パプアニューギニア産を主とするヤムイモ (
Dioscorea alataL.) の25導入品種を東京農業大学用賀圃場で6月3日から11月28日まで栽培し, 地上部・地下部形質の品種間差異を調べた.
普通の栽培区とともに, 厚さ0.2mmのビニールシートを畦全体に被覆したマルチ区を設けた.生育初期のマルチ区の平均地温は対照区よりも約2.6℃高く, 栽培期間中の土壌水分 (pF) は, マルチ区の土壌水分含量が高く両区の差は約0.2であった.
供試品種は, 地上部および地下部の諸形質について, 著しい品種間差異を示した.マルチ区と対照区の全供試品種の測定値の平均値 (品種平均値) で比較した場合, 分枝数, 葉数, 葉幅, 葉長について, 7月下旬頃より差が見られ, いずれもマルチ区が大きかった.収穫時における地上部総生体重と一枚当たり葉面積においても, マルチ区で大きかった.地下部形質では, マルチ区の塊茎重, 塊茎数は対照区よりも増加した.塊茎長には両区の間に有意な差は認められなかったが, 塊茎の厚みや幅など塊茎の太さに関する形質は両区間に有意な差があり, いずれもマルチ区で大きかった.マルチ処理によって地上部総乾物重と塊茎重は共に増加し, 両形質間には, 正の相関関係があり, マルチ処理によって地上部の生育量が増加する品種ほど, 塊茎重も大きくなる傾向を示した.供試品種の中には, 千葉県の農家がアフリカより導入し, 栽培している品種と同様に, 塊茎の肥大する品種が見いだされた.これらの品種は日本の温帯環境条件下でも, 定着の可能性が大きいと考えられた.
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