日本科学教育学会年会論文集
Online ISSN : 2433-2925
Print ISSN : 2186-3628
ISSN-L : 0913-4476
46
選択された号の論文の201件中51~100を表示しています
論文集
  • 後藤 崇志, 加納 圭
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
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    成人を対象としたインターネット調査を行い,初等・中等教育へのEdTech利用の進展への社会受容について,その背景にある教育改革への受容との関わりと合わせて検討した.成人ではEdTechを用いて児童・生徒からデータを取得しての個別最適化を行うことにはおおむね肯定的な態度が抱かれていることが窺える.特に,授業の受講,問題集の回答,テストの成績といった学習履歴や知能検査,表情,姿勢などのデータを取得して分析することに対しては肯定的な態度が抱かれている.一方で,EdTechを用いた個別最適化を受け入れるか否かについては,子どもや学校,教師が選択可能であることを望む傾向も見られた.報告では,他の項目の分析結果とも合わせて,初等・中等教育へのEdTech利用の進展への社会受容の態度について議論する.

  • 飯島 康之
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
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    GIGAスクール構想等などにより学校のICT環境は変わりつつあり期待が大きいが,次の懸念もある.(1)「ずるい方法としてのICT」と「それを監視する手段としてのICT」, (2)「探究的な学び」を実践する上でのノウハウ等の欠如,(3)旧来的な学力を個別最適化するためのシステムとしてのICTが学校教育での主流になっていく可能性.それらへの対策案として,ソフト開発や基本的なリソースの提供の仕方のあり方とともに,従来の学びから探究的な学びをシームレスにつないでいくために,複数の目的に合わせたリソース(特にwebコンテンツ)の提供のあり方について提案する.

  • 渡邊 信
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    数学教育に電卓を導入したいと考えても,授業で電卓を使うことは難しかった.このような状況の数学教育の教科書に数学ソフトGeoGebraが中学校に,表計算ソフトExcelが高校のデータ分析で使われている.学習指導要領ではTechnologyの扱いについてはあいまいである.GIGAスクール構想で小学生・中学生が端末を持つようになって2年が経過する.残念ながらGIGAスクール構想の影響力は表れていない.教科書の中でTechnologyが使われ,GIGAスクール構想でだれもが情報機器を持つようになったことは,数学教育に大きな変化が表れたと考えられる.このような変化の認められる過度期には問題点も見られる.数学教育では「小さなコンピュータ」を作るのではなく,コンピュータが使える数学教育を模索したい.これは学習指導要領,GIGAスクール構想,学力試験問題での統一していない混乱状態を示す.

  • 芝辻 正
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
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    GIGAスクール構想の実現により生徒が一人一台のICT端末を利用することが可能となった.ICT端末を利用することで生徒の理解を促進させることができる教材の検討とその課題について考察を行った.左辺が絶対値を含むxの1次式,右辺が絶対値を含まないxの1次式となる方程式の解の個数を調べるという実践でICT端末の利用について検討を進めた.複雑な場合分けが存在する問題において,視覚的に確認することのできるICT端末の活用は効果的だったと言える.一方で,数学の基礎・基本が抜けている生徒にとってはICT端末をどのように利用すればよいかわからなったという問題が生じている.また,ICT端末を用いた数学的活動においてどのように生徒を評価するかについては課題が残る.

  • 古宇田 大介
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
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    一般的な数学に対する態度とテクノロジーを活用した数学に対する態度をMSDにより測定し,その比較を行った.多くの項目について有意差が認められ,前者の方が高い結果となったが,テクノロジーを自ら活用していると判断される生徒達は,他の生徒に比べて2つの数学に対する態度の評価に差がない傾向が明らかになった.これを含めたいくつかの分析結果に対して考察を行い,一定の教唆を得た.

  • 野田 健夫, 北本 卓也, 江木 啓訓
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本研究は,数理統計分野でも利用頻度の高い「独立性の検定」について学習することを目的に,クロス集計表に入力した数値に連動して統計量の計算式や確率分布のグラフが自動的に提示され,検定の手続きに関する理論的な流れを統合的に理解可能とするHTML5をベースとしたコンテンツの作成・利用事例に関するものである.学習者が利用した際に思考が滞ったりそこから進展が見られたりした場面で集中的に聞き取りを行い,その結果を認知負荷の理論に基づいて分析することで,コンテンツのブラッシュアップや利用時の授業設計に関する知見を得ることを目指した.結果として,「独立性」に関わる言語的なイメージと検定の手続きの関連をより鮮明に意識させるためにコンテンツを改善すべき点に関する具体的な示唆が得られた他,学習者のaptitudeに応じて思考に関与するmodalityが異なるため,対応した教育的介入が求められることが示唆された.

