家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
16 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • I. Ca欠KRP液保存における糖,グリシン,牛乳および卵黄添加の影響について
    黒田 治門, 広江 一正
    1971 年 16 巻 4 号 p. 113-117
    発行日: 1971/06/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    イヌ精子の生存性に関して,Ca欠KRP液保存における糖,グリシソ,牛乳および卵黄添加の効果について検討した。
    1. Ca欠KRP液のイヌ精子に対する保存効果は小さく,全実験を通して最長生存日数は日7であった。
    2. Ca欠KRP液保存において糖添加は,イヌ精子の生存性延長に対して効果は少ない。
    3. Ca欠KRP液保存において,牛乳添加に比べて卵黄添加の方がイヌ精子の生存性に対して有効である。
    4. グリシンはイヌ精子に対して卵黄と併用しなければむしろ有害である。
  • II. 稀釈液の組成について
    黒田 治門, 広江 一正
    1971 年 16 巻 4 号 p. 118-125
    発行日: 1971/06/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    イヌ精子の保存に関して稀釈液の組成について実験を行なった。
    1. 実験Iでは塩化マグネシウム,塩化カリウム,第2燐酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムから成る基本液に,クエン酸ナトリウムおよび酒石酸カリウム•ナトリウムをそれぞれ加えた緩衝液に対して,卵黄(20%)および牛乳(50%)を加えた稀釈液でイヌ精子の保存試験を行なった。その結果,基本液に卵黄および牛乳を加えた場合は,稀釈直後の生存指数は74から66の間で,実験Iでは最もよい成績を示したが,生存日数は3日以内であった。基本液にクエン酸ナトリウムを加えると,稀釈直後の生存率は低下したが,生存日数は4日であった。酒石酸カリウム•ナトリウムはイヌ精子の保存に有効でなかった。
    2. 実験IIでは塩化カリウム,第2燐酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムから成る基本液にグリシソ,ペプトソ,卵黄および牛乳をそれぞれ加えた稀釈液を用いてイヌ精子の保存効果を検討した。
    基本液にペプトンとグリシンを添加した場合,ペプトンを1g/100 mlの割合に加えると,稀釈ショックが防止され,生存日数は16日に大幅に延長された。しかし,保存第1日目に生存指数は半減するので,さらに組成を改良する必要がある。イヌ精子に対する保護効果は牛乳よりも卵黄の方が優れている。
    3. 実験IIに用いた稀釈液でイヌ精子に対するクロールプロマジンの保存効果を検討した。クロールプロマジンを稀釈液に5mg/100 mIの割合に添加した場合,基本液にペプトン,グリシンおよび卵黄を加えた稀釈液において,実験IIの成績よりも若干生存率がよくなった。
  • 石島 芳郎, 石田 一夫
    1971 年 16 巻 4 号 p. 126-132
    発行日: 1971/06/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    過排卵処理によって家兎の卵巣に生じた血胞の種類と日数経過にともなう変化を肉眼的ならびに組織学的に観察して次のような成績を得た。
    1. 過排卵処理をほどこした日数の浅い卵巣においては,肉眼的に巨大卵胞と血胞が多数みうけられた。血胞の大半は大型のもので,血液の充満しているものと少ないものとに区別された。巨大卵胞は処理後7日で消失して認められないが,血胞は30日まで存在した。処理後50日以降の卵巣においては血胞は完全に消失し,陳久性の黒色出血斑が若干認められたにすぎなかった。
    2. 血胞は組織学的に,穎粒層の消失している血胞(嚢様血胞)と穎粒層が黄体化している血胞(黄体化血胞)に大別された。また,穎粒層の残存している血胞が処理直後の卵巣にみられたが,これは嚢様血胞または黄体化血胞に移行するものと考えられる。黄体化血胞は処理後15日頃まで存在していたが,後に,ヘモジデリソの沈着した間質腺に移行した。嚢様血胞は黄体化血胞より長く存在していた。処理後60日の卵巣では血胞やヘモジデリンは完全に消失して認められなかった。
    処理直後の卵巣中の血胞にはヘモジデリソの出現はないが間もなく出現し,50日頃までみられた。出現部位は,はじめ血胞内,卵胞膜の周辺部であったが,次第に血胞外の周辺組織に浸出し,間質腺の形成にともない,大部分はその中心附近に沈着していた(ヘモジデリン沈着性間質腺)。このヘモジデリン色素は鉄に糖蛋白質が結合しているものと考えられる。なお,出血した赤血球は次第にSudan好性になり,過沃素酸Schiffで陽性化した。ヘモジデリソ沈着性間質腺は正常のものにくらべると,中性脂肪とコレステロールを多く含んでいた。一般の間質腺は処理直後の卵巣には少ないが,日数の経過にともなって漸次増量した。処理卵巣全体をつうじて,卵胞の発達はみられなかった。
