ケナフは近年, 農業の依存度が高い低開発諸国において経済上重要な地位を占めるに至つた.麻袋はこれら諸国の農産物を市場に運ぶため, 欠くことのできない包装用品であるが, 労働力が豊富で繊維を安く調製できる国では, 栽培を奨励して必要な麻袋を自給することは, 採算上有利でありかつそれだけ麻袋の輸入を防いで外貨の節約に寄与することにもなる.
この線に沿つて最も成功した国の一つはタイである.タイ国におけるケナフの生産は過去10力年間に急激に増加した.すなわち, 1951年の4, 400万封度から1960年には約22, 000万封度に達した.同国におけるケナフ栽培強花の目的は主要輸出農産物である米・玉蜀黍の包装に必要な麻袋の輸入を防ぐことであり, また同時に農家の収入を増すため, 因襲的な米作を改めて貿易作物―ケナフは玉蜀黍・キャサバ・砂糖・ヒマ子および落花生と共に政府の奨励品である―を取入れ経営の多様化を計ることである.
タイ国のケナフ増産は急速に達成せられたため, 織布工場の能力がこれに伴わず, 1960年度にはケナフ総生産量22, 000万封度のうちわずかに2, 400万封度を消化して560万袋を製造したが, 全国の必要総数2, 700万袋から見ればわずかに一小部分を自給したに過ぎない.したがつて生産されたケナフ繊維のほとんど大部分は輸出に振向けられることになつた.1959年度の黄麻の世界的凶作に加うるに, 主要生産国である印度およびパキスタンにおいて1960年度もまた不作であり, かつ収穫遅延を招いたため, 1960年度の世界黄麻市場は非常な供給不足に陥つた.その間タイの繊維輸出量―特にケナフ―は1959年の8, 220万封度から13, 620万封度に飛躍し, 1961年度の前半期6ヵ月間には遂に16, 626万封度を記録した.しかし1961年度の世界黄麻生産予想量は最高水準に達するものと見込まれているので勢い市価の下落は免れず, タイ国のケナフ輸出の利益もまた減少するであろうことは疑いない.
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