  • 濱口 直樹, 高遠 節夫
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    2020年度より,多くの大学や高専でオンライン授業が実施されている.教育のデジタル化の流れもあり,今後もWeb利用の教育が普及していくと考えられる.対面授業の代替方法としての教材作成および理解度の確認やフィードバックでは,教員による準備の段階から様々な困難も見られた.その一方で,オンライン授業のために準備された教材が,対面授業でも効果的に利用できる場合も多く,これらの教材に関する検討も継続して進められている.このような中で,我々はテキストファイルのように小さいデータ量で学生とファイルの送受を行うための手法を検討し,数式表示に関する変換を行うKeTMathを利用した教材作成システムの整備を進めている.この教材は,実際の授業において,学生がスマートフォンでも扱えるものであり,容易に利用することができる.また,随時更新も行っており,継続的な利用によって,より効果的な教材となることが期待される.

  • 清水 美憲
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    数学の授業に関する国際比較研究によって,日本の授業に関する様々な特徴が顕在化する一方,授業や教師の教授行動について教師や研究者が言及する際に用いる語彙群(「レキシコン」)の特異性に焦点が当たることになった.本稿は,この「授業レキシコン」の研究の来歴を振り返り,授業という社会的・文化的で複雑な営みの研究において,授業を記述するために教師が用いる語彙群が,「当たり前」で見えにくい現象や等閑視してしまいがちな現象を顕在化・精査するための重要な「窓」(観点)を提供してくれることを指摘した.また,日本の学校教育の固有性を踏まえ,我が国のレキシコンを他国のレキシコンと対照することの意義を確認した.

  • 花園 隼人
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿の目的は,世界10カ国の研究者の共同で進められている国際授業レキシコンプロジェクトの一環で定められた日本における数学の授業レキシコンについて,その構成過程の特徴を他国チームによる構成過程との比較をとおして同定することである.考察の結果,日本における数学の授業レキシコンは,共同プロジェクトで採用している三局面によるレキシコンの構成方法を踏まえながらも,中学校以外の教員をも対象とした予備調査を実施している点に特徴があった.そしてその背景には,中学校においても数学教育を専門とする教員が不足しているオーストラリアとは異なり,小学校においても算数教育に精通した教員がいるといった日本の特殊性が確認できた.

  • 舟橋 友香
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    国際レキシコンプロジェクト (Mesiti et al., 2021) は現在,各国の数学の授業レキシコンの特定とその分類が提示された段階にある.そこで本稿では,数学に関わる教授・学習行為のいかなる側面について語りうる語彙を日本では共有しているのかについて,8カ国の授業レキシコンの分類の比較を通して明らかにすることを試みた.その結果,日本の授業レキシコンには,時間の経過と紐づけた整理が可能な語彙群が存在することと,数学の価値が内包された語彙群が豊富に存在することが明らかになった.一方で,評価に関わる語彙群や,大局的な視点から人間の育ちを捉える語彙群が少ないことも顕在化した.今後は,数学に固有な側面に焦点化した語彙の比較や,評価及び大局的な視点から人間の育ちを捉えるという観点からの分析を通して,日本の数学の教授行為・学習行為を語りうる語彙の特徴を明らかにしていくことが課題である.

  • 平林 真伊, 康 孝民
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本研究の目的は,日本と韓国の授業レキシコンを対象とした国際比較を行い,各国の教師による授業レキシコンの解釈の特徴を明らかにすることである.そのために,本研究でこれまでに実施してきた日韓の数学教師を対象としたインタビュー調査の結果を分析し,日本の授業レキシコンのリストに焦点を当てて考察を行った.その結果,両国で類似したレキシコンが多数あるものの,それらの意味や使用場面の解釈には違いがあり,教師らが授業レキシコンを解釈する際には,各国の授業スタイルや文化を背景としていることが明らかになった.

  • 金児 正史
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    高等学校では,2022年度から理数科の授業が始まった.筆者はこれまでに,主として高校生を対象とした,理科と数学を横断する授業を実施し,分析・考察を行ってきた.その結果,高校2年生までの認識では,教科の枠が明確にあり,理科と数学が関連し合っていることに驚きも見せるほどだった.こうした状況の中で理数科の科目を実施しようとしても,探究の基礎が十分ではないことが窺える.そこで小中学生に,正接を利用して空港に着陸する飛行機の高度を求める学習を,計画・実施した.受講生の反応分析から,理科・数学に興味関心を持つ中学生であれば,高等学校の学習内容を援用しながらの探究でも十分に対応できることが窺えた.

  • 森田 大輔
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,ライフストーリーを研究方法論とし,ある数学科教員のライフストーリーから,教科横断がどのようなものと捉えられているか,また,理数教育の充実を担う教師を取り巻く社会や文化の諸相や変動を明らかにすることを目的とする.結果として,教科横断が「学習内容の接続」という観点から着目される一方で,「学習方法の接続」までは十分考慮に入れられないことがあるということを明らかにした.また,語り方に着目すると,「物理の教員を志していた」というパーソナル・ストーリーが「学習内容の接続」に関する語りを構築していた一方,「学習方法の接続」に関しては語られなかったことを明らかにした.さらに,所属してきたコミュニティで見方・考え方や課題解決といったことに言及されてこなかった可能性を指摘した上で,学習方法に関するマスター・ナラティブを個人やコミュニティに土着させることの重要性が示唆された.

