静脈学
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16 巻, 5 号
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教育講演
  • 廣田 彰男
    2005 年 16 巻 5 号 p. 305-311
    発行日: 2005年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    リンパ浮腫はそのほとんどが子宮癌,卵巣癌や乳癌などの術後に発症する.診断は手術の既往と患肢の色調の変化のない無痛性腫脹から多くの場合容易である.むくみの評価は周径測定が一般的であるがRIリンパ管造影を必要とする場合もある.リンパ浮腫の治療は複合的理学療法complex decongestive physlotherapy(CDP)として知られ,①用手的リンパドレナージュ(MLD),②MLD後の圧迫(弾性包帯,弾性着衣による患肢周径の維持),③圧迫した上での患肢の運動(弾性包帯,弾性スリーブ・ストッキングによるリンパ管へのマッサージ効果)としてまとめ,さらに急速な浮腫の増悪をきたす蜂富織炎の予防としての④患肢の清潔を含めた4つを柱とし,リンパ浮腫の保存的治療法のスタンダードとなっている.しかしながら,重要なことはその基本を踏まえて行えば外来治療でも十分にその効果を上げうることである。

ディベート
総説
原著
  • 澤崎 直規, 平井 正文, 岩田 博英, 温水 吉仁, 早川 直和
    2005 年 16 巻 5 号 p. 325-330
    発行日: 2005年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    一次性下肢静脈瘤129人181肢に対し,大伏在静脈の逆流範囲が皮膚病変等の臨床的重症度にどのように影響するかを,duplex法と反射式光電脈波(PPG)を用いて検討した.色素沈着,湿疹,皮膚硬化,潰瘍をもつ皮膚病変群では,皮膚病変を有しない単純静脈瘤群に比べ,大伏在―大腿静脈接合部から内果まで大伏在静脈全長にわたり逆流を伴う症例が有意に高率であった.また大伏在静脈全長にわたり逆流のみられる群では,膝下で逆流が終わる群に比較し,反射式光電脈波による下腿の1/2再充満時間(1/2VRT)は有意に短縮していた.さらに,膝下で駆血し表在静脈を遮断したときの1/2VRTの改善度に,下腿の不全交通枝の有無による差を認めなかつた.上記の結果から,内果までの大伏在静脈全長に逆流を認める症例では,下腿の静脈機能障害が高度となり皮膚病変を合併しやすいこと,また皮膚病変の発生には不全交通枝よりも表在静脈の逆流が大きく関与することが考えられた.

  • 春田 直樹, 内田 一徳, 丹治 英裕, 新原 亮, 浅原 利正
    2005 年 16 巻 5 号 p. 331-337
    発行日: 2005年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    静脈性潰瘍に対する内視鏡下筋膜下穿通枝切離術(以下SEPS)の有用性に関する臨床報告はあるが,いまだ本術式の評価は定まっていない.静脈1生潰瘍はいつたん改善が得られても,外来通院に移行すると皮膚病変が再燃することがあるため,初期手術成績のみではなく,社会復帰後の潰瘍治癒率も検討した.SEPS手術を行つた446肢中術後1年以上経過したC6症例35肢において,術直後の手術成績は治癒32肢,非治癒3肢であり治癒率は91.4%であつた.その後3肢で潰瘍再発し,1肢で追加手術により潰瘍治癒が得られ,平均観察期間2年9カ月後は治癒30肢,非治癒5肢であり治癒率85.7%(30/35)であつた.少なくとも術前検査で不全穿通枝を伴う静脈性潰瘍においてSEPSは有用な治療法であると思われるが,今後prospective studyによる検討が待たれる.

  • 松崎 賢司, 山下 知剛, 大岡 智学, 吉本 公洋, 国原 孝, 椎谷 紀彦
    2005 年 16 巻 5 号 p. 339-343
    発行日: 2005年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    (目的)慢性下肢静脈疾患患者に対する静脈グラフト採取用内視鏡セットを用いて施行した内視鏡下筋膜下交通枝切離術(SEPS)の初期成績の検討.(対象)2004年に手術した慢性下肢静脈疾患患者26例のうちSEPSを施行した4例4肢.C2が1例,C4が2例,C5が1例.大伏在静脈(GSV)逆流は4肢に,KistnerⅢ度の深部静脈弁逆流を3肢にみとめた.(手術)術前に不全交通枝を超音波ガイド下にマーキング.GSVの後弓静脈の分岐部付近に2~3cmの横切開をおき,筋膜を切開し静脈採取用硬性鏡を挿入し,不全穿通枝を確認して二重にクリッピング.単一ポートで炭酸ガスは使用せず.全例で内視鏡下GSV抜去を同時施行.また,2例で深部静脈弁形成術を同時に施行.(結果)術前マーキングされた不全交通枝の総数は13カ所で,そのうち,内視鏡下に処理可能であったのは11カ所.手術時間は103~308分を要した.GSV処理に伴って発生したと思われる伏在神経障害が2例あったが,いずれも軽快.臨床症状,皮膚所見は全例で改善.(結語)GSV採取用内視鏡セットを用いたSEPSは皮膚病変を伴う慢性静脈疾患に対して簡便で有用であると考えられた.

