日本水処理生物学会誌
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45 巻, 4 号
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報文
  • 渡辺 佑輔, 喬 森, 徐 暁晨, 楊 佳麗, 西山 孝, 藤井 隆夫, 小山 登一郎, ZAFAR BHATTI, 古川 憲治
    原稿種別: 報文
    2009 年 45 巻 4 号 p. 153-163
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    バイオフリンジ(BF)を微生物担体として用いると、曝気に伴うリアクタ内の排水の流れでBFが揺動し、排水と活性汚泥微生物との接触頻度が向上する。本研究では、押し出し流れ型の活性汚泥リアクタ内にBFを設置し、BFの設置によって活性汚泥の沈降性、処理能力が向上するかどうかを検討した。4.5kg-COD/m3/dという高い溶解性COD容積負荷で、99.1%の溶解性BOD除去率、96.5%の溶解性COD除去率、83.6%のアンモニア性窒素の除去率をそれぞれ達成することができた。SVIは50以下となり、良好な沈降性を有する活性汚泥を得ることができたが、これはBFを活用することで活性汚泥のフロック径が大きくなったことが原因している。活性汚泥混合液の粘度が低いことも低いSVIに関係した。試験期間中、活性汚泥のバルキングは起こらなかった。BFを活用した活性汚泥リアクタでは、多数の原生動物と後生動物が活性汚泥中に観察され、このことが低い汚泥収率に繋がったことは明らかになった。378日のBFを活用した活性汚泥リアクタを連続運転した結果、菌叢が大きく変化し、Proteobacter属の細菌が優占した。この研究の結果、揺動床技術は活性汚泥処理能力の向上と安定性に効果のあることが判明した。
  • 田中 康男, 手島 信貴, 篠崎 秀明, 谷田貝 敦, 横山 浩, 荻野 暁史
    原稿種別: 報文
    2009 年 45 巻 4 号 p. 165-175
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    硬質パーライト粒の表面に硫黄と炭酸カルシウムの混合物をコーテイングした直径3~5mmの粒状資材を充填した脱窒リアクターと、直径5~8mmの粒状軽量発泡コンクリート(ALC)資材を充填したリン酸低減リアクターを組み合わせた畜舎排水の高度処理について検討した。脱窒リアクターは、資材見かけ容積あたりNOx-N負荷が約1.5 kg/m3/d、HRTが約9時間、温度20℃で性能の把握を行った。この結果、通水開始後約1週間で脱窒活性が発現し、以後1ヶ月程度安定した脱窒性能を示した。脱窒活性が低下した際には、新たな脱窒用資材を補充することで活性を復活することができた。ALC資材充填リアクターには、リン酸態リン濃度80~120 mg/lの原水を資材見かけ容積あたりHRTを約9時間で通水した。この結果、処理水は約50日間20 mg/l以下まで低減できた。リン低減能が低下した場合には、ALC資材を取り出して水で攪拌洗浄することで低減能が復活できた。ただし、低減能の回復は3回目の洗浄では不十分となった。脱窒リアクターでは硫黄酸化にともない処理水のpHが弱酸性に低下したが、ALCリアクターでは低下したpHがほぼ中性にまで中和された。このことから、pH調整の面でもALCリアクターを脱窒リアクターの後段に使用することは効果的と言える。脱窒リアクターでは色度も低下し、硫酸イオン生成と色度低下との間に相関関係がみられた。資材を投入しない単純な通気処理では色度は低減しなかったことから、色度の低減は硫黄脱窒資材を使用した処理に特有のものと推定された。ALC資材も吸着によると思われる色度低減能を示した。ALCによる色度の低減は徐々に効果が低下したが、洗浄操作により低減能を数回復活させることができた。
  • 神本 祐樹, 對馬 孝治, 木曽 祥秋, 山田 俊郎, Jung Youg Jun
    原稿種別: 報文
    2009 年 45 巻 4 号 p. 177-184
