日本科学教育学会年会論文集
Online ISSN : 2433-2925
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46
選択された号の論文の201件中1~50を表示しています
表紙・目次
論文集
  • 中山 迅
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    会長であった頃に「科学教育」とは何かについての定義が必要ではないかという声を,何度か聞くことがあった.これについて明確な回答を出すことはできないというのが筆者の立場であるが,自身のこれまでの研究を振り返ることなどによって,科学教育という研究領域の特徴を引き続き検討するための手がかりを得ることを講演の目的とした.結論として,「科学」と「教育」をキーワードとする研究が科学教育に関する研究であり,その本質を根本から研究して,社会や市民から価値を認められることが重要であることを主張することにした.

  • 御園 真史
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    2020年度より,初等・中等教育においては,資質・能力を基盤とした新学習指導要領がすべての校種で動き出した.目標とされる資質・能力を明確にするのと同時に,指導によりそれが達成されたかどうかを適切に評価できるように評価方法も見直していく必要がある.さらに,小学校・中学校等でのGIGAスクール構想や教育におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)などの後押しもあり,これまでとは異なる評価方法を実現することも可能となり,評価の在り方も再検討すべき時期にあるといえる.そこで,本シンポジウムでは,科学教育における評価をどう改善していくべきかを,理論と実践の両面から議論する.

  • ――「探究的な学習」に焦点を合わせて――
    西岡 加名恵
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    「資質・能力」のバランスのとれた評価を行うために,パフォーマンス評価が推奨されている.パフォーマンス評価とは,知識やスキルを使いこなすことを求めるような評価方法の総称である.「探究的な学習」を指導する際には,学習者が生み出す様々なエビデンスを踏まえて評価が行われる.その際,エビデンスを体系的に整理するには,ポートフォリオが役に立つ.ポートフォリオ評価法を進めるにあたっては,学習者と教師が見通しを共有し,蓄積された資料を編集する機会を設けるとともに,検討会を行うことが重要である.なお,「探究的な学習」については様々な目標やカリキュラムで取り組まれていることから,それぞれの実践の目標に準拠して評価をすることが求められる.また,ルーブリックについては,エビデンスに基づきつつ議論を重ねて作ることが重要である.

  • 深見 俊崇
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿は,米国におけるプロジェクト・ベース学習の実践例から科学教育としてどのような学習が期待されてきたか,そしてプロジェクト・ベース学習において学習評価がどのように行われているかを紹介する.ワシントン州ウォータービルで展開されたサバクツノトカゲの追究とビルド・サンフランシスコ研究所の2つの事例では,学校の授業という枠を超えて,「実践共同体」の活動に従事しながら学習が進められていた.米国では,プロジェクト・ベース学習を通じてプロジェクトの活動に関わる複数教科のスタンダードが到達できているかどうかを確認することが求められている.だからこそ,事前に綿密な評価計画を策定することが不可欠なのである.

  • 松浦 拓也
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    平成29年及び平成30年の学習指導要領改訂においては,「何ができるようになるか」や「何を学ぶか」に加えて「どのように学ぶか」についても議論されている.このため,これからの評価の検討に際しては,学習過程の特質を考慮した議論が必要になるものと考える.また,GIGAスクール構想の進展により,理科においても1人1台端末の活用について議論が活発化しているものの,評価における活用策については具体的な議論が不足している.本稿では,まず理科教育の立場から近年の動向を4つの視点で概括し,科学教育におけるこれからの評価について検討する.

  • 平林 真伊
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,混み具合に関する問題と余りのあるわり算に関する問題を用いた質問紙調査の結果に基づき,数学的モデル化の評価方法について検討した.数学的モデル化における「定式化」のプロセスにおいては,数学的モデルの正誤を評価するよりも,より有用なモデルへと改良する過程や,改良し続けようとする態度を評価する必要があること,「解の解釈・評価」のプロセスにおいては,様々な価値観を顕在化することで,よりリーズナブルな結論を求めようとする過程や態度を評価する必要があることを指摘した.