  • 田村 幸穂, 平田 光博, 西巻 博, 美島 利昭, 斉藤 公一郎, 渡邊 昌彦
    2005 年 16 巻 5 号 p. 345-349
    発行日: 2005年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,深部静脈血栓症(deepthrombosis:DVT)にカテーテル的血栓溶解療法(以下本法)が行われるようになった.今回,われわれは中枢型DVTに対する本法の治療成績を検討し,その有用性を明らかにすることを目的とした.1999年1月から2003年12月までの5年間に当院で血栓溶解療法を行ったDVT患者76例のうち,本法を施行した急性期の25例を対象とした.血栓溶解剤としてウロキナーゼと抗凝固療法としてへパリンを併用し,原則としてカテーテルを順行性に留置した.カテーテル法によりDVTの25例中22例に血栓溶解効果を認め,遠隔期のDVT再発率は観察期間の中央値36カ月(0.5~60カ月)で4%と低率であった.以上の結果から,中枢型急性期DVTにおいてカテーテル法は有効な治療法であると考えられた.

  • 石橋 宏之, 太田 敬, 杉本 郁夫, 仁瓶 俊樹, 川西 順, 山田 哲也
    2005 年 16 巻 5 号 p. 351-355
    発行日: 2005年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    下肢静脈瘤手術に合併した深部静脈拡大,深部静脈不全は,静脈瘤手術により軽快する(静脈血過負荷理論)といわれているが,術後に大腿静脈径が変化するか検討した.下肢静脈瘤110肢(ストリッピング41肢,結紮69肢)を対象に,術前と術後1カ月に空気容積脈波検査と大腿静脈径測定を行った.Venous filling indexはストリッピング術(8.6士4.7ml/秒vs.1.6±0.7ml/秒),結紮術(6.6±4.4ml/秒vs.2.0±1.8ml/秒)ともに有意に改善した(p<0.001).ストリッピング術では術後に前後径が有意に減少した(13.1±2.4mm vs.11.2±1.8mm, p<0.05)が,横径(12.3±3.1mm vs.10.6±1.9mm)と断面積(99±28mm2 vs. 93±22mm2)は変化しなかった.結紮術では,前後径(10.9±2.8mm vs. 9.9±2.0mm),横径(10.4±2.6mm vs.10.0±1.7mm),断面積(90±35mm vs. 82±28mm2)に差を認めなかった.ストリッピング術後に大腿静脈前後径は減少したが,結紮術では効果が認められなかった.

症例
  • 山口 高広, 阪越 信雄, 小林 靖彦
    2005 年 16 巻 5 号 p. 357-361
    発行日: 2005年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    軟部腫瘍などとの鑑別が困難で,術前診断に難渋した下腿大伏在静脈のいわゆるvenous aneurismに対する外科的治療を経験した.症例は28歳男性,以前より下腿部に腫瘤を認めていたが,最近腫瘤が増大傾向にあり,精査加療目的に当科紹介となった.腫瘤は可動性良好で,無痛性,圧迫により消失せず,孤立性であった.工コー検査では内部に血腫と考えられる像を伴う腫瘍と診断した.MRアンギオにて内部に血流を伴わず,大伏在静脈を圧迫しているような腫瘤と診断した.動脈および静脈の血管造影にて腫瘤内部は造影されず,大伏在静脈を圧迫もしくは巻き込んでいる可能性があると診断した.増大傾向にある腫瘍であるため,本人の希望もあり切除術を施行した.手術にて大伏在静脈の一部が4cm□2cmの紡錘状に拡張した腫瘤で,その上下にて大伏在静脈を切離し摘出した.病理組織所見よりvenous aneurysmとして矛盾のない像であった.

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