日本水処理生物学会誌
Online ISSN : 1881-0438
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59 巻, 4 号
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報文
  • 関藤 良子, LE VAN CHIEU, 高部 芳基, 渡辺 正志, 立田 真文
    原稿種別: 報文
    2023 年 59 巻 4 号 p. 39-47
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

     日本の長期の経済低迷で、地方自治体の行政サービスは非常に負担になっている。下水処理も行政サービスの一部であり、その運転コストの削減は大きな課題である。地方自治体の汚泥処分コストを削減するために、実規模の下水処理場において汚泥引抜を延期することで下水汚泥処分費削減の試みを行った。実験の結果、年間約400万円程度の汚泥処分費が削減され、汚泥処分回数を削減することにより約8トンの二酸化炭素排出が削減されたことがわかった。また併設した汚泥減量プロセスにおいても汚泥削減の減少(34%)は見られた。

  • 長田 祐輝, 大和田 莉央, 田中 伸幸, 野村 宗弘, 坂巻 隆史, 丸尾 知佳子, 西村 修
    原稿種別: 報文
    2023 年 59 巻 4 号 p. 49-57
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

     珪藻は緑藻や藍藻と異なり必須脂肪酸として扱われる20:5ω3(EPA)を生産する藻類である。EPAは動物の生存や成長に重要な物質であるため,水界生態系において動物プランクトンや水生動物の餌として珪藻は重要な役割を担っている。一方で,近年シリカ欠損仮説が提唱され,河川でのケイ素の流出が減少していることなども報告されている。しかし,ケイ素濃度の低下が珪藻の増殖およびEPAの生産に及ぼす影響を,個体群および個体レベルの両面から評価した研究は見当たらない。

     そこで本研究では,淡水性珪藻Nitzschia paleaを用いてケイ素濃度を4段階(5から30 mg/L)に設定した回分培養を行ない,水環境中のケイ素濃度が珪藻の増殖及びEPAの生産に与える影響を解析した。その結果,対数増殖期の比増殖速度に有意な差は見られなかったが,定常期での個体群密度およびバイオマス(乾燥重量)生産量とケイ素濃度の間には正の相関が確認された。また,1細胞当たりの乾燥重量および殻長は,ケイ素濃度の最も低い4.93 mg/Lで他の系より有意に大きかった。珪藻個体群のEPA生産量はケイ素濃度29.6 mg/Lがケイ素濃度4.93 mg/Lに比べて有意に高かった。また,1細胞当たりのEPA含有量はケイ素濃度4.93 mg/Lが他の系に比べて有意に高かった。したがって,ケイ素濃度が低い環境では,殻長の大きな珪藻類が低密度で分布する傾向になるため,消費者の餌環境が悪化することが示唆された。

調査論文
  • 中村 和德
    原稿種別: 調査論文
    2023 年 59 巻 4 号 p. 59-66
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

     河川の植生帯における有機物(植物)分解に多様な生物の関与が報告されている。本研究は猪苗代湖流入河川河岸の植生帯の有機物分解に関する生物学的な基礎的情報を得るために、リター分解への関与が指摘される土壌動物の組成を中性と酸性の2河川において調査したものである。猪苗代湖流入河川河岸のヨシ群落に、枯れたヨシ茎(ヨシリター)を入れた2種類の網目のリターバッグを設置し、そのヨシリターと設置周辺土壌の土壌動物を設置から3ヶ月(3月)~12ヶ月(12月)の間調査した。調査最終時(設置12ヶ月後)のヨシリターは過去の研究と同様に全炭素含量の減少とC/N比の減少が観察され、また両川とも形状が細片したことから、リターバッグ内のリターの分解の進行が示唆された。土壌動物の侵入を制限したリターバッグからも多様な土壌動物類が得られ、またpH値の低い場所では周辺土壌よりリターバッグから多様な土壌動物類が得られた。リターバッグと周辺土壌とも、ヒメミミズ類(enchytraeids)とササラダニ類(oribatids)が優占していた。ヒメミミズ類は5属を確認した。今後、詳細な環境条件の調査や採取個体数の増加を行い、土壌動物の役割を明らかにすることが必要である。

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