  • 秋山 繁治
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    スーパーサイエンスハイスクール(以下,SSH)事業は,2002年に「将来の国際的な科学系人材を育成することを目指し,理数系教育に重点を置いた研究開発を行う」ことを目的に立ち上げられた事業である.SSH事業の大きな成果の一つに,科学課題研究の有効性を示すことができたことがある.科学課題研究の「学習によって育成された能力を統合し,課題の発見・解決に取り組む」という一連の探究活動を盛り込んだ新科目「理数探究基礎」「理数探究」が,2018年に告示された高等学校学習指導要領で新設された.本報告では,告示前の段階の2006年度から2期10年間のSSH事業で,女子生徒の理系進学支援を研究課題として構築した教育プログラム(「知識」と「体験」を「研究(科学課題研究)」に集約する)の実践による生徒の変容を紹介し,改めてSSH事業の役割を検証したい.

  • 細田 幸希
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿は,決定木の学習指導に関する先行研究の特徴を明らかにすることを通じて,日本の高等学校段階におけるデータサイエンス教育に対する示唆を得ることを目的とした.その結果,一つの最適な分類木モデルを自動的に導き出すことが目的ではなく,統計教育ソフトウェアであるCODAPを用いながら,高校生がデータから手動でモデルを構築し,決定木の手法の柔軟性や有用性を実感できるようにすること,モデルの評価において,混同行列や誤分類率,感度といった直感的な尺度を導入することの二点が得られた.本稿で明らかになった知見を基に,教材開発や授業実践を行うことは今後の課題である.

  • 大谷 洋貴
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    現代社会における意思決定の方法として仮説検定の考え方は重要である.先行研究はその指導のために母比率の検定に注目しているが,仮説検定の考え方を仮説検定の考え方として指導するためには母比率の検定ではない検定を取り扱うことが求められる.本稿ではそのような検定として適合度検定に着目し,非形式的な適合度検定の学習活動を学校教育段階で実施することが可能であることの例証を試みた.非形式的な適合度検定は,ダランベールの誤りの教材として中学校第2学年の確率単元の学習活動で扱われることができることを指摘した.そして,先行研究で提案されていたデータ探偵ミッションの教材でも,高度な数学的知識なしで非形式的な適合度検定を扱うことができることを例示した.授業実践を通して学習者の実際の反応を確認するとともに,学習活動をより精緻化することが今後の課題である.

  • ~生理計測データと教師による主観的評価を照合して~
    青山 和裕, 岡島 彩莉, 山村 雅幸, 吉川 厚
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    2017・2018年の学習指導要領改訂により,主体的・対話的で深い学びや資質・能力が強調され,学びの過程が重視されることとなった。教師にとって授業を進行しながらすべての児童・生徒の取り組みの様子を把握するのは困難である。その理由としては,教師個々人の経験や力量による観察力の違いもあれば,児童・生徒個々人の特性の違いによる観察のしやすさの違いなど様々に考えられる。本研究は学習者の生理計測データを解析することにより学習状態に関するフィードバックを提供し,より効果的な授業運営に資するモデルを提案することにある。そのために本稿では,学習者の心拍数,瞬き数,脳血流量に関する生理計測データを用い,教師による主観的評価と照らし合わせることで,学習者の状態を特定できるかどうかについて検討した。特に瞬き数の変化は集中力の変化に連動しやすく,学習状態を見取る要素として用いられる可能性を見出すことができた。

  • 西仲 則博, 吉川 厚, 高橋 聡
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本研究の目的は,中学校の確率の授業で扱われる「2個のコイン投げ」の課題を反復試行の基礎として捉え,5回の反復試行を用いた「5人の血液型の問題」教材を開発し,その授業を行った.また,その授業後,反復試行を用いた判断ができるかどうかの小テストを行った.その結果,授業では積極的に問題解決に取り組んでいたが,比率が同じで,試行回数が違う反復試行の問題(10回中表が8回出る確率をP(A),30回中表が24回出る確率P(B)として,その値の大小比較)においての回答を分析すると,両方の確率が同じであると判断した生徒が40人/50人の76.9%という結果を得た.生徒の選択理由としては,「8/10=24/30 よってP(A)=P(B)」,「Aの場合のものを3倍するとBと等しくなるから」というように,全事象(間違った)と個別事象の比率を基に判断していることが解った.

