静脈学
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13 巻, 4 号
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巻頭言
特別講演
  • 光嶋 勲, 伊藤 聖子, 筒井 哲也, 高橋 義雄, 難波 祐三郎
    2002 年 13 巻 4 号 p. 249-252
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    27名の上肢の片側性リンパ浮腫患者の治療を行った.12名に外来通院にて圧迫を主とする保存療法のみを行った.平均10.6カ月の保存療法で平均0.8cm(術前の過剰周径の11.7%)減少した.4cm以上の著明な周径減少のみられた例はなかった.一方,保存療法が無効な18名に手術と術前後の圧迫療法を行った.術後平均2.6年の経過にて平均4.5cm(術前の45.2%)の減少が得られた.4cm以上の周径減少がみられたものは10例(55.6%)であった.

    35名の下肢リンパ浮腫患者12名に外来通院にて圧迫を主とする保存療法のみを行った.平均1.5年の保存療法で平均0.6cm減少した.4cm以上著明に周径が減少した例は2例(16.7%)であった.一方,圧迫療法が無効な16名にリンパ管細静脈吻合術と保存療法を行った.術後平均3.3年の経過にて平均2.7cmの減少が得られた.4cm以上の周径減少がみられたのは8例(50%)であった.下肢リンパ浮腫33症例の局麻下の吻合術の結果は術後平均13.5カ月の経過で,浮腫の改善がみられたものは27例(全体の82%)で多くは吻合部周辺の周径減少がみられた.これらの周径減少は1~6cm(過剰周径の平均57.7%の減少)であった.また全麻と局麻いずれの例でもの浮腫の原因,術前の重症度,浮腫の期間,吻合数などと明らかな相関関係はないように思われた.

教育講演
  • 平井 正文
    2002 年 13 巻 4 号 p. 253-259
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    圧迫療法は,静脈疾患の治療において重要な地位を占めており,単独であるいは他の治療の補助的手段として応用されている.その治療効果は,基礎疾患,圧迫圧,部位,圧迫材料,手技によって異なってくる.硬化療法後にも圧迫療法が応用されるが,枕子を用いたときには,軽度伸縮性包帯と同様に体位変換,運動時の圧迫圧上昇が得られることから,硬化療法直後には高度伸縮性包帯,弾力ストッキングが用いられる.圧迫療法では,正しく応用してこそはじめて目的とする治療効果が得られることに留意するべきである.

原著
  • 松原 俊二, 佐藤 浩一, 里見 淳一郎, 永廣 信治
    2002 年 13 巻 4 号 p. 261-266
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    硬膜動静脈瘻172例のうち,頭蓋内出血をきたした25例を対象とし,各部位における出血率,出血様式,治療成績などについて検討した.内訳(出血率)は,横S状静脈洞15例(20.5%),海綿静脈洞2例(2.8%),前頭蓋窩6例(50%),上錐体静脈洞1例(25%),上矢状洞1例(25%)であった.1例を除いて全例血管写で脳静脈逆流現象が認められた.前頭蓋窩,上矢状静脈洞,上錐体静脈洞の症例には開頭術を,横S状静脈洞,海綿静脈洞の症例には経動脈塞栓術もしくは経静脈塞栓術を中心に行った.14例で病巣は消失し,症状の悪化や再出血はなかった.しかし5例で,初回の出血のため死亡もしくは重篤な後遺症を残した.出血をきたす重要因子はシャント動脈血の脳皮質静脈への逆流と考えられる.海綿静脈洞や横S状静脈洞部には血管内手術(特に経静脈塞栓術)が侵襲も少なく有効であり,他の部位では開頭術が必要と思われた.

  • 星 俊子, 蜂谷 貴
    2002 年 13 巻 4 号 p. 267-272
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    肺血栓塞栓症患者28例に塞栓源検索のために下肢のMR venographyを施行した.26例(93%)で下肢静脈に血栓を検出できた.13例(46%)は下腿に限局した血栓で,このうち5例(18%)は下腿筋静脈に限局した血栓であった.血栓先進部と肺動脈内の血栓部位の関係を調べたところ,葉動脈より太い肺動脈に塞栓を認めた頻度は血栓先進部が大腿静脈の場合(78%)と下腿筋静脈の場合(80%)が特に高かった.以上の結果から下腿に限局した静脈血栓,特に下腿筋静脈の血栓も肺血栓塞栓症の塞栓源として重要で,正確な診断が必要と思われた.そのためには,MR venographyは侵襲が少なく下腿筋静脈まで診断可能で,適切な検査法であると思われた.

