熱帯農業
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38 巻, 3 号
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  • 志水 勝好, 上田 堯夫
    1994 年 38 巻 3 号 p. 181-186
    発行日: 1994/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    アッケシソウ (Salicornia herbacea L.) は塩生植物の中でもとくに耐塩性が強いことが知られている.塩生植物の中には種子の形態のみならず、発芽特性を異にするものを産し、厳しい環境条件下で種の保存を図るものがある.これが種子の多形性であるが、我が国でも北海道に分布するS.europaeaで二形性を示すことが報告された.本実験では、塩、温度及び光がアッケシソウの種子発芽にいかなる影響を及ぼすか、中央花及び両側花由来の種子における反応の差異を調べることを目的とした.
    中央花由来の種子は、両側花由来の種子に比し、種子長、種子重とも大きい傾向があり、それぞれを大粒種子及び小粒種子とした.30-20℃ (明期一暗期) で処理した大粒種子はNaC1処理濃度により発芽率の推移に差が見られた.しかし小粒種子では、NaC1による影響は大粒種子ほど顕著ではなかった.また両種子とも24時間の暗処理では、12時間の明処理を施した区に比べ、NaCl濃度に敏感に反応した.KCI処理では小粒種子よりも、大粒種子で濃度による影響が大きかった.多形性を有する植物は、発芽時期のことなる種子を産することにより一時的な環境の変化による個体群の全滅を防ぎ種の保存を図る.アッケシソウは二形性を有することにより、劣悪な塩性環境において種の生存を維持するものと思われた.
  • 第3報 Muda地域の水稲乾田直播栽培および落粒栽培における農作業および苗立ちの実態
    平岡 博幸, Nai Kin Ho, 和田 源七
    1994 年 38 巻 3 号 p. 187-196
    発行日: 1994/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    マレイシアMuda地域の水稲乾田直播栽培 (前作水稲収穫時の落粒を含む) および落粒栽培の農作業と苗立ち実態を明らかにするため, 主としてA (1988年) , BおよびC地区 (1989年) の第1期作で調査を行った.1) 本地域の水田は重粘土壌が多く, 乾燥すると固結するため, 耕起・砕土は困難である.2) 3地区とも請負業者による大型トラクターのロータリー1回耕起が多く, 砕土は悪く, 発芽・苗立ちには不適とみられた.しかし, C地区では2回耕起, 均平および土壌の鎮圧が各約30%行われていたことは注目される.3) 3地区とも乾田直播栽培田が多いが, B, C地区では落粒栽培田がそれぞれ約38%および約19%認められた.播種量は奨励量 (60kg/ha) に比べて, やや増から約半量までの地区がみられた.コンバインによる前作水稲収穫時の落粒の内, 平均で約37% (約72kg/ha) が後作直播または落粒栽培水稲の発芽期に生存することが推察された.4) 苗立ち調査前1か月間の降水量が約80mm以下の地区 (A, B) では苗立ちは著しく不良であったが, 多い地区 (C, 約140mm) の苗立ちは比較的良好であった.しかしC地区の約30%では苗立ち不足が指摘された.他方落粒栽培田は苗立ちむらが著しかった.5) 耕起田は不耕起田より苗立ちが高まったが, 均平, 鎮圧および播種の各田では苗立の高まりがみられなかった.この原因として, 調査田では多くの要因が混在したため, それらの相互作用により処理効果が相殺されたと考えられる.6) Muda地域内の主要な乾田直播・落粒栽培の6地区における, 3か年平均の乾田播栽培苗立ち期の4, 5月の雨量は, 良好な苗立ちに必要な140mm/月を上回った.しかし旱ばつ年には各地区とも下回り, 苗立ち不良が予測される.7) 苗立ち向上のためには, 砕土を高める耕起法, 播種後の鎮圧および耕起等の技術開発, および落粒栽培から乾田直播栽培への切り替え等が重要である.
  • シン ジャイ, アグワル P.K., 高橋 久光, 太田 保夫
    1994 年 38 巻 3 号 p. 197-201
    発行日: 1994/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    温度40±1℃, 相対湿度70%におけるトウジンビエの貯蔵種子について, 種皮の透過性の変化を調査した。まず, 種子の貯蔵性について, 非常に貧弱な系統と優れた系統とを選抜し, それらの相対交雑F1種子ともに実験を行った.
