Anabaene macrosporaはわが国の水道関係機関においてはかび臭物質geosminを生産する藍藻として知られており, 本種の出現やかび臭物質産生について数多くの報告がある (根来, 1989: 根本ほか, 1984: 八木, 1989) 。一方, かび臭産生藍藻によるかび臭発生や水の華形成を予測し, また増殖防止対策を確立するためには, かび臭産生藍藻の生理学的特性に基づいてその増殖と環境因子との関係を明らかにし, その増殖機構を解明することが極めて重要である。かび臭藍藻の増殖生理に関してはこれまで
Phormidium tenue (伊藤・中原, 1986: 中島・八木, 1990d: 中村, 1981: 住友ほか, 1986: 山田ほか, 1985) や
Oscillatoria tenuis (犬塚ほか, 1988: 保尊ほか, 1989: 中島・八木, 1990b: 中島・八木, 1990c) で比較的多く報告されている。
Anabaena macrosporaについても琵琶湖から分離された株について三輪ほか (1985) , 中島・八木 (1990a, 1990d) , 住友ほか (1986) などの報告がある。しかし, 藻類プランクトンの生理学的特性は同一種であっても産地や株によって差異のあることが知られており (Watanabe
et al., 1982) , 他の水域に出現する
A.macrosporaについてもその生理学的特性を明らかにしておく必要がある。
筆者は, 1987年10月に村山上貯水池 (東京都) に出現した
Anabaena mucrospora (以下,
A.macrosporaMYK87X) について, その培養に関する基本的条件並びに本藻の増殖に係る生理学的特性について若干の検討を行ったので, その結果を報告する。
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