  • 小口 祐一, 青山 和裕, 藤井 良宜
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本研究の目的は,平成20年3月告示中学校学習指導要領の実施前後において,中学3年生のグラフ解釈の状況を把握し,実施されたカリキュラムの成果と課題を明らかにすることである.本研究では,茨城県,愛知県,宮崎県の中学校6校に協力を依頼し,中学3年生763名を対象にして,令和2年1月から3月までの期間にグラフ解釈に関する第2次調査を実施した.そして,平成22年11月から平成23年1月までの期間に実施した第1次調査の結果と比較した.その結果,「データの一部が省略された棒グラフ」を解釈する選択式問題に対して,第1次調査と第2次調査の反応のパターンに独立性がみられた.また,「積み上げ棒グラフ」を解釈する正誤判定問題に対して,第2次調査の正答率の方が高い傾向がみられた.実施されたカリキュラムには,基本的なグラフ解釈の能力の育成に成果がみられたが,直観的な読みを批判的に捉える力の育成に課題がみられた.

  • 教師自身による数学的モデリング授業の分析
    佐伯 昭彦, 矢田 耕資, 金児 正史
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,数学的モデリングの教材開発と授業実践に関わる教師の資質・能力の育成を目的に,算数・数学教科書の問題から数学的モデリング教材への再教材化を中核とした教師教育プログラムを実施した.2019年度に徳島県内の小中高等学校の教諭と鳴門教育大学の大学院生(現職と学卒)を対象に年間4つのコースを実施した.本稿では,教師教育プログラムで実施した研究授業の中から,高等学校での事例を取り上げ,数学的モデリング授業の概要と,授業者が数学的モデリングの先行研究をもとに自身の授業を分析した結果について,報告する.

  • 川添 充
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本研究の目的は,同じ題材を用いて実施された数学教師と大学生それぞれを対象とする2つの数学的モデリング演習を比較して,数学教師と大学生のモデリング能力にどのような差異や共通点があるのかを探り,数学的モデリング教育に関する教師教育の課題を見出すことである.環境省・農林水産省がシカによる森林被害対策として定めたシカの個体数削減目標を題材にして行った数学的モデリング演習を事後的に分析・考察した結果,数学教師はモデル化の対象の見極めやモデル化の作業効率において大学生よりも高い能力を発揮した一方で,仮定や近似・単純化に対する無自覚さやモデルと既習の数学知識を結びつける意識の希薄さは大学生と同程度であり,数学的モデリング教育に関する教師教育においてはこれらが課題となりうることが示唆された.

  • 米田 重和, 小川 智暉
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    中学校学習指導要領(平成29 年告示)解説数学編では算数・数学の問題発見・解決の過程の重視を謳っている.その2 つの過程のうちの1 つがモデリングであり,モデリングの指導力向上が教員に求められている.しかし,我が国ではモデリングの指導力育成に向けた教師教育に関する研究は数少ない.本研究の目的はEngeströmが提唱した拡張的学習を援用し,現実世界の問題を扱うがモデリングの授業としては不十分な授業をモデリングの授業へ向けて改善することである.実際,現実世界の問題を扱う授業に課題を抱く経験の浅い中学校数学教員を1人選出して事例研究を行った.本稿では,その教員が現実世界の問題を数学の授業で扱う際の課題を明確化し,モデリングとの違いを分析し,課題克服し不備を補う方策を考案させたことについて考察した.今後,その教員が自身の課題を克服できたか検証すると共に,実施した授業がモデリングの授業へ向けた改善がみられたか考察する.