    種子の生理的活力の低下は種子発芽能力の消失よりも先に起こり, 貯蔵性の貧弱な親とそれを親とする雑種が.貯蔵性の優れた親とそれを親とする雑種よりも, 種子の生理的活力が大きかった。相反交雑種子の種皮透過性については母親の影響が大きく, 胚の核遺伝子の影響も認められた。種子が老化するにしたがって燐脂質は減少するが, 油脂全量には変化がなく, 脂質の過酸化が示唆された。貯蔵性の貧弱な親とそれを親とする雑種が, 貯蔵性の優れた親とそれを親とする雑種に比べて高い種子の水分吸収速度を示し, 水溶性糖類, アミノ酸, 電解質の漏出量が多かった。
  • 田代 豊, 谷山 鉄郎
    1994 年 38 巻 3 号 p. 202-206
    発行日: 1994/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    鹿児島県大島郡沖永良部島は亜熱帯に位置し, 近年集約的な花き栽培が急増している農業の島である.島内北東部を占める和泊町内において地下水中の硝酸態窒素濃度等を測定し, その分布と農業生産活動との関連について考察した.
    1.地下水の無機態窒素の中では特異的に硝酸態窒素濃度が高く, ECも全般的に高い値を示した.
    2.地下水中の硝酸態窒素濃度の分布は明らかな偏りがあり, 町内北東部で高かった.
    3.耕地率は町内北東部で高く, さらにより集約的な花き栽培の割合も北東部で高いため, 化学肥料施用による窒素負荷量が北東部において大きいと予想された.
    4.以上により, 南西諸島において地上の土地利用形態および農業生産形態の違いが地下水環境に大きく関与する場合があると考えられる.今後作物栽培体系と施肥方法などとの関係を詳細に検討する必要があろう.
  • 花田 毅一
    1994 年 38 巻 3 号 p. 207-215
    発行日: 1994/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    1980年と1981年の2回にわたり, ブラジル東北部パライバ州で, トウダイグサ科に属するキャッサバ (Manihot esculento Crantz) , ピニョン (ブラジル名.Jatropha pohliana Muel1.Arg。) 及びシーラゴム (Manihot glaziovii Mue11. Arg., ブラジル名マニソバ) の生育と側枝の発育を観察した.キャッサバは, 1981年4月中旬から5月初めまで, 植付け後10か月の畑と3か月の畑で生育を調査し, 主茎又は側枝の先端2~3節の側枝が発育すること, 側枝の発育はヒマと同様に, 母茎頂端の花房の形成に伴って起こることを観察した.側枝はPlastochron index (P.I.) と長さのいずれも, 花房の伸長と密接な直線関係を以て発育が進んだ (図1) .花房長に対する回帰直線から, 側枝と花房がほぼ同時に発育を始めることが示された.第1節側枝 (最上位を第1節とする) と第2節側枝問には発育の差が全くなかったが, 第3節側枝は上位2側枝より発育が劣り, 発生する2次側枝の数も著しく少なかった.2次側枝はP.I.では1次側枝と差がないが, 長さが劣り, 3次側枝は1次, 2次両側枝に比してP.I., 長さともに劣って, 高次側枝は発育の進みが遅いことを示した.また, 一部の個体では花房が初期に発育を停止して落下したが, 側枝は発育を続けた.P.I.から求めた葉数増加速度は1日当たり0.4~0.65程度で, 側枝は主茎より僅かに小さく, 1次側枝と2次側枝間及び第1節側枝と第2節側枝間の差は小さかった.個体当たり緑葉数は高次側枝まで出現している個体ほど多く, 側枝の発育が葉面積の増加を通して物質生産に貢献することが示唆された.ピニョン及びシーラゴム各2個体を観察したが, 何れも主茎頂端に果実が登熟中で, その直下に2~数本の側枝が発育中であり, 茎頂端の花成が先端数節の側枝の発育を誘起したことが明らかであった.ヒマ, キャッサバ, シーラゴムでは発育する側枝が2~3本であったが, ピニョンでは5本以上であった.これら作物の側枝の発育は, 花成の問題と関連して考えるべきことが示唆された.
