熱帯農業
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50 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • Md. Harunor Rashid KHAN, Md. Mukaddas Ali BHUIYAN, Syed Monzur KABIR, ...
    2006 年 50 巻 3 号 p. 109-115
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    バングラデシュ国のBadarkhali (塩性硫酸塩土壌) とCheringa (硫酸性ハロイサイト) 地区における2種類のリーチングを済ませた酸性硫酸塩土壌を供試し, ポット試験において塩基性スラグ, 団粒径および地下水位などの修復処理が水稲の生育や収量に与える影響を検討した. 処理区としては塩基性スラグを10t/haおよび20t/ha投入区, 団粒が20mm以下の微細団粒区および20~30mm径の粗大団粒区, 地下水がない区及び地下水位が土壌表面下50cm区を各々組み合わせて設定した.水稲の生育および収量が最も良好であった区は粗大団粒区・地下水位50cm区・塩基性スラグ20t/ha区の組み合わせであり, 各々, Cheringa土壌においては6.70t/ha, Badarkhali土壌においては5.78t/haの子実収量であった.個々の処理区においては, 塩基性スラグ20t/ha区が最も水稲の生産性が高く, 次いで塩基性スラグ10t/ha区>地下水位50cm区>粗大団粒区の順であった.Badarkhali土壌の塩基性スラグ20t/ha区で, 微細団粒区における子実収量は100%の増加, 粗大団粒区で122%の増加を示した. さらに, 地下水位50cmの条件下では, それぞれが138%および246%まで増加した. しかしながら, Cheringa土壌においては, 塩基性スラグ20t/haの投入は, Badarkhali土壌における微細団粒区や粗大団粒区ほど効果はなかった.ただ, 地下水位50cmの条件下では, Badarkhali土壌の場合より高い子実収量が認められた. さらに, 他の収量構成要素についても同様に有意な効果が得られた.一方, 粗大団粒区においては, いずれの修復処理においても, 水稲の生育や収量は生育期の4ヶ月以内で良好になることが明らかになった.
  • Edi SANTOSA, 杉山 信男, 中田 美紀, 李 温裕
    2006 年 50 巻 3 号 p. 116-120
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    ゾウコンニャクの生育と収量に及ぼす種芋部位の影響を調査した.種芋は次のように調整した: 球茎全体, 球茎を水平に切断した上半分, 球茎を水平に切断した下半分, 球茎を縦に1/2, 1/4, 1/8に切断した各部分, 頂芽周辺部分.各球茎切片はいずれも100gに揃えた.頂芽が傷を受けなかった球茎または球茎切片では, 球茎を縦に切断し, 頂芽を傷つけた場合に比べて, 萌芽が早く, 大きな植物体が形成された.頂芽を切断すると, 代わりに側芽が発達し, このため萌芽が遅くなった.球茎全体および球茎の上半分は頂芽を傷つけた球茎に比べて大きな球茎を形成した.頂芽周辺部の切片は生育期間中, 葉を1枚形成したが, 他の球茎切片は2枚形成した.頂芽を傷つけた球茎切片の収量が低いのは, 頂芽を切断することによって生育期間中に展開する葉の大きさが減少するためと思われる.
  • 江原 宏, Madeline M. HARLEY, William J. BAKER, John DRANSFIELD, 内藤 整, 溝田 ...
    2006 年 50 巻 3 号 p. 121-126
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    サゴヤシ (Metyoxylon sagu Rottb.) の種内形質変異を検討するため, インドネシアの西パプア (イリアンジャヤ) に生育する有刺folk varietyおよび西スマトラに生育する無刺folk varietyの乾燥標本から得た花粉の形態を調査比較した.両folk varietyとも1個体に両性花と雄花の両方を着生し, いずれのfolk varietyでも両性花と雄花のサイズに大きな違いはなく, 雄花では雌蕊は退化していた.両性花と雄花の両方とも花粉を生じ, SEM観察したところ, 花粉粒は短赤道軸上に2つの発芽孔を有する長楕円形であった.花粉形状に変異がみられたが, それは花粉壁 (エキシン) の収縮や膨張の程度の違いによるものと考えられた.また, 両folk varietyの両性花, 雄花とも花粉粒のテクタムは滑らかで疎らに穴が散在していた.このように, 花粉の外壁形質, 花粉の形状などいずれも両folk variety間に差はみられないことが明らかとなった.
