日本義肢装具学会誌
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31 巻, 1 号
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巻頭言
特集 新しい治療法と義肢装具
  • 川手 信行
    2015 年 31 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2016/01/19
    ジャーナル フリー
    上肢·下肢筋痙縮に対するボツリヌス療法が2010年に承認され,筋痙縮の治療手段の選択肢が1つ増えた.ボツリヌス療法は,ボツリヌス菌毒素製剤であり,神経筋接合部に作用し,アセチルコリンの分泌を抑制し,神経伝達を遮断し,筋痙縮を減弱させる.ボツリヌス療法と装具療法との併用の目的は,持続的な筋ストレッチを目的とした場合と,痙縮が減弱したことによる患者の機能·能力の向上の補助を目的とした場合の2つがあり,後者においては積極的な装具の改変が望まれる.今後,ボツリヌス療法と装具療法やリハビリテーション分野の他の療法と組み合わせることによって,痙縮に対する新しい治療体系を構築していく必要がある.
  • 橋田 剛一, 井上 悟, 貴島 晴彦, 阿部 和夫
    2015 年 31 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2016/01/19
    ジャーナル フリー
    神経原性の下肢麻痺では,痙縮の増悪により歩行障害が進行し,日常生活動作(ADL)の低下を引き起こす可能性が高い.髄腔内バクロフェン投与療法(ITB療法)は重度の痙縮に対する有効な治療法であり,術前後の痙縮変化に応じた歩行トレーニングが重要となる.歩行トレーニングでは,下肢機能の変化に応じた運動療法を進め,下肢装具療法を再考すべきである.ITB療法の効果を高めるために,運動機能に関する評価項目の選択や装具療法への再取り組み方法を含めた術後リハビリの指針を確立していくことが必要と考える.
  • —関節リウマチ診療のパラダイムシフトと装具·支援機器—
    水落 和也, 稲田 雅也
    2015 年 31 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2016/01/19
    ジャーナル フリー
    慢性関節炎の細胞レベルでの病態解明,炎症性サイトカインを標的とする分子標的治療の導入により関節リウマチの治療は一変し,早期診断,早期治療の重要性が明らかになるとともに診断基準も新しくなった.関節リウマチは難治性疾患ではなく,治癒も可能な疾患となり,臨床的寛解,機能的寛解,構造的寛解という具体的治療目標を定めた治療体系に一変した.この変化はパラダイムシフトとも称される劇的な変革であった.リハビリテーション治療もこの変革に合わせて,疾患の病期に応じて明確な目標を定めた介入へと変化が期待されている.装具,支援機器はリハビリテーション治療の目的である機能障害の改善,活動の維持,最大限の社会参加に重要な役割を果たす.障害予防的な包帯固定·足底挿板,活動制限の改善を目的とした装具療法,歩行補助具·自助具の選択,社会参加を目的とした様々な支援機器の選択など,病期に応じた適切な導入·指導が重要である.
  • 野中 信宏, 宮﨑 洋一, 田崎 和幸, 山田 玄太, 貝田 英二
    2015 年 31 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2016/01/19
    ジャーナル フリー
    手外科治療において,かねてからスプリント療法は様々な目的のもとに作製,使用されてきた.これまで最も多く使用されてきたスプリントは拘縮矯正用のものであった.ところが,近年,特に外科的手技の進歩により,安静·固定期間が短縮し,術後早期から拘縮を予防する治療計画が立案され,矯正用スプリントの作製数が減少した.代わって,修復組織を保護しつつ,運動療法が可能なタイプのスプリント作製数が激増している.それらのスプリントは,修復組織が治癒する前の術後早期から導入されることが多いため,作製するにあたり,手術内容や手の機能解剖学を理解し,かつ患者の手や指の状態,経過に対応しながら提供されなければならない.
  • 境 隆弘, 小柳 磨毅, 中江 徳彦, 向井 公一, 小川 卓也, 横谷 祐一郎
    2015 年 31 巻 1 号 p. 28-36
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2016/01/19
    ジャーナル フリー
    膝靱帯損傷は,膝関節に対して過大な外力あるいは内力が作用した結果,関節の不安定性を生じる外傷である.そのため,損傷後の理学療法は観血的あるいは保存療法にかかわらず,関節の安定性の確保や靱帯へのストレス回避に十分に留意する必要がある.理学療法の目的は,受傷によりいったん低下した膝関節周囲の軟部組織の柔軟性·筋力·姿勢制御能力を最大限に獲得することである.装具療法は身体の外部から関節の安定性や靱帯へのストレスの回避を可能にする利点がある一方で,関節の固定による可動域制限や筋萎縮の惹起,そしてパフォーマンスの低下などの欠点を克服する必要がある.
  • 荒木 信人, 池田 聖児
    2015 年 31 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2016/01/19
    ジャーナル フリー
    骨軟部腫瘍とは,骨に生じる骨腫瘍と,筋肉や脂肪など軟部組織に生じる軟部腫瘍の総称で,悪性の場合には骨や筋肉の切除が行われるため義肢や装具の必要頻度は高い.特に悪性骨腫瘍の場合には,かつては切断が多く行われていたが,最近の30年は人工関節による再建がほとんどであり,短期使用を含めるとほぼ全例装具の使用が必要となる.しかし,個々の症例の病巣部位,手術アプローチの方法,骨や筋肉の切除範囲などは千差万別であり,装具もそれに応じて様々な工夫が必要とされる.本稿では手術部位ごとに当科にて使用している装具とそのポイントを紹介する.