  • I. 果皮と果肉の追熟特性に及ぼす貯蔵温度の影響
    弦間 洋, 松山 ゆり, 王 洪剛
    1994 年 38 巻 3 号 p. 216-220
    発行日: 1994/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    フィリピン産の緑熟バナナ‘Cavendish’果実の低温域における生理変化, 低温耐性を明らかにし, さらに追熟を行った場合の特性変化を詳細に調査した.すなわち, 1, 5, 8および12℃下での呼吸量, エチレン生成量, 膜透過性などを経時的に検討した.膜透過性の指標であるイオン漏出量は, そのアレニウスプロットから果皮では8.9℃に, 果肉では3.0℃に折れ曲がり点が認められた.
    8および5℃貯蔵果実の果皮からのイオン漏出量は, 12および1℃に比べ明らかに低く抑えられていた.しかし, 20℃で追熟するとその量は急激に増加した.一方, 果肉からのイオン漏出量は, 5℃貯蔵果実では貯蔵13日後から, またその追熟過程において異常な増加がみられ, 8および12℃貯蔵果実では正常な追熟過程にみられるパターンを示した.
    以上の結果から, バナナの果皮と果肉組織では低温に対する感受性が異なり, 果皮は8℃以下の低温に感応し, 果肉は5℃以下の低温に曝されると膜透過性に変化が起きることが推定された.
  • 米田 和夫
    1994 年 38 巻 3 号 p. 221-226
    発行日: 1994/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    コチョウランの促成栽培のために活用する温度管理技術のうち, 促成栽培による花の品質向上に資する開花調節技術をより効果的かつ計画的に活用するための温度処理技術は, 未だ不安定な要素がある。本実験はこれについて一層の合理化を図るために, 山下げ後の温度管理が開花におよぼす影響について検討した。
    花茎発生は山下げ期間中に完了し, 発生割合は76.1%であった。これは標準区に比べて発生時期が早く, 発生割合も高かった。開花時期は, 昼温が高温で変温幅の小さい処理 (30°/25℃) や夜温が低温で変湿幅の小さい処理 (25°/20℃) よりも, 昼温が高温で変温幅の大きい処理 (30°/20℃) で早くなった。開花率は, 30°/20℃よりも25°/20℃または30°/25℃で低かった。開花所要日数は30°/20℃より30°/25℃ないしは25°/20℃で多くを要した。開花茎長は, 30°/25℃ないしは30°/20℃より25°/20℃で長かった。開花数は, 30°/25℃ないしは30°/20℃より25°/20℃で多かった。
    したがって, 実際栽培にあたっては山下げ時期ないし冷房処理が終わった後, まだ気温が高い時は平地で開花を促進し, 品質の向上を図るためには, 意識的に施設内の夜温は冷涼に管理することが必要であると思われる。
    キーワード開花, コチョウラン, 山下げ後の温度管理
  • 高橋 久光, シン ジャイ, 小塩 海平, 太田 保夫
    1994 年 38 巻 3 号 p. 227-231
    発行日: 1994/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    リョクトウ種子を0.0001, 0.01, 0.1, および1ppmのエピブラシノライドで20時間浸漬処理したところ, 地上部の生育は促進されたが, 根の発育は高濃度の処理により抑制された。1%のツィーン20を含むエピブラシノライドの葉面散布では, リョクトウの地上部, 地下部ともに発育が促進された。生育促進の程度は処理濃度が低いほど大きく, 1ppm処理よりも0.000001~0.01ppm処理の効果が大きかった。0.01ppmのエピブラシノライド葉面散布では, 根粒形成が有意に促進された。低濃度のエピブラシノイド葉面散布により, リョクトウの草丈, 有効分枝数, 成熟莢数, 莢重, 種子の千粒重, 植物体当たりの収量が増大した。すなわち, 1ppmのエピブラシノライド葉面散布では収量は減少したが, 0.000001~0.01ppmの低濃度の葉面散布では, リョクトウの収量および収量構成要素は増大した。リョクトウの生産性増大のためには, 低濃度のエピブラシノライド葉面散布が有効である。
  • 一色 正美
    1994 年 38 巻 3 号 p. 232-238
    発行日: 1994/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    パラグァイ国におけるトマト斑点細菌病の発生と気象条件との関係を検討したところ, 12月中旬に初発生し, その後の高温多雨期に進行が助長されることが明らかになった.そこで本病に対して, 雨よけ栽培を試みた結果, 発病抑制効果が極めて高く収量は対照区に対して2倍以上になった.また, ポリエチレンフィルムマルチのみを行った場合は十分な防除効果は認められなかった.青刈りエレファントグラスによるマルチと, これに深耕を組合せた場合は, 収量の著しい増加はみられなかったが, 発病は比較的少なく良果率が高かった.
