日本水処理生物学会誌
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41 巻, 1 号
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報文
  • 山際 秀誠, 高辻 渉, 中岡 元信, 古川 憲治
    2005 年 41 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/07
    ジャーナル フリー
    捺染染色廃水には尿素由来の有機態窒素が高濃度で含まれているため、その窒素除去が大きな課題となっている。我々はポリエステル製不織布を固定化担体とした固定化材を開発し、合成染色廃水の連続硝化・脱窒処理試験を行った。終末処理場の汚泥を用いた場合と染色業の廃水処理設備から採取した汚泥を用いた場合では、硝化率はそれぞれ約22%と約55%になったが、20日以上は安定した処理はできなかった。無機態炭素の添加により、硝化率は約62%にアップしたが、25日以上の安定した処理はできなかった。染料や還元防止剤は硝化・脱窒に大きく影響せず、リン源を添加することにより、100日以上の長期間、安定した高い硝化率を維持することができた。リン酸を含む合成染色廃水を用いると、TNに対し、1.5倍量のTOC源を添加することにより、約56%の脱窒率を達成できた。
  • 山崎 宏史, 星野 一宏, 長谷川 淳, 徐 開欽, 蛯江 美孝, 岩見 徳雄, 稲森 悠平
    2005 年 41 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/07
    ジャーナル フリー
    本研究では、独立栄養アンモニア酸化細菌における細胞膜での電子伝達と細胞質でのCO2固定カルビン回路を仲介するNAD+やNADP+のような補酵素に着目し、排水処理システムにおけるアンモニア酸化細菌の増殖とアンモニアの酸化について検討を行った。排水にNAD+やNADP+を添加したNitrosomonas europaea IFO 14298の培養では、コントロールと比較して1.6-1.9倍アンモニア酸化速度が増加し、同様に、活性汚泥に添加した場合においてもアンモニア酸化量、アンモニア酸化細菌数が増加した。アンモニア酸化活性と類似したアンモニアモノオキシゲナーゼをコードするmRNA (amoA-mRNA) 量もこれらの生理活性物質の存在下において増加した。NAD+やNADP+の添加によって影響を受けるアンモニア酸化細菌の種類をamoA-mRNAをターゲットに、制限酵素TaqIを用いたT-RFLP法によって解析した。その結果、NAD+やNADP+の添加によって、それぞれ219bpと491bpのフラグメントサイズを持つ別々のアンモニア酸化細菌のamoA-mRNAが増加を示した。これらの結果は、NAD+やNADP+を活性汚泥系に添加することによりアンモニア酸化能を高度化させ、またアンモニア酸化細菌を選択的に増加させることができることを示唆している。
  • 山崎 宏史, 星野 一宏, 長谷川 淳, 鈴木 理恵, 蛯江 美孝, 岩見 徳雄, 稲森 悠平
    2005 年 41 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/07
    ジャーナル フリー
    本研究では、生活排水原水にBOD調整剤としてメタノールを添加した場合 (メタノール添加系) と酢酸ナトリウムを添加した場合 (酢酸ナトリウム添加系) における生活排水処理システムの処理特性および生物相に及ぼす影響について比較検討を行った。処理水質において比較した結果、BODに関してはメタノール添加系の方が低いが、窒素除去に関してはその差は認められなかった。BOD―汚泥転換率においては両系に差は認められなかった。PCR-DGGE法による細菌相の解析結果では、メタノール添加系と酢酸ナトリウム添加系で類似の群集構造が確認されたが、FISH法による細菌相の解析では、メタノール添加系では、β-Proteobacteria, α-Proteobactriaが優占種となり、酢酸ナトリウム添加系では、β-Proteobacteria, γ-Proteobacteria, High G+C Gram-positive Bacteriaが優占種となった。検鏡による原生動物相の解析では、メタノール添加系と酢酸ナトリウム添加系で原生動物相は類似傾向を示すことが示唆された。
    これらのことから、生活排水調整原水においてBOD調整剤として添加するメタノールおよび酢酸ナトリウムは、排水処理システムの処理特性に与える影響は少ないと考えられた。一方、生物相に及ぼす影響としては、門および綱レベルの存在割合で差が認められたが、その差は原生動物相には影響を及ぼさないことが示唆された。
  • TRUONG QUY TUNG, 宮田 直幸, 岩堀 恵祐
    2005 年 41 巻 1 号 p. 25-39
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/07
    ジャーナル フリー
    Aspergillus oryzaeペレット (菌糸凝塊) を用いたエアリフトリアクター (ALR) により、カッサバデンプン製造排水の回分処理を検討した。A. oryzaeの胞子をALRに植菌した場合綿毛状の小ペレットが形成されたが、菌糸体を植種した場合では菌糸密度の高い球状のペレットが形成された。後者は、ALR内での菌体の流動と処理後の固液分離に適した形態であった。処理時間、通気速度および培地組成はペレット菌糸の分断化に大きく影響を及ぼした。窒素源として0.50~0.75 g l -1の硫酸アンモニウムを添加することで、ALRによる処理効率とバイオマス生産率が改善され、COD 8,700~8,900 mg l -1を含む排水の4日間の処理において、TOC除去率 : 76%、COD除去率 : 84%、デンプン除去率 : 93%、バイオマス生産率 : 0.57 g (g-COD)-1、バイオマスタンパク質含量 : 34%の各成績を得ることができた。また窒素源の添加により、ペレット菌糸の分断化を大きく抑制できることが示された。さらに、総括酸素移動容量係数 (KLa) に着目することにより、ALRによる回分処理における適切な初期COD負荷量を推定できることが示唆され、これにより、窒素源添加の条件では、COD濃度10,000 mg l -1 (デンプン濃度12,000 mg l -1) 以下のデンプン排水を効率的に処理できると推察された。
資料
  • 楊 鳳林, 劉 志軍, 成 英俊, 川島 裕貴, 古川 憲治
    2005 年 41 巻 1 号 p. 41-50
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/07
    ジャーナル フリー
    急速な中国の経済発展は、もともと水資源に恵まれない中国北部地域において水資源問題をますます深刻なものにしている。本報告では、中国北部地域の都市における水環境問題の現況を分析し、水資源不足、水質汚染、地下水の過剰汚染、低い水利用効率などの諸問題を紹介した。これら深刻な中国北部都市域における水環境問題の対策としての「南水北調プロジェクト」、水法および水道水の累進従量制、水循環と水資源の持続可能な利用に関する水経済の観点に立脚した4R (Reduce, Reuse, Recovery, Recycle) の原則等を紹介した。最後に、大連市内での水循環経済、及び現在進行中の水質改善技術「863計画」と今後の課題を紹介した。
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