  • 松原 憲治, Roehrig Gillian, Dare Emily, 池 恩燮, 宮内 卓也, 小林 優子, 谷本 薫彦
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    近年,我が国では様々な視点からSTEMに関する教材開発や授業実践が進められている。これらの取組を授業改善につなげていくためには,授業におけるSTEMの要素について理解を深めることが重要である。本研究では,我が国の中等教育段階における探究や課題研究等を重視した授業を想定しつつ,STEMの視点からの授業分析手法の開発を行う。本研究における授業分析は,指導実践の評価を目的とするものではなく,授業改善を目的とするものである。

  • ROEHRIG Gillian, DARE Emily, ELLIS Joshua, RING-WHALEN Elizabeth
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    While integrated STEM education is called for in national policy documents within in the United States, there remains significant variation in conceptualizations and enactment of K-12 integrated STEM. In response, a detailed conceptual framework for K-12 integrated STEM education was developed to inform researchers and educators. Based on a review of the integrated STEM literature the framework includes seven central characteristics of integrated STEM: (a) centrality of engineering design, (b) driven by authentic problems, (c) context integration, (d) content integration, (e) STEM practices, (f) twenty-first century skills, and (g) informing students about STEM careers. This framework formed the basis for the development of a new STEM observation protocol designed to assess the quality of integrated STEM instruction in K-12 science classrooms.

  • DARE Emily, ROEHRIG Gillian, ELLIS Joshua, ROULEAU Mark, RING-WHALEN E ...
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    This study examined current practices in integrated STEM education using a new classroom observation protocol designed specifically for K-12 science and engineering classrooms. Our work examined protocol scores from over 2,000 video-recorded classroom observations to better understand how integrated STEM is being implemented in various classroom settings, including different science domain focus and grade levels. Findings revealed that integrated STEM lessons with a focus on physical science content included more integrated STEM instructional practices at higher levels compared to earth and life science lessons. Further, scores from elementary classroom observations indicate that more integrated STEM practices are used at higher levels compared to middle and high school classroom observations.

  • 動きを変化させる機械 リンク機構
    池 恩燮, 藤丸 拓也, 中西 智彦, 吉原 淳之介, 小林 優子
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    STEM Observation Protocolを用いて評価したSTEM/STEAM教育の実践を紹介する。本実践は,高等学校の第1学年320名を対象に行われるミニ課題研究型の授業である。特に,本研究では,動きを変化させる機械~リンク機構~のユニット(単元)を調査対象とした。デザイン思考をベースに構成された本実践の中で,生徒はてこクランク機構の作成を通して,課題研究に必要な基本的なスキルや考え方を身に着ける様子が確認できた。

  • 宮内 卓也, 松原 憲治, 小林 優子, 谷本 薫彦, 池 恩燮
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    近年,我が国ではさまざまな視点からSTEMに関する教材開発と授業実践がすすめられており,授業を分析する具体的な指標をもとにした授業の振り返りを通した授業改善が期待される。しかし,STEMに関する授業を分析する具体的な指標が十分ではない。そこで,本研究ではDare, et al. (2021) が開発したSTEM Observation Protocol 〔以下,STEM-OP〕をもとに,我が国の中等教育段階の探究や課題研究の授業に対応した,STEM授業の分析手法を開発し,日本における授業の分析に援用し,授業の振り返りと授業改善に活用することを目指している。本稿では,公立高等学校におけるSTEMに関する授業の分析において,STEM-OPの日本語版を試行し,その妥当性と今後の課題を検討した。

  • 小林 優子, 谷本 薫彦, 松原 憲治, 池 恩燮, 宮内 卓也
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,日本の高等学校において実施した STEM-OP のコーディング結果について考察した.その結 果,以下のような点が明らかになった。第一に,コーディング結果より明らかになった観察対象とした授業の特 徴は,日本における授業の特徴や日本における STEM/STEAM 教育の目標を反映していることが示唆された。第 二に,授業実践者によるフィードバックから,STEM-OP を用いた授業分析の結果は授業者の意図を反映してお り,授業者に新たな視点を提供するものであることが明らかになった。第三に,STEM-OP を実施する際の実践的 な知見として,授業形態や活動内容に合わせて録画の方法を検討することが有効であることが示唆された。さら に,STEM-OP による授業研究の活用方法として,教員研修における活用を示した。

