熱帯農業
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44 巻, 4 号
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  • 志和地 弘信, 遠城 道雄, 林 満
    2000 年 44 巻 4 号 p. 229-237
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    葉, 茎およびムカゴの形態的形質によってダイジョ (D. alata) とナガイモ (D. opposita) およびジネンジョ (D. japonica) は判別されたが, ナガイモとジネンジョにおいては, 形態の形質で判別が不可能な系統があった.両種はRAPD法によって判別が可能であり, ヤムイモの種の分類にRAPD分析の適用が有効であることがわかった.
    形態的形質とRAPD法を基にしたクラスター分析では, 3種の系統樹が非常に類似したが, ダイジョの系統は, 形態的形質では大まかに3群に区分され, RAPD法では5群に区分された.RAPD分析の区分と形態的形質による区分とが一致しない場合もあったことから, RAPD法による系統の区分には, 系統の特異的なマーカーの検出が不可欠であると推察された.
    葉脚や葉柄基部に発現するアントシアニンの有無は, ジネンジョやダイジョの系統を大まかに区分する指標になりうるが, 系統の詳細な区分には他の指標と組み合わせる必要があろう.
    インドネシアの系統には, 日本の在来種, ミクロネシアおよびオセアニアの系統に類似のものも存在することから, インドネシアはダイジョの遺伝的変異が大きい地域と推察され, 分析結果から, 日本の在来種は東南アジアから導入された可能性が大であると推定された.
  • 杉本 明, 氏原 邦博, 前田 秀樹
    2000 年 44 巻 4 号 p. 238-244
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    南西諸島各地におけるサトウキビ品種・系統の高糖性発現と登熟特性との関係を解明し, 安定高糖性品種を効率的に育成するための方策を検討した.品種・系統の高糖性および早熟性を示す指標として, 10月, 11月, 12月および1月の糖度について, 標準品種の値との比を用いて糖度比, 最高糖度比, 登熟程度比を算出した.各指標は年次間相関が高く, 品種間差異が認められた.多数の品種・系統を用い, 石垣島, 宮古島, 沖縄本島, 沖永良部島, 徳之島, 種子島の6試験地で測定した糖度と, 種子島における糖度比, 登熟程度比, 最高糖度比との関係を検討した.Ni12やNiF8などは11月の糖度比が高く, 南西諸島各地で高糖性を発現した.供試品種・系統の糖度の, 6試験地の平均値は種子島における11月および12月の糖度比と正の相関が認められ, 種子島で11月および12月に高糖性を示す品種・系統は, 南西諸島で平均して高糖度であった.供試品種・系統の糖度の, 6試験地間の変動係数は種子島における11月の糖度比, 登熟程度比との間に負の相関が認められ, 種子島で11月に高糖度である品種・系統は試験地間の糖度の変動が小さかった.一方, 6試験地間の変動係数と最高糖度比や1月の糖度比との間には相関関係が認められなかった.南西諸島各地での安定的な高糖性発現にはいわゆる高糖性だけではなく, 早期型の高糖性が必要であった.品種・系統の12月の糖度比は最高糖度比との相関が高く, 10月および11月の糖度比は登熟程度比と相関が高かった.早期型高糖性には, 高糖性と早熟性の結合が必要であった.九州農試の最近の育成系統の11月および12月の糖度比は, 大部分が標準品種NCo310より高かった.しかし, 10月の糖度比や登熟程度比はNCo310より低い系統が多かった.
  • Muhammad IRSHAD, Anthony Egrinya ENEJI, 本名 俊正, 山本 定博, Abdul RASHID, 遠藤 ...
    2000 年 44 巻 4 号 p. 245-251
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    パキスタン, マルダン地域の塩類集積放棄地において, 9種類の外来の耐塩性低木 (Atriplex amnicola (573) , A.amnicola (949) , A.amnicola (971) , A.lentifoymis, A.undulata, A.amnicola×A.nummularia, A.bunburyana (carnarvon) , Maiyeana brevifolia and M.polyptergia) の適応性の研究をおこなった.研究地点の土壌は肥沃度が低く, 細粒質で石灰含量が非常に高く (石灰含量40~50%) , 浸食を受けているとともに, 塩類化もかなり進行していた.土壌の電気伝導率 (EC) は10~22.5dSm-1, ナトリウム吸着比 (SAR) は8.2~20.2 (mmoll-1) 1/2, そしてpHは8.3~9.2の範囲にあった.3ヶ月齢の9種の低木苗を4×4m間隔で圃場に移植し (乱塊法に従って8反復を設定) , 9ヶ月間にわたって生育調査をおこなった.最後に植物体を収穫し, 生体重及び乾物重を求めた.生育は, 春季に最も旺盛となり, 冬季に最小となった.樹高の最も高い種はA.lentifoymis (104cm) , 最低の種はM.polyptergia (15cm) であった.生長した植物体の大きさは, A.amnicola (573) , A.amnicola (971) , A.lentiformisが他の種よりもかなり大きく, A.undulata, M.polyptergiaが最小であった.地上部の年間生産量は新鮮物で1.2t・ha-1 (A.undulataM.polypteygia) ~4.4t・ha-1 (A.amnicola (971) ) あり, 乾物重では0.3t・ha-1 (M.polyptergia) ~1.6t・ha-1 (A.amnicola (971) ) の範囲であった.葉中のナトリウム含量は3.4% (A.amnicola×A.nummularia) ~7.6% (A.undulate) , カリウム含量は0.6% (M.polyptergia) ~1.9% (A.amnicola (971) ) , 塩素含量は0.5% (M.polyptergia) ~3.7% (A.amnicola (971) ) であった.A.amnicolaA.lentiformisのエコタイプと交配種はマルダン地域において良好な適応性が認められた.この地域において, これらの生産性と利用を解明するさらなる研究が必要である.
