静脈学
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15 巻, 3 号
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巻頭言
原著
  • 佐戸川 弘之, 星野 俊一, 阪口 周吉, 平井 正文, 佐々木 久雄, 岩井 武尚, 折井 正博, 東 純一, 井上 良一, 横山 斉
    2004 年15 巻3 号 p. 207-215
    発行日: 2004年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    著者らは,下肢静脈瘤の硬化剤であるポリドカノール(POL)の至適濃度を検討し,瘤径1mm未満には0.5%,瘤径1mm以上3mm未満では1.0%,瘤径3mm以上には3.0%が至適濃度であると報告した1).今回POLの有効性を立証するため,プラセボを対照とし多施設共同で二重盲検比較試験を施行した.対象は一次性下肢静脈瘤86例.静脈瘤径1mm未満(Group 1),1mm以上3mm未満(Group 2),3mm以上(Group 3)に分類し,POL0.5%,1.0%,3.0%とプラセボを盲検化し割り付け,硬化療法を行い比較検討した.静脈瘤消失効果の有効率はPOLではGroup 1 69.2%,Group 2 86.7%,Group 3 100%で,対照薬の7.1%,0%,9.1%と比較し有意に高かった(p<0.05).全身性合併症は認められず,局所では軽度の瘤内血栓形成35.6%,色素沈着を22.2%に認めた.以上から,至適濃度でのポリドカノールの有効性,安全性は極めて高く,非常に有用であることが立証された.

  • 戸島 雅宏, 西谷 泰
    2004 年15 巻3 号 p. 217-223
    発行日: 2004年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    下肢静脈瘤肢において周術期深部静脈血栓症予防の弾力ストッキング(GES)至適圧の検討のため,duplex scanを用いて深部静脈の血行動態を検討した.静脈瘤72肢,正常肢94肢を対象に,GESおよび間欠的空気圧迫装置(IPC)使用時の血流速度を測定した.IPCはフロートロンDVTを,GESは中圧および弱圧のストッキングタイプを使用した.中圧GES単独使用時,正常肢で総大腿静脈最大流速は有意に減少し,静脈瘤肢では不変であった.弱圧GES単独使用時,正常肢,静脈瘤肢ともに総大腿静脈最大流速は不変であった.IPC使用時総大腿静脈の流速変動率は静脈瘤肢で正常肢より有意に大きいが,GES併用により正常肢と同等になった.また併用時弱圧GESは中圧GESより大きい流速変動率が得られた.以上から静脈瘤内血液はGESで駆出され,正常肢同様静脈瘤肢でも仰臥位静脈うっ血予防は弱圧GESで十分と考えられた.

  • 景山 則正, 呂 彩子, 谷藤 隆信, 濱松 晶彦, 村井 達哉
    2004 年15 巻3 号 p. 225-231
    発行日: 2004年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    肺血栓塞栓症の剖検例28例の両下肢深部静脈(56肢)を病理形態学的に観察した.全例に新鮮血栓が認められた.新鮮血栓の存在する44肢の血栓最中枢部は腸骨・大腿型10肢,下腿型34肢であった.器質化血栓は28例中25例に認められた.存在部位は下腿静脈に限局する例が90%を占めていた.新鮮血栓および器質化血栓を含めた両側性の深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)は85.7%(24/28)であった.ヒラメ静脈血栓は91%(51/56)と最も高頻度に存在した.発生源・高頻度出現部位としてのヒラメ静脈の重要性とともに,致死性塞栓子および過去のDVT検出の意味において下腿静脈の重要性が確認された.

  • 佐々木 規之, 飛田 研二, 四方 裕夫, 坂本 滋, 松原 純一
    2004 年15 巻3 号 p. 233-238
    発行日: 2004年
    公開日: 2022/06/11
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    静脈性血管瘤(venous aneurysm)は稀な疾患であるが,四肢の表在静脈や頚静脈においてはいくつかの報告がみられる.今回我々は1998年6月から2002年10月の4年間に,橈側皮静脈に発生した2例,小伏在静脈に発生した2例,上腸間膜静脈に発生した1例の計5例を経験した.橈側皮静脈に認めた1例に紡錘状の静脈性血管瘤を認め,他の4例はいずれも嚢状を呈していた.全例に切除術が行われ,上腸間膜静脈に発生したものは,瘤切除後に自家静脈を用いて再建術を行った.膝窩静脈領域に発生した静脈性血管瘤では肺塞栓症を高率に合併することから早期に手術を要する.また門脈領域に発生したものでは,破裂を認めることが稀ではないため,発見後直ちに手術が必要である.