  • Amkha SUPHACHAI, 高垣 美智子, Sagwansupyakorn CHAIREAG, Sukprakan SUTEVEE, ...
    2006 年 50 巻 3 号 p. 127-132
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    タイ国カセサート大学カンペンセンキャンパス内の熱帯野菜研究所圃場に設置した16メッシュのネットハウス内において, 農薬施用量の低減を目的とした三種類の葉菜類の短期栽培における適正な化学肥料施用量と収穫日数を調査した.試験は10月から12月にかけて行い, 葉菜類として1) カイラン (Brassica oleracea var. alboglabra) , 2) パクチョイ (Brassica napa var. chinensis) 及び3) チンゲンサイ (Brassica chinensis var. chinensis) の3種類を供試した.葉菜類の短期栽培に対する窒素施用量の効果を, 生育と窒素利用効率により評価した.3種類の葉菜類を4水準の窒素施用量 (156, 312, 468and625kg ha-1) 条件下で栽培した.生育と窒素利用効率の両方から判断した適正施用量は, 3種類の葉菜ともに156kg ha-1であった.また, 最も効率的な収穫日数はカイランとパクチョイでは播種後35日, チンゲンサイでは播種後28日であった.短期栽培では, 窒素肥料の施用量を従来の水準より減らすことで, 生育を抑制することなく窒素利用効率を上げることが出来ることが確認された.
  • ―Sam Sop Bon村での事例―
    金沢 尚美, 星川 圭介, 縄田 栄治
    2006 年 50 巻 3 号 p. 133-141
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    近年, 東南アジア大陸部山地部においては, 地域住民をめぐる自然・社会・経済環境が急激に変容しつつある.地域住民がこのような急速な状況の変化にどのように対応しているかを明らかにする目的で, タイ北部チェンマイ県のカレン人村落において, 土地利用図と住民に対する聞き取り調査により, 近年の土地利用と農業の変化を分析した.調査村では, 20世紀半ばまで, 長期休閑の焼畑による自給作物 (陸稲) 生産が行われてきた.1960年代, 低地住民により焼畑休閑地がケシ畑へ転換され, このことが焼畑休閑期間の短縮化をもたらした.1970年代の終わりに, 調査村全域が国立公園に指定され, ケシ畑の没収とその跡地での植林により森林面積は増加したが, 休閑期間の短縮と耕地の不足は深刻化した.その後焼畑は姿を消し, 以前の焼畑耕地ならびに休閑地は常畑地または植林地となった.一方, 焼畑よりも生産が安定している水田稲作の技術が導入され, 村内の水田面積は徐々に増加した.現在では, 自給作物であるイネと商品作物の両方が生産されている.焼畑の常畑化にともなう連作による陸稲の生産性の低下を補うため, 化学肥料が使用され始め, さらに化学肥料の使用により増大した雑草に対し除草剤の使用が始まり, 農業が急速に集約化している.近年導入された商品作物は, 主として集約化にともなう化学肥料・除草剤購入のためである.このように, 調査村の住民は, 農業の多様化により, 自給作物生産の集約化を可能にし, 新たな状況に対応していることが明らかとなった.