  • 高橋 和明, 信永 利馬
    1971 年 16 巻 4 号 p. 133-139
    発行日: 1971/06/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    午前5時点灯,午後7時消灯するように照明時間調節をされた飼育環境で,正しく4日性周期を描いているIVCS系マウスの腟垢像がIV期(発情後期)を示す日の午後4時,7時,10時およびV期(発情間期)を示す日の午前1時,4時,7時,10時にestradiol(1μg,0.1μg)をそれぞれ単一皮下投与し,I期(発情前期)予定日の午前1時から午後4時の間にエーテルと殺し,排卵の有無を観察した結果次の成績を得た。
    1) IV期の日の午後10時にestradiol 1μgあるいは0.1μgを投与した場合,高率に排卵の誘発が認められた(Fig.1&2)。
    2) estradiol投与後の排卵時間について,V期の日の午前1時にestradiol1μgを投与し経時的に検討した。投与量や投与時間によって多少異なるかもしれないが,estradiol投与マウスはI期予定日の午前4時から6時の間で排卵した(Fig.3)。
    3) estradiol(1μg,0.1μg)投与群の排卵誘発陽性のための投与の時間帯はIV期の日の午後7時からV期の日の午前7時までであった(Fig.4&5)。
    なお本稿の概要は1970年秋季家畜繁殖研究会において報告した。
  • 辻井 弘忠, 菅原 七郎, 竹内 三郎
    1971 年 16 巻 4 号 p. 140-146
    発行日: 1971/06/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ラットの種々のホルモン状態下における子宮分泌液中の遊離アミノ酸を定量した。16種のアミノ酸が,すべての状態下で同定された。またラットの子宮液中の遊離アミノ酸は,家兎と異なってグルタミソ酸が多く存在することを認めた。また着床前後に子宮液中の遊離アミノ酸が高まることを認めた。子宮分泌液の遊離アミノ酸と血清の遊離アミノ酸の間には,一定の関係はみられなかった。
  • I. 精巣上体精子による受精成績
    豊田 裕, 横山 峯介, 星 冬四郎
    1971 年 16 巻 4 号 p. 147-151
    発行日: 1971/06/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ICR-JCL系成熟雄マウスの精巣上体尾部から採取した精子と,HCG注射後16~17時間の成熟雌マウスの卵管膨大部から採取した過排卵卵子を用いて体外受精を試み受精の初期の過程を観察した。培養液としてはKrebs-Ringer-Bicarbonate液を基本としたものを用い,5%の割合で炭酸ガスを混じた空気の下に37°Cで1/2~5時間培養した。その結果,培養開始後30分では卵子への精子侵入(透明帯通過)は認められなかったが,1時間後には約23%の卵子に侵入がみられ2~5時間後に検査された331個の卵子の約94%に精子侵入がみられた。このうち卵細胞内に明らかに精子が認められ受精の初期の過程にあると認められたものは294個(88.8%)であった。
  • II. 精子侵入時期に及ぼす精子体外培養の効果
    豊田 裕, 横山 峯介, 星 冬四郎
    1971 年 16 巻 4 号 p. 152-157
    発行日: 1971/06/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ICR-JCL系成熟雄マウスの精巣上体尾部から採取した精子をKrebs-Ringer-Bicarbonate液を基本とする 培養液内に懸濁させ,5%CO2,95%空気,温度37°Cの条件で3~120分の種々の時間培養した後,体外受精に供した。卵子としてはHCG注射後16~17時間の過排卵卵子を用いた。その結果,体外に培養された精子は雄から採取直後の精子よりも早く卵子に侵入することが明らかとなり,in vitroにおいてマウス精子の受精能獲得が起こることが示唆された。
    追記: 本報の投稿後に知ったIwAMATSU&CHANGの最近の報告(J.exp.Zool.175,271,1970)によると,1)精巣上体精子は牛の卵胞液の存在下に授精後約1時間から卵子への侵入を開始し侵入率は授精後5時間まで漸増する。2)牛の卵胞液とともに3~4時間体外培養された精子は新鮮精子よりも早く卵子へ侵入する,ことが報じられている。前報の成績17)に比し侵入時期が早くなっているのは技術的な改良によると推察している。ただし,牛の卵胞液を用いずに精子を前処理する試みはなされていない。
feedback
Top