  • 高須 雄一
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    医学部1年生向けに,統計処理課題を含む基礎科学実習を設計し実施した.実習で得られる計測データは約120名の受講生全員の身体計測データである.計測したデータの意味を的確に理解するためには,適切な統計処理が必要になるように設計した.同時に,受講生に対して統計用語の認知度調査,および統計を扱う上での意識調査を複数回実施した.統計用語の認知度はおおむね高い水準であり,高等学校での統計教育が成功していると推測できた.第1回目の調査で低い認知度を示した用語は,大量データを統計処理する実習を実施した後の調査で認知度向上が認められた.統計結果と実験考察との関連に関する意識調査では統計に対する意識の向上が認められた.「考察には統計結果が不可欠」と回答した受講生の割合が実習を経て上昇した.実習課題を設計する上で,適切に統計処理をしなければ計測データを読み取れないようにしたことが有意に作用したと考えている.

  • 渡邊 耕二, 堀 友歌, 高阪 将人
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    算数と理科の関連付けにおいて,小学校では量指導に課題がみられると指摘された.そこで,算数と理科における量に関する学習内容や配当学年を整理し,両教科を関連付ける方法を検討した.その結果,両教科で扱われ,算数で先に学習する場合には,算数で身に付けた資質・能力を理科で活かし,有用性,正確性などの数学のよさを実感させることが大切である.また,理科で先に学習する場合には,算数での学習内容を把握し,用語を統一し,指導順序を工夫する必要がある.さらに,理科でのみ学習する場合には,量指導の 4 段階を教師が意識して指導することが重要である.特に課題が見られた電流の大きさについては,間接比較を十分に行い,電流を「量」として認識させる必要がある.

  • 久保 良宏, 安藤 秀俊, 太刀川 祥平
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    「量の感覚」は理科の学習において重要である.一方,算数や数学の指導では,量に関する学習を踏まえた上で単位換算などには重点が置かれるが,「量の感覚」についての指導を重視しているとは言い難い.本稿は,数学教育と理科教育との関係について検討する視点として,「算数・数学と社会をつなげる力」の研究(長崎,2001)の中の「量の感覚」(「長さ」,「広さ」,「角度」,「重さ」など)に立ち返り検討した.その結果,小中高の段階では,「量の感覚」について十分に身についていない実態が明らかになった.

  • 学習評価や教員支援のあり方に焦点を当てて
    野添 生
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    イギリスにおけるSTEM教育の歴史的展開を紐解けば,黎明期から4領域全てに重点が置かれていたわけではなく,科学と数学の2つの領域に主軸が置かれてきた経緯があるものの,近年は技術やエンジニアリングとの連携の重要性も指摘され始めている.そのような背景を踏まえ,本研究はイギリスのSTEM教育における動向について学習評価や教員支援の側面から明らかにしていくことを目的とした.イギリス国内の文献・資料を基に学校教育から教員支援にわたり調査・分析を行った結果,イギリスではSTEAM等の教科等横断的な学習活動を奨励する一方で,評価は内容の系統性が確立された「教科・科目」に基づいて行う現実的な評価運営方式が明らかとなった.また,イギリスにおけるSTEM教育プラットフォームはSTEM教材リソースの提供や生徒のキャリアサポートだけでなく,STEM学習を展開する教員研修にも重点が置かれていることも明らかとなった.

  • ―学習評価及び教員支援をめぐる取組を中心として―
    遠藤 優介
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    STEM/STEAM教育の世界的潮流にあって,ドイツでもそれに相当するMINT教育が様々に展開されている.本稿では,ドイツのMINT教育について,主に学習評価及び教員支援体制に焦点を当てて分析を行い,その動向の一端を探った.学習評価に関しては,既存の教科での実施が基本であり,MINT教科横断的なコンピテンシーを評価するような枠組みにはなっていない.教員支援に関しては,官民並びに産業・経済・教育界の連携の下,学校間のネットワーク化を核とした支援体制づくりが図られている.

  • -学習評価や教員支援のあり方に焦点を当てて-
    岡本 紗知
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本発表では,カナダにおけるSTEM/STEAM教育における学習評価や教育支援のあり方に焦点化した動向調査の結果を報告する.カナダでは,関連分野における人材育成に力点が置かれており,実社会における課題解決やトランスファラブルスキルの習得が目標とされる.カナダの教育は州によって異なるため,州ごとの状況を把握する必要がある.オンタリオ州の場合,STEMに特化した評価枠組みは存在せず,関連科目ごとに評価が行われる.また大学進学にSTEM評価が直結することもない.カナダにおいて特筆すべきは,教員支援のあり方である.Teacher-Librarian制度と呼ばれる教員養成プログラムでは,教員免許を持つ教員らがカリキュラム開発や教育的リーダーシップなどを体系的に学び,その後,学校におけるプログラム運営において中心的な役割を担う.