  • 下地 光好, 古謝 景春, 国吉 幸男, 宮城 和史, 上江洲 徹, 新垣 勝也, 平良 一雄, 摩文仁 克人, 山城 聡, 瀬名波 栄信
    2002 年 13 巻 4 号 p. 273-278
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    我々は,1979年11月~2001年8月の間に44例のBudd-Chiari症候群(以下BCS)に対しF-Fバイパスを補助手段とした直達手術を施行し,その10年および20年生存率は80%,70%と満足する結果を得ている.肝癌は本症の予後因子の一つとして重要であるが,自験例44例についても9例(20.5%)の肝癌合併をみ,8例に肝切除を1例にTAE(transcatheter arterial chemoembolization)を行った.6例は直達術後3~6年の発生例で,残る3例が肝癌とBCSの同時手術例である.今回はこの同時手術を施行した3例について検討を加えた.年齢は38歳,73歳,76歳で女性1名,男性2名であった.いずれもTAE治療を先行させ,その1~2カ月後に肝切除と直達手術を施行した.術後合併症もなく軽快退院し,それぞれ1年,7年7カ月および13年1カ月経過した現在,3例とも肝機能は保たれ,肝癌再発の兆候もなく健在である.未だ3例と症例数は少なく今後更なる検討を要するが,手術および遠隔成績は良好であり,我々は肝癌とBCSの同時発見例に対しては,積極的に同時手術を行っていく方針である.

症例
  • 佐伯 宗弘, 前田 伴幸, 玉井 伸幸, 廣恵 亨, 金岡 保, 応儀 成二
    2002 年 13 巻 4 号 p. 279-283
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は71歳女性である.超音波検査で右腎腫瘍を近医で指摘され,当院泌尿器科を受診した.下大静脈(IVC)腫瘍栓を伴う腎癌と診断され,当科に紹介された.術前検査で腫瘍栓先進部は肝静脈より中枢側に達している可能性があった.腹部正中切開に右第9肋間開胸を加えて肝右葉を脱転して,IVCに到達した.術中超音波検査で浮遊した腫瘍栓と確認した.遮断テストで,肝静脈より中枢側遮断では血行動態が維持できないことが判明した.用指的に腫瘍栓を末梢側に移動させて,肝静脈より末梢および右腎静脈直下でIVCを単純遮断した.IVC内腫瘍栓を腎腫瘍と一塊に摘除した.術後経過は良好で軽快退院し,術後3年11ヶ月健在である.

    腎癌によるIVC腫瘍栓は,十分な術前評価とともに,術中の超音波検査や遮断テストを行うことにより,肝静脈上部に達していても単純遮断下で手術が可能な症例が存在する.

プラクティカル フレボロジー
  • 坂田 雅宏
    2002 年 13 巻 4 号 p. 285-290
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    1次性下肢静脈瘤の低侵襲な外来手術であるduplex scan oriented venous ligationsの,実際について述べた.静脈逆流を生じる部位として,大伏在静脈-大腿静脈移行部(sapheno femoral junction.SFJ),小伏在静脈-膝窩静脈移行(saphenopopuliteal junction.SPJ)とDodd,Boyd,Cockettに代表される不全穿通枝がある.下肢静脈瘤の外来治療では,原因となる静脈逆流を効率良く判定し静脈結紮で止めることが重要である.まず,視診触診により静脈瘤のtypeと穿通枝のおおよその位置を把握したのち,duplex scanを用いて詳細に検査を行い,SPJ,SFJ,伏在静脈の逆流や瘤化と,不全穿通枝を調べpin-pointで静脈結紮部位を決定する.静脈結紮は,duplex scanで決定した部位を1cm前後の小切開にて局所麻酔下で行う.不全穿通枝は1肢当たり1~2本であることが多く,自験例の大伏在静脈型1108肢では平均1.2±1.1本であった.不全穿通枝の結紮は,主にDodd,Boyd,Cockettに代表されるような,直接深部静脈と交通する穿通枝に対して行っている.これらの検査や処置をsystem化し効率良く外来治療で行うことができる.下肢静脈瘤のどの術式も根治術ではなく姑息的な手術であることより,いかにうまく下肢静脈瘤をコントロールしていくかが重要と考える.

ガイドライン
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