  • 岩田 博英, 平井 正文, 温水 吉仁, 城所 仁, 早川 直和, 錦見 尚道, 古森 公浩
    2004 年15 巻3 号 p. 239-245
    発行日: 2004年
    公開日: 2022/06/11
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    平成12年1月から3年6ヶ月の間に当院を受診した男性静脈瘤患者108人を同時期の女性静脈瘤患者450人と比較検討した.男性患者は,全体の19.4%と疫学調査における男女差よりも低率であったが,静脈瘤タイプの検討では男女間に差を認めなかった.男性患者は,女性患者と比較して,発症年齢には差を認めなかったが,病悩期間が短く(男性11.2±10.2年vs女性18.2±10.2年,p<0.001),発症時年齢は高かった(45.3±14.5歳vs 37.6±13.0歳,p<0.001).病悩期間が短いにもかかわらず,男性は女性と比較し静脈還流障害は高度であり(筋ポンプ脈波法による1/2再充満時間,5.2±3.1秒vs 6.6±4.6秒,p<0.05),皮膚症状・緊急症例の合併率が高く(46.7% vs 19.9%,p<0.001),ストリッピング手術をうける比率が高かった(18.5% vs 6.0%,p<0.001).さらに年代別にみてみると特に40歳以上60歳未満の男性では,40歳未満あるいは60歳以上の男性と比較して高度な静脈還流障害を示し(1/2再充満時間,4.7±2.5秒vs 7.2 ±4.3秒,5.3 ±3.5秒),ストリッピングをうける症例が多い(27.1% vs 12.5%,11.4%)という特徴が観察された.

  • 山本 尚人, 小谷野 憲一
    2004 年15 巻3 号 p. 247-252
    発行日: 2004年
    公開日: 2022/06/11
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    下肢静脈瘤に対する手術としては,ストリッピング手術(ST)と高位結紮術(HL)が主に行われている.これまで当院では視診により術式を決定してきたが,術式の決定の基準となる指標をduplex scanとair plethysmographyを用いて検討した.対象は当院で手術を施行した静脈瘤症例のうち,大伏在静脈の逆流が膝下に及んでいたもの138肢である.大腿下1/3の部位での大伏在静脈径(SM径)はST群,HL群それぞれ7.6±1.5mm,5.6±1.4mmであり,venous filling index(VFI)はST群,HL群それぞれ7.5±3.4ml/sec,4.5±1.4ml/secであった.VFIとSM径の相関は相関係数0.6で正の相関が認められた.以上の結果から,HL群のmean+SDである,SM径で7mm,VFIで6ml/sec以上が,下肢静脈瘤治療方針のひとつの選択基準となりうると考えられた.

  • 黒部 裕嗣, 北市 隆, 富永 崇司, 金村 賦之, 神原 保, 市川 洋一, 島原 祐介, 元木 達夫, 菅野 幹夫, 浦田 将久, 増田 ...
    2004 年15 巻3 号 p. 253-258
    発行日: 2004年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル オープンアクセス

    一時留置型下大静脈フィルター抜去時の捕獲塞栓診断法とその対処について,Boston社製AntheorTMを挿入した14例を対象にretrospectiveに検討した.

    捕獲塞栓の診断のため,10例で術翌日に静脈造影法を,2例で術中経食道エコー法による評価を施行した.残る腎機能障害を伴う2例は評価せずに抜去した.

    静脈造影を行った3例に10mm径以上のフィルター内陰影欠損を認めた.うち30×15mm大の陰影欠損を認めた1例は,全身麻酔下に内頚静脈からフィルターと捕獲塞栓の同時除去術を施行した.10~15mm径の陰影欠損の2例は新鮮血栓をそのままシース内に収納し抜去した.