  • 大嶌 竜午
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,シンガポールにおけるSTEMに関する学習評価の取り扱いと教員支援の取り組みの一端について,理科教育の観点から明らかにすることを目的とした.学習評価に関して,STEMという用語が2021年科学シラバスに導入されたものの,科学の中等教育修了資格試験要領には,それに伴う評価枠組みの変更は見られなかった.選択科目であるSTEM ALP(応用学習プログラム)は,中等教育修了資格試験の対象外であり,STEMの評価については示されていない.教員支援に関して,国立教育研究所(NIE)にあるmeriSTEM@NIEが,STEMに関する研究と教員研修を担っていた.また,科学館に設立されたSTEM Inc.が教育省と連携し,学校でのSTEM ALPの計画及び実施のための人材派遣や,学校と企業等との連携(産業パートナーシッププログラム:IPP)の促進によって,直接的な支援を行っていた.

  • 学習評価と教員支援についての数学教育の視点からの示唆
    川上 貴
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,オーストラリアにおけるSTEM教育に関する学習評価と教員支援の取り組みについて報告し,数学教育の視点から,わが国におけるSTEAM等の教科等横断的な学習に関する評価や教員支援について3つの示唆を得た:①各教科等を横断する重要なアイディアの視座から,算数・数学科の目標である「数学的な見方・考え方」と,「理科の見方・考え方」や「技術の見方・考え方」との繋がりを見いだすこと,②STEM/STEAM教育において数学の役割を顕在化し,各教科等における資質・能力を相乗的に育成し,それらを評価するための1つの視座として,「データモデリング」に着目すること,③STEM/STEAMのオンライン教材と,関連教科等における資質・能力や学習内容との対応関係を明示すること.

  • あさがおの種を植えよう
    加藤 久恵, 太田 友子, 寺井 あい, 重松 敬一, 山本 紀代, 山下 裕己
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,小学校低学年の児童における比例的推論の素地を形成する授業実践を検討するために,5歳児に対して2量を対応づけて考えることを意図した実践を計画・実施した.その際に,幼児の比例的推論を促すメタ認知的支援についても考察する.筆者らは,幼児がメタ認知的気づきを働かせながら,問題場面での行為を興味を持って繰り返し行ったり,行為を修正したりすることで,比例的推論の進展を促すことが重要であると考える.具体的には,どのような問題場面の工夫や保育者のメタ認知的支援によって,5歳児が2量を対応づけて考えることができるのかについて検討し,保育への示唆を得ることを目指す.そのために,本稿では植木鉢にあさがおの種を植える場面を設定し,5歳児2名の活動と教室での集団活動とを組み合わせて実践を行った.

  • 年長児の事例研究を通して
    松島 充
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,比例的推論に関わる認知を個人内から個人外に拡張して考察するために,身体化認知の視座から年長児の事例研究を分析することを目的とする.そのために身体化認知の理論を概観するとともに,年長児の活動記録を作成した.年長児の活動では,比例的推論のユニット化の基となる等分の概念の理解を目的とした.また分析では約12分間の活動において等分の概念を理解したA男の言動に着目して分析を行った.その結果,教師とA男の情動の共有がA男の認知活動の方向性を定めていた可能性のあることが見出された.また自己の感覚運動経験と他者の操作活動の視覚的経験を複数回経ることで,比例的推論のユニット化につながる等分の概念が見え始めた可能性のあることが示唆された.その結果,活動2と活動3においてA男の等分の活動には,明らかな質的な差が見出された.

  • 1/3のユニットの構成に着目して
    日野 圭子, 田島 達也, 上野 友美, 秋澤 克樹
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,下学年の児童の比例的推論を捉えるために,小学校第3学年の分数の活用の授業において,板を購入する場面を設定し,板の長さを注文したり値段を求めたりする課題を扱った.本稿では,キズネール棒を使って授業を行った小規模学級での3名の児童の思考過程を述べる.各児童の発話と行動の記録・分析から,緑の棒を単位にして測ると余る部分について,緑の1/3をどうユニットとして見出し,使っていくかにおいて,3名の児童の思考過程に違いが見られた.その際,児童の中には,キズネール棒を操作しながら,緑の1/3,また,その値段につながる表現や文脈を,自ら生成し,活用している様子が見られた.

  • 新井 美津江
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
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    本稿の目的は,小学校教師の日々の授業実践における気づきの様相を,計画・授業・省察に焦点をあて記述することである.授業は第2学年の単元「ばいとかけ算」で,乗法の意味の拡張の導入となる指導内容である.調査方法は,授業ビデオと教師作成の授業計画ノートを用いた半構造的インタビューである.分析方法は,倍概念に関する教師の実践的知識に対する気づきが表出した回答を取り上げ,気づきをもたらした要因,気づきによる実践的知識の変容過程を辿る.結果,教師は教科書問題の意義を「倍概念の言語的表現」(計画時の実践的知識)を身に付けさせることであると考えていたが,省察後「基準量の把握」(省察時の実践的知識)が目的であることに気づいた.その気づきの要因は授業時の児童の学習状況の把握であり,授業時の指導方法の変容が観察された.しかし授業時での気づきの意識はなく,省察時における他者とのやりとりの中での気づきであった.

