サツマイモ特有のストレス応答反応として, 病虫害や各種化合物処理などによるイポメアマロン (Ip) などのフラノテルペン類の生成が知られている.
本報では, 傷害サツマイモの品質劣化, 特にIp生成について, 機械的傷害自体とその後の保蔵条件の影響を調べた.除菌条件下で塊根の片側側面の皮層に擦過傷をつけ, 一定の温・湿度条件下で保蔵して, 3, 7, 14, 21日目の試料について重量変化と傷害側, 無傷側それぞれの部位別の成分変化を追跡した.その結果, 高湿条件 (Wet: RH85~95%, 13℃, 25℃) では, 全体的に成分変動が極めて少なく, Ipも検知されなかった.
一方, 低湿条件 (Dry: RH60~70%, 13℃, 25℃) では重量損失や組織の軟化, 澱粉減少, ポリフェノール増加が認められ, これらの変動は傷害側で大きく現れた.Ipは傷害側だけに確認され, その生成は25℃で著しく増進された.健全な塊根では, 上記の両条件下での重量損失も少なく, Ipの生成も認められなかった.
これらの結果は, Ipの生成・蓄積には機械的傷害と, その後の保蔵環境, 特に低湿度が大きく影響することを示している.低湿条件ではサツマイモの傷害コルク層形成が遅く, 不完全であることが知られているので, このような条件では擦過傷部位の修復が進行せず, 傷害自体が継続的にストレスとして作用するものと考えられる.なお, 使用したコガネセンガン, シロユタカ, 高系14号では, 傷害感受性に多少の品種間差異が認められた.
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