リョクトウ類, すなわちリョクトウ (
Vigna radiata (L.) Wilczek) , ケツルアズキ (
V. mungo (L.) Hepper) , および近縁野生種 (
V.radiata var.
sublobata (Roxb.) Verdc.) の類縁関係を生理, 生化学的側面から検討した.
1. リョクトウ類の胚軸に3種類のアントシアニンが存在することを見出し, それらを仮にアントシアニンI, II, IIIとした.このうち, アントシアニンIはリョクトウとケツルアズキに共通に存在したが, IIはリョクトウに, またIIIはケツルアズキにそれぞれ特異的であった.
2. 子葉の生理的活性をTTC還元能で見たところ, リョクトウとケツルアズキでは活性に明瞭な差のあることが判った.
3. アントシアニンの種類と子葉のTTC還元能において, 野生種スブロバータはそれぞれリョクトウとケツルアズキに対応する特性を持つ2つの系統群に類別された.
4. これらの系統群は, 従来の形態的特性に基づく群別とも一致した.
5. 以上の結果から, 栽培種であるリョクトウとケツルアズキに対応する2つの系統群が野生種内に存在することが確認され, それぞれリョクトウ型, ケツルアズキ型スプロバータとした.
6. これらの系統群の分類学上の位置は未知であるが, 両群は, 栽培種であるリョクトウとケツルアズキの成立にそれぞれ密接に関連するものと考えられ, 今後, 種分類学的な究明が必要と思われる.
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