  • 寺内 方克, 原薗 芳信, 松岡 誠, 中川 仁, 中野 寛
    2000 年 44 巻 4 号 p. 252-258
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    耐風性に優れたサトウキビを簡易的防風垣に用いることで, 園芸作物などの品質・収量性を向上させ, 同時にサトウキビからの収入により, 農家経営の安定に貢献できることが期待される.そこで, 簡易防風垣栽培したサトウキビ群落内外に風向・風速計を設置し, 防風垣に利用する場合の防風効果とサトウキビの形態形質の関係を調査し, サトウキビ品種に求められる特性を検討した.また, サトウキビでは, 開発途上国を中心に間作が行われていることから, その南西諸島での適用の可能性についてもあわせて検討した.その結果, 写真による投影法で測定した密閉度が高く, 群落に厚みのある品種で高い減風率が認められた.密閉度は茎数の多い品種で90%を越え, 茎数の少ない品種で防風垣として適当な密閉度が得られた.開張性の品種は, 高い減風率を得られるが, 防風垣の専有面積が大きく, 保護対象作物の面積が小さくなるほか, サトウキビ葉身による保護対象・間作作物への傷害の可能性が考えられる.このため, 開張性の品種は, 防風垣・間作には不適当と考えられた.垂直方向に草冠を形成する品種は, 草高が高いことから減風効果の範囲が広く, 防風垣に適当であると考えられた.側面からも太陽光を得られる防風垣栽培では, 一般的な栽培方法に比べ, 畦長あたりで高い収量が得られた.高度土地利用の視点から, サトウキビ畦間への間作は, しばしば研究課題として取り上げられているが, その実施にあたっては, 間作作物の収穫物価格とサトウキビ価格との関係, 間作作物の栽培コスト, 間作作物に必要とされる技術水準などの点からの慎重な検討が必要である.
  • 平井 英明, 高柳 頼人, 福井 直文, 加藤 秀正
    2000 年 44 巻 4 号 p. 259-268
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    本論文は, 焼畑農耕民の伝統的土地評価法を土壌の理化学性より吟味した研究結果をまとめたものである。本研究成果をまとめていえばつぎのようになる.カレン族の土地評価法は, インタビューの結果, 1) 粘土質の土壌が砂質土壌よりもよい, 2) 傾斜地よりも平坦地の方がよい, 3) 休閑期間が7年のほうが5年よりもよいと評価していた.陸稲生産地においてこれらの伝統的知恵を土壌学的に吟味したところ, 土壌特性からいえば, 土壌養分組成というよりはむしろ土性や土壌の水保持能力・透水性に力点を置いて土地を評価していることが明らかとなった.
  • 伊勢 一男, 孫 有泉, 戴 陸園, 葉 昌榮, 楊 暁洪, 春原 嘉弘, 冨田 桂, 長峰 司, 丹野 久, 工藤 悟
    2000 年 44 巻 4 号 p. 269-275
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    中国雲南省の周辺は, 各種同位酵素の遺伝変異の多様性に基づいて, アジア栽培イネの遺伝変異中心の一つとされている.その特徴の一つとして, 胚乳アミロース含有率変異の多様性および低アミロース品種の豊富な存在が指摘されてきた.本研究は, 雲南省イネ遺伝資源において, アミロース含有率の遺伝変異が豊富な品種群をインディカ水稲, ジャポニカ水稲および陸稲品種の中から特定すること, 並びにジャポニカ水稲品種の育種のために有用な低アミロース遺伝変異の探索および作出を目的としておこなわれた.
    376の雲南省産イネ品種を調査した結果, アミロース含有率の変異が最も大きい品種群は, 同省西南部に広く分布する陸稲であった.従来報告されていなかった4~10%の低アミロース品種も, 陸稲品種群に見いだされた.種子成分の変異に基づく栽培イネの分化および育種への遺伝資源の利用について論議した.
