日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
2 巻, 1 号
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
総説
  • 藤島 一郎
    1998 年 2 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー
  • Michael E.GROHER
    1998 年 2 巻 1 号 p. 9-12
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    It is my distinct pleasure to return to Japan.In particular,it is an honor to once again address the Japanese Society of Dysphagia Rehabilitation.Much has happened in four years.In discussions I have had with your colleagues,it is clear to me that this Society has made great strides toward educating medical personnel,and dysphagic patients and their families about the diagnosis and treatment of the dysphagic condition.I would congratulate the planning committee for the selection of this years’ theme,“the right to eat”.Personally,I have made a philosophical,but I think medically relevant change in my own thinking about dysphagia treatment. Rather than emphasizing the need to prevent aspiration pneumonia,our focus should be on allowing patients to continue eating in the safest manner possible,The implication of this philosophical stance is that we must take very seriously the impact of taking away a patient's right to oral alimentation. In the United States,dysphagia services are paid for by insurance companies.The regulation of the policies for financial reirnbursement is monitored by the Health Care Financing Administration.This group has asked the American Speech,Language,and Hearing Association to provide outcome data on the benefit of our services with dysphagic patients.Unfortunately,there are few data on this subject.To gather the data we have to decide what to measure and how to measure it.What I will talk about today is our preliminary thinking on this topic.

原著
  • 鎌倉 やよい, 杉本 助男, 深田 順子
    1998 年 2 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    高齢者の嚥下障害に対する援助技術を開発するための基礎研究として,加齢に伴う嚥下時の呼吸の変化を検討した.研究参加の同意が得られた被験者は,若齢群20人(年齢19.5±2.7歳),初老群10人(年齢64.8±3.2歳),高齢群17人(年齢85.6±2.9歳)であった.常温水10mlを嚥下した時の呼吸軌跡と舌骨上筋群の表面筋電図を同時に測定した.そして,嚥下時の呼吸型を分類し,その発現率を統計的に比較した.さらに,安静時の呼吸周期と嚥下性無呼吸の持続時間を3群間で比較した.筋収縮持続時間,最大筋放電値,平均筋放電値,積分値を若齢群と高齢群の間で比較した. 呼吸型は,単独嚥下では無呼吸後に呼気を後続する型(eae,ae,iae)と吸気を後続する型(eai,ai,iai)の6つの型に分類された.3群ともeae型(呼気-無呼吸-呼気)の発現率が最も高かったが,若齢群(60.5%)と初老群(64.3%)に比較して高齢群(42.6%)では有意に低かった(P<0.05).呼吸周期の持続時間は若齢群(4.39±1.10sec),初老群(3.50±0.63sec),高齢群(2.95±0.44sec)の順に有意に短縮した(P<0.01).嚥下性無呼吸の持続時間は若齢群(0.94±0.20sec)と初老群(1.02±0.20sec)に比較して,高齢群(1.36±0.46sec)では有意に延長した(P<0.01).筋活動との関係では,高齢群では筋収縮開始から最大筋放電までの時間と筋収縮開始から無呼吸開始までの時間が有意に延長した(P<0.01).さらに,若齢群では,無呼吸開始から0.04±0.08sec後に最大筋放電が生じ,無呼吸開始と最大筋放電がほぼ一致していた.高齢群では無呼吸開始から0.26±0.30sec後に最大筋放電が有意に遅延して出現した.また,平均筋放電値と積分値は,高齢群において有意に増加したが,最大筋放電値は差がなかった. これらの結果から,加齢に伴い嚥下時の呼吸型と嚥下性無呼吸時間が変化することが示唆された.