  • 三宅 志穂
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    ポスト愛知目標「自然との共生という2050年ビジョン」の設定により現在,世界各国で具体的策定が進められている。この達成に向かってSDGsに基づく社会変革を支えていく科学教育実践アプローチ科学教育の研究側面からどのような挑戦ができるのか。驚異的な複雑性で成立している自然界を捉えて,そこで生じている問題を一般市民に伝え,理解から行動変容へと導くという結果に結びつけることは容易ではない。持続的に展開できる教育プログラムや教材に関する知見の蓄積,および人々の意識度や態度の変容度などをどのように測ることができるのかという研究が急がれる。特に,生物多様性の科学的知識・技能をさまざまなドメインに応用して保全行動に転換できる素養(本研究ではバイオリテラシーとよぶ)の育成につながる教育モデルの提示が鍵となる。科学教育研究者らの実践アプローチから,バイオリテラシー育成手法構築の手がかりを得たい。

  • 大貫 麻美, 三好 美織, 出口 明子, 三宅 志穂
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    COVID-19の流行拡大に伴う社会情勢の変化により,オンラインを介したコミュニケーションは急激に一般市民に身近なものとなった. その1つとして,オンラインツアーのサービス拡大がある. こうした状況をふまえ,一般市民の生物多様性保全の意識の向上を図ることを目的として,オンラインツアーを活用した教育プログラムについて検討することとした. 教育プログラムの立案に先立ち,生物教育,環境教育等を専門とする研究者チームによりオンラインツアーを選定する観点を整理した. その観点に基づき,南アフリカにあるチーター等の保護施設を見学対象としているオンラインツアーを選定した. そして,選定ツアーについて研究者チームによる予備調査を行い,その結果を基に,教育プログラムにおける具体的な受講者の想定,ツアー進行の改変などを含む教育プログラムの立案を行った.

  • 出口 明子, 三宅 志穂, 大貫 麻美, 三好 美織
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    筆者らは一般市民の生物多様性保全の意識の向上を図ることを目的として,オンラインツアーを活用した教育プログラムの検討を行っている.本稿では南アフリカにあるチーター等の保護施設のオンラインツアーを対象として開発・実践した教育プログラムの評価について報告する.具体的には,プログラム参加者を対象に実施した質問紙調査に基づいて,プログラムの体験を通した野生動物の保護・保全,生物多様性への意識や理解の変化を検討した結果について解説する.

  • 国立青少年教育施設の活用と指導者育成の方向性を中心に
    向 平和, 粂野 紗依
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    生物多様性教育プログラムの開発に向けて,国立青少年教育施が生物多様性を学ぶフィールドとして活用できる可能性が高いと考えた.そこで,本研究では愛媛県にある国立大洲青少年交流の家の活用状況などを調査した.調査の結果,地域の自然を調査できるように自然環境館が設置され利用促進のために教員免許状更新講習なども企画されたが,自然環境館の活用にはあまりつながっていないこと,カヌー体験やウォークラリーなどの自然体験活動は多く実施されており,NPO法人等が協力して自然観察の教材開発なども進められていることが明らかとなった.今後は地域の「トコロジスト」を活用して,指導者と生物多様性保全意識の高い市民の育成を試みることが妥当であると考えられる.

  • カリファトゥロー フィーアルディ, 藤井 浩樹
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    This paper introduces an interlocking narrative on genetic diversity to foster students’ future thinking. The interlocking narrative features “the banana dilemma” to illustrate the relationship between low genetic diversity in banana crops and numerous solutions that are also related with sustainability issues. The lesson is highly adaptable for ESD-related school subjects, especially science

  • 寺田 光宏
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本研究は,資質・能力育成を志向した教育改革が先行しているドイツ・シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州と協働探究を行い,両国の教育課題である教科学習とプロジェクト型学習(本論では学習者を中心とした探究的な学習を示し以下:PBLとする)のあり方を理論的・実証的に明らかにすることを目的とする.そのために,3年間計画で,日独の中等学校で協働し,探究をはじめとするPBLを実践し,生徒・教員の活動を参与観察し現状と課題を比較し,日独の教科とPBLの教育課程(評価を含む)上のあり方とこの活動を支える教員のあり方(教師教育)について検討する.今回は,これらの現状を確認するために,生徒の資質・能力育成を実現しようとするPBLの日独(SH州中心)の現状を整理した.また,現教育課程の主である教科学習とPBLのあり方(位置づけや関係性)の関係を整理した.