    本研究の結果, 雲南省のジャポニカ水稲の在来品種128および改良品種130の中には, 含有率4~12%の低アミロース品種は見いだされなかった.そこで, 化学的突然変異源N-methyl-N-nitrosourea (MNU) を用いて, 低アミロース突然変異を作出した.日中共同研究育成品種「合系4号」 (含有率19.2%) のMNU処理後代から, 低アミロース性突然変異7系統 (含有率2.5~12.8%) を見いだした.原品種と主要農業形質や収量性が類似し, アミロース含有率が異なる有望な3系統を選抜した.これらの突然変異系統を用いた, 雲南省水稲品種の食味改良育種について論議した.
  • 伊勢 一男, 冨田 桂, 劉 吉新, 孫 有泉, 春原 嘉弘, 工藤 悟
    2000 年 44 巻 4 号 p. 276-283
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    中国雲南省では, 国際農林水産業研究センターと雲南省農業科学院との共同研究によって育成されたジャポニカ水稲品種が20万ha以上栽培されている.雲南省では, 炊飯米の食味改良のために低アミロース品種の育種を開始した.しかし, 雲南省のジャポニカ水稲在来品種および改良品種には, 低アミロース品種を見いだすことができなかった.そこで, 化学的変異源N-methyl-N-nitrosoureaを用いて, 日中共同研究育成品種「合系4号」 (Hexi4) から突然変異系統を作出した.「合系4号」 (含有率19.5%) との雑種F1, F2およびF3の分析に基づいて, 突然変異系統95YM01 (14.4%) および95YM02 (4.6%) は, 低アミロース性に関してそれぞれ一つの劣性遺伝子を持つことを明らかにした.それらの突然変異遺伝子座は独立な関係にあり, 95YM02の低アミロース遺伝子は正逆交雑種子胚乳間で遺伝子量効果を示した.95YM01の収量は, 「合系4号」との間で有意差がなかった.しかし, アミロース含有率が顕著に低下する95YM02の収量は, 「合系4号」より有意に劣っていた.その主たる原因は, 低アミロース突然変異遺伝子によるアミロペクチンの増加に伴う玄米一粒重の低下にあると推察した.突然変異系統の炊飯米の食味は, 「合系4号」より有意に優れていることを官能試験によって明らかにした.とくに, 95YM01の食味は, 官能試験全項目 (外観, 柔らかさ, 粘り, 総合) にわたって高く評価された.95YM01は, 食味特性のすぐれた低アミロース遺伝子, 並びに改良品種「合系4号」に近い農業特性をあわせ持つ優れた育種素材である.今後の良食味育種における低アミロース突然変異系統の利用について論議した.
  • 伊勢 一男, 劉 吉新, 孫 有泉, 趙 国珍, 戴 陸園, 荒木 均, 工藤 悟, 春原 嘉弘
    2000 年 44 巻 4 号 p. 284-293
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    中国では, 多収で良質なジャポニカ水稲品種の育成が重要な研究課題である.雲南省には, 日中共同研究による育成水稲品種が, 20万ha以上栽培されている.これらの育成品種の食味特性を明らかにし, 雲南省における良食味品種の選抜方策を構築するために本研究をおこなった.中国人パネルによる38試料の食味官能試験では, 外観が良く, 柔らかく, 粘りのある炊飯米の食味総合値が高かった.食味総合値とアミロース含有率は, 有意な負の相関 (r=-0.557) を示した.とくに, アミロース含有率22.6%以上の試料 (19点) では, その傾向が顕著であった (r=-0.832) .日本人パネルによる食味官能試験では, 雲南省産品種は, 北海道産品種より食味評価が劣っていた.しかし, 共同研究育成品種の食味は, 雲南省の旧品種より明らかに向上しており, 中でも「合系30号」の食味特性は北海道標準品種「きらら397」に近かった.炊飯特性検定による加熱吸水率等の測定値は, 北海道品種と雲南省品種との問で大きな差はなく, 食味官能試験結果との間でも有意な相関を示さなかった.アミログラフのブレークダウンや最高粘度の値は, 食味総合値との間で有意な正の相関を示した.雲南省品種の中で食味評価の高い「合系30号」は, アミログラフ特性の多変量解析によって, 「きらら397」に最も近いクラスターを形成した.味度メーターによる測定値は, 食味官能試験総合値と高い正の相関 (γ=0.908) を示し, 少量試料による育種選抜の可能性が示唆された.今後の良食味品種の育種におけるアミロース含有率, タンパク質含有率, 玄米外観品質および耐冷性との関係について論議した.
  • 片山 勝之, 中谷 誠
    2000 年 44 巻 4 号 p. 294-296
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 久馬 一剛
    2000 年 44 巻 4 号 p. 297-299
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 金澤 晋二郎
    2000 年 44 巻 4 号 p. 300-304
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 塩谷 哲夫
    2000 年 44 巻 4 号 p. 305-316
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 杉本 明
    2000 年 44 巻 4 号 p. 317-320
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 下田 博之
    2000 年 44 巻 4 号 p. 321-324
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
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