  • 柴田 礼, 東 美樹, 村上 則恵, 鈴木 真智美, 小保内 多喜子, 長嶺 義秀, 藤原 悟
    1998 年 2 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    意識障害をともなった患者の嚥下機能を評価する為に,嚥下機能評価表を作成し,経口摂取の可能・不可能を検討し報告する. 嚥下障害患者に対する嚥下機能の評価は耳鼻咽喉科疾患や脳血管障害の患者に対するものが一般的で,多くは意識清明な患者が対象である為,意識障害を伴った患者の嚥下機能を評価する場合には適切な指標がない.遷延性意識障害患者に用いる独自の嚥下機能評価表を作成し,当センター入院中の患者で全てを経管栄養に頼っている重症頭部外傷後遺症患者17例を対象とした.評価は,1)栄養摂取の方法,2)口唇の閉鎖機能,3)咀嚼動作,4)嚥下動作,5)咳嗽・逆流の項目ごとに重度10点,中等度8点,軽度5点,極軽度0点の4段階に分類し最重症は50点とした. スコア総点数により40点以上を重症,30~39点を中等症,20~29点を軽症,19点以下を極軽症として分類すると,重症0,中等症5例,軽症11例,極軽症1例という結果であった.各項目ごとの評価では,項目1)ではすべて重症であったが,項目2)~5)では軽度および極軽度の合計が,いずれも過半数を占めていた.各項目ごとに評価したことで,特に点数の高い項目に着目でき,そこに重点を置いた対応策が得られ,遷延性意識障害患者の嚥下訓練を行なっていく上で有用と思われた.

  • 手術症例106例の検討
    清水 賢, 林田 哲郎, 渡辺 剛士, 内藤 理恵, 内藤 玲, 堀口 利之, 玉川 公子, 鈴木 康之, 舟橋 満寿子
    1998 年 2 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    1990年8月から1996年3月までの間に,脳性麻痺や神経変性疾患を中心とする反復性誤嚥性肺炎患者106例(神経内科31例,神経小児科73例,脳外科2例)に対して1975年にLindemanが考案した喉頭気管分離術を施行した.術式は気管を第2-3または第3-4気管輪間にて水平に離断し,喉頭側気管は食道と端側吻合,肺側気管で気管孔を形成する方法であった.我々はいくつかのパラメータについて各々追跡しえた症例を評価し,誤嚥性肺炎を合併するどのような患者に,いつ頃この術式を施行するか,また喉頭全摘を選択した方が良いと思われる症例はどのようなものかを検討した.その結果,術後誤嚥は消失し肺炎の頻度は85例中80例で減少し,呼吸機能や睡眠・覚醒のリズムの改善がみられるものが多かった.全量経口摂取可能となった症例は神経内科の患者24例中14例(58%)で,神経小児科の患者61例中13例(21%)であった.経口摂取可能になるかどうかは,患者本人の神経学的な潜在的能力にかかっている.術後空気嚥下とげっぷを利用して発声によるコミュニケーションが可能となった患者も2例あった. 主な合併症は気管食道吻合部の縫合不全で,その18例中5例が喉頭全摘術へ変更せざるを得なかったが,これらの症例は術後の頸部の安静が保てない緊張の強いもの,嘔吐反射・咳反射の強いもの,全例高齢者で気管軟骨の固い男性であった. 本術式開始以来,年々手術症例が増加しているが,術式の再建可能なこと,喉頭の温存で家族や本人に手術が受容されやすいこと,救命率の向上により重症障害児が相対的に増加していること,在宅での呼吸器管理も可能になるなど慢性期患者のQOLの向上が求められていることなどの要因が重なった為と考える.我々は分離術は他の手術的方法よりも誤嚥を完全に予防できること,再建可能な術式であること,大きな合併症が少ないことから,優れた術式と考える.

臨床報告
  • 平松 知子, 佐々木 久美子, 石川 沢美, 斎藤 みちよ
    1998 年 2 巻 1 号 p. 36-39
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    当院でリハビリテーションをより円滑に進めるために胃瘻造設を行なった。嚥下障害患者9例について、造設前から造設後にかけてどのような問題があるか、看護の観点から整理してみた。 術前術後の管理については、処置自体は簡単だが、認知障害のある患者の術直後の胃瘻ボタン抜去防止が大きな課題であった。これと並んだ大きな問題は、手術を受ける(受けた)という不安の強さであった。失語や認知障害のある患者の不安・不穏は勿論のこと、コミュニケーション障害も認知障害もない患者の不安・疑問に対して、看護婦及び医師側の統一された細やかな対応が要求された。 嚥下リハに関しては胃瘻の方が経鼻胃管や口腔ネラトン法よりも訓練がスムースであるように見えた。又、自宅退院の場合にも胃瘻が良いようである。