  • 市川 啓, 成澤 結香里, 髙橋 丈夫, 工藤 優
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
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    本研究の目的は,比例的推論のための概念的基礎が下学年児童にどのように形成されているかを探るための調査問題を開発し,予備調査を行い,調査の可能性を明らかにすることである.概念的基礎の一つであるユニット化に関わって,2つの小問からなる2つの大問を開発した.大問の一つは,1段階のユニット化の問題場面で,大問のもう一つは2段階のユニット化の場面とした.そしてそれぞれの問題場面で,ユニットを合成していく思考と,ユニットを分解していく思考を見ることを意図した問題を開発した.予備調査を実施した結果,1年生の学年末の調査において,2段階のユニット化の問題の正答率が他と比べて大きく下回ることがわかった.また,どの時期の調査においても,正誤パターンに共通の特徴が見られた.このことから、この調査を通して、概念の進展のプロセスの一端を明らかにできる可能性があることが示唆された。

  • 山崎 貞登
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
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    学習評価観点「主体的に学習に取り組む態度」の方法や実施の在り方について,診断的,形成的,総括的評価の各機能に留意し,2022年度から観点別学習評価が導入された高校の実践事例,「Shuffle.(シャッフル・テン)」によるAIリコメンドコンテンツの紹介,小・中学校における小型人型ロボットを教材としたAIリテラシー育成のための授業実践を紹介しながら,議論を深める.

  • 佐伯 智成, 山崎 貞登
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
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    工業科の観点別学習評価規準開発に必要な因子論的知見を得るために,T県立工業高校計4校電気系学科676人(1回目)及び667人(2回目)を対象に,質問紙調査と共分散構造分析を行った。1回目は「メタ認知」,「学習方略」,「学力の自己評価」,「課題価値の認知」,「社会の一員としての主体的に学習に取り組む態度」の5因子,2回目は「学力の自己評価」,「将来設計能力」,「人間関係能力」,「行動始発の制御」,「エゴ・レジリエンス志向」,「行動抑制の制御」,「注意の制御」の7因子を抽出した.この結果を基に,工業科の学習過程モデルの提案と,「主体的に学習に取り組む態度」のエゴ・レジリエンスと自己調整学習の2側面の構成概念を検討した。

  • 松田 孝
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
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    中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会は「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」(平成31年1月21日)(以下「報告」)を取りまとめた.都道府県教育委員会等は文部科学省の「児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」(通知)を受け,所管の学校や域内の市区町村委員会に対して指導要録の記入の手引きを作成し,その参考様式を示すとともに学習評価のあり方についても報告の内容及び国立教育政策研究所から示された資料等をもとに観点別の趣旨を示す等して周知を図った.本発表は,新しい学習評価の目玉である「主体的に学習に取り組む態度」評価に際して学校現場が直面する根本の問題を指摘するとともに,その状況を打開する方途としての一つとしてAIレコメンドコンテンツ「Shuffle.」の活用による「主体的に学習に取り組む態度」評価の実際を提案するものである.

  • 磯部 征尊
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
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    本研究では,主たる先行研究で得られた研究結果を踏まえ,AIリテラシー育成に着目したカリキュラムのデザインと評価を行うことを研究目的とする.本研究では,本題材の最終目標「家での生活を便利にするための,AIの活用方法を考えよう」を設定し,AIの活用方法に必要な知識や技能の習得と共に,主体的に学習に取り組む態度の育成と評価を行った.その結果,主体的に学習に取り組む態度の評価結果は,第9時では77%,第10時では82%の児童がA評価へ変容した.児童の学習成果を分析すると,AIの特徴や仕組み,身の回りで活用されているAIの学習等,AIに関して深く学習した記述が複数見られたことより,AIに関する興味・関心が向上し,AIのより良い活用方法を主体的に考える児童が増加したと推察する.

  • 川原田 康文
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
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    これまでの実践研究から,小学校段階では,身の回りにあるセンサ,それを使った製品についても興味を持ち,どのように使われているのか,そしてセンサが計測したデータをどのようにプログラミングで制御しているのかについて知り,考えることができることが重要と考える.相模女子大学小学部では,これまでレゴの教育用キットを中心にヒト型ロボットPepper を教材も使用し,プログラミングの学習を実践してきた.本報告では,3 年生から5 年生の児童を対象に,ロボホンをした学習を行い,その学習を通して,AI について考える学習を実施した.本報告は,学習を通して,児童がどのような考えを持ったか,変わったかについて報告する.