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)は、公共水域や下水道などの水域に最も多く排出される有機化合物(PRTR:2007年度版)であり、その生物学的処理では窒素除去が大きな課題となる。本研究では、メッシュろ過バイオリアクターを用いてDMF、N-メチルホルムアミド(MF)、ホルムアミド(MF)の窒素除去特性について検討を行った。HRT=10日、窒素容積負荷を0.0192kg-N・(m3・d)-1とした。pH調整を行わなかったため、いずれの基質条件でもpH=3付近で安定し、メッシュろ過が安定しやすい酸性条件下を維持した。この条件においてTOC除去率は95%以上であった。窒素除去率は、基質に依存し、DMF系のKj-N除去率は95%であり、MFとFAの系では70%であった。T-N除去率は、DMF系では55%であったが、MF系では20%、FA系では10%と基質のC/N比に依存した。DMF系では好気条件下でもN2Oの生成がわずかに確認された。硝酸の還元はpH=3でも認められたが、中性領域において還元活性はむしろ低下した。しかしながら、広範なpH領域においてN2OからN2への還元が抑制されていることが認められた。
  • 筒井 裕文, 惣田 訓, 竹田 智, 大槻 英隆, 井上 大介, 清 和成, 池 道彦
    原稿種別: 報文
    2009 年 45 巻 4 号 p. 185-191
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    広宿主域、自己伝達性、水銀耐性プラスミドpJP4のEscherichia coli HB101から活性汚泥細菌への伝達性を調査した。E. coli HB101 (pJP4)を供与菌、活性汚泥細菌を受容菌として、寒天培地上でフィルターメイティングを行ったところ、伝達頻度は2.0×10-1– 5.8×10-1/供与菌、2.2×10-1/受容菌であった。検出されたトランスコンジュガント(trans conjugant)を同定したところ、その大半は一般的な活性汚泥細菌であるBurkholderia cepaciaSphingomonas paucimobilisであることが推定された。pJP4の元々の宿主であるCupriavidus necator JMP134は、水銀(HgCl2)濃度50 mg/lまでの耐性を示したが、いくつかのトランスコンジュガントは、それよりも高い100 mg/lまでの耐性を示した。
ノート
  • 天野 佳正, 酒井 雄介, 関谷 卓見, 銭 鑫, 藤村 葉子, 瀧 和夫, 町田 基
    原稿種別: ノート
    2009 年 45 巻 4 号 p. 193-200
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    北千葉導水路の稼働に伴い手賀沼における藻類の優占種は、藍藻類のMicrocystis aeruginosaM. aeruginosa)から珪藻類のCyclotella sp.へと変化している。本研究は、導水がもたらした高濃度のケイ素条件(11 mg-Si・l-1)におけるリン濃度の変動がM. aeruginosaCyclotella sp.の優占化に及ぼす影響について、リンの濃度を0.02、0.1および0.5 mg-P・l-1に変化させた単種培養実験およびリンの濃度を0.1 mg-P・l-1としたときの競合培養実験を通じて検討した。単種培養実験を行った結果、M. aeruginosaおよびCyclotella sp.のリンに対する半飽和定数はそれぞれ0.003 mg-P・l-1および0.220 mg-P・l-1、リンの吸収速度はそれぞれ1.86×10-9 mg-P・cell-1・d-1および1.13×10-9 mg-P・cell-1・d-1と示されたことから、低濃度のリン条件下においてM. aeruginosaCyclotella sp.と比較して、より高い増殖ポテンシャルを有していることがわかった。これらの結果は競合培養実験結果に強く反映し、実験最終日におけるM. aeruginosaの細胞数は全細胞数の99 %を占めた。これらのことから、導水がもたらした高濃度のケイ素条件におけるリン濃度の変動は手賀沼における優占種の変化、すなわちMicrocystis aeruginosaからCyclotella sp.への変化に影響を及ぼしていないと推察される。
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