静脈学
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22 巻, 1 号
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巻頭言
総説
  • 小川 佳宏
    2011 年 22 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    リンパ浮腫は,慢性期になると組織の線維化や脂肪組織の増加がみられ,症状を改善しづらくなるため,発症早期に診断して治療を開始し,悪化させないようにすることが望ましい.診断にはリンパ管の状態を確認することが必要だが,確定診断のための画像診断は一部の医療機関でしか行えない.一般診療で浮腫を訴えて来院した患者には,問診・視診・触診を行い,リンパ浮腫を考えれば超音波検査を使用して浮腫の状態や合併症などについて確認する.リンパ浮腫の治療には,複合的治療と呼ばれる保存的治療が有効であるが,できるだけ発症早期から行うことが望ましい.最近顕微鏡を使用したリンパ管静脈吻合手術が注目されているが,手術前後に保存的治療を行うことが推奨されており,複合的治療が全国どこの医療機関でも行える治療になることを期待している.

  • 平井 正文, 岩田 博英, 新美 清章, 宮崎 慶子, 小松原 良平
    2011 年 22 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    静脈疾患やリンパ浮腫などの疾患のない一般健康人にみられる下肢浮腫の疫学,評価法,予防法について記述した.働く女性への疫学調査では,下肢の中で最もむくむ部位は,下腿,足関節部,足部,大腿部の順であった.しかし,老人保健施設の調査では,下肢の浮腫はとくに車イス生活者に高頻度であり,また車イス生活者では重力の影響が大きい足関節部,足部に高度の浮腫が観察された.新たに改良した三次元形状計測装置を用いた検討では,22 mmHgの弾性ストッキングに下腿,足関節部ばかりではなく足部においても浮腫への予防効果が認められた.

  • 古川 智之, 高谷 亜加里, 中川 季子, 坂口 生夫, 西 克治
    2011 年 22 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    中心静脈カテーテルの挿入を目的とした右内頸静脈穿刺に関する報告は古くよりなされており,超音波診断装置を用いた走行や径についても数多く報告されている.今回左右の内頸静脈の血管径を剖検時30例について測定し検討した.左右の内頸静脈径については剖検で検討した結果,右側が優位であった.径の左右差から内頸静脈穿刺は右側からのアプローチが成功率は高いと思われるが,左側優位の例も10%存在した.次に,内頸静脈弁について40例検討した.逆流防止としての静脈弁は内頸静脈にも存在し,その存在率は高い.また弁尖数は個人によって異なり1~3尖,あるいは存在しないものもあったが,70.5%は2尖弁であった.内頸静脈には一般的に静脈弁が存在し,内頸静脈弁はどの程度役割を果たしているか,また中心静脈カテーテル留置の際内頸静脈弁がどの程度障害され血流動態に影響を及ぼしているかについて今後評価する必要がある.

原著
  • 田淵 篤, 正木 久男, 柚木 靖弘, 久保 裕司, 山澤 隆彦, 手島 英一, 種本 和雄
    2011 年 22 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    下腿部本幹硬化療法を併用した大腿ストリッピング手術の治療成績,手術前後の静脈機能を検討したので報告する.2003年7月から2007年3月までに手術を行った伏在型下肢静脈瘤患者82例,104肢を対象とした.空気容積脈波法にて術前,術後1,6,12および24カ月のvenous filling index(VFI),venous volume(VV),residual volume function(RVF)を測定し,静脈機能を検討した.また本術式(A群),大腿ストリッピング術+不全穿通枝結紮術(B群),全長ストリッピング術(C群)について術後1,6,12カ月のVFI,VV,RVFを測定し,比較検討した.本術式の104例で,VFI(ml/sec),VV(ml),RVF(%)の術前値は6.7±3.2,122.7±36.8,58.1±16.3,術後1カ月では1.5±0.8,87±23.4,41.7±15.3,術後12カ月では1.9±1.8,89.8±29.6,39.9±11.9および術後24カ月は1.2±0.8,83.9±26.2,37.6±13であった.術後24カ月目までのVFI,VV,RVF値は術前と比較して有意に低値であった.術式別の術後12カ月のVFI,VV,RVFはA群1.9±1.8,89.8±29.6,39.9±11.9,B群1.2±0.6,77.1±24.3,38.8±18.0,C群2.0±0.7,101.0±28.4,38.9±24.8であり,各群間に有意差はなかった.伏在型下肢静脈瘤に対する下腿部本幹硬化療法を併用した大腿ストリッピング手術は重大な合併症なく,術後2年までの治療成績,静脈機能は良好であった.本術式はより低侵襲で,大腿ストリッピング術+不全穿通枝結紮術あるいは全長ストリッピング術と同等の静脈機能の改善が得られた.

  • 地引 政利, 井上 芳徳, 工藤 敏文, 菅野 範英, 稲垣 裕, 磯部 光章, 岸野 充浩
    2011 年 22 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    【はじめに】肺塞栓症(PE),深部静脈血栓症(DVT)における下大静脈フィルター(IVCF)留置例を検討し適応,結果,合併症を評価した.【対象】2001年11月~2009年1月に当院で経験したPE,DVT71例を対象とし,2群(A群54例;PEあるいはDVTにてIVCF留置,B群17例;外科的治療前にPE予防目的にIVCFを留置)に分類した.使用IVCFは78個(一時留置型46,回収可能型31,永久留置型1)であった.【結果】観察期間中にDVT,PEの増悪なく,回収時IVCF内に血栓付着を12例に認め,一時留置目的55例から永久留置となった症例は,9例(IVCFに血栓付着残存4例,長期臥床3例,等)だった.【結論】DVT既往があり,手術単独でもハイリスク群に当たる症例ではIVCFを一時的に留置する適応としても良いといえる.