  • 人見 久城
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,まず「主体的に学習に取り組む態度」の評価に関する若干の考察をおこない,評価上の留意点などを整理する.その上で,当該課題研究の発表論考に対し,共通と個別の問いを述べ,議論の深まりへの足掛かりを提供する.

  • 熊野 善介
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本課題研究では,アメリカの最先端STEM教育研究と実践が展開されている複数の大学との共同研究を展開し,日本型のSTEM教育改革モデルを理論と実践の両面において構築することが主たる目的である.そのために,すでに国の科学教育にSTEM教育を取り入れた諸外国(アメリカ,オーストラリア,タイ国,インドネシア,台湾)の実態を明らかにする必要があり,研究者レベルや実践モデルの交流を進めることは,グローバル化という視点からも重要となる.そして,研究者同士の諸外国の実態解明の情報交流・STEM教材開発とその情報交流のみならず,STEM教育改革を展開するために日本における教員養成大学のカリキュラム改革,すなわちSTEM教師のためのPedagogical Contents Knowledgeの開発,現職教員のためのFDモデル,STEM教材開発のモデル化,実践授業モデルの開発を積極的に展開する.

  • 今村 哲史
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    近年の科学技術振興政策により,STEM教育への重要性がますます高まってきている.本研究では,STEM教育の先進的取り組みを行っている米国初等理科において,どのようにSTEM教育が取り組まれているのかを明らかにすることとした.具体的方法としては,米国初等理科教科書“Science Fusion”(第5学年用)を対象とし,「科学の本質とS.T.E.M.」の領域の「単元2:エンジニアリングプロセス」の内容を中心に調べた.その結果,デザインプロセスには,5つの段階があり,フローチャートを使って製品を完成させるまでの過程(工程)を通して学習することができる内容であることが明らかとなった.また,技術が人々のニーズに応えることを目指していることや,科学技術のリスクと便益についても学習することとなっていた.以上のことから,我が国の小学校理科へのSTEM教育導入にあたっての有益な示唆を得ることができた.

  • 小坂 那緒子
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    米国では,従来の科学教育にエンジニアリングの要素を導入や生徒を中心とした課題解決型学習を活用したSTEM教育が行われている.一方,求められる経験を持つ教師は少なく,STEM教育に従事する教師(STEM教師)の養成が喫緊の課題である.STEM教師には,多様な能力は求められることが先行研究で言及されているが,課題解決型学習でSTEM教師に求められる要素を事例的に明らかにした報告は乏しい.本研究では,中学校・高等学校のクラブ活動でのSTEM教育実践として,従来の理科実験教材であるウミホタルを使用した,エンジニアリングの要素を導入した課題解決型学習を実施した.その結果,生徒の意欲の向上が明らかとなるとともに,課題解決型学習を補助するSTEM教師に必要な要素として,①メンターとしての働き,②専門家との接続形成,③発表機会の提供,④研究分野における専門知識の保有の4点が抽出された.

  • 郡司 賀透
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    STEAM教育の構成要素のなかでも,「エンジニアリング」については,児童・生徒,さらにいえば科学教師にとってもあまり聞いたことのない用語なのかもしれない.本発表では,NSTA(2020)のUncovering Student Ideas About Engineering and Technology: 32 New FormativeAssessment Probesを事例として,エンジニアリングの理解を評価する活動とそのねらい,手法等々を調べた.その結果,自己評価が中心的な活動であり,なかでも児童・生徒による言語化が重視されていることが明らかとなった.

  • 紅林 秀治
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    STEM教育のエンジニアリングを取り入れた学習として,工学設計(エンジニアリング・デザイン)ののプロセスを取り入れた実践を紹介する.工学設計では,情報共有をするためのDR(デザインレヴュー)をプロセスの中に位置付けている.中学校技術・家庭(技術分野)の授業の中の小集団学習をDRとして位置づけ,設計の学習に取り組んだ.その結果,情報共有を促すDRは,工夫したり改善したり考えを詳細にし,主体的な学びを促すことがわかった.

  • 竹本 石樹, 小川 博士, 伊堂 凜, 熊野 善介
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    現在,世界的にSTEAM授業開発が積極的に行われ,我が国でも先進的な取組としてSTEAM授業開発が行われるようになった.筆者らも,教師,研究者,工学者が協働し,過去3年間に5つのSTEAM授業開発を行ない,彼らが有するSTEAM授業開発のための多様な知識,いわゆる「教師知識」に出会ってきた.STEAM授業開発には,この「教師知識」を明らかにし,教員の養成・育成を行っていくことが不可欠と考える.本研究では,教師,研究者,工学者がA小学校でのSTEAM授業開発での発話を分析対象とする.その発話をSTEAM授業開発時に必要な知識に着目してコーディングし,サブカテゴリ,カテゴリの生成を試みる.これによって,STEAM授業開発に必要な教師知識の構成要素を明らかにする.本研究は事例研究であり,現時点で一般化することはできないため,今後,分析対象を拡大する必要がある.