原著
  • 引地 雄一, 中野 政身, 鈴木 貴詞
    2015 年 31 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2016/01/19
    ジャーナル フリー
    印加電流によって制動力が可変なMR流体ブレーキを膝継手に用い,断端を前後に動かす動作を随意制御力として検出するロードセルを膝軸上に配置した大腿義足膝継手『電子制御MR-SPCOM (MR fluid brake-Stance Phase Controlled by Optional Motion)』を開発している.本義足は,随意制御力を検出するロードセル,膝角度を計測するエンコーダおよび各部センサの情報に基づいて,コンピュータを援用して,歩行中の膝継手の制動抵抗を随意に瞬時に変化させることができる.そのため,階段の交互ステップでの昇降,座位を取る動作の途中で膝継手のLockとYieldingを随意に切り替えることが可能である.開発したMR-SPCOM継手を使用した大腿義足の設計と理論ならびに構造,同義足による歩行·動作解析の結果について報告する.
  • —シングルケースデザインによる検討—
    岡田 裕, 田中 繁治, 森下 元賀, 河村 顕治, 森本 正治, 富山 弘基, 杉山 廣和, 椿原 彰夫
    2015 年 31 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2016/01/19
    ジャーナル フリー
    制動力の調節可能な足継手付き金属支柱短下肢装具を用い,片麻痺歩行の麻痺側立脚期における背屈制動の効果を,距離時間変数の変化と筋活動変化に着目し検討した.その結果,足底接地以降から立脚中期にかけて足関節に背屈制動を付加することにより,足関節底屈筋や膝関節伸展筋が補助され,麻痺側下肢の支持機構が向上し,距離時間変数が改善した.麻痺側下肢の筋緊張低下により,立脚期に膝折れを認める場合や,膝屈曲モーメントが増加する時期に膝折れの不安感から十分に荷重できず歩行能力が低下している場合,足関節に対する背屈制動の有効性が示唆された.
技術報告
  • —動作補助機構のメカニズムと残存機能による制御方法—
    木村 宏樹, 元田 英一, 中村 恵一, 田中 宏太佳, 川﨑 晴久
    2015 年 31 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2016/01/19
    ジャーナル フリー
    残存機能の少ない高位頸髄損傷者が,自身の意思により麻痺肢を用いて動作(食事動作)を行うことのできる上肢動作補助装置を開発した.本装置は,上肢動作補助機構と機構を制御する機器,残存機能を測定するセンサーで構成される.使用者の上肢はバネの弾性力によりいずれの姿勢においても常に一定荷重で支持(免荷)され,異なる重量の腕に対しても調整が可能である.使用者の手首の位置と回内外運動は4個のDCモータを用いてPCにより制御される.使用者の随意運動機能である頭部の動きを加速度センサーやスイッチを用いて計測し制御信号に変換することにより,自身の意思により装置を動作させることができる.
症例報告
  • —前もたれ前傾姿勢が唾液誤嚥の改善に有効であった1例—
    平島 淑子, 川井 弘子, 大内 啓照, 二見 徹
    2015 年 31 巻 1 号 p. 64-66
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2016/01/19
    ジャーナル フリー
    著明な嚥下障害があり唾液誤嚥により頻回に誤嚥性肺炎を生じている重症心身障害児に対して,適切な前傾姿勢,ヘッドサポートによる頸部過伸展の抑制,カットアウトテーブルと胸パッドによる下顎位置の安定化を考慮して,座位保持装置付き車椅子を作製した.前傾位をとることで唾液の口腔外での処理を可能とし,頸部過伸展を抑制することで前頸部の過緊張を軽減し,下顎全体で頭部を支持することで気道の確保を得られやすくした.以上の工夫により喉頭挙上がしやすくなったこと,口腔内分泌物の気道内流入が軽減したこと,気道閉塞が改善したことで,誤嚥·喀痰吸引回数が減少し,移動時の患児ならびに家族の精神的·身体的負担軽減につながった.
調査報告
  • 渡部 友宏
    2015 年 31 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2016/01/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,当院回復期リハビリテーション病棟入院の脳卒中患者における短下肢装具(以下,AFO)作製時期と,入院中の機能的自立度評価法(Functional Independence Measure : 以下,FIM)の得点との関係性について検討することを目的とした.対象は当院回復期リハビリテーション病棟に入院し,AFOを作製した脳卒中患者36名を対象とした.方法は装具完成までの期間が3週間の20名をA群,3週間を超えた16名をB群に分け比較した.(当院における早期AFO作製は最短で3週間を要し,その内訳はブレースクリニック,採型,完成納品である.)結果,A群において移動,運動,総合計FIM利得(退院時FIM−入院時FIM)が,B群より有意な向上を認めた.また,移動FIM利得の向上は入院期間の短縮と相関関係を示した.本調査結果より,移動·運動·総合計FIM利得が高かった群は,早期にAFOを処方されていたことがわかった.
講座 末梢血管原性切断の義肢作製
  • —四肢切断と関連して—
    長門谷 克之, 山内 淳
    2015 年 31 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2016/01/19
    ジャーナル フリー
    現在,本邦では31万人以上の維持透析療法施行中の慢性腎不全患者が存在する.世界的な透析患者の調査において,日本は参加国の中で最も生命予後がよく,末梢動脈疾患有病率,四肢切断の既往は最も少なかった.それでも現実には多数の透析患者が四肢切断を余儀なくされている.血液透析療法を効率的に行うためには内シャントを造設することが基本となるが,内シャントの閉塞,シャント血管からの出血などに十分注意を払う必要がある.透析患者では,慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常の問題が不可避である.転倒時の骨折リスクの上昇につながるし,異所性石灰化から動脈硬化にも密接に関係するからである.また,血液透析患者では特徴的な体内水分量の変化から血圧変動が大きく,理学療法を行う際には注意を要する.
訂正とお詫び
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