  • 後藤 みな, 寺田 光宏
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    昨今,プロジェクトによる教育実践に関心が集まっている.本課題研究において,プロジェクトによる教育のあり方を吟味する足がかりとして,本稿では,ドイツの幼児教育に焦点化し,カリキュラムにプロジェクトがどのように位置付けられているのか,また実際にはいかなる実践が行われているのか,その一端を探った.

  • 松永 由圭利, パーヒマン イルカ, 寺田 光宏
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本年度から施行されている日本における理数探究基礎とドイツ, シュレースビッヒ=ホルシュタインにおいて新年度2022年8月から行われるプロジェクト型学習の取り組みを「プロジェクト学習」成立の歴史的背景を加味しながら, キール大学自然科学教育研究所で行われたワークショップを例に, 日本の取り組みへの示唆を探る.

  • 淺原 雅浩
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
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    近年,福井県において,複数のスーパーサイエンスハイスクール(以下,SSH と略記)や高等学校の課題探究的な学習活動(以下,探究活動と略記),あるいは,ふるさと教育・SDGs などをキーワードとしたプロジェクト型学習に,大学教員として関わる機会が年々増加してきている.これらの取り組みでは,学年ごとにある程度の進め方,時間配分が決まっており,そこに様々な形と場面で,企業,大学,科学館,行政等の学外の専門家と関わりを持ちながら進められていく.本報では,これらの探究活動やプロジェクト型学習を進めていく中で散見される事項やこれまで関わってきた中で感じたことについて例示していきたい.

  • 遠藤 貴広
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

     日本の高等学校の「総合的な探究の時間」は,実社会や実生活における複雑な文脈の中に存在する事象を対象としていることもあって,日本の中等教育カリキュラムの中でプロジェクト型学習が最も進展している領域の一つである.この時間の中でパフォーマンス評価やポートフォリオ評価が行われ,パフォーマンスの質を確かめるためにルーブリックを利用している学校も増えているが,信頼性を確保するためにモデレーションを行ったり,生徒がルーブリックを策定したりする例も見られるようになっている.人文社会系の探究プロジェクトも包摂する「総合的な探究の時間」の評価にあたっては,近代自然科学の認識論に基づく実証主義の方法論を前提にした「技術的合理性」モデル一辺倒になっていないか,再検討が求められる.

  • 民主主義的な活動と市民性育成の視点から
    松島 充, 山口 武志, 西村 圭一, 島田 功, 鈴木 和幸
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
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    本稿では,なぜ市民性育成を数理科学教育の目的の柱の1つとするのか,どのような市民性を育成するのかについて論じた.市民性育成と数理科学教育は民主主義的な活動という共通点をもつため,数理科学教育の目的を市民性育成に設定することができる.また対象となる市民性の内容は,民主主義的な活動そのものである.その上で,民主主義的な活動には次の4点が重要であることを指摘した.1:すべての子どもが対話に参加し,強制なく同意できる数理科学的選択肢をつくり上げること,2:真正な問題を解決するために,関連するすべての人が受け入れることができ,かつ,それらの人々が属する共同体の歴史や文化を加味した解決策を対話によってつくり上げることを目指すこと,3:自他の意見やその前提となる価値観を理解し合意形成を目指し続けること,4:当たり前に存在している共同体や社会そのものを問い直し,批判的に再構成していくことの4点である.

  • −小学校の実践授業「良いコマを作ろう」を例に−
    倉次 麻衣, 清水 宏幸, 清野 辰彦
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本研究の目的は,学校教育において,社会における問題発見,目的設定,要件整理,立案した解決策の合意形成,実装化,実行した結果の評価,それに基づく改善といった一連のプロセス(以後,「社会的実践プロセス」という)を遂行するための数理科学的な資質・能力の育成を図ることである.本稿では,小学校における数理科学的な資質・能力の育成を図るための教材開発をするとともに,開発した教材を用いた授業を行い,実践を数理科学的な意思決定をするプロセスに着目して分析し,学習領域「数理科学」の構築への示唆を得ることを目的とした.その結果,本実践では,数理科学的な資質・能力の育成を図る場面がみられ,一連の社会的実践プロセスを学級全体で実行しようとする姿が現れた.算数科の枠を越えた活動が展開できており,新しい学習領域「数理科学」として位置付ける可能性を見いだすことができた.