  • 中野 寛, ブーンマリソン デチャ, 江川 宜伸, ヴァニチワタナルムルク ニラット, チョテチュエン ソムソン, 花田 俊雄, 桃木 徳博
    1994 年 38 巻 3 号 p. 239-245
    発行日: 1994/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    高温の熱帯圏に位置するタイおよびマレーシアにおいてインゲンマメの遺伝資源の探索収集を行った。マレーシアでは, 種皮が黒色のサヤインゲンマメの在来遺伝資源を8点見いだすことができた。タイでは総計28点収集したが, 穀実用のインゲンマメの在来品種は存在しなかった。タイにおいても, マレーシアで収集したものと同様に, 種皮が黒色のサヤインゲンマメが在来品種であと考えられた。収集したインゲンマメ品種を夏期に沖縄で露地栽培し耐暑性を評価した。その結果, この黒色種皮のサヤインゲンマメ品種の多くは, 我が国の栽培品種や耐暑1生と評価されている品種よりも, 高い耐暑性を備えている可能性があると考えられた。
  • II. 低温条件下における脂肪酸組成の変化
    王 洪剛, 弦間 洋
    1994 年 38 巻 3 号 p. 246-250
    発行日: 1994/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    フィリピン産の緑熟バナナ‘Gavendish’果実を5℃条件下におき, 果皮と果肉の低温耐性の差異を低温条件下における中性, リンおよび糖脂質の脂肪酸組成の変化から検討した。
    果皮および果肉組織におけるパルミチン酸 (C16: 0) 組成が低温処理中に増加した。リノレン酸 (C18: 3) 組成については果皮組織でのみ著しい減少が認められた。飽和型脂肪酸に対する不飽和型脂肪酸の比率 (USFA/SFA) についてみると, リン脂質では果皮, 果肉組織ともほぼ同様で, 処理5日から7日にかけて急激に減少した。これに対して, 糖脂質においては果肉組織では低温処理中にほとんど変化がなかったものの, 果皮組織では処理後13日まで著しく減少し続けた。一方, 中性脂質では, 果皮に比べて果肉組織の不飽和型脂肪酸の比率がかなり高かった。脂肪酸の不飽和度は, 中性およびリン脂質では低温処理中にほとんど変化しなかったが, 果皮組織の糖脂質においては著しく減少した。
    以上のことから, バナナ果皮の高い低温感受性は低温処理中の不飽和脂肪酸, 特にリノレン酸の著しい減少に関係するものと推察された。
  • 片岡 郁雄
    1994 年 38 巻 3 号 p. 251-257
    発行日: 1994/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    in vitroで形成されたパパイアの根の形態学的および解剖学的特徴に及ぼす発根培地の支持体の影響を光学および走査電子顕微鏡を用いて観察した.寒天およびバーミキュライトのいずれを支持体としたMS培地においても, 処理6日後にはマイクロカッティングの茎の維管束鞘の近傍に, 根原体の分化が認められた.
    寒天培地では, バーミキュライト培地と比較して, 根数は少なく根長は短かったが, 根は極めて太かった.いずれの培地においても, 根の表面に根毛の発生が観察されたが, 寒天培地では, より短い根毛が密生していた.いずれの培地において発生した根も, 発生初期には解剖学的な異常は認められなかったが, 処理4週間後, 寒天培地では, 亜表皮細胞の肥大および表皮に多数の亀裂が観察された.これに対してバーミキュライト培地では, 根に構造的異常は認められなかった.
  • 段 建雄, 矢澤 進
    1994 年 38 巻 3 号 p. 258-260
    発行日: 1994/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 岡部 四郎
    1994 年 38 巻 3 号 p. 261-263
    発行日: 1994/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 杉村 順夫
    1994 年 38 巻 3 号 p. 264-265
    発行日: 1994/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
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