  • 岩井 武尚, 佐藤 彰治, 久米 博子, 井上 芳徳, 梅田 誠, 加賀山 知子, 広川 雅之
    2011 年 22 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    バージャー病患者の逍遥性静脈炎(慢性期)部位4例4箇所から3箇所(75%)に歯周病菌DNAが検出された.バージャー病患者24例について,下肢静脈の評価をおこなった.その結果,一般人に比べて下肢静脈瘤が65%と有意に多いことが判明した.深部静脈血栓,深部静脈の逆流はそれぞれ1例であった.難治性潰瘍例の中には表在静脈逆流による動脈性潰瘍に酷似した静脈性潰瘍が含まれている可能性があること,バージャー病ではエコー検査など静脈系の検査をおこなうことを強調した.

  • 渋谷 慎太郎, 小野 滋司, 掛札 敏裕, 尾原 秀明, 北川 雄光
    2011 年 22 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    2006年1月から2010年8月までの56カ月間に24例の上腕尺側皮静脈転位内シャント(transposed brachiobasilic arteriovenous fistula; TBBAVF)を作製した.平均手術時間は90~210分(平均136分)であった.合併症として,上腕の浮腫を全例(100%)に認め,創離解を2例(8%)に認めた.一次開存率は1年89.7%,2年69.0%であり,二次開存率は1年95.7%,2年73.6%であった.TBBAVFは開存率も良好で重篤な合併症も認めず,内シャント作製困難例に対して積極的に試みる価値のある術式である.

症例
  • 金子 泰史, 原 正彦, 吉永 隆, 池田 天史
    2011 年 22 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は54歳,女性.既往歴に特記すべきことはなかったが,2007年12月末より右下肢の腫脹を認めた.深部静脈血栓症と診断されワーファリン治療を受けていたが,下肢腫脹の改善がないため2009年2月に当科へ紹介となった.受診時,右大腿部は左大腿より約4 cmの大腿周囲径の増大を認めた.血液検査ではD–ダイマーの上昇はなく,下肢の静脈エコー検査と造影CT検査で大腿静脈の大伏在静脈合流部にほぼ円形の腫瘤を認め,背側より大腿静脈を圧迫していた.腫瘤は囊腫で,腫瘤増大に伴う大腿静脈の閉塞や深部静脈血栓症のリスクが高いため手術を行った.囊胞を穿刺したが,静脈狭窄の解除が得られず囊胞切除術を施行した.囊胞壁と大腿静脈は癒着のため完全に囊胞を切除できなかったが,超音波検査では十分な血流改善を認めた.囊腫は術中所見と病理診断よりガングリオンと診断した.術後,右下肢の腫脹は次第に軽快した.

  • 浜崎 尚文, 大月 優貴, 上平 聡, 吹野 俊介
    2011 年 22 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    66歳女性.主訴はCT検査異常影.自覚症状はなかった.平成18年10月に検診でCT検査をしたところ,左腎静脈瘤と診断された.平成19年11月に再検査したところ,瘤内に血栓形成を認め当科へ紹介された.左腎静脈は大動脈と上腸間膜動脈に挟まれる部位より末梢が38mm長にわたり,最大径25mmの大きさで紡錘状に拡張しており,尾側に向かって囊状を呈していた.瘤内には24×16mmの血栓形成を認めた.血液所見では,腎機能は正常であったが,Dダイマーが4.4 μg/mlと軽度上昇していた.尿潜血(±),尿蛋白(-)であった.経過観察中の3カ月後に,突然の心窩部痛を訴えた後に心肺停止となり死亡した.

プラクティカル フレボロジー
  • 春田 直樹, 新原 亮
    2011 年 22 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    静脈鬱滞性下腿潰瘍に対するSEPS(subfascial endoscopic perforating vein surgery)手術は2009年5月,「内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術」として先進医療認可を受けた.われわれの2ポート式SEPS(TPS-SEPS)の特徴は,腹腔鏡下胆囊摘出術に使用されている手術器機のみで施行可能なことである.さらに当初直視下に筋膜下層へ挿入していたアクセスポートを,腹腔鏡下手術に使用されていたEndoTIP®(Karl Storz社製,Tuttlingen,Germany)に変更したことにより,ポート挿入部位の選択肢が増え,術式がより容易となった.そこで新たに本手術導入を考えている方への理解を目的として,現在われわれの行っているTPS-SEPS手技を示すとともに,使用器機の紹介と,さらに先進医療対象とした最新の44症例の手術結果も提示した.

  • 田代 秀夫
    2011 年 22 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    カテーテルを用いた伏在静脈本幹に対する硬化療法(catheter-directed sclerotherapy)は,血管内治療の手技により,伏在静脈本幹内に,硬化剤を安全に注入する手法で,超音波ガイド下硬化療法(ultrasound-guided sclerotherapy; UGS)に比べ,動脈内注入や,血管外注入などのリスクも少ない.また,レーザー(endovenous laser ablation; EVLA)およびラジオ波(radiofrequency ablation; RFA)による治療に比べ,安価で,かつtumescent local anesthesiaや出力装置を必要としない簡便な手法でもある.しかしながら,カテーテル硬化療法は,UGS,EVLA,RFAの治療成績と比較に値するエビデンスがえられていないのも現状である.われわれは,バルーンカテーテルによりsapheno-femoral junctionを遮断したのち,ロングシースから大伏在静脈本幹へ透視下に硬化剤を注入するカテーテル硬化療法を試み,その治療を報告するとともに,今日にいたるまでのカテーテル硬化療法の足跡を振り返ってみることにする.

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