本論文では、microcystin LRの安定性に対するpH値の影響、代表的なタンパク質分解酵素によるmicrocystin分解の可能性、およびマススペクトロメトリー(MS)を用いた
Novosphingobium (synonym:
Sphingomonas) sp. MD-1の細胞抽出液(CE)によるmicrocystin LRの一次分解プロセスについて検討を行った。Microcystin LRはpH 2から11までの広い範囲で安定であった。また、環状microcystin LRは12種類のタンパク質分解酵素に対して安定であり、全てにおいて分解が確認されなかった。これにより、microcystin分解酵素MlrAおよびそのホモログ酵素は極めて特異的であることが明らかとなった。Microcystin分解菌
Novoshpngobium sp. MD-1のCEによる直鎖型microcystin LRがMSにより同定された。その直鎖型microcystin LRは
Novosphingobium (synonym:
Sphingomonas) sp. ACM3962と
Sphingomonas sp. B9による中間生成物と同じ構造であることが確認された。また、同定された直鎖型microcystin LRは9種の酵素によって分解が確認され、その分解はC末端のL-Argより起こることが示唆された。しかしながら、それらの活性は
Novoshpngobium sp. MD-1のCEと比較してきわめて低かった。これらのことから、MlrAおよびMlrBを含むmicrocystin分解関連オペロン(
mlrA operon)は、microcystin LRの分解において極めて特異的かつ希な酵素群であることが証明された。
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