  • 実践授業「自動販売機の品ぞろえは?」を例に
    上田 凜太郎, 清水 宏幸, 清野 辰彦
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本研究の目的は,学校教育において,社会における問題発見,目的設定,要件整理,立案した解決策の合意形成,実装化,実行した結果の評価,それに基づく改善といった一連のプロセス(以後,「社会的実践プロセス」という)を遂行するための数理科学的な資質・能力の育成を図ることである.本稿では,高等学校における数理科学的な資質・能力の育成を図るための教材開発をするとともに,開発した教材を用いた授業を行い,授業の実際に基づき授業実践の特徴を考察することを目的とした.考察の結果,「先端諸科学にかかわる知識の創出と批判的考察」,「社会的実践の志向を通した価値命題の創出」,「プロセス能力の育成に関する困難さ」,「合意形成の困難さ」という4つを特徴づけられることができた.

  • 内容スタンダードの「解きほぐし」と小学校の実践事例「輪投げのクリア回数決め」を通して
    松嵜 昭雄, 小林 廉, 石川 大輔
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,学習領域「数理科学」の見方・考え方を暫定的に定義し,この見方・考え方を数理科学教育のカリキュラムに位置付け整理する方法を提案し,実践事例に適用を試みた.カリキュラムに位置付け整理する方法は,「数理科学」の見方・考え方が成長し豊かになっていくイメージの鍵となる各項目について「解きほぐし(Unpack)」をおこなう.そして,小学校の実践事例「輪投げのクリア回数決め」をもとに適用を試みた.

  • 江草 遼平, 竹中 真希子, 辻 宏子
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,幼稚園教諭免許状及び保育士資格取得のための課程を受講する短期大学生を参加者とし,絵本づくりをベースとした実践のデザインとその報告を行う.実践のデザインにあたっては,「世界の家」を題材とした絵本づくりの活動を軸とする.「世界の家」としては,アジア,ヨーロッパ,アフリカ,北米から10の国と,気候風土に合わせた工夫のある特色ある住家が選択されている.参加者は,これらの住家について幼児教育現場において実際に活用されることを想定し,絵本制作の元となるダミー絵本の絵・仕掛け・言葉などを構成する活動を行うものである.また,STEAM教育観に基づいた活動の分析技能を獲得することをねらいとし,自身の活動・言動をSTEAMの観点からメタ分析する振り返り活動を導入する.実践は,参加者47名について, 2022年5月14日〜7月1日にかけて行われた実践の概要について報告を行う.

  • 北澤 武
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,2022年度,全校でSTEAM教育に取り組む小学校を対象に,この校内研修に関する形成的評価を行った.校内研修の試みとして,研究授業や研究協議会後に,「問1.研究授業と研究協議会を通じて,明日からの実践に向けて改善点やヒントになったこと」「問2.講師や他の教員が発言したことを聞いて,自分とどのような相違点があったか」「問3.校内研究を通じて,学びたい何かが生まれた場合は,自由に記述してください」の振り返りを行った.この結果,校内研修後の教員の学びについて,授業の構成に関すること,ICTの活用方法に関すること,相手意識させることなどの特徴が認められた.

  • 木村 優里, 辻 宏子, 森田 裕介
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,探究や創造を学年に応じて深化させていくルートスパイラル型STEAM教育を目指し,小学校の第4~6学年の3学年にわたる授業計画について報告した.創造的な活動については,問題の対象範囲の拡大や,取り扱うデータの種類や範囲の拡張,プログラミングの制御範囲の拡大,基盤となる各教科の学びの深まりなどによって,深化を目指した.また,探究的な活動については,算数科の統計的な探究活動や,理科の科学的な探究活動を学年に応じて取り入れた.例えば,統計的な探究活動については,目的に応じたデータの収集,分類整理,統計データの特徴を読み取り判断すること,を段階的に配置しすることで,探究活動の深化を目指した.

