静脈学
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34 巻, 1 号
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特別寄稿
  • 岩井 武尚
    2023 年 34 巻 1 号 p. 45-55
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/08/10
    ジャーナル オープンアクセス

    人生100年時代に入ったとはいえ,65歳定年後の人生はどうあるべきか考え悩む人は少なくないと思われる.それと定年後15年もたつと,すなわち80歳までになると自分のことではあるが医学部同級生のうち14人(32.8%)はすでに死亡しているという現実がある.今更ながら,退官後は楽しく生きる,道楽三昧はできるのか?等々,考えて生きてみた.そこでわが定年(65歳)退官後の15年を振り返ってみたい.まずは大学での生活・活動の遺産処理である.やり残しをどうするのか.もちろんそのままにするのも選択肢であるが未練が残る.そこで15年間でまとめることができたもの,できなかったもの,新しく生まれた思い付きなど取り混ぜてここに発表の任を果たしたいと思う.前半四つを静脈学,後半四つを脈管学として八つほど列記する.苦楽をともにした共同執筆者というべき共同研究者は多岐多種にわたるので文末謝辞欄に列記させてもらうことにした.

原著
  • 村井 則之, 西山 綾子, 松浦 壮平, 向後 寛子, 保科 克行
    2023 年 34 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2023/04/27
    公開日: 2023/04/27
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】透析シャントの臨床的閉塞症例に対する治療介入の成績を比較し,サーベイランスの重要性を検討する.【方法】2009年10月1日から2020年11月30日に臨床的透析シャント閉塞と診断され当科でvascular access interventional therapy(VAIVT)治療を行った280症例を対象とした.エコーで完全閉塞が確認された127例(閉塞群)と,血流がわずかでも認められたnear occlusion(切迫閉塞群)153例の3年後までの予後を比較した.全症例3カ月ごとにエコーでサーベイランスを行った.【結果】閉塞群の初期成功率は96%,切迫閉塞群では99.3%であった.閉塞群および切迫閉塞群の一次開存率には有意差はなかった(ハザード比:0.995, p=0.969).補助一次開存率は切迫閉塞群で良好であった(ハザード比:0.764, p<0.05).【結語】3カ月ごとのフォローアップでの可及的VAIVT対応によって,臨床的シャント閉塞症例に対する成績は受容できるものであり,エコー上near occlusionであれば完全閉塞よりも成績は良好であった.

  • 原 尚子, 三原 誠, 一ノ瀬 充, 下村 文香, 西村 麻衣子, 長谷川 友香, 穴田 佐和子, 音山 紀子, 上野 高明
    2023 年 34 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル オープンアクセス

    複合的治療をセルフケアとして習得できるかどうかが,リンパ浮腫患者の治療の成否を分ける.この研究の目的は,リンパ浮腫に対するセルフケア習得のための入院プログラムの効果を明らかにすることである.われわれは,入院プログラムを受けた17人(24肢)の下肢リンパ浮腫患者について後方視的研究を行った.患者はすべて女性で,平均年齢は70.4歳であった.平均入院期間は24.5日で平均フォロー期間は8.2カ月であった.リンパ浮腫療法士が圧迫療法を指導し,理学療法士が運動療法を指導した.いずれも退院後に継続できるセルフケアを習得できるよう留意した.治療効果は,患肢6カ所の周径の和と大腿四頭筋筋力体重比で判定した.周径の平均は,入院時240.3 cm,退院時214.3 cmで有意に減少し(p<0.01),退院後も212.3 cmと減少傾向にあった.大腿四頭筋筋力体重比は入院期間中に有意に向上した(p<0.01).セルフケア習得に重点をおいた入院保存療法の有効性が示された.

  • 富田 伸司, 小山 裕, 稲垣 順大, 澤田 幸史, 尾添 公紀, 大川 育秀
    2023 年 34 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル オープンアクセス

    大伏在静脈不全に対し血管内塞栓術後の閉塞断端変化と1年成績を検討するため,2020年45例を対象とし前向きに調査した.直後,1日,1週間,6カ月,1年に,断端長(A)を超音波で測定,CTを6カ月,1年に施行した.手術時間37±17分,治療長18.1±5.3 cmであった.1週間閉塞率100%.術後合併症は,発赤(7例),自然痛(3例),圧痛(2例),違和感(2例),かゆみ(0例),感染(0例),DVT(0例).EGITクラス3(3例)であった.Aは,直後(6.4±2.2 cm),1日(4.5±1.9 cm),1週間(2.7±2.4 cm)と短縮した(P<0.001).6カ月(4.3±2.9 cm)と1年(3.8±2.4 cm)は1日と差はなかった.閉塞端の経時的変化を見ると術後1日目に舌状に突出していた血栓は,1週間後には浅腹壁静脈開口部より末梢で静脈壁と固着した.6カ月後,1年後の断端は末梢側へ凸に開存した.1年後再疎通(1例).追加手術(1例).1年成績は良好であった.

