静脈学
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24 巻, 4 号
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巻頭言
特集:災害とVTE ~ 1 年後の総括 (第32 回日本静脈学会総会 シンポジウム2)
原著
  • 植田 信策, 榛沢 和彦, 柴田 宗一
    2013 年 24 巻 4 号 p. 380-384
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:石巻医療圏において,東日本大震災後の1 カ月間に12 例の肺血栓塞栓症例が発生し,平成23 年7 月までに32 カ所の避難所で701 名に行った下肢静脈エコー検査で,190 名に深部静脈血栓症(DVT)を認めた.DVT 陽性率は震災直後の3 月を最高に徐々に低下傾向であったが,避難所の集約が行われた直後の5 月に一時的に上昇した.津波で浸水した避難所は非浸水避難所に比較して有意にDVT 陽性率が高かったことから(各34.2%,19.1%,P<0.001),避難所環境がDVT 発症に影響したことが推測された.8月以降,仮設住宅団地17 カ所で360 名にエコー検査を行い,32 名にDVT を認めた.非被災地でのDVT 陽性率に比較すると明らかに高く,仮設住宅入居後の住民の活動性の低下が影響していると思われた.以上より,環境の悪い浸水地域からの早期の二次避難と仮設住宅での活動性保持などがDVT 予防に重要と思われた.
  • 柴田 宗一, 山家 智之
    2013 年 24 巻 4 号 p. 385-390
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:2004 年に発生した新潟県中越地震以降,避難所/ 仮設住宅における高い深部静脈血栓症(DVT)発生頻度とその後も遷延することが報告されている.2011 年に発生した東日本大震災後に栗原市内に設けられた南三陸町民に対する2 次避難所において,検査希望者もしくは検査を推奨される方に対し問診,視診,下腿静脈エコーを行った.下肢静脈エコーは,非圧迫所見もしくは直接的な血栓エコーの存在にて血栓陽性と判定した.2011 年4 月11 日から7 月29 日までに計5 回の巡回検査を行い,103 名(延べ166名)の避難者に対して検査を行った.103 名中10 名(延べ21 名)にDVT を認め,抗凝固療法を受けた7 名では観察期間中4 名で血栓の消失を確認した.整備された2 次避難所では良好な避難所環境や医療アクセスによる抗凝固療法の後押しもあり,血栓は消失もしくは沈静化する方向にあった.
その他(特別報告)
  • 福田 幾夫, 谷口 哲
    2013 年 24 巻 4 号 p. 391-395
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:東日本大震災において,日本静脈学会理事会および弾性ストッキング・コンダクター養成委員会は,避難所における静脈血栓塞栓症(VTE)予防に積極的に関与した.震災1 週間の時点で,同委員会の働きかけで,多数の弾性ストッキングが被災地に発送された.さらに,日本静脈学会理事長名で避難所におけるVTE 予防の声明を出し,VTE予防のパンフレットをメールを通じて配布し,福島県からの要請に基づいてVTE 検診のため技師を派遣した.問題点として,被災地では使用しにくい大腿部までのストッキングも配送されたこと,被災地での弾性ストッキングコンダクターが少なく,長期使用の管理ができなかったことが挙げられる.静脈学会は分野を越えた人脈と知識を有し,VTE予防に関して被災地の医療機関の物心両面の支援が可能であった.今後このような災害時には,ただちに関係学会で連絡をとりあい,被災地のニーズに基づき,会員からの協力を募ることが重要である.
特集:下肢静脈瘤に対するレーザー治療の有用性と問題点 (第32 回日本静脈学会総会 パネルディスカッション3)
原著
  • 小長井 直樹
    2013 年 24 巻 4 号 p. 396-402
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:下肢静脈瘤の外科治療として,血管内レーザー焼灼術(EVLA)がストリッピング手術に代わる標準的術式として普及している.しかし大腿部の皮下出血や疼痛など術後早期の合併症が散見されるため,照射エネルギー密度(LEED)による治療効果および合併症の出現頻度について検討した.2009 年12 月から2011 年10 月までにEVLA を行った下肢静脈瘤155 例180 肢を対象とし,LEED 65 J/cm 未満の89 肢をA 群,65 J/cm 以上の91 肢をB 群とした. レーザー出力はA 群11.3 W,B 群10.0 W,LEED はA 群58.1 J/cm,B 群72.5 J/cm であった.静脈収縮率は両群に有意差はなく,静脈閉塞率はA群98.9%,B 群100%であった.術後1 週目の皮下出血はA 群 64.2%とB 群26.3%,疼痛はA 群 51.6%とB 群27.4%に認められ,ともにA 群での発生頻度が有意に高かった.EVLA ではレーザー光がヘモグロビンや水に吸収されて熱エネルギーに変換するが,適切なLEED の調整とsaphenous compartment への正確なTLA 液の注入により,静脈壁障害による血管閉塞を得ることが重要である.