    術中経食道エコー法で評価した1例にフィルター先端にとどまっている20×30mm大の遊離腫瘍栓を認め,引き続き肝下部下大静脈を開き腫瘍栓を摘出した.

    結果として,全例で臨床上問題となるような急性肺塞栓症を予防しえた.

    一時型下大静脈フィルターは処置や手術時の急性肺塞栓症予防に極めて有用であった.捕獲塞栓の評価に,経食道エコー法と静脈造影法を症例に応じて使い分けることが安全で推奨される.捕獲塞栓が15mm径以下で,かつ赤色血栓が予想される場合には,シース内に収納可能である.30mm径以上の捕獲塞栓や,15mm径以下でもフィルター収納時に抵抗がある場合,及び腫瘍栓が予測される場合には,速やかに全身麻酔下に内頚静脈からのフィルターと塞栓の同時除去術を施行すべきである.15~30mm径の捕獲血栓については,今後さらに症例を重ねて検討する必要があると思われる.

症例
  • 五島 雅和, 前田 英明, 三室 治久, 梅澤 久輝, 根本 光洋, 根岸 七雄
    2004 年15 巻3 号 p. 259-264
    発行日: 2004年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は65歳,男性.13年前より左下肢静脈瘤を認め,その後色素沈着出現するも放置していた.前立腺肥大で他院入院中に骨盤CT上,動静脈奇形を指摘され当科へ紹介となった.血管造影では左内腸骨動脈を流入血管とする骨盤内動静脈奇形(AVM)であり,下肢静脈瘤は動静脈奇形による静脈圧の上昇に起因する二次性であった.経カテーテル的動脈塞栓術(TAE)により動静脈瘻閉鎖に成功し,鼠径部の静脈瘤と血管雑音の消失がみられた.その後のMRA,CTで動静脈瘻の再開通,再発のないことを確認後,塞栓術から3年後に二次性下肢静脈瘤に対しストリッピング手術,瘤切除,不全交通枝結紮術を施行し奏功した.骨盤内AVMの治療としてTAEは低侵襲かつ有効であり第一選択と考えられた.二次性下肢静脈瘤の治療においては手術が禁忌となることも少なくなく,その原疾患に対する対策が肝要である.

  • 井上 史彦, 松本 賢治, 松原 健太郎, 和多田 晋, 秋好 沢林, 金田 宗久, 新谷 恒弘, 渋谷 慎太郎, 北島 政樹
    2004 年15 巻3 号 p. 265-270
    発行日: 2004年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    上腸間膜静脈(SMV)血栓症は比較的まれではあるが,生命を脅かし得る疾患である.今回われわれは,プロテインS欠乏症が原因で発症したと考えられる上腸間膜静脈血栓症の1例を経験した.症例は52歳男性で,48歳時にプロテインS欠乏症を指摘されている.

    増悪する上腹部痛を主訴に当院を受診した.同日施行した腹部造影CT検査および腹部超音波検査にてSMV内に血栓を認め,またSMVの血流が確認できなかったため,SMV血栓症と診断した.SMAにカテーテルを留置し,ウロキナーゼの持続動注を開始した.しかしSMVの開存を得られず,経皮経肝的に門脈カテーテルを留置し,ウロキナーゼによる血栓溶解療法を施行した.症状の改善は認めたが,小腸の通過障害をきたし,36病日目に腹腔鏡補助下小腸部分切除術を施行した.術後経過は良好であり,現在ワルファリンにて抗凝固療法を施行中である.

  • 三井 信介, 江口 大彦
    2004 年15 巻3 号 p. 271-274
    発行日: 2004年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    下肢静脈瘤硬化療法後,長時間の航空機旅行後に肺血栓塞栓症をおこした症例を経験した.症例は50歳女性.血栓性素因はない.下肢静脈瘤に対し硬化療法を受けた後合併症はなかった.治療12日後,13時間の飛行機での移動直後に肺血栓塞栓症を発症した.長時間の運動制限によると思われる旅行者血栓症であるが,硬化療法の影響も否定できない.

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