  • 山本 宗立, 縄田 栄治
    2006 年 50 巻 3 号 p. 142-153
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    南西諸島のキダチトウガラシ (Capsicum frutescens L.) の種子の発芽特性を調べた.恒温・暗黒処理区では南西諸島系統の種子の発芽は抑制されたが, 変温処理区, 光照射区では発芽が促進された.これら結果から, 南西諸島系統の種子は休眠性を持っていることが示唆された.南西諸島では, キダチトウガラシが鳥類などの散布により林の周縁部や住宅地の周辺で自生していることが確認されている.これは, 種子の休眠性に見られるように, 南西諸島系統の半栽培化の状態に起因すると思われる.以上の結果, 南西諸島のキダチトウガラシに休眠性があることが示されたので, 他の東南アジアの系統に広げて種子の休眠性について調査したところ, 東南アジアのキダチトウガラシ72系統のうち47系統の種子は休眠性を示さず, どの処理区においても短期間で種子が発芽した.これら47系統の植物体は残りの25系統よりも大きい傾向を示し, 47系統内では植物体の大きさと種了の発芽に要する日数の問に負の相関関係が見られた.一方で, 残りの25系統は休眠性を示し, 植物体も小さい傾向を示した.特に25系統のうち7系統は恒温・暗黒条件下で発芽が人きく抑制され, また果実は非常に小さく脱落性をもっていた.これらの結果から, 47系統はすでに栽培化され休眠性を失い, 植物体の肥大化とともに種子がより早く発芽するのに対し, 残りの25系統はまだ完全に栽培化されておらず, 栽培化の途中段階にあると考えられた.以上のように東南アジアのキダチトウガラシは様々な栽培化の段階にあり, 育種や園芸の遺伝資源として重要であると考えられる.
  • Ninh Thi PHIP, 野島 博, 田代 亨
    2006 年 50 巻 3 号 p. 154-162
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    トウキ (Angelica acutiloba Kitagawa) は, 日本や韓国, 中国, ベトナムその他のアジア諸国で生薬として用いられる多年生の薬用植物である.トウキの良質苗を得る目的で, 種子の重さおよび比重による選別が発牙および閉鎖型苗生産システムでの苗の初期成長に及ぼす影響について検討した.種子発芽の適温は20℃であった.種子を重量別に選別した結果, 種子重が重いほど発芽率が高まり, 苗の全乾物重および根の直径が増加した.また, 根/茎葉比は種子重が重くなるほど高まる傾向を示した.種子の吸水量は種子重に影響を受け, 軽いものほど速やかに増加したが, 平均発芽日数は長くなった.同様に, 種子を比重別に選別した結果, 種子比重が高いものほど発芽率と出芽率が高まり, 苗の全乾物重および根の直径が増加し, 初期成長量が促進した.また, 根/茎葉比は種子比重が高まるほど高まる傾向を示した.以上の結果, 種子の重さおよび比重による選別により, 種子重は3.1mg以上, 種子比重は1.12以上で苗の全乾物重が増加し良質苗が得られることが示された.
  • ―ウルグル山塊北側斜面の事例―
    山根 裕子, 樋口 浩和
    2006 年 50 巻 3 号 p. 163-170
    発行日: 2006/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    タンザニアの各地の山地では, 過去50年間に人口が急増し, 居住地と耕作地が周辺の平原に拡大した.本稿では, ウルグル山塊北側斜面の事例を取り上げ, 山で暮らす農民にとって平原での耕作がどのような意味を持つのかについて, 耕作地の分布, 作物の栽培, 農家経営などに関する調査結果をもとに考察した.調査の結果, 農民の耕作地は山と平原の両方に分布していたが, 山の耕作地より面積の小さい平原の耕作地に食糧の多くを依存していたことがわかった.平原での耕作には, 交通費, 借地代, トラクター代などに対する現金支出が必要であった.にもかかわらず, 収穫物はほとんどが自家消費され, あまり販売されることはなかった.平原耕作に支出される現金は, 農作物を販売したり, 小規模な商売や, 特別な技能を必要としない仕事をしたりして近くにある都市で得られたものであった.自給用作物の栽培に対する現金の投入は, 自らが生産することで購入することを避け, 結果として食糧を安く得るためであると考えられた.一方, 平原耕作には, 洪水や獣害などさまざまなリスク要因が存在し, 安定した収穫を得るという観点からは, 平原耕作だけには依存できないという実態が明らかになった.収穫の安定性は山の耕作地が担っていると考えられた.山の耕作地の存在と, 現金収入が比較的容易であるという立地が, このような平原耕作を可能にしていると考えられた.
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