放牧牛61頭(ホルスタイン種48頭,日本短角種13頭)において,黄体期に蒸留水0.75m
lあるいは1.0m
lに溶解したprostaglandin F
2α(PGF
2α) 3 mgあるいは4 mgを黄体の存在する卵巣と同側の子宮角内に注入した後,52~56時間に合成LH-RH200μg(A群16頭)あるいは合成LH-RHの類縁物質(ノナペプタイド)200μgを筋肉注射(B群13頭)して,処置後の発情発現と排卵の状況および初回発情の受胎性を,PGF
2α子宮内注入単一処置(C群32頭)のそれと比較検討して,つぎの成績を得た。
1. 発情発現は,処置後37~72時間にA群では10/16頭(62.5%),B群では10/13頭(76.9%),C群では26/32頭(81.3%)に集中して起こった。また,処置後73~108時間に発情したものは,C群の2/32頭(6.2%)のみでA,B両群ではみられなかった。
2. 処置後132時間以内に無発情排卵を示した牛が,A群では6/16頭(37.5%),B群では3/13頭(23.1%)にみられ,C群の1/32頭(3.1%)と比べてかなり多かった。
3. 排卵は,A群では処置後73~96時間に12/16頭(75.0%),B群では61~84時間に11/13頭(84.6%),C群では85~108時間に17/29頭(58.6%)に集中して起こった。また,処置牛の80%以上のものが排卵した時間帯は,C群と比べてA群では12時間,B群では24時間短く,合成LH-RHの併用によって排卵は早期に,しかも短い時間帯に集中して起こることを認めた。
4. 処置後3~5日の間の授精により,発情徴候を発現した牛ではA群で6/9頭(66.7%),B群で6/10頭(60.0%),C群で21/28頭(75.0%)が受胎した。いっぽう,無発情排卵牛では,A,B,C各群でそれぞれ0/4頭,1/3頭,1/1頭が受胎した。
5. 以上の成績から,PGF
2αと合成LH-RHの併用によってかなり効果的に排卵を同期化することが可能なことを認めたが,この処置によって生ずる無発情排卵ならびにこれらの牛の低受胎性の原因については,今後の追究を必要とする。
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