  • 黒田 友貴
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,理工系大学の初年次教育に関する特徴的な事例から,学修支援,学修コミュニティの形成の視点から目指すべき方向性に関する考察を行なった.事例として取りあげた,米国のマサチューセッツ工科大学,MIT Experimental Study Groupの特徴として,学生の自主性をしたコミュニティ作り,SA・TAの養成とその活用,教室環境に加えて,自主学習やグループ学習,リフレッシュタイムを過ごせるラウンジなどが統合的にデザインされた学習環境を含めたコミュニティデザインが挙げられる.特にコミュニティづくりでは,受講学生,在学生,教職員,専門教員,卒業生などの各コミュニティが複合的に運営に関与しており,効果的な活動ができるように調整されていることが明らかになった.今後の課題として,受講学生等に対するインタビューやアンケート調査などを実施し,具体的な教育効果を検討することが挙げられる.

  • 興 直孝
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    欧米などの主要国におけるSTEM教育改革に対する取組は,我が国の教育界に大きな変革をもたらしてきた.我が国では,Society 5.0,新たな社会の実現への期待によって,STEM教育改革の動きが加速しており,有意な人材の輩出につながる実践が求められている.日本型STEM教育改革の理論と実践に関する実証研究の取組,として,昨年報告された諸外国の調査活動にCOVID19の影響はどうだったのか,案じられる.本課題研究では,エンジニアリングに着目し,科学の本質とSTEM教育の実践,課題解決型学習,評価手法,中学校技術・家庭の授業計画の報告が行われた.また,教師に必要な知識の研究等,内外の知見・実績を基にした研究報告,人材養成に及ぼす研究教育環境の支援活動の意義等の米国での事例研究報告があり,今後の提言に貴重な要素になるものと期待され,「日本型STEM教育の改革」の姿が見えてきたかと期待している.

  • 縣 秀彦, 山﨑 友紀, 今井 泉, 小森 次郎, 上野 宗孝, 海部 健三, 富田 晃彦, 長沼 祥太郎
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本研究課題においては,学習指導要領に実装可能な次世代の高校理科教育のカリキュラムを中学校教育との接続も視野に入れて多角的に検討を行う.高等学校理科4領域が,現在はほぼ独立して指導されている一方,その内実は相互に関連しながら現代社会の問題に密接に関連していることを重視し,科学教育の意義・目的と現代社会における役割を再考し,生徒の課題解決能力の育成を主眼とした総合的かつ基礎的な必修理科科目を構想し,実践・評価することを目的に研究を進めている.本発表では途中経過を報告し全体構想を提示する. 

  • 都築 功
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    現代の様々な課題の解決のために,次期学習指導要領の改定を目指して,4分野を統合した理科の必修科目を提案したい.その基本的な資料とするために,戦後の理科教育における総合的な理科の科目について調査し,内容の比較などを行った.学習指導要領の改定ごとに総合的な理科の科目が存在したが,必修科目であったのは昭和53年告示の学習指導要領における「理科Ⅰ」のみで,他は選択科目であり履修率は低かった.「理科Ⅰ」も次の改定では無くなり続かなかった.本発表では,これまでの総合的な理科の科目について比較するとともに,「理科Ⅰ」が定着しなかった理由などについて考察し,次期学習指導要領で総合的な必修理科科目の実現に向けての課題を明らかにする.

  • 今井 泉
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では, 高等学校理科の共通基礎科目「理科基礎(仮称)」の構築に向け, 「教科の知識」としてエネルギー概念を, 物理, 化学, 生物, 地学をつなぐ「教科(科目)横断的な知識」として系(system)を取り上げた. 具体的には, 1) 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説【理科編 理数編】におけるエネルギーに関する内容を抽出し, 2) エネルギー・系に関連した国内外の先行研究や高校・大学のテキストを調査した. その結果, エネルギー・系(system)は物理, 化学, 生物, 地学を結びつける有力な候補になりうることが示された.

  • 加納 安彦
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    理科4領域を統合した新カリキュラムの構築をめざした調査研究の第一段階として,現在の日本における科学教育の実情を確認するために,新学習指導要領とそれに準拠した教科書の内容を分析した.今回はモデルケースとして、微生物・病原体,感染症についての教育内容を科目,教科横断的に検討した.基礎的な知識が十分に教えられているとはいえず,一方で,『保健』や『家庭』では感染症や食中毒などの予防が強調されていた.また,教科間の系統性にも欠けていた.日本での微生物・病原体,感染症についての教育は不足していると考えられる.

  • 長沼 祥太郎
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    高等学校理科4領域が独立に指導されている現状を問題視し,現在検討が進められている総合的・基礎的な理科必修科目の「理科基礎(仮称)」の評価に関して示唆を得ることを目的とする.この目的のため,STEM教育の評価方法に関して行われた包括的なレビュー論文を概観し,論文に記載の事例も元論文に遡り検討した上で,「理科基礎」の評価内容・方法を考える上での論点を抽出した.その結果,1) 理科基礎における「学際性」を特定する必要があること,2)「教科間のつながり」を評価指標として積極的に検討する必要があること,3)理科基礎において「超学際的知識」「超学際的プラクティス」に該当するものがないかを検討する必要があること,4) カリキュラム内での成果物を評価するのか,それとも,カリキュラム内で獲得された能力を別の方法で追加的に評価するのかの検討が必要であること,が明らかとなった.