  • 田中 潔, 三井 信介
    2013 年 24 巻 4 号 p. 403-409
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:【目的】当院における一次性静脈瘤に対する980 nm レーザーを用いた血管内レーザー焼灼術の初期経験を報告する.【対象と方法】2011 年6 月〜2012 年4 月までにendovenous laser ablation(EVLA)を施行した97 例122 肢を対象とした.経験数の増加に伴って適応基準を拡大した2012 年1 月以降を後期群(32 例43 肢),それ以前を前期群(65例79 肢)として,手術施行数,合併症,静脈閉塞率を検討した.手術方法は全身麻酔下に,全例穿刺法で静脈を焼灼した.術後1 週,1,3,6 カ月,1 年に外来で観察した.【結果】2 群間の比較では,全手術におけるEVLA の割合は前期群vs. 後期群:37.8% vs. 56.1%,照射エネルギー密度:66.6 vs. 66.2 J/cm,静脈瘤切除術施行率:29.1% vs. 83.7%とEVLA の割合と瘤切除術率に有意差を認めた.合併症は皮下出血を24.1% vs. 33%,疼痛を27.8% vs. 53.5%に認めたが,全例経過中に消失,EHIT Class 2 を2.5% vs. 2.3%に認めたが血栓は自然消失した.深部静脈血栓症は認めなかった.再疎通は前期の6.3%に認めたが,症状の再燃はなかった.【結語】EVLA は,重篤な合併症もなく,入院日数が少なく,審美的にも患者満足度が高い有用な手技と考えられた.
原著
  • 近藤 克洋, 渡部 宏俊, 大村 淳一, 岩淵 正志
    2013 年 24 巻 4 号 p. 410-418
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:【背景】日本における静脈血栓塞栓症の標準的な初期治療は未分画ヘパリンの静注である.フォンダパリヌクスは化学合成されたXa 阻害剤で,採血によるモニタリング不要で規定用量を1 日1 回の皮下注にて使用できる.2011 年3 月より本邦でも使用可能となったが,日本人における有効性・安全性は不明なところが多い.【対象と方法】42例の静脈血栓症を対象とし,うち4 例は外来での投与を行った.体重・年齢・腎機能に応じて使用量を決定し,PT-INR が1.5 以上になるまで投与を継続し,最低3 カ月のワルファリン投与を行った.対象の1/3(14 例)は未分画ヘパリンからの切り替えを行った.【結果】観察期間中の静脈血栓塞栓症は認めなかった.1 例で輸血を要する大出血を認め,ビタミンK 投与にて止血可能であった.3 例で小出血を認めた.2 例の死亡があったが,悪性腫瘍関連死であった.【結語】フォンダパリヌクスは静脈血栓症の初期治療薬として有効かつ安全に使用できる薬剤である.
  • 横田 敦子, 長濱 博幸, 松山 正和, 遠藤 穣治, 西村 征憲, 石井 廣人, 中村 都英
    2013 年 24 巻 4 号 p. 419-425
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:腹部大動脈瘤破裂手術と腹部大動脈瘤待機手術の周術期VTE 発症率を比較検討した.2009 年8 月から2010 年7 月に腹部大動脈瘤破裂に対し緊急人工血管置換術を施行した8 例(R 群)と,腹部大動脈瘤に対し待機的に人工血管置換術を施行した18 例(E群)を対象とした.各群における術前因子,術中因子およびVTE 発症を含めた術後経過を比較検討した.術後VTE を合併したのはR 群では4 例(50.0%),E 群では2 例(11.1%)であり,R 群で有意に多発した.DVT 進展部位はR 群で中枢型3 例(37.5%),遠位型1例(12.5%)であり,E 群では2 例(11.1%)とも遠位型であった.R 群で中枢型DVT を発症した3 例中,1 例(12.5%)を続発したaPE で失った.破裂手術後のVTE 発症率は高率であり,現行よりさらに厳密な周術期VTE 予防および積極的なVTE スクリーニングによる早期発見・治療が必要であると考えられた.
