わが国における高齢化・長寿化は急速に進行しており,医療・福祉・保健領域の連携など社会制度の見直しが急がれている.身体的精神的な健康維持の中心となる食事に対しては,その重要性が多方面から指摘されているが,摂食機能の減退程度と食事内容の関連についての研究は少ない.そこで今回,在宅高齢者(中途障害者を含む)97名とその介護者に対し,食事の実態と客観的な摂食機能状態の評価を行い,以下の知見を得た.
1)日常の摂食時(聞き取り)では,食事時にむせなどの摂食・嚥下機能不全の症状がある者は全体の33.3%にみられたが,テストフード(プリン)摂食時では7.5%にすぎなかった.
2)むせがある者は,日常の摂食時では脳血管系疾患および痴呆・精神障害に多く,テストフード摂食時ではパーキンソン病に多くみられた.
3)日常の摂食時においてむせがある者は,姿勢の不安定が33.3%に,体幹角度の不適が56.6%に,頸部角度の不適が46.5%にみられた.
4)テストフード摂食時にむせがある者においては,姿勢の不安定が71.4%に,体幹角度の不適および頸部角度の不適が66.6%にみられた.
抄録全体を表示