  • 辻山 洋介
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,問題設定研究の端緒であるBrown & Walter が証明の活用を重要視していたことに着目し, 数学的問題設定における証明の活用に着目した授業の設計,実践,分析に,小中高大の教員・研究者が共同で取 り組んでいる.本稿では,授業設計の枠組みの概要を述べる.まず,Brown & Walter に依拠して問題設定における 証明の活用に着目するとともに,相違点として出発点の命題を証明することから始める場合に焦点を当てる.そ して,出発点の命題を証明し,問題を設定し,証明を活用して問題を分析することによって数学的問題設定を捉 えた上で,その過程を提示するとともに,その過程と証明の機能の関係について述べる.最後に,数学的問題設 定の過程を枠組みとして用いた授業設計について,枠組みの構成要素の意味に関することを中心に述べる.

  • 加藤 幸太, 辻山 洋介, 柴田 義之
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿は,「数学的問題設定における証明の活用に着目した授業設計の枠組み」をもとに授業の設計と実践を行い,その意義と課題を検討することを目的とする.具体的には「図形の合同」において,全国学力・学習状況調査の問題を出発点の命題として,正方形の仮定において結論が成り立つことを証明し(活動1),正方形という属性を他の図形に変えた問題を自由に設定し(活動2),その問題を解決し(活動3),その過程で生じた「正方形では成り立つことが長方形では成り立たない」等の不具合の原因を分析し,仮定のどの部分によって結論の成否が決まるのかを把握する(活動4)ことを位置付けた授業を設計し,実践した.その結果,生徒は自力解決場面か全体共有場面かの違いはあるものの,結論が成り立つための本質的な条件を把握することができた.今後の課題は,生徒の思考をより詳細に分析し,証明や仮定の記述内容を生徒の実態に応じて精査することである.

  • 野田 裕行, 四之宮 暢彦
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿は,小学校第6学年「縮図や拡大図」において,問題設定における手順の説明の活用に着目した授業の設計と実践を行い,その意義と課題を検討することを目的とする.具体的には,1つの点を中心にして拡大図を作図する学習において,三角形の頂点を中心にして拡大図を作図する手順をまとめ(活動1),中心の位置という属性を変えた問題を設定し(活動2),その解決の過程で生じた「辺の長さを2倍に延ばすだけでは拡大図が作図できない」という不具合について話し合うことで(活動3),「中心から各頂点までの距離を2倍にする」という作図の手順がまとめられ,前の手順と比較する(活動4)ことを位置付けて授業の設計,実践を行った.授業の結果,「中心から頂点までの距離を2倍している」ことの児童の理解が深まったことが確認されるとともに,「証明」の活用に焦点を当てた授業設計の枠組みを,「手順の説明」の活用へと拡張する可能性が示唆された.

  • 榎本 哲士, 木暮 亮太
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本稿の目的は,「数学的問題設定における証明の活用に着目した授業設計の枠組み」をもとに設計・実践された中学校数学科授業において問題の属性を関連づけた生徒の思考を分析することである.分析の方法は,BrownとWalterによるサイクリング(Cycling)を視点として授業における生徒の発言と記述を抽出し,新たな問題を設定する中でどのような活動を契機に問題の本質的な条件を生徒が探っていくのかを特定することである.この方法をもとに,生徒S1と生徒S6の発言と記述が抽出された.生徒S1と生徒S6は,授業者によって指定された問題の属性を変更するだけでなく,自ら他の属性に着目し問題を設定し直していた.このようなBrownらのいうサイクリング的な思考を進めた契機は,設定した問題の結果が出発点の問題と同じように成り立つかどうかを意識したことによることが推察された.

  • 植原 俊晴, 小林 将也
    セッションID: 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/07
    会議録・要旨集 フリー

    本研究の目的は,既有知識から導き出され教示された知識にはあてはまらなさそうな反対事例で,教示された科学的知識に反論する機会を導入した理科の授業が,中学生の批判的思考態度に及ぼす影響を調べることである.公立の中学2年生152名を対象にして,当該の授業前後にアンケートを実施し,批判的思考態度の4因子についてそれぞれ平均点を調べた.その結果,授業実施後に「論理的思考への自覚」と「証拠の重視」については,平均点が有意に高くなった.一方,「探究心」については変化が認められず,「客観性」については,平均点が有意に低くなった.以上から,反対事例を導入した理科の授業には,中学生の批判的思考態度を育成する一定の効果があると示唆された.今後,何を反対事例として導入するのか,どのように議論を促すのかなど,「探究心」や「客観性」を高める方法を検討する必要がある.

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