  • 吉田 博希, 稲葉 雅史, 福山 貴久
    2013 年 24 巻 4 号 p. 426-431
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:当科で内翻式ストリッピング術を導入した2007 年9 月より2012 年4 月までの55 カ月間に手術を行った大伏在静脈瘤123 例164 肢を対象とし,その治療成績について検討した.年齢は24〜87 歳,平均61.4 歳,男性44 例,女性79 例であった.手術は内翻法によるsapheno-femoral junction(SFJ)から膝下までの限局的ストリッピング術を標準術式とした.内翻法で完遂できたものは76.2%であったが,専用の内翻式ストリッパーに限ると82%であった.不全穿通枝結紮を45 肢(27%)に追加した.合併症は術後出血が1 例,接触性皮膚炎が3 例,神経障害は創周囲の違和感など軽微なものを含めると11 肢(6.7%)であった.抜去部の皮下血腫による問題は認めなかった.2 例が術後19 カ月目に下腿部の不全穿通枝に起因する静脈瘤を発生し,穿通枝結紮術を追加した.Follow up 可能であった症例において,SFJ に起因する静脈瘤の再発は認めなかった.
原著(委員会報告)
  • ─本邦における静脈疾患に関するSurvey XII ─
    日本静脈学会静脈疾患サーベイ委員会, 岩田 博英, 佐戸川 弘之, 坂田 雅宏, 菅野 範英, 孟 真, 八巻 隆
    2013 年 24 巻 4 号 p. 432-439
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:【はじめに】日本における下肢静脈瘤の疫学的調査を施行し下肢静脈治療法の変遷を検討した.【対象と方法】日本静脈学会会員の所属する施設を対象として,平成20 年1 月から12 月までの1 年間の一次性下肢静脈瘤治療患者11,832 例のアンケート調査を行った.【結果】①施設数は増加していないが,総患者数は増加しており,特定の施設に集中する傾向がみられた.②前回調査(平成15 年)と比較し,ストリッピング手術が増加し,逆に結紮手術は減少した.③前回調査(平成15 年)以後,フォーム硬化療法,本幹硬化療法,血管内治療などの治療を新しく採用する施設がみられた.
総説
  • 山本 尚人, 海野 直樹, 鈴木 実, 眞野 勇記, 佐野 真規, 斉藤 貴明, 杉澤 良太
    2013 年 24 巻 4 号 p. 440-446
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:静脈血栓塞栓症治療の目的は,速やかな下肢症状の軽快と,有症状の肺血栓塞栓症発症防止である.静脈血栓塞栓症の急性期管理について,安静度・圧迫療法・抗凝固療法・線溶療法・下大静脈フィルターについて記載した.安静度は抗凝固療法が治療域となった時点で制限を解除している.圧迫療法は治療当初から開始している.抗凝固療法は根幹をなす治療で,可能な限り施行している.線溶療法は症状の強い深部静脈血栓症や循環障害をきたした肺血栓塞栓症(PTE)に施行している.下大静脈フィルターは抗凝固療法が禁忌の場合に考慮している.出血性合併症は抗凝固療法の1 名,線溶療法の3名に経験した.治療開始後の有症状のPTE は経験していない.静脈血栓塞栓症管理においては,抗凝固療法を施行したうえでの早期歩行・圧迫療法の施行が望ましい.
  • 小川 佳宏
    2013 年 24 巻 4 号 p. 447-456
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:リンパ浮腫は,発症すると完治させることは困難である.しかし発症早期から適切な診断をうけ,患肢にあった適切な保存的治療を行い,症状を安定させることは可能である.保存的治療には,日常生活指導,患肢のスキンケア,リンパドレナージ,圧迫療法,運動療法などが含まれるが,それぞれの治療効果を検討したエビデンスレベルの高い文献は少ない.圧迫療法の効果を示す文献は多いが,不適切な圧迫方法で症状が悪化した症例もある.リンパドレナージ単独での治療効果は不十分とされるが,発症早期の上肢リンパ浮腫では,リンパドレナージ単独で改善する症例もある.スキンケアや運動療法は,効果の検討が難しいが,患肢に繰り返す炎症や肥満が,症状の悪化要因となるリンパ浮腫では,日常生活指導で炎症や体重をコントロールすることが,悪化を防ぐ可能性がある.患肢の状態は症例ごとに異なるため,どの治療内容を選択して行うかは臨床での経験が重要である.
その他(手術の工夫)
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