  • 〜授業に参画した建築家へのインタビューより〜
    竹中 真希子, 遠藤 ももこ
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本研究は,高等学校美術Ⅰのデザイン分野のSTEAM教育を志向した「デザイン×サスティナブル建築」の授業に参画した建築家へのインタビューを通して,授業を振り返り意義について検討した.授業への参画によって,建築への向き合い方を再発見したり,アイデアにはっとさせられるような新たな気づきがあったり,さらには学校教育の方法論が専門教育に生かされていたりするなど,建築家にとっても意義があったことがわかった.また,アイデアに対する建築家の添削が生徒の活動の重要な支援であったこと,展開図の作成が活動のキーとなっていたことが,改めて浮き彫りになった.

  • 下郡 啓夫, 森本 彩, 有賀 三夏
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,2022 年度美術教育のSTEAM 教育化を進めている小学校を対象に,論理的思考態度尺度および問題解決態度尺度を実施,その相関関係を調査した.この結果,論理的思考尺度「結論をくだす場合には、確かな証拠(理由)があるかどうか確かめようとする」と論理的思考尺度「判断をする際は、できるだけ多くの事実や証拠を調べた上で行う」および論理的思考尺度「新聞を読んだり、ニュースを見たりするとき、いつも「なぜだろう」と考える」と問題解決尺度「意見や評論(文)を聞いたり読んだりするとき、別の考え方ができないかを考えている」との間に,強い正の相関関係が認められた.

  • 瀬戸崎 典夫, 北村 史
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,実社会の課題解決をねらいとしたPBL科目のテーマ設定による自己評価の違いについて検討し,PBL科目の充実に向けた知見を得ることを目的とした.大学2年生を対象に自己評価を分析した結果,設定されたテーマによって,専門的な知識技能を用いた課題遂行ができていたことが示唆された.一方,データサイエンス系のテーマを選択した学生らにとって,情報工学分野を学ぶ機会が少なかったことが推察された.

  • 大谷 忠
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿ではSTEAM教育の実践に関して,複数の教育分野を横断的・総合的に進めていく学習活動において,単に探究学習に留めて議論する傾向がある点に注目し,探究と創造の往還の視点から議論することを目的とした.特に,本論では学習科学としてのLearning by Designの例を取り上げ,デザイン(A)やデザイン(E)等による創造の活動例から発展する創造と探究のサイクルをSTEAM教育の実践に導入する考え方を述べた.このような繰り返し探究と創造を往還する試行錯誤の学習活動を通して,探究学習をより促進させるように働かせることがSTEAM教育の特徴であることを述べた.

  • 塩瀬 隆之, 後藤 崇志, 加納 圭
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    産官学をあげて学習データ利活用EdTechの普及利活用が加速している。しかし、拙速なテクノロジーの導入は、倫理的・法的・社会的課題(ELSI)の対応抜きにはかえって社会受容の妨げとなる。本稿では、全国学力学習状況調査の悉皆データ(理科・算数・国語)利活用アプリ開発を例に、CBT開発の観点からその技術受容において配慮すべきELSI論点について紹介する。

  • 加納 圭, 神崎 宣次, 岸本 充生, 後藤 崇志, 佐藤 仁, 塩瀬 隆之, 高橋 哲, 藤村 祐子, 堀口 悟郎, 水町 衣里, 村上 ...
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    GIGAスクール構想(文部科学省)の推進に加え,教育データ利活用ロードマップ(デジタル庁・総務省・文部科学省・経済産業省,2022),Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ(案)(内閣府,2022)が策定されてきており,学習データ利活用EdTechの基盤は築かれている.「学習データ」等を利活用する EdTechの倫理的・法的・社会的課題(ELSI)対応のため,教育分野特有,日本特有のELSI論点を検討する必要があるだろう.本稿では,学習データ利活用EdTechのELSI論点を整理する.

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