  • 佐藤 亙, 中原 順子, 内潟 雅信
    1998 年 2 巻 1 号 p. 40-43
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    頚部に後屈位の強い多発脳梗塞例に対して嚥下訓練を実施し経口摂取の自立を図った.耳鼻咽喉科医は嚥下評価と経口摂取開始時期の判断を担当し,作業療法士が頚部のリラクゼーションを中心に基礎的嚥下訓練を,病棟が段階的摂食訓練を主に実施した.結果,開始時強かった頚部後屈位は,最終転院時では3時間程度の車椅子座位で姿勢は良好となった.それに合わせて食事も移行食(全粥とつぶし)が30分程で自力で取れるまでに改善した.咽せの状態も12月以降スプーンでの取り込みに限って見られなくなった.本症例は先行期から咽頭期の嚥下障害と考えられ,嚥下訓練とチームアプローチによって経口摂取が自立した.

  • ―Blue Dye Marker法の手法と有用性―
    大宿 茂, 桑村 圭一, 玉木 紀彦
    1998 年 2 巻 1 号 p. 44-48
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    Blue Dye Markerを用いた評価法(以下BDM法)は気管切開術を施行し,気管カニューレを留置した患者の誤嚥を評価する目的で発展してきた.BDM法は青色色素で着色した液体を経口投与し,カニューレを通した吸引において色素の混入を認めるか否かで誤嚥の有無を判定する方法である.今回カニューレを留置した14症例を対象に,2種類の手法を施行し,その臨床活用における有用性について検討した.

    気管カニューレとしては,カフ付カニューレより吸引管付カフ付カニューレを使用した方が検査の精度が高く,BDM法に適していた.吸引管付カフ付カニューレを使用した手法の具体的手技は以下の如く要約できた.

    1)気管内を吸引し分泌物を除去する.

    2)カフを膨張させ誤嚥したマーカーがカフ上で貯留する状態にしておく.

    3)吸引圧はかけない状態で,青色に着色した30ccのマーカーを3回に分け服用させる.10ccずつ口にふくませ嚥下を確認してから次のマーカーを投与する.

    4)1分間マーカーが下降してくるのを待つが,その間ペンライトで窓穴を照らしマーカー侵入の有無を見る.

    5)吸引管から吸引し,マーカー混入の有無を検索する.吸引は吸引管に入ってくる分泌物がなくなるまで続ける.

    6)陰性の場合は同じ手順をもう一度最初から繰り返す.

    7)この手法を二日連続施行し結論を得る.

     吸引管付カフ付カニューレを使用すれば,BDM法の精度を上げることができる.しかし,誤嚥したマーカーが極めて微量であった場合など,検出できない可能性はあり,評価結果が陰性の場合でも経口摂取は慎重に進めるべきである.

  • ―摂食・嚥下障害を伴う高齢者の一例―
    田村 文誉, 向井 美恵
    1998 年 2 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    高齢者にとって呼吸を含めた全身状態の管理は,食事など日常生活の様々な状況において重要である.特に寝たきりで生活している要介護高齢者においては,摂食時にむせや誤嚥などにより,呼吸や循環動態に過剰な負荷が引き起こされる危険性があり,その結果動脈血酸素飽和度(SpO2)や脈拍数(PR)の変動として現れる場合がある,そこで今回,某特別養護老人ホームに入居中の,脳動脈瘤,高血圧症,老人性痴呆を主疾患とする81才の女性1名について,摂食行動が動脈血酸素飽和度,脈拍数に及ぼす影響について,調査,検討を行った.測定内容は,パルスオキシメータを用いて,SpO2,PRを,ベッド上での安静時と,それに続く摂食時,後日の通常の摂食時と摂食指導下での摂食時の4設定で測定を行った.安静時と比較して,全ての摂食時において,SpO2は有意に低い値を示した(p<0.01).座位での摂食時において,頻繁なむせとせき込みがみられたため,空嚥下,頸部角度の調節,一口量の調節等の指導を行った.その結果,SpO2が85%以下となったのは,測定値中28.2%の割合であったが,摂食指導後には,7.5%に減少した.寝たきりの要介護高齢者では,摂食行動に伴う運動負荷や嚥下困難によっ.てSpO2や脈拍数の変動を引き起こす場合があるが,摂食指導を行うことにより,過剰な運動負荷と嚥下困難を軽減し,全身の循環動態が改善される可能性が示唆された.

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