【目的】頭頸部癌に対する治療法の評価は,治療後の生存率と患者のQuality of Life(以下,QOL)の両者から考えられるべきであることが報告されている.本研究は,喉頭摘出者の退院後のQOL の実態,またEORTC QLQ-C30 の世界的な健康状態を示すGlobal health status(以下,QL2)関連要因を明らかにすることを目的とした.
【対象】一般病院1 施設において,調査回答が可能と主治医が判断し,研究同意の得られた喉頭摘出術後の外来患者を本研究の対象とした.対象のQOL は,EORTC QLQ-C30 とEORTC QLQ-H&N35 を用いて測定した.
【方法】EORTC QLQ-C30 とEORTC QLQ-H&N35 を用いた質問紙調査を1 人1 回実施した.対象をQL2 の中央値で高値群・低値群に分け,マンホイットニーのU検定とカイ二乗検定を行った.EORTC QLQH&N35 の複数項目・単一項目とスケール,またスケール間のピアソンの相関分析を行った.QL2 に対する影響をみるために,Barthel Index,仕事,術後経過年数,年齢を説明変数として二項ロジスティック回帰分析を行った.
【結果】QL2 得点の中央値67 点以上をQL2 高値群(35 名),67 点未満をQL2 低値群(27 名)とした.2群間ではBarthel Index(p=.002)と仕事(p=.011)のみに有意差が認められた.EORTC QLQ-H&N35 の「人前での食事困難」は,「嚥下障害」や「他者との接触困難」との間にかなりな正の相関があった.「嚥下障害」は,「感覚問題」と「人前での食事困難」にかなりな正の相関があった.QL2 は仕事に関連が認められた(OR:4.46,95%CI:1.03–19.32,p=0.046).
【結論】喉頭摘出者の退院後のQOLにおいて,嚥下障害は,感覚問題と人前での食事困難に相関していた.QL2 に対する影響要因は仕事であった.
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