがきされた。
    3.包皮腔洗浄はたんに原精液の細菌汚染度を減少させるばかりでなく,希釈精液に添加した抗生物質の細菌抑制効果を助長し,清浄な精液の供給に有益であることを論じた。
  • 橋本 和典
    1966 年 12 巻 3 号 p. 89-94
    発行日: 1966/12/22
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    牛の希釈精液527例の細菌汚染の実態を調査し,つぎの結果をえた。
    1.牛の希釈精液の細菌検出率は1957年から1961年の問に28.6%から56.2%を示し,年年増加の傾向がみられた。
    2.Penicillinおよびstreptomycinを添加した希釈精液は,無添加希釈精液にくらべて細菌検出率および検出菌数も少なく,採精前の十分な包皮腔洗浄と抗生物質添加の併用が,精液の細菌汚染の防止に有効であることを確認した。
    3.希釈精液から検出されたおもな菌種は,Achro-mobacter, Yeasts, Pseudomonas, Alcaligenesなどであり,無添加精液ではこれらのほかE. coli, Proteusの検出頻度も高かった。
  • 大沼 秀男, 大槻 清彦
    1966 年 12 巻 3 号 p. 95-99
    発行日: 1966/12/22
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    位相差顕微鏡で精子形態検査を行なう方法について検討した。
    1.牛,豚および兎の精液塗抹標本をオルト液で2時間以上固定し,水で封入して観察すると生きている精子にほぼ近い所見がえられ,また,精子各部の識別ができるので,精子の形態異常の判定は容易であって,形態検査が可能であった。
    なお,使用する位相板はPLLが最も適していた。
    2.精子の形態は牛,豚および兎とも非常に似ていたが,動物間にいくぶん相違があった。すなわち,PLLで観察した場合,牛と豚のacrosome capは前縁だけがやや暗かったが,兎では遊離縁全体がU字状に暗かった。また,兎では赤道帯の前縁にそって巾広いやや暗い帯状の構造があったが,牛と豚には認められなかった。
  • 正木 淳二, 富塚 常夫, 毛利 秀雄
    1966 年 12 巻 3 号 p. 100-104
    発行日: 1966/12/22
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    1.家畜精子の呼吸および活力に及ぼすグリセリンおよびグリセロリン酸添加の効果をしらべた。精子は精子用リンガー液で2回洗じようし,グリセリンは0.01M,グリセロリン酸(αおよびβ)は0.01M,または0.02Mになるように添加した。精子の呼吸はワールブルグ検圧計で37°C3時間測定し,牛6例,めん羊2例,やぎ5例,豚3例,馬2例(うち1例は全精液を使用),うさぎ2例(2例とも7匹分の精液を混合)について成績を得た。このうち一部の試料については,併せて精子のグリセリン消費量および活力をしらべた。
    2.牛およびめん羊精子では,グリセリン添加により酸素消費量が著しく増加した。グリセロリン酸でも効果がみられれたが,0.01Mではグリセリンよりやや劣るようであった。しかし,精子の運動性はいずれも非添加区にくらべてすぐれていた。
    3.グリセロリン酸は,やぎ,豚,馬,うさぎ精子に対しても呼吸を促進し,運動性に対しても馬およびうさぎを除き明らかな効果がみられた。これに反しグリセリンは,豚精子の呼吸に対して効果が少なく,馬およびうさぎ精子にはほとんど影響を与えなかった。また,やぎ精子に対しては効果が一定しなかった。
    4.牛およびめん羊精子のグリセリン消費量はやぎ精子よりも多く,また豚精子の消費量はほとんど0に近かった。
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