静脈学
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17 巻, 1 号
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巻頭言
ディベート
原著
  • 小窪 正樹, 野坂 哲也, 根本 紀子
    2006 年 17 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2006年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    局所麻酔とpropofolの併用により日帰りストリッピング手術を行った1次性下肢静脈瘤1,705例2,341肢を対象とした.男女比444例/1,261例,年齢は平均57歳で,75歳以上の高齢者が101例6%を占めた.術式は大伏在静脈(GSV)ストリッピング1,963本,小伏在静脈(ssv)ストリッピング570本であり,全長抜去例が4割弱を占めていた.大小伏在静脈合併例は192肢であった.局麻中毒は1例もなく,propofolによる心室性期外収縮を2例に認めた.手術合併症は,緊急手術を要した後出血を1例,術中止血困難例を5例に認めた.創感染を8肢0.3%に認めたがいずれも外来通院で完治した.神経傷害は,GSVでは全体で97肢4.9%,ssv14肢2.5%,全長抜去例でも各々67肢9.0%,10肢4.5%と少なかった.しかし,ssvでは誤って排腹神経を切断した症例が1例あった.その他,深部静脈血栓症や肺塞栓症等の重大な合併症は見られず,高齢者に術後せん妄症状を誘発することもなかった.

  • 福岡 正人
    2006 年 17 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2006年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    当院では下肢静脈掴に対し,医療側の重症度評価や検査所見のみならず,患者側の要求にも応え治療法を選択してぎた.今回,重症度による治療法の選択と,治療結果からみた治療方針の妥当性について検討した.当院で治療した下肢静脈瘤症例,448例469肢を対象とした.硬化療法は31肢,外来での結紫療法(結紫+硬化療法も含む)は394肢,入院手術加療は31例44肢で,全体の9.4%であった.入院症例の重症度はC6症例が10肢,C5症例が3肢,C4症例が15肢,C3症例が3肢,C2症例が13肢であった.C5症例は10肢中3肢に,C4症例は99肢中15肢のみに入院加療を行った.外来結葉療法を行った症例のうち,約96%で症状の軽減が得られた.外来での結紫療法でも十分満足しうる結果であったが,潰瘍症例ではストリッピング術を中心とした入院手術加療でconsensusが得られるのではないかと考えられた.

  • 内田 智夫
    2006 年 17 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2006年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    ウロキナーゼとヘパリンの点滴静注治療を行った発症後14日以内の深部静脈血栓症患者における血中FDP(fibrinogen degradation product),D-dimerの推移を検討した.対象は男性11例,女性13例.年齢29~88歳(平均61.5歳).治療箭のFDP,D-dimerはそれぞれ,19.1±10.8, 10.2±5.1μg/mlであった.治療中のFDP,D-dimerはほぽ同様に減少し,2週間前後で正常値となった.治療前のFDP(Y1),D-dimer(Y2)値と推定される発症日から初診時までの日数(x)の関係をみると,それぞれY1=30.558-2.237x, R=0.678, p=0.0005, Y2=13.883-0.689x, R=0.453, p=0.03の相関を示した.治療薗のFOP, D-dimerは病悩期間が長くなるほど漸減する傾向を示し,その数値からある程度発症時期を拙測することができる可能性が示唆された.

総説
症例
  • 金子 寛
    2006 年 17 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2006年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    一次性下肢静脈瘤の治療後に表在静脈内に血栓を形成し,治癒が遷延した症例を2例経険した.症例lは57歳の女性.右下腿内側に発赤・疼痛を呈し,超音波で右大伏在静脈に著明な逆流と拡張を認めた.高位結紫術を行ったところ,術後1週から右大腿部の発赤・疼痛が出現し,超音波では残した大伏在静脈が血栓閉塞していた.症例2は47歳の男性.右下腿箭部に潰瘍を認め,超音波で右大伏在静脈に著明な逆流と拡張を認めた.ストリッピング手術を行ったところ,術後3日目から右下腿部の発赤・疼痛が出現した.超音波では残した静脈瘤が血栓閉塞していた.術直後から立ち仕事をしていたとのことであった.症例lでは拡張した大伏在静脈に対し高位結禁を行ったため,症例2では術後安静を守らず立ち仕事をしたため,表在性血栓性静脈炎が牛じ,とくに2例日の治癒が遷廷したものと考えられた.保存療法が有効であった.

  • 新原 亮, 春田 直樹, 天野 尋暢, 向井 勝紀
    2006 年 17 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2006年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    急性肺塞栓症を伴う下肢深部静脈血栓症患者に対して下大静脈(IVC)フィルターを挿入した後,後腹膜出血,下大静脈血栓症を生じた1例を経験したので報告する.症例は78歳,男性.下肢静脈造影にて左前後胚骨静脈より総腸骨静脈まで血栓が存在し,胸部CTにて両側肺動脈に血栓を認めたためSimon Nitinol Filter®を下大青争脈に挿入した.ヘパリン持続注射にてACT 150~180secにコントロールし,ウロキナーゼ48万単位/日を3日投与した.入院3日目右下腹部より腰部の疼痛あり腹音灰CTにて後腹膜血腫および血栓によるIVCフィルターの変形を認めた.ヘパリン,ウロキナーゼともに中止したところ出血はおさまり血腫も吸収された.抗凝固はワーファリン®の内服とし21日目に軽快退院した.6カ月月後の腹部CTではIVCフィルターは正常な形に戻っており血栓も認めなかった.

  • 岩田 英理子, 穴井 博文, 宮本 伸二, 和田 朋之, 田中 秀幸, 竹林 聡, 森田 雅人, 漆野 恵子, 首藤 敬史, 葉玉 哲生
    2006 年 17 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2006年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は78歳男性.10年前,左鼠径ヘルニアに対し根治術施行.術後同側の深部静脈血栓症を発症し,血栓除去術を施行するも改善せず,血栓後遺症を併発した.来院時,左下肢には著明な腫脹,静脈瘤形成,下腿色素沈着,皮膚硬化あり,下腿に潰瘍形成を認めた.左鼠径部に連続性雑音を聴取した.血管造影検査では左総腸骨静脈の閉塞と,左内腸骨動静脈間に動静脈悽を認めた.手術は径8mm ePTFE(Gore Tex®)graftを用いて,大腿静脈交叉バイパス術を行った.術後速やかに下肢腫脹は軽減したが,創部からのリンパ漏が遷延し,MRSA感染,敗血症を併発し死亡した.左下肢の静脈圧軽減には,今回のバイパスは奏効したと思われたが,リンパ漏のコントロールができなかった.術前に動静脈痩閉鎖などの処置を考慮すべきであった等の反省点をもって,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 堀口 定昭, 新見 正則, 波多野 稔, 白杉 望, 矢吹 志保, 宮澤 幸久, 沖永 功太
    2006 年 17 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2006年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は60歳男性で,悪性リンパ腫に併存しだ深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症に対し,下大静脈フィルター留置・抗凝固療法を行った転院後,化学療法を行うために抗凝固療法を中止したところ,フィルターの閉塞を来して再入院となった.抗凝固療法・線溶療法にて症状軽快したため,再び化学療法を受けるため転院した.医療技術の進歩に伴い深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症が診断される機会が多くなった.それと共に下大静脈フィルターの使用頻度が増し,合併症が無視できない.本症例は悪性腫瘍に合併した深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症に対し下大静脈フィルターを用いて加療し結果的に閉塞してしまったが,生命予後の改善には有効であったと考えられた.

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