症例報告
  • 松田 靖弘
    2023 年 34 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2023/02/10
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル オープンアクセス

    63歳女性.息切れを主訴に救急受診,造影CTで肺塞栓(右肺動脈下葉枝と左肺動脈舌区枝に血栓)の診断.入院後リバーロキサバン30 mgで治療開始.1週間後,左肺動脈の血栓消失,肺換気・血流シンチで右肺S9/10相当部にミスマッチは残存.入院後12日目に退院,エコーで深部静脈本幹に血栓はなく,左膝窩囊状静脈瘤(28×20 mm)を認めた.内部に血栓残存,リバーロキサバン15 mg継続して当院紹介.外来で瘤内血栓は一旦消失したが手術前日のエコーで再発を認めた.手術は膝窩静脈瘤切除+大伏在静脈パッチ形成術を施行,術後合併症なく術後8日目に退院.病理組織診断では静脈瘤に炎症細胞浸潤はなくフィブリン血栓を含む拡張した静脈を認めるのみであった.退院後リバーロキサバン15 mgを1年間継続,中止後2年間は深部静脈血栓症の再発は認めていない.

  • 廣岡 茂樹, 外田 洋孝, 折田 博之
    2023 年 34 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は46歳女性で,中学生のころから右上腕の皮膚に紅斑を認めていた.20年前より右上腕皮静脈の静脈怒張と掻痒感を自覚し,3年前から静脈怒張の増強,重苦感および疼痛が出現し,増悪するため当院を受診した.超音波検査で上肢静脈瘤を,造影CT検査では動脈相で静脈瘤が造影され,静脈瘤の原因の一つとして先天性動静脈瘻が存在している可能性があると考えられた.上肢静脈瘤に対し血管内レーザー焼灼術を施行し,術後,静脈瘤は消失し自覚症状は改善した.上肢静脈瘤は非常に稀な疾患であり,同疾患に対し血管内レーザー焼灼術を施行し良好な結果が得られたため報告する.

  • 内田 智夫
    2023 年 34 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    副伏在静脈瘤の報告は大伏在静脈瘤の治療後の再発に関連したものが多い.大伏在静脈瘤を伴わない副伏在静脈瘤単独の治療報告は限られ,ほとんど成人発症例である.先天性の副伏在静脈瘤と思われるまれな症例を報告する.症例:69歳女性.生後より左膝に腫瘤があったが自然に膨らみが軽減.18歳ころ某大学病院形成外科を受診.筋皮弁による治療を提案されたが希望せず,その後放置していた.治療を希望し当科を受診.左膝前方が陥没しており,その部位に一致した表在静脈瘤を認めた.超音波検査ならびに造影CT検査を施行.深部静脈や動脈の異常は認めず,外側副伏在静脈の弁不全を伴う静脈瘤と診断.左外側副伏在静脈の高周波による血管内焼灼術を行った.1カ月後に1%ポリドカスクレロールによるフォーム硬化療法を追加した.幼少期の詳細な経過が不明であるが,出生時からあった血管腫が成長とともに一部自然に退化縮小したまれな静脈瘤と考えられる.

  • 廣岡 茂樹, 阪西 通夫, 外田 洋孝, 折田 博之
    2023 年 34 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    双胎妊娠で,帝王切開分娩後の産褥期卵巣静脈血栓症の2例を経験したので報告する.症例1は40歳の2妊1産.妊娠36週に帝王切開にて1卵性双胎を分娩した.分娩後6日に創痛,発熱,炎症反応の増悪が出現し創感染が疑われ,抗生剤の投与と創開放術を受けた.その後も炎症反応の増悪が続くためCT検査をしたところ左卵巣静脈,左腎静脈血栓症および肺塞栓と判明した.血栓溶解療法と抗凝固療法にて血栓は消失した.症例2は26歳の1妊0産.帝王切開で2卵生双胎を分娩した2日後に胸痛を訴え,肺塞栓を疑いCT検査を施行し下大静脈に伸展する右卵巣静脈血栓症と判明した.抗凝固療法を行い血栓は消失した.産褥期卵巣静脈血栓症を臨床症状から診断することは困難で,診断にはCT検査が有効であった.

手術・手技の工夫
  • 宇藤 純一, 塚本 芳春
    2023 年 34 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2023/04/27
    公開日: 2023/04/27
    ジャーナル オープンアクセス

    血管内レーザー焼灼術の新しい治療プロトコールを作成し,手術を施行した伏在型静脈瘤963例について報告する.波長1470 nmのBiolitec社製レーザー装置に,直径1.27 mmの細径ファイバーを接続し,伏在静脈および側枝静脈瘤を焼灼した.小伏在静脈あるいは膝上の大伏在静脈(GSV)は出力7 W(LEED 50–70 J/cm)で焼灼し,膝下GSVにも逆流を認める場合には同部を5 W(LEED 20–25 J/cm)で焼灼した.さらに側枝静脈瘤を5 W(LEED 30 J/cm)で焼灼した.GSV焼灼後の神経障害は認められず,瘤焼灼に伴う皮膚熱傷や神経障害も認めなかった.皮下出血やリンパ管損傷などの瘤切除に起因すると思われる有害事象の発生はなく,整容性にも優れた根治的治療が可能であった.静脈瘤の穿刺焼灼法はスタブアバルジョン法の弱点を補完する有益な代替手段になることが期待される.

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