一時留置型下大静脈フィルター抜去時の捕獲塞栓診断法とその対処について,Boston社製AntheorTMを挿入した14例を対象にretrospectiveに検討した.
捕獲塞栓の診断のため,10例で術翌日に静脈造影法を,2例で術中経食道エコー法による評価を施行した.残る腎機能障害を伴う2例は評価せずに抜去した.
静脈造影を行った3例に10mm径以上のフィルター内陰影欠損を認めた.うち30×15mm大の陰影欠損を認めた1例は,全身麻酔下に内頚静脈からフィルターと捕獲塞栓の同時除去術を施行した.10~15mm径の陰影欠損の2例は新鮮血栓をそのままシース内に収納し抜去した.
術中経食道エコー法で評価した1例にフィルター先端にとどまっている20×30mm大の遊離腫瘍栓を認め,引き続き肝下部下大静脈を開き腫瘍栓を摘出した.
結果として,全例で臨床上問題となるような急性肺塞栓症を予防しえた.
一時型下大静脈フィルターは処置や手術時の急性肺塞栓症予防に極めて有用であった.捕獲塞栓の評価に,経食道エコー法と静脈造影法を症例に応じて使い分けることが安全で推奨される.捕獲塞栓が15mm径以下で,かつ赤色血栓が予想される場合には,シース内に収納可能である.30mm径以上の捕獲塞栓や,15mm径以下でもフィルター収納時に抵抗がある場合,及び腫瘍栓が予測される場合には,速やかに全身麻酔下に内頚静脈からのフィルターと塞栓の同時除去術を施行すべきである.15~30mm径の捕獲血栓については,今後さらに症例